東京高等裁判所 平成12年(行コ)277号 判決 2001年2月28日
主文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求める裁判
一 控訴人
主文同旨
二 被控訴人
本件控訴を棄却する。
第二事案の概要
次のとおり付け加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人の補充主張
1 開示条例九条二号の解釈・適用について
(一) 開示条例九条二号は情報公開法五条と同様に個人に関する情報についていわゆる個人識別情報型方式を採用し、特定の個人が識別され得るものに該当する限り原則として非開示の要件を充足するものとした上で、その除外事由として同号ただし書イないしハの三つを挙げ他に除外事由を設けていない。したがって、同号は個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人が識別され得るものに該当するものは、休暇のように公務員の職務と離れた純粋に私的ないし専ら私事に関するもの、社会活動に関するもの、公務に関するものを含め、右イないしハのいずれかに該当するものを除き一律に非開示とすることと定めたと解すべきで、これに反する被控訴人の主張は条文の文言、規定の仕方を無視し誤解するものである。右個人に関する情報から右イないしハのいずれかに該当するものを除外したものが「休暇のように公務員の職務と離れた純粋な私的ないし専ら私事に関するものと理解される情報」に限定されると解すべき根拠はなく、「公務員個人の社会的活動に関する情報」も右除外したものの中に含まれる。開示条例一条及び三条からも同様に解すべきであり、これを超えた解釈は開示条例九条二号の文理に反し、いわゆるプライバシー情報型方式の立法をしたのと同一の効果を招来し、法解釈における一般的確実性を害し、法のもつ行為規範としての機能を喪失させ、法規への信頼性、遵守性の減少・消滅を招くものである。
(二) 本件文書のうち決定権者、関与者、出勤整理及び給与減額を除く各欄の記載は、開示条例九条二号本文所定の個人に関する情報で特定の個人が識別され得るものに該当し、同号ただし書イないしハに該当しない。
(1) 摘要、申出等年月日、休暇等の種類、期間及び職免適用基準の各欄摘要欄には職員団体の運営のための活動に従事するとの情報が記入されていることは争いがなく、右各欄の情報は特定の職員が参加しようとする職員団体の特定の活動、それに参加するために職務専念義務免除を申請した日、右活動についての記入要領に定められた略語、これに参加する特定の期間及び同業務に係る職務専念義務免除の根拠規定を明らかにするものであるから、当該職員の個人に関する情報に該当する。そして被控訴人が開示を請求した本件文書はAに関するものであるから、右情報はその請求と組み合わせることによって特定の個人を識別することができる情報に該当し、かつ、この情報は右イないしハに該当しない。
(2) 当該職員の申出印
右申出印は印影により個人名を明らかにするものであるから当該職員の個人に関する情報で特定の個人を識別することができる情報に該当し、かつ、この情報は右イないしハに該当しない。
2 年次有給休暇及び職務専念義務免除の性質等について
地方公務員はその勤務時間中において職務に専念しなければならない義務を負っているところ、職免は法律又は条例に特別の定めがある場合に限って右義務を免除するもので(地方公務員法三五条)、公務員の勤務時間中における公務優先の原則からすれば相応の合理的理由がある場合に限って認められるものである。
労働基準法三九条に基づく年次有給休暇も職免条例に基づく職免も地方公務員法三五条にいう法律又は条例に特別の定めがある場合の一例であり、東京都の職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例(平成七年三月一六日条例第一五号)に基づく休日(国民の祝日法に定める休日、年末年始の休日及び地方自治法四条の二に基づく地方公共団体の休日)等もそれに当たり、これらはいずれも相応の合理的理由により職務専念義務が免除するもので一定の手続による承認があれば服務上の義務の違反はなくなるものである。そして年次有給休暇それ自体が当該公務員の私事に関するものであることはいうまでもなく、当該公務員の申請に係る部分(いつ請求していつ取得するのか、何回取得するのか等)も当該公務員の自由な意思に委ねられている以上専ら私事に関する情報というべきである。このことは職免条例及び職免規則に基づく一定の職務専念義務免除における当該公務員の申請に係る部分についても同様であり、職免規則二条に基づき職員団体の運営のためその会合等への参加は、当該公務員が地方公共団体とは別個の団体へ加入しその組織・運営にどのようにかかわるかという事柄であるから、それ自体当該公務員の思想信条に関するものであり、個人の社会的活動であって専ら私事に関するものというべきであり、右申請に係る部分も、どういう会合又は業務(種別・具体的内容)につきいつ申請していつ参加するのか、何回参加するのかは当該公務員の自由な意思・選択に委ねられているところ(これを年次有給休暇を使って行うこともできる。)、右部分の記載は当該公務員個人の職員団体への加入の有無、その活動の程度等が明らかにされる情報であり、当該公務員個人の思想信条にもかかわる情報であって専ら私事に関するものというべきである。このように、①当該公務員の年次有給休暇の請求に係る部分及び職務専念義務免除の申請に係る部分は、いずれも当該公務員の自由な意思・選択に委ねられているのであるから専ら私事に関することであり、②年次有給休暇及び職免につき地方公務員法三五条にいう法律又は条例における特別の定めに当たる立法措置を講じたことは公務に関することであり、③右請求に対する時季変更権の行使、右申請に対する承認又は不承認は、右①の専ら私事に関することを職務との関係において制約(規制)するものであるから、当該公務員にとっては私事性と公務性の両性質を併有していることになる。したがって、右①②③を区別することなく、年次有給休暇を専ら私事と解する一方、職免は公務員の職務と離れた純粋に私的ないし専ら私事に関するものとはいえないとする解釈は失当である。なお、地方公共団体保有の文書で公的側面のないものは存在しないから、職免に係る右①の部分が職務と離れた純粋に私的ないし専ら私事に関する文書とはいえないとすれば、地方公共団体にはそれに該当する文書はほとんど存在しなくなり、開示条例九条二号が適用される場面もほとんどないことになる。
二 被控訴人の反論
開示条例九条二号所定の個人に関する情報とは専ら個人の私事に関するものと通常理解される情報のみに限定されると解すべきものであり、このことは開示条例一条、三条、九条の規定から明らかである。また開示条例の趣旨からすれば公務員個人の社会活動に関する情報はその全てが右個人に関する情報に該当するとはいえず、当該活動が社会通念上専ら個人の私事に関するものと理解できるものといえないものは右個人に関する情報にも該当しない。
本件文書における職務の事由が私事に関することとは言い難く、それが右個人に関する情報に該当しないことは後記第四の三2における被控訴人の主張のとおりである。
第三証拠関係
本件訴訟記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第四当裁判所の判断
一 本件開示請求の範囲等
被控訴人の公文書開示請求書における請求する公文書の件名又は内容欄の「清掃局石神井清掃事務所のAの休か・職免処理簿の内、「職免に関する部分」。平成11年1月から8月31日まで」との記載及び休暇・職免等処理簿の記入要領に照らすと、被控訴人が本件開示請求において開示を請求したのは、Aという特定の個人に関する原判決別紙の様式による休暇・職免処理簿のうち、「休暇等の種類」欄に職免との記載がある申請についての「申出等月日職員印」、「休暇等の種類」、「期間」、「摘要」、「職免適用基準」、「決定権者」、「関与者」、「出勤整理」及び「給与減額」の各欄であり、職免に関する部分とは認められないその他の欄は本件開示請求の範囲に含まれないものと解される。
したがって、以下においては右のように本件開示請求に含まれると解される部分が開示条例によって開示されるべきか否かにつき検討する。
二 開示条例の規定等
1 地方公共団体のいわゆる公文書公開条例においては、個人のプライバシー保護を図るため個人に関する一定の範囲の情報を記録した公文書を非開示と定めることが通例であること、そのための条例の規定の仕方としては、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」等としてプライバシーに関する情報が記載されている文書であることをそのまま非開示文書の要件として規定するいわゆるプライバシー情報型方式と、「特定の個人が識別され得るもの」に該当する限り原則として非開示の要件を充足するものとした上で、その除外事由を定めるいわゆる個人識別情報型方式とが存することは当裁判所に顕著である。
公文書公開条例の制定は地方公共団体の有する条例制定権に由来するものであって、同条例においていかなる文書を開示するかあるいは非開示文書の範囲をどのように定めるかは基本的に当該地方公共団体に委ねられているということができる。またプライバシーの概念は必ずしも明確ということはできず、その具体的内容及び範囲は情報の内容やそれが開示される際の状況並びに各人の価値観等によっても見解が分かれることは否めないことからすれば、公文書公開条例において個人識別情報型方式を採用し、客観的に判別することが容易な基準を設けて非開示の範囲を明確にし、制度の安定的かつ公平な運用を図ることができるようにすることには相当の合理性があるということができる。そうすると個人識別情報型方式の公文書公開条例に基づく公文書の開示請求に対する地方公共団体の非開示処分の当否を検討するに当たっては、当該条例の規定の文言及び右のような条例制定の際における方式の選択理由とその合理性が十分に考慮される必要があるというべきであり、当該条例の規定を形式的に適用することによってプライバシーを侵害するおそれのないことが客観的に明白な情報までもが非開示とされるような例外的場合を除き、個人に関する情報で特定の個人が識別され得るものとの要件に該当することを理由に非開示としたことをもって当該条例に反するものとすることはできないと解される。
2 原判決記載のとおり、開示条例(平成一一年東京都条例第五号による改正前の昭和五九年東京都条例第一〇九号東京都公文書の開示等に関する条例)は、その九条(開示しないことができる公文書)において開示請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときは当該公文書に係る公文書の開示をしないことができる旨規定し、同条二号本文において非開示とできる公文書として個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人が識別され得るものを挙げ、同号ただし書において、イ 法令等の定めにより何人でも閲覧することができる情報、ロ 実施機関が作成し又は取得した情報で公表を目的としているもの、ハ 法令等の規定に基づく許可、免許、届出等の際に実施機関が作成し、又は取得した情報で、開示することが公益上必要であると認められるものの三者を開示しないことができる情報から除外しており、いわゆる個人識別情報型方式を採用している。
以上を前提として、本件非開示処分の当否について検討する。
三 職務専念義務免除と開示条例九条二号本文の個人に関する情報等
1 前記のとおり開示条例九条二号は個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人が識別され得るものは同号ただし書イないしハに該当しない限り開示しないことができるとしているところ、本件開示請求はAという特定の個人に関するものであるから、右請求に係る休暇・職免処理簿が開示されれば、その情報は特定の個人を識別できるものであることは明らかである。
2 被控訴人は、職免に関する情報は当該職員が当該日時において職務専念義務を免除されていたことを示すものであり、右義務免除は公務員の地位・資格に関する情報であるから、同号本文の個人に関する情報には該当しないとして、次のとおり主張する。
すなわち、地方公務員はその勤務時間中においては職務に専念しなければならない義務を負っている(地方公務員法三五条)が、職免は法律又は条例に特別の定めがある場合に限って、この職務専念義務を免除するものであり、公務員がその勤務時間中においては公務を優先するという大原則からすれば、相応の合理的な理由がある場合に限って認められるべきものである。実際にも、職免条例及び職免規則によれば、職務を免除されることができる事由は、①研修を受ける場合(職免条例二条一号)、②職員の厚生に関する計画の実施に参加する場合(同条二号)、③職員が職員団体(地方公務員法五二条に規定する職員団体及び地方公営企業労働関係法五条の労働組合をいう。以下同じ。)の運営のため特に必要な限度内であらかじめ職員団体が任命権者の許可を受けたときにおいて、その会合又はその他の業務に参加する場合(職免規則二条一号)、④職員が国又は他の地方公共団体その他の公共団体若しくはその職務と関連を有する公益に関する団体の事業又は事務に従事する場合(同条二号)、⑤職員が法令又は条例に基づいて設置された職員の厚生福利を目的とする団体の事業又は事務に従事する場合(同条三号)、⑥職員が都又は都の機関以外のものの主催する講演会等において、都政又は学術等に関し、講演等を行う場合(同条四号)、⑦職員がその職務上の教養に資する講演会等を聴講する場合(同条五号)、⑧職員がその職務の遂行上必要な資格試験を受験する場合(同条六号)、⑨その他特別の事由のある場合(同条七号)に限られている。これらの職務を免除されることができる事由は、右①、④、⑥、⑦、⑧のように公務員の職務それ自体と関連するもの、右②、⑤のように地方公共団体と公務員との関係において必要とされるもの、右③のように憲法上の権利を保障するために特に認められたものに限定されている。このことと公務員の職務専念義務の原則とを併せて考えてみると、職免を受けているという事実は、その期間中、当該公務員が勤務時間中であるにもかかわらず全く勤務を要しないことと公的に評価し得る活動をしている事実と表裏一体の関係にあり、休暇のように公務員の職務と離れた純粋に私的なものなどとは異なり、職免の具体的理由とともに公的な側面を有するものというべきである。そうであるとすると、公務員が職免を受けている事実及びその具体的理由については、当該公務員の私的な側面に関わるものではあるものの、専ら私事に関するものとはいい難く、開示条例九条二号本文にいう個人に関する情報には該当しないことは明白である。被控訴人は以上のとおり主張する。
3 しかし、職免規程に定める原判決別紙休暇・職免等処理簿の記入要領は原判決記載のとおりであり、本件文書の各項目のうち、本件開示請求の範囲に含まれない決定権者、関与者、出勤整理及び給与減額を除く各欄には次のとおりAの個人に関する情報が記載されているというべきである。
すなわち、休暇・職免処理簿の摘要欄には年次有給休暇及び夏季休暇を除き、それぞれの申出等に係る理由、年次有給休暇の時季変更権行使の場合その理由等を具体的に記入することとされているが、弁論の全趣旨によると、本件文書においては同欄には職員団体の運営のための活動に従事するとの情報が記入されていることが認められる。そうすると本件文書の申出等年月日、休暇等の種類、期間及び職免適用基準の各欄の情報は、特定の職員であるAが参加しようとする職員団体の特定の活動、それに参加するために職務専念義務免除を申請した日、右活動についての記入要領に定められた職免との略語、これに参加する特定の期間及び同業務に係る職務専念義務免除の根拠規定を明らかにする情報が記載されていることになり、これらは職員個人に関する情報に該当する。また当該職員の申出印も印影により個人名を明らかにするものであるから当該職員の個人に関する情報に該当する。
そして職免は地方公務員の職務専念義務を免除するものであるから、その意味では職免に関する情報は公務員の地位・資格に関する情報であるということができる。しかし、開示条例九条二号本文はそのかっこ書で事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く旨規定するのみで、その対象を公務員以外の個人に限定しているわけではなく、その情報に係る個人が公務員でない個人である場合と公務員である場合とで何ら区別していないのであるから、その解釈として同号本文が公務員の地位・職務に関する情報を対象としていないとすることはできない。また、個人に関する情報を、直接プライバシーという概念を用いず、専ら私事に関する情報とそれ以外の情報とに分け、そのうちの前者だけが同号本文に該当するとする解釈は、同号の規定の文言を離れ、前記制定趣旨を無視するものであって、開示条例一条、三条の規定もこのような解釈を許容する根拠とはなり得ない。なお、職免に関する情報が右かっこ書にいう事業を営む個人の当該事業に関する情報に当たらないことはいうまでもない。
4 被控訴人は前記のように職免事由を分析し、本件における職免はその③の場合であるが、職務専念義務の原則からすれば、職免を受けているという事実はその期間中当該公務員が勤務時間中であるにもかかわらず全く勤務を要しないことと公的に評価し得る活動をしている事実と表裏一体の関係にあり、休暇などとは異なり職免の具体的理由とともに公的な側面を有するものというべきであると主張する。
しかし、地方公務員法三五条は、職員は法律又は条例に特別の定めがある場合を除いて職務専念義務を負う旨規定しているところ、職免条例は東京都の職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例(平成七年三月一六日条例第一五号。乙二四)と同様に、地方公務員法三五条にいう条例として職務専念義務の免除について規定するものであり、職免条例による職務専念義務の免除自体は、東京都の職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の規定によって職務を免除される場合と何ら異なるところがない。しかも前記のように本件文書においては職員団体の運営のための活動に従事するとの情報が記入されているところ、このような情報は当該職員の職員団体への加入の有無とその活動の程度や内容等が明らかにされる情報であり、また右職員団体は地方公共団体とは別個の団体であるから、その団体への加入ないしその組織・運営への関与は当該職員の公務と離れた私的な行為であり、かつ、当該職員個人への自由意思に委ねられている事柄であって、それらに関する情報は当該職員の結社への参加や思想信条に関するものであり、プライバシーに関する情報であることは明らかである。職務専念義務免除の承認は当該職員の職免中の活動等が職務専念義務を免除するに相応しいとの判断に基づいて行われるものであってその意味で公務員の公務に関連するということができるとしても、そのことによって右活動等自体が公的な側面を有することにはならない。更に、何らかの意味で右活動等に公的な側面が存するとしても、それが前記私的行為としての面よりも大きな割合を占めることになるとは考えられない。
そして前記のとおり公文書の開示請求に対する非開示処分の当否を検討するに当たっては、当該条例の規定の文言及び右のような条例制定の際における方式の選択理由とその合理性が十分に考慮される必要があるところ、開示条例九条二号本文の規定は、前記かっこ書と後記同号ただし書イないしハに該当する場合を除き、個人に関する情報であればそれが公的な側面を有するか否かを問わず開示しないことができる旨規定しているのであるから、プライバシーにかかるものかどうかの判断を入れる余地はあるにしても職免に関する情報が公的な側面を有することの一事によってこれを開示されなければならない情報に当たると解することはできない。
5 したがって、職免に関する情報は同号本文において非開示とすることができる情報に含まれるものであるから、同条ただし書にイないしハのいずれかに該当しなければこれを非開示とすることができることになる。
四 開示条例九条二号ただし書該当性の有無等
1 本件開示請求に係る情報が同号ただし書イ(法令等の定めにより何人でも閲覧することができる情報)及びロ(実施機関が作成し又は取得した情報で公表を目的としているもの)に該当しないことは明らかである。
2 同号ただし書ハは、法令等の規定に基づく許可、免許、届出等の際に実施機関が作成し、又は取得した情報で、開示することが公益上必要であると認められるものを開示すべき情報として定めている。
職免は地方公務員法三五条、職免条例及び職免規則等の規定に基づき職務専念義務免除の承認を受けようする者が承認権者に申請し、その承認があればその職務に専念する義務が免除されるというものであるから、これに関する情報は法令等の規定に基づく許可、届出等の際に実施機関が作成し又は取得した情報に該当すると考える余地がある。しかし、前記のように職免に関する情報が何らかの公的な側面を有しているとしても、その情報を公開することが公益上必要であることにはならないし、仮に公益性が認められるとしても当該情報は職員個人のプライバシーに関する情報でもあるのであるから、そのプライバシーの保護を犠牲にしてまで公開すべき公益性があるとは考えられない。
3 なお、本件開示請求に係る情報はプライバシーに関する情報であることは前記のとおりであり、その開示によってプライバシーが侵害されるおそれがあることは明らかであるから、例外的に開示条例の規定の文言解釈を超えて開示されるべき情報に当たるということはできない。
第五結論
よって、被控訴人の請求は理由がなくこれを認容した原判決は不当であるからこれを取り消し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 新村正人 裁判官 笠井勝彦 裁判官 田川直之)