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東京高等裁判所 平成13年(行ケ)283号 判決 2002年1月30日

原告

出光石油化学株式会社

訴訟代理人弁理士

大谷保

東平正道

被告

特許庁長官 及川耕造

指定代理人

佐野整博

柿崎良男

森田ひとみ

宮川久成

主文

特許庁が異議2000-74006号事件について平成13年5月8日にした決定を取り消す。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

(1)  原告は、名称を「ポリカーボネート樹脂組成物」とする特許第3037588号発明(平成6年7月15日国内優先権主張、平成7年6月15日特許出願、平成12年2月25日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。

上記特許につき特許異議の申立てがされ、異議2000-74006号事件として特許庁に係属したところ、原告は、平成13年3月9日、明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。

特許庁は、同特許異議事件について審理した上、同年5月8日、「訂正を認める。特許第3037588号の請求項1、2に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は同月26日原告に送達された。

(2)  原告は、本件決定の取消しを求める本訴提起後の同年10月1日、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2001-39174号事件として審理した上、同年11月13日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」といい、本件訂正審決に係る訂正を「本件訂正」という。)をし、その謄本は同月26日原告に送達された。

2  特許請求の範囲の記載

(1)  設定登録時の特許請求の範囲の記載

【請求項1】(A)ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体、(B)ポリカーボネート樹脂、及び(C)フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレンからなり、(A)成分が(A)成分と(B)成分の合計量の5~100重量%、(B)成分が(A)成分と(B)成分の合計量の95~0重量%、(A)成分中のポリオルガノシロキサン部のの割合が(A)成分と(B)成分の合計量の0.1~2.0重量%、(C)成分が(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.05~1.0重量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。

【請求項2】(A)成分中のポリオルガノシロキサン部の割合が(A)成分と(B)成分の合計量の0.5~1.5重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。

(2)  本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。)

【請求項1】(A)ポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数が30~150であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体、(B)ポリカーボネート樹脂、及び(C)フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレンからなり、(A)成分が(A)成分と(B)成分の合計量の5~100重量%、(B)成分が(A)成分と(B)成分の合計量の95~0重量%、(A)成分中のポリオルガノシロキサン部のの割合が(A)成分と(B)成分の合計量の0.1~2.0重量%、(C)成分が(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.05~1.0重量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。

【請求項2】(A)成分中のポリオルガノシロキサン部の割合が(A)成分と(B)成分の合計量の0.5~1.5重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。

(3)  本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。なお、二重下線部分は、上記(2)との相違部分である。)

【請求項1】(A)

file_2.jpgByard oer k 2-7 AZ 2 /— ERE LMR AM? = PARI ARH J VORP Y ERY MORE bE OLHAETH YDポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数が30~150であるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体、(B)ポリカーボネート樹脂、及び(C)フィブリル形成能を有する平均分子量500,000以上のポリテトラフルオロエチレンからなり、(A)成分が(A)成分と(B)成分の合計量の5~100重量%、(B)成分が(A)成分と(B)成分の合計量の95~0重量%、(A)成分中のポリオルガノシロキサン部のの割合が(A)成分と(B)成分の合計量の0.1~2.0重量%、(C)成分が(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.05~1.0重量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。

【請求項2】(A)成分中のポリオルガノシロキサン部の割合が(A)成分と(B)成分の合計量の0.5~1.5重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。

3  本件決定の理由

本件決定は、本件訂正請求に係る訂正を認め、本件発明の要旨を同訂正後の特許請求の範囲の記載(上記2(2))のとおり認定した上、本件発明は、特開平5-214234号公報、特開平4-285655号公報、特開平5-262975号公報及び特開昭53-88856号公報記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により、その特許は取り消されるべきものとした。

第3当事者の主張

1  原告

本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから、本件決定は違法として取り消されるべきである。

2  被告

本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。

第4当裁判所の判断

本件決定が本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定したこと、他方、本件訂正審決の確定により、特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがないところ、両者の記載を対比した場合に、後者の特許請求の範囲は、前者の特許請求の範囲を減縮したのと同一の結果となっていることは明らかである。

そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を上記のとおり認定したことは、結果的に誤りであったことに帰する。そして、これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして取消しを免れない。

よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用は、原告の申立て等本件訴訟の経過にかんがみ、原告に負担させることとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 篠原勝美 裁判官 長沢幸男 裁判官 宮坂昌利)

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