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東京高等裁判所 平成13年(行ケ)497号 判決 2002年8月09日

原告

訴訟代理人弁理士

藤本昇

鈴木活人

薬丸誠一

中谷寛昭

大中実

岩田徳哉

被告

植平コンクリート工業株式会社

訴訟代理人弁理士

小谷悦司

村松敏郎

清水義仁

主文

特許庁が無効2000-35666号事件について平成13年9月26日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

(1)  原告は、名称を「地表埋設用蓋付枠」とする登録第2099411号考案(平成元年11月22日出願、平成8年1月26日設定登録、以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。被告は、平成12年12月11日、本件実用新案登録の無効審判の請求をし、同請求は、無効2000-35666号事件として特許庁に係属した。原告は、平成13年4月20日、本件実用新案登録出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲等の訂正の請求(以下「訂正請求」という。)をした。特許庁は、同年9月26日、「訂正を認める。実用新案登録第2099411号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年10月9日、原告に送達された。

(2)  原告は、平成13年11月6日、本件審決の取消しを求める訴えを提起するとともに、平成14年4月17日、本件明細書の実用新案登録請求の範囲等の訂正(以下「本件訂正」という。)をする訂正審判の請求をし、特許庁は、同請求を訂正2002-39095号事件として審理した結果、平成14年6月13日、本件訂正を認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし、その謄本は、同月25日、原告に送達された。

2  本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載

(1)  訂正請求に係るもの(訂正部分には下線を付す。)

【請求項1】蓋本体2が蓋受枠6上にその上面が略面一に嵌合され、蓋本体2の下端外周縁に逃げ空所5を形成すべく切り欠き部4が刻設された地表埋設用蓋付枠において、蓋本体2の上方外周側面には蓋受枠6の上方内周縁に形成されたテーパー面8に合致するテーパー面7が形成されてなり、且つ前記切り欠き部4の少なくとも一箇所以上には突起体10が外周方向に突設されてなり蓋受枠6の少なくとも一箇所以上には、前記突起体10を係入するための凹部11が形成されてなることを特徴とする地表埋設用蓋付枠。

(2)  本件訂正に係るもの(訂正部分には下線を付す。)

【請求項1】蓋本体2が蓋受枠6上にその上面が略面一に嵌合され、蓋本体2の下端外周縁に逃げ空所5を形成すべく切り欠き部4が刻設された地表埋設用蓋付枠において、蓋本体2の上方外周側面には蓋受枠6の上方内周縁に形成されたテーパー面8に合致するテーパー面7が形成されてなり、且つ前記切り欠き部4の少なくとも一箇所以上には突起体10が外周方向に突設されてなり蓋受枠6の少なくとも一箇所以上には、前記突起体10を係入するための凹部11が形成され、しかも前記蓋受枠6には蓋本体2の環状脚部3を載置するための受部9が形成され、且つ前記蓋本体2の環状脚部3の底面と前記凹部11の底部11aとの間にのみ隙間が設けられてなることを特徴とする地表埋設用蓋付枠。

3  本件審決の理由

本件審決は、訂正請求に係る訂正は、平成11年法律第41号附則14条で改正された平成5年法律第26号附則4条2項により読み替えられた同法による改正前の実用新案法(以下「旧法」という。)40条2項ただし書及び同条5項で準用する旧法39条2項に規定する要件に適合するので訂正を認めるとし、本件考案の要旨を訂正請求に係る本件明細書の実用新案登録請求の範囲記載のとおり認定した上、本件考案は、実願昭53-58692号(実開昭54-159749号)のマイクロフィルム、実願昭55-189780号(実開昭57-114853号)のマイクロフィルム、実願昭54-66200号(実開昭55-168555号)のマイクロフィルム、実公昭58-51246号公報、実公昭58-51248号公報、実公昭62-4595号公報、実公昭62-4596号公報及び実公昭62-23885号公報に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり、平成11年法律第41号附則3条によりなお従前の例によるとされ、平成5年法律第26号附則4条1項によりなおその効力を有する旧法37条1項1号に該当し、無効とすべきものとした。

第3原告主張の審決取消事由

本件審決が、本件考案の要旨を訂正請求に係る本件明細書の実用新案登録請求の範囲記載のとおりと認定した点は、訂正審決の確定により実用新案登録請求の範囲が上記第2の2(2)のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになる。本件審決は本件考案の要旨の認定を誤った違法があり、取り消されなければならない。

第4被告の主張

訂正審決の確定により本件明細書の実用新案登録請求の範囲が上記のとおり訂正されたことは認める。

第5当裁判所の判断

訂正審決の確定により本件明細書の実用新案登録請求の範囲が上記のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、本件訂正によって、本件明細書の実用新案登録請求の範囲は、訂正請求に係るものよりも減縮されたことが明らかである。

そうすると、本件審決が本件考案の要旨を訂正請求に係る本件明細書の実用新案登録請求の範囲記載のとおり認定したことは、結果的に本件考案の要旨の認定を誤ったこととなり、この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件審決は取消しを免れない。

よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 篠原勝美 裁判官 岡本岳 裁判官 長沢幸男)

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