東京高等裁判所 平成15年(行コ)149号 判決 2004年3月04日
控訴人 甲
同訴訟代理人弁護士 村上忠義
同 山崎file_3.jpg
同 筒井剛
被控訴人 柏税務署長 渡部照雄
同指定代理人 植田浩行
同 信本努
同 松元弘文
同 伊藤仁志
同 白井文緒
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決のうち、相続税に係る更正の一部取消しを求める請求及び同更正に伴ってされた過少申告加算税の賦課決定の取消しを求める請求を棄却した部分を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対し、平成7年3月31日付けでした亡乙(以下「亡乙」という。)を被相続人とする相続税の更正(ただし、平成9年9月17日付け及び平成10年8月31日付けでした各減額更正後のもの。以下、この各減額更正後のものを「本件更正」という。)のうち、課税価格143億5463万円、納付すべき税額87億5271万2000円を超える部分及び平成7年3月31日付けでした過少申告加算税の賦課決定(ただし、平成9年9月17日付け及び平成10年8月31日付けでした各変更後のもの。以下、この各変更後のものを「本件過少申告加算税の賦課決定」という。)を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、控訴人が被控訴人に対し、控訴人の父である亡乙の死亡によって開始した相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、被控訴人が控訴人に対してした本件更正(控訴人を含む共同相続人らの課税価格合計156億6613万9000円、控訴人の課税価格145億0228万5000円、控訴人の納付すべき相続税額を94億3786万8600円とする更正)のうち、控訴人の課税価格143億5463万円、納付すべき税額87億5271万2000円(納税猶予額控除後のもの)を超える部分の取消し及び本件過少申告加算税(2億8818万9000円)の賦課決定の全部の取消しを求めている事案である(なお、控訴人は、原審では、本件更正のうち、控訴人の課税価格120億9986万1000円、控訴人が納付すべき税額75億2419万3400円を超える部分の取消しを求めていたが、当審では、上記のとおりの請求に減縮した。また、控訴人は、原審では、控訴人に対してされた地価税の更正及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定の取消しも求め、原審はこの請求を棄却したが、この部分についての控訴はしていない。)。
原判決は、本件相続に係る課税価格の合計は157億3042万6000円で、控訴人の課税価格は145億6657万2000円、控訴人が納付すべき相続税額は、94億8260万8100円であるとし、控訴人が納付すべき相続税額は、本件更正におけるそれを上回るから、本件更正及び本件更正に伴いされた本件過少申告加算税の賦課決定は、適法であるとして、いずれも、控訴人の請求を棄却した。
控訴人が当審において主張する違法事由は、①本件相続財産中の原判決別表1(ただし、更正決定後のもの。以下同じ。)記載の順号2の土地(B土地)、順号11の土地(L土地)及び順号14の土地(OP土地)の各土地についての、価額の算定方法に違法な点がある、②本件相続税の申告に過少申告加算税を賦課すべき事由がないのにこれを課した違法がある、というものである。
本件の事案の概要は、次に付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」欄の「1 争いのない事実等」欄に記載のとおりである(ただし、地価税の関係を除く。)から、これを引用する。
(控訴人の当審における主張)
1(1) B土地、L土地、OP土地の一部(原判決別紙利用図のO・P部分のうち、同原告主張図のP部分及びO1部分を除いた部分、以下「O2土地」という。)の各土地(以下、「本件各土地」ともいう。)の上には、賃借人を有限会社A(以下「A」という。)とし、賃貸期間を昭和36年5月10日から50年間とする建物所有目的の賃借権が設定されていて、その残存期間は、本件相続開始日である平成5年12月26日においては17年間である。
ところで、財産評価基本通達によれば、本件各土地のような賃借権の目的となっている雑種地の評価は、雑種地(自用地)の価額から賃借権の価額を控除した金額として評価するとされており(同通達86)、一方、雑種地に係る賃借権の価額は、賃貸借契約の内容、利用の状況等を勘案して評定することとされているが、地上権に準ずる権利として評価することが相当であると認められる賃借権以外の賃借権の価額は、当該雑種地(自用地)の価額に、賃借権の残存期間に応じて相続税法23条の地上権割合の2分の1の割合を乗じて計算した金額と評価することができるとされている(同通達87)。そうすると、本件各土地上の賃借権は、相続税法23条により、残存期間17年間に対応する地上権の評価割合である100分の20の更に2分の1である10パーセントということになるから、貸宅地としての評価は、本件各土地が自用地である場合の価格に0.9を乗じて算出すべきことになる。しかるに、被控訴人は、0.975を乗じた価額を主張するから誤りというべきである。
(2) なお、B土地、O2土地については、上記賃貸借契約後の昭和47年に、仮設物置及び駐車場敷地に使用するとする土地賃貸借契約公正証書が作成されているが、その作成目的は、Aのテナント対策のためであって、当事者間に前記の賃貸借契約とは別個の賃貸借契約が締結されたものではない。すなわち、テナントが空き地に勝手に物置などの簡易な構造物を建てた場合、Aが当事者となって対処することができるようにするために、前記の公正証書を作成したにすぎず、公正証書を作成したことによって、賃貸借の目的が建物所有目的から駐車場利用目的に変更されたものではない。仮に、賃貸借の目的をそのように変更するのであれば、その賃借権の効力は大幅に異なるから、Aが亡乙に既に支払っていた権利金などを一部返還するなどの調整をしなければならないはずであるが、そのような調整がされた事実は全くない。また、B土地、O2土地は、原判決別表1順号1の土地(A土地)、順号13の土地(N土地)上の各建物(店舗)の賃借人に、駐車場として利用させるためのものであるが、駐車場がなければ賃借人は営業ができないから、建物の敷地であるA土地、N土地の賃借権とB土地、O2土地の賃借権とが遊離するような契約が締結されたとすることは、当事者の意思として不合理というほかはない。
なお、亡乙は、一時、L土地と原判決別表1順号10の土地(K土地)とをスポーツセンターに駐車場として賃貸しているとして、その賃料収入を自己の所得として所得税の申告をしたことがあったが、これは過誤に基づくものであるし、その期間も一時的なものであって、L土地及びK土地が、亡乙からAに対して建物所有の目的で賃貸されていた事実が左右されるものではない。
(3) さらに、被控訴人のL土地及びOP土地の価額の算定方法には、二方影響加算率ないし側方影響加算率において誤りがある。
まず、L土地は、西側(正面路線)、南側(側方路線)、東側(裏面路線)において路線に接しているが、原判決別紙利用図によると、裏面路線の利用は、K土地の存在によって、32.1/(32.1+21.1)だけ妨げられることになる。したがって、原判決別表1の順号11の土地(L土地)の⑦欄は、⑥+④×0.95×0.05ではなく、⑥+④×0.95×0.05×32.1/(32.1+21.1)とされるべきで、これにより計算し直すと、本判決添付別表1(被控訴人主張額欄)に示すとおり、L土地の価額は、控訴人の算式によると、1平米当たり105万7859円ではなく、103万9229円となる。
次に、OP土地は、東側(正面路線)、南側(側方路線1)、北側(側方路線2)、西側(裏面路線)に接しているが、原判決別紙利用図によると、側方路線1はN土地の存在によって18.8/(12.2+18.8)だけ妨げられていることになる。したがって、原判決別表1順号14の土地(OP土地)の⑥欄は⑤+710×0.74×0.05+460×0.76×0.08ではなく、⑤+710×0.74×0.05×12.2/(12.2+18.8)+460×0.76×0.08とされるべきで、これにより計算し直すと、本判決添付別表1(被控訴人主張額欄)に示すとおり、OP土地の価額は、控訴人の算式によると、1平米当たり102万1688円ではなく、100万5756円となる。
(4) 以上によれば、被控訴人主張の土地価額は、B土地、L土地、O2土地の各貸宅地割合の算出方法を誤っているだけではなく、L土地、OP土地については、二方影響加算率又は側方影響加算率の算定も誤っていることになる。
2 亡乙は、従前から所得税、贈与税、地価税、相続税の各申告において、本件各土地には、Aのための借地権が設定されているとの前提で申告をしてきており、控訴人が代表者を務めるAも、本件各土地について借地権が存在することを前提として申告してきている。そして、その間、数回にわたり賃料収入などの税務調査を受けたが、被控訴人は、いずれの機会にも、Aの借地権の存在に関して、疑いを投げかけたことはなかった。しかも、亡乙の相続の直近にされた、亡乙の長女である亡D(平成4年8月25日死亡)を被相続人とする相続税の申告については、借地権の存在を前提として、控訴人がした更正の請求に対して、現地を調査確認し、借地権そのものの価額の鑑定書の追加提出を求めたうえ、平成6年4月28日に、還付請求金額を上回る金額を還付する旨の減額更正さえ行っている。
このような事情のもとで、本件各土地にAのための借地権があるものとしてした申告については、国税通則法65条4項の規定する「正当な事由」があるというべきであるから、本件過少申告加算税の賦課決定は取り消されるべきである。
(控訴人の主張に対する被控訴人の認否、主張)
1 被控訴人の主張する本件相続に係る土地価額及びその算出過程は原判決別表1に記載のとおりである。
2 控訴人の主張1は争う。
本件各土地は、Aのための賃借権の目的となってはいるが、その経緯は次のとおりであって、当該賃借権は、賃貸人においていつでも解約の申入れができ、解約を申し入れた後1年を経過したときに終了する賃借権にすぎないと認められるから、その賃借権の価額は、雑種地の自用地としての価額に、相続税法23条に定める地上権割合(残存期間が10年以下の地上権割合100分の5)の2分の1に相当する割合(100分の2.5)を乗じて計算した金額であるから、本件各土地の相続財産としての価額はこれを控除して計算した金額(雑種地の自用地としての価格×0.975)によって評価することになる(相続税評価通達86(1)、(2))。
(1) 本件各土地を含む柏市南柏の土地については、昭和36年5月11日付けで貸主を亡乙、借主をAとする賃貸借契約書(甲7、以下「当初賃貸借契約書」という。)が作成されたところ、当初賃貸借契約書第1条には、「乙(A)は賃借土地を自営業の目的(賃貸ビル)使用する但し甲(亡乙)に書面による承認を得たときは、使用目的を変更することができる」と記載されていた。その後、亡乙は、Aとの間で、昭和47年2月23日に柏市南柏(面積2393平方メートル)のうちの一部の土地(O2土地とO1土地に相当すると思われる土地)について「土地賃貸借契約公正証書(昭和47年第210号)」(乙10)を作成したが、その内容は、亡乙は、上記土地をAに賃貸し、Aは、これを仮設物置及び駐車場の敷地に使用する、賃貸期間は、昭和47年1月1日から昭和57年12月31日までとし、地代は月額6万9200円とする、というものであった。次に、亡乙は、Aとの間で、昭和47年3月30日にB土地について「土地賃貸借契約公正証書(昭和47年第408号)(乙12)を作成したが、その内容は、亡乙は、B土地をAに賃貸し、Aは、これを仮設物置及び駐車場の敷地に使用する、賃貸期間は昭和47年1月1日から昭和57年12月31日までとし、地代は月額1万8400円とする、というものであった。そして、O2土地とB土地は、相続開始時点までAによって駐車場敷地として使用されてきた。
(2) L土地は、亡乙が直接利用者に対し駐車場の敷地として貸し付けていたもので、亡乙は自らを駐車場の賃貸人であると認識していた。
(3) 控訴人は、昭和50年に亡乙からAの出資20口の贈与を受けたが、その際の出資一口当たりの評価額を計算するに当たり、Aの資産としてL土地の賃借権を計上しておらず、また、B土地及びOP土地に係る賃借権については、その割合を自用地価額の100分の5として計算している。
(4) 以上のことからすると、本件相続開始時点において、本件各土地については、当初賃貸借契約書による建物所有を目的とする賃貸借契約の効力がそのまま存続していたのではなく、B土地及びO2土地については、駐車場等を使用目的とする賃貸借契約に変更され、本件相続開始時点(平成5年12月26日)においては、既に当初の契約期間の満了した賃借権になっていたというべきであるし、L土地については、本件相続開始時点でAが駐車場として使用していたとすれば、それは精々契約書の作成されていない契約期間の定めのない賃貸借契約であったというほかない。
(5) なお、控訴人主張のとおり、L土地とO2土地について、二方影響加算率、側方影響加算率による減額調整を行ってみても、上記の被控訴人主張の貸宅地率を前提とする限り、本判決添付別表2の価額欄に記載のとおり、L土地の評価額は、11億7502万8965円、OP土地の評価額は、22億9506万5832円となるにすぎず、これによった場合は、相続に係る土地等の価額の総額は154億3865万9798円となり、これから算出される控訴人の納付すべき税額は、本判決添付別表3に示すとおり94億5984万円となる。そうすると、本件相続税更正に係る控訴人の納付すべき相続税額は94億3786万8600円であるから、上記税額の範囲内でされた本件更正は適法である。
3 控訴人の主張2は争う。
控訴人が行った申告が過少であったことに正当な理由はない。
第3 当裁判所の判断
1 控訴人は、本件相続財産中のB土地、L土地及びO2土地の各土地(本件各土地)について、被控訴人が主張する土地価額の算定方法には、貸宅地の控除割合を誤った違法があると主張するので、まず、この点について検討する。
(1) 当事者間に争いのない事実等及び甲第1号証の1ないし7、甲第6、7号証、38、39号証、乙第6ないし12号証、13号証の1、2並びに弁論の全趣旨によれば、①B土地は、柏市南柏の土地の一部及び同の土地からなる西側及び北側で各6メートルの市道に接面した面積564.54平方メートルのほぼ長方形の土地であり、本件相続開始時には、Aに賃貸され、アスファルト敷で、月極及び時間貸しの有料駐車場として使用されていたこと、L土地は、同市南柏の土地の一部、面積1171.38平方メートルの土地であり、本件相続開始時には、Aに賃貸され、アスファルト敷で、時間貸しの駐車場として使用されていたこと、O2土地は、同市南柏の土地のうちの、原判決別紙利用図のO・P土地の一部、面積754.89平方メートルの土地であるが、本件相続開始時には、Aに賃貸され、アスファルト敷で貸駐車場として使用されていたこと、②Aは、昭和36年5月11日に設立された不動産賃貸を業する有限会社で、設立当初から、控訴人が代表取締役に就任しているが、設立の日に、亡乙との間で、亡乙が所有する土地の一部(本件各土地を含む。)を、期間50年、地代坪20円、使用目的を賃貸ビル敷地とし、権利金の額を1000万円と定めて賃借する旨の賃貸借契約を締結したこと、③Aは、昭和36年から42年ころにかけて、上記賃借土地の一部(A、F、N、Eの各土地)に順次、店舗賃貸用のビルを建築したこと、④その後、亡乙とAは、昭和47年2月23日付けで、柏市南柏(2393平方メートル)のうち、6メートル公道に面した西南の部分1731.85平方メートルの土地(O1土地及びO2土地に相当すると考えられる。)について、亡乙が、Aに対して、使用目的を仮設物置及び駐車場敷地、期間を昭和47年1月1日から同57年12月31日まで、地代を月額6万9200円として賃貸する旨の土地賃貸借契約公正証書を作成し、次いで、昭和47年3月30日付けで、柏市南柏462平方メートルの土地(B土地の一部に相当すると考えられる。)について、亡乙が、Aに対して、使用目的を仮設物置及び駐車場敷地、期間を昭和47年1月1日から同57年12月31日まで、地代を月額1万8400円として賃貸する旨の土地賃貸借契約公正証書を作成したほか、建物が存在する各土地について、A土地、N土地に相当すると思われる土地については、それぞれ、使用目的を鉄筋コンクリート造店舗敷地、賃貸期間を満50年間とする各土地賃貸借契約公正証書を、F土地、E土地と思われる土地については、それぞれ、木造建物敷地として、賃貸期間を満30年間とする各土地賃貸借契約公正証書を作成し、その他、亡乙所有の柏市南柏に所在の他の土地についても土地賃貸借契約公正証書を作成したこと、⑤亡乙は、昭和54年分、同55年分の所得税の確定申告において、L土地について、自らが賃貸人となって一般人向け駐車場として使用し、収益をあげている旨の申告をしていること、⑥B土地、L土地、O2土地は、本件相続開始時まで駐車場として使用されてきたこと、以上の事実を認めることができる。
以上の事実によれば、本件各土地のうち、B土地及びO2土地については、本件相続開始時には、上記各公正証書により、亡乙を賃貸人とし、Aを賃借人とし、使用目的を駐車場敷地とする賃貸借契約が設定されていたものと認めるのが相当であり、L土地については、昭和56年以降において、亡乙からAに駐車場敷地として賃貸されたもので、その契約書が存在しない以上、期間の定めはなかったものとみざるを得ない。
(2) 控訴人は、上記各公正証書は、Aのテナントが空き地に勝手に物置などの簡易な構造物を建てた場合に、Aが当事者となって対処できるようにするために形式上作成されたもので、昭和36年にした当初賃貸借契約書の内容を変更したものではない旨主張し、甲第39号証(控訴人作成の陳述書)には、その旨の記載があるが、上記控訴人の陳述書は、控訴人が、賃借人であるAの代表者であるにもかかわらず、従前の賃貸借契約と異なる内容の公正証書を作成した意図を合理的に説明するものではないから、到底採用できない。しかも、本件証拠上、当時、Aが賃貸している建物の賃借人が、本件各土地上に物置等を設置して、Aが対処に苦慮したとか、公正証書を作成することによって、AとAからの建物賃借人との間の交渉が容易になった等の事情は全くうかがわれない上、A所有の建物が所在する土地(A土地、F土地、E土地、N土地)についても土地賃貸借契約公正証書が作成されているところ、これらの土地について公正証書を作成することがテナント対策に必要であったとは考えられない。そうすると、上記各公正証書が存在するのにもかかわらず、そのとおりの内容の賃貸借契約が締結されたものではないとする控訴人の主張は、採用できず、他に、上記認定、判断を覆すに足りる事情は見当たらない。
(3) してみると、本件各土地については、A設立時における建物所有を目的とする賃貸借契約の存否にかかわらず、昭和47年以降に至って、亡乙とAとの間で、使用目的を駐車場等とする賃貸借契約が締結されたもので、しかも、B土地、O2土地についての契約締結当初の契約期間は満了していたし、L土地の賃貸契約は期間の定めはなかったから、いずれも賃貸人において、いつでも解約申入れをすることができ、解約申入れから1年を経過したときに終了することになる(民法617条)。
したがって、本件各土地(いずれも地目が雑種地であることは、弁論の全趣旨により認める。)の相続財産としての価額は、その雑種地の自用地としての価格に相続税法23条に定める法定地上権割合(残存期間が10年以下の地上権割合100分の5)の2分の1に相当する割合(100分の2.5)を乗じて計算した金額を控除して計算した金額(雑種地の自用地としての価格×0.975)によって評価すべきことになる(財産評価基本通達86(1)、(2))。
そうすると、B土地について貸宅地割合は0.975を採用した上で、B土地の価額を算出すると、本判決添付別表2の価額欄記載のとおり、4億2259万9852円となる。
(4) 次に、控訴人は、被控訴人主張のL土地、OP土地の二方影響加算率、側方影響加算率に誤りがあると主張する。なるほど、被控訴人の主張に係る原判決別表1の計算と原判決別紙利用図によると、L土地の二方影響加算率の算式は、K土地の存在による減価要因を十分評価していない点において、また、OP土地の側方影響加算率の算式は、N土地の存在による減価要因を十分評価していない点において、いずれも甲第54号証の質疑応答に反する結果となっている。
(5) そこで、L土地及びOP土地について、貸宅地割合は、0.975を採用した上で、控訴人主張の二方影響加算、側方影響加算による算式によって減額調整をして各土地の価額を算出してみると、本判決添付別表2の価額欄記載のとおり、L土地の価額は、11億7502万8965円、OP土地の価額は、22億9506万5832円となり、相続に係る土地の価額は、合計154億3865万9798円となり、本判決添付別表3に記載のとおり、そのうち控訴人の取得した土地の価額は合計144億8951万0030円となる。そして、これを前提として本件相続税について検討するに、本判決添付別表3の区分欄のうち、本件各土地の価額欄以外の加算事由、減算事由及びその額については争いがないから、これに従って計算すると、本件相続に係る課税価格は156億9770万8000円、控訴人の課税価格は145億3385万4000円、控訴人の納付すべき税額は94億5984万円となることが計算上明らかである。
してみると、上記納付すべき税額は、本件更正における納付すべき税額94億3786万8600円を上回るから、本件更正は適法である。
2 過少申告加算税について
控訴人は、亡乙が所得税、贈与税、地価税、相続税を申告するに際しても、Aが法人税を申告するに際しても、本件各土地についてはAの借地権が存在しているとして申告をし、税務調査も受けていたから、控訴人が本件相続税の申告にあたり、借地権の存在を前提として申告したことには、国税通則法65条4項の規定する「正当な理由がある」旨主張する。
そこで検討するに、甲第25、26号証及び弁論の全趣旨によれば、亡乙は、被相続人亡D(平成4年8月25日死亡)に係る相続税の申告に際して、Aが本件各土地を含む原判決別表1のAないしT記載の土地に借地権を有しているとの前提でAの出資を評価して申告したこと、その後、亡乙は、Aの有する借地権の評価が過大であることを理由として更正の請求をしたこと、被控訴人は、本件各土地にAの借地権が存在することを前提として、減額更正をしたことが認められる。しかし、これは、被控訴人が、Aの借地権を積極的に認定したものではなく、亡乙のそれを前提とする申告を前提として、過大申告を是正したものにすぎない。また、その余の申告等についても、被控訴人が本件各土地を含む土地について、Aが借地権を有することを積極的に認定して、更正等をした事跡は見当たらない。しかも、本件証拠上、控訴人その他の関係者が、本件相続税に係る紛争以前に、被控訴人に対し、上記各公正証書の存在を明らかにしたと認めるべき資料はなく、したがって、被控訴人が、本件各土地について上記各公正証書が存在することを知った上で、借地権の残存期間について十分調査、検討して、上記減額更正に及んだとか、その他の税務申告についての調査をしたと認めるに足りる証拠はなく、かつ、Aの代表者である控訴人は、上記各公正証書の存在により、本件各土地については、Aは建物所有を目的とする借地権を有しておらず、駐車場等を使用目的とする賃借権を有しているにすぎず、しかも、その賃借権にしてみても、当初の契約期間が既に経過していることを知っていたとみざるを得ないのであるから、仮に控訴人において、Aの賃借権の残存期間が10年を超えるものであると誤信していたとしても、その判断の誤りが真にやむを得ないものということはできない。したがって、控訴人が本件相続に係る税額の計算をするについて、本件各土地の借地権の残存期間を10年を超えるものとしたことに、国税通則法65条4項の正当な理由があったとは認められない。
そうすると、本件相続税更正に係る納付すべき相続税額94億3786万8600円から、確定申告書に記載されている控訴人の納付すべき相続税額65億5597万5300円を控除した税額28億8189万円(国税通則法118条3項の規定により、1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に、同法65条1項の規定により、100分の10の割合を乗じて算出した金額である2億8818万9000円を過少申告加算税として賦課決定したことは適法である。
3 以上の次第で、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森脇勝 裁判官 綿引穣)
裁判官 中野信也は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 森脇勝
別表1
二方路線影響加算率の減額後調整の土地評価
file_4.jpg(RAR) itt = FD =) 30 FGMEHS, —FRAW MRTG LER OMS 32 SEEMING (OUENEREERM) Ix0. 97 0,00 ERR) 155 (RE RRRES) 70 30 750,000 (LSE ARE) x O91 (REFERRER) x 0.00 (BEIM) 0,784 50,000 IEA) OSS (RFT ERRIES) < 0.05 (HENNE) 0.878 xe x eee x 1, 26, 62845, ae x 1196, 099,774 RAEI) 3, 00 CER) > TS RTE RERES 770,200 780,000 (BSS8EE) x OO (RTERIRRES) x 0.08 (OLRM) 56,784 650, 000 (MiRRAALH) x 0.95 (RATS NGA) x RT 12, 245] # 1,009,229 mens 1,029,209 x 0m CEEMER) 18,228 fe seeiee 1008, 236 X U7 38a _ = 1.205 157,912 Eft 1,206,157, 918 ots (reienie) 16,08 TE (REAR ASEH 21, 064, 809 GRBHR) 3, 00 ER) TE RTE RRRES 710, 000 (RAR) x 0.74 (RATE BES) X 0.05 (ARMOR) 40, 000 (BL SHR) % O.TO(REERIES) x 0.00 GIEEIONE) 520,000 EERE) O90 (RFT EGIENES) x _ 0.05 (HEINE) 26,950 # 1,688 mens 1,021,088 x 0.99 CREE) ont an secre Nou.a7t X 2338, 900 2365, £2, Eta 2,365 620,554 x 0.975 (eesenia) 2,305,675, 040 EEA) 990, 000 GERRARD) X 0.95 (RTS MEMES) ‘940, 500] Tio, 000 (81538848) On RT eeES) x CSOT 10,338 460, 000 (URIBE) x 0.76 (RITE MER) x 08 (RR MORE) 27, 968) 550, 000 (RRR) x 0.98 (RATS MIEMES) X — 0.05 (REDON) 26, 950) # 1, 05,756 caer 1,005,758 x 09 (KEES) 9 eieie (01, PROWMNREE X tseuint (01, FP) = Leon27ia11 semis (02) lw X Tob sont (020%) 7s 612,463 bats 2, 353, 913, 674 xi 5 >) _2, 295, 065, 832 OP-ENE CHER AERA —HRAPAIPD) 11, 609, 208 Otte: FD Loe OP Ee aT iran Hine 1,196, 099, 74 [ 2,306, 675, 040, wei AS | ar 1,175, 028, 965 | 2, 296, 065, 892 GR HE O38) "421,064,500 | ati, 609, 208 | 32,674,017
別表2
土地等の価額の明細
file_5.jpg(6g: FD anaes TORO 716 ETT) 585, 074 9, 119, 768
別表3
file_6.jpg(05 86F 865 (009 66 ‘860 “OT BRoema 000 82 ‘804 "TT 000 226206 'e (P XRD OS VRBO E) 000 ‘802 ‘T19'St Piz cenene ens We wT T ana 000 SOL TTS ST (21) Brera (0007000798 Ba SH 21S 00098 "C01 000-58) 169° POET T YBHOWOE Ya aa cal PDI (el ah) nae BOS WAM MMA ETE or 809 786 98 1076 01 190° FL (000 OFS 686 OL 106 e1e OT GHEE) aaa Nw 1170 997 196 591 118660" FT FI 66 ‘G9 (096 7660 ‘08T BEASEABPRAL Ei ‘362 "689 "8596 ee 609 6 PIP 191 8D 981 Fes ‘9796 009 366 "860 OF | BMNMONT HOw 1 FMR (000 "089 FS8 "FT (000 7719999 FT ‘o8z 209 FT 000 FS8"c91 (000 38 ‘ee9°FT Ever "089 180 FT (or 729999 FT 08 TIF 998 E97 T 661 98 'eE9 FT 01901 EUEEied 962 "18991 86218991 19ST 862 189 'STT 862 89. Na) eR 669 aie 6a F 0 ale 86: Ha z19 "Scr OT zig St OT 0 a1a'sc0 OT Ea TOL999°ST LOL 0 Sa SERV (oor S6r or gat Se 0 or ser Se Pare Tate 01 gee esc 280 FT Tv 998 OTT Lar ea ero FT 06 T6e “CTS (HD, {000 7000 "007: (00 70007 100 "000 "002, (0000007007 0 HEM 696, 6FS CE 696 6FS CE 6 LS 0 696 6FS Ce 656 OF TE BeoWox 1g "600 "98 1g "600 98 200 98 0 1S "£00 98 51g £00 98 + Se 996 "L168 8ST 996 216 8ST 0 Zo 18 8ST 70 1 8ST Seva Por ‘ces 107 vor zee 1 0 Tana 81102 Ew SL 689 6E Fo 00L FT BSL 68968 GewNLEe iv0 at was FT 891 '6FT 6F6 ‘60 01g ‘6aF FT 86 659 SEF ST Vas YaHOROE Peres Dry S71 =e