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東京高等裁判所 平成16年(行コ)9号 判決 2004年4月27日

控訴人(原告) 株式会社A

同代表者代表取締役 甲

同訴訟代理人弁護士 田中平八

同 田中禎人

被控訴人(被告) 荏原税務署長

渡邉久志

同指定代理人 植田浩行

同 引地俊二

同 郷間弘司

同 木下茂樹

同 宮前仁

主文

1  本件各控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1  控訴の趣旨

1  平成16年(行コ)第9号事件

(1)  原判決(平成15年11月27日言渡しの判決。以下「原判決(1)」という。)主文第2項を取り消す。

(2)  被控訴人が平成12年11月28日付けで控訴人に対してした控訴人の平成9年8月1日から平成10年7月31日までの事業年度の法人税に係る更正処分並びに平成8年8月1日から平成9年7月31日まで及び同年8月1日から平成10年7月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る各更正処分をいずれも取り消す。

2  平成16年(行コ)第12号事件

(1)  原判決(平成15年12月25日言渡しの判決。以下「原判決(2)」という。)を取り消す。

(2)  被控訴人が平成12年11月28日付けで控訴人に対してした控訴人の平成8年8月1日から平成9年7月31日までの事業年度の法人税に係る更正処分を取り消す。

第2  事案の概要

1  本件は、控訴人が、被控訴人が平成12年11月28日付けで控訴人に対してした控訴人の平成8年8月1日から平成9年7月31日までの事業年度の法人税に係る更正処分(以下「本件更正処分(1)」という。)及び同年8月1日から平成10年7月31日までの事業年度の法人税に係る更正処分(以下「本件更正処分(2)」という。)並びに平成8年8月1日から平成9年7月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る更正処分(以下「本件更正処分(3)」という。)及び同年8月1日から平成10年7月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る更正処分(以下「本件更正処分(4)」という。)はいずれも違法であると主張して、被控訴人に対し、本件更正処分(1)ないし(4)の各取消しを求めた事案である。

これに対し、被控訴人は、本件更正処分(1)は、処分性を欠き、また、本件更正処分(2)ないし(4)はいずれも納付すべき税額を減額するものであって、控訴人にとって不利益な処分ではないから、本件更正処分(1)ないし(4)の各取消しを求める本件各訴えは、いずれも不適法な訴えとして却下されるべきである旨の本案前の答弁をした。

2  原判決(1)は、本件更正処分(1)の取消しを求める本件訴えについては、被控訴人の本案前の主張に理由がなく、適法であるが、本件更正処分(2)ないし(4)の各取消しを求める本件各訴えは、いずれも不適法な訴えであると判示して、これらをいずれも却下した。 また、原判決(2)は、本件更正処分(1)は適法であると判示して、控訴人の請求を棄却した。

そこで、控訴人が、原判決(1)及び(2)をいずれも不服として各控訴の申立てをした。

3  本件更正処分(1)ないし(4)の各取消しを求める本件各訴えが適法な訴えであるか否かに関する法令の定め、前提となる事実、当事者双方の主張及び争点は、当審における控訴人の主張を後記のとおり付加するほかは、原判決(1)の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし4(原判決(1)の2頁11行目から9頁8行目まで)記載のとおりであり、控訴人の本件更正処分(1)の取消請求に理由があるか否かに関する法令の定め、前提となる事実、当事者双方の主張及び争点は、当審における控訴人の主張を後記のとおり付加するほかは、原判決(2)の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし4(原判決(2)の2頁10行目から6頁11行目まで)記載のとおりであるから、これらを引用する。

第3  当裁判所の判断

1  当裁判所も、本件更正処分(1)の取消しを求める本件訴えは適法な訴えであり、本件更正処分(2)ないし(4)の各取消しを求める本件各訴えは、いずれも不適法な訴えであると判断する。その理由は、次の2の(1)において当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決(1)の「事実及び理由」欄中の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決(1)の9頁10行目から11頁24行目まで)に説示するとおりであるから、これを引用する。

また、当裁判所も、控訴人の本件更正処分(1)の取消請求には理由がないと判断する。

その理由は、次の2の(2)において当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決(2)の「事実及び理由」欄中の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決(2)の6頁13行目から7頁23行目まで)に説示するとおりであるから、これを引用する。

2  当審における控訴人の主張及びこれに対する判断

(1)  控訴人は、まず、本件更正処分(2)ないし(4)は、控訴人の重要な営業利益を否認するものであって、憲法第22条により保障されている営業の自由及び憲法第29条により保障されている財産権を侵害する違法なものであるから、これらの取消しを求める本件各訴えは、いずれも適法な訴えである旨主張する。

しかし、本件更正処分(2)ないし(4)は、いずれも納付すべき税額を減額する内容の減額更正処分であるから、控訴人は、本件更正処分(2)ないし(4)の各取消しを求める法律上の利益を有しないといわざるを得ず、上記各取消しを求める本件各訴えは、いずれも訴えの利益を欠く不適法な訴えとして却下を免れないものというべきであり、論旨違憲の主張は、畢竟本件更正処分(2)ないし(4)の違法をいうにすぎないものであるから、採用の限りではない。

したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。

(2)  控訴人は、本件更正処分(1)が違法であるとして縷々主張するが、本件更正処分(1)が適法であることは前記引用に係る原判決(2)の説示するとおりである。なお、控訴人は、本件更正処分(1)が憲法第22条及び第29条に違反する旨主張するが、控訴人の上記主張は、本件更正処分(1)が違法であることを前提として違憲をいうものと解されるところ、本件更正処分(1)が適法であることは前記のとおりであるから、論旨は前提を欠くものといわざるを得ない。

したがって、控訴人の上記主張も採用することができない。

3  以上のとおり、原判決(1)及び(2)はいずれも相当であるから、本件各控訴はいずれも理由がない。

よって、本件各控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 濵野惺 裁判官 小林昭彦 裁判官 長久保尚善)

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