東京高等裁判所 平成17年(く)325号 決定 2005年7月26日
少年 A(昭和63.12.8生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
1 申立て
少年が作成した抗告申立書に記載されたとおりである。
少年は、少年院での生活がきついと思うので、児童相談所一時保護所がいいと言い、中等少年院送致とした家庭裁判所の処分が重すぎて不当であるのでこれを取り消し、児童福祉法の規定による措置にして欲しいというのである。
2 判断
少年は、平成16年6月に今回の事件と同じようなことをして鑑別所に行き、家庭裁判所の審判を受けて、少年も「これからは絶対にやりません」と言って児童相談所長に送致され、○○学園に戻ったのに、それから約半年後に無断外出して今回の事件を起こしたものである。その後平成17年3月に自宅に帰ったが、何回も家出をして、同年5月ころにはまた似たようなことをやっている。
少年が今回やったようなことは、相手の女の子を非常に困らせ、驚かせ、しかも苦痛に感じさせることである。少年は、かわいい女の子と友達になりたい、やさしくしてもらいたいと思って、女の子の身体をつねったり、女の子に抱きついたりしているのかもしれない。しかし、女の子の方は、こんなことをされれば、少年を怖い、嫌いだ、少年から逃げたいと思うだけで、誰一人友達にはなってくれない。少年が、これまで何度もみんなから注意され、自分でも絶対にしないと言ったのに、やめられないということは、今までと同じようなやり方では、少年は自分のいけないところが何も分からないということである。最近少年は、自分の勝手な要求を通そうとして暴力を振るうことが多いが、少年のためを思っていろいろなことをやってくれようとしている人にまで暴力を振るうのだから、どうしようもない。父母も、少年のわがままな行動に振り回されて疲れてしまっている。
少年は、今回は、わがままの通らない環境のなかで、嫌なことでも自分のためになることなら我慢しなければいけないことを勉強し、社会で、父母や弟を始めみんなと仲良く、自分も幸せな気持ちで過ごすにはどうしたらよいのかをよく考えてもらわなければいけない。そうすると、今回は少年を、前のように児童相談所長送致にするわけにはいかない。
そのように考えて、家庭裁判所は少年を中等少年院送致にし、加えて、少年の障害の点を考えて、特殊教育課程を有する少年院に送致して専門的でかつ適切な治療教育を受けられるように勧告しているので、その判断は間違っていない。
3 結論
よって、本件抗告は理由がないので、少年法33条1項後段により棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 原田國男 裁判官 池本壽美子 森浩史)