東京高等裁判所 平成17年(行コ)76号 判決 2005年9月13日
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求める裁判
1 控訴の趣旨
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が,平成16年1月26日付けでした原判決別紙許可目録記載の許可を取り消す。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
主文同旨
第2事案の概要
本件は,原判決別紙許可目録記載の病院開設許可について,開設予定病院の所在地付近で医療施設を開設している法人及び医師並びに同医師らが加入する医師会(控訴人ら)が,許可の取消しを求めた事案である。
原審は,控訴人らを含む一審原告ら全員について,上記許可の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできないとして,訴えを却下した。
事案の概要は,次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,このうち控訴人ら関係部分に限る。)。
1 原判決3頁4行目全部を「(以下の事実は,当事者間に争いがないか,被控訴人において明らかに争わない。)」に改める。
2 同頁20行目「被告は,」から同24行目末尾までを次のとおり改める。
「医療法人徳洲会(以下「徳洲会」という。)は,平成15年9月16日,被控訴人に対し,α病院(所在地東京都昭島市β3737番地ほか,病床数一般病床396床,療養病床104床)の病院開設許可申請をし,被控訴人は,平成16年1月26日,徳洲会に対し,原判決別紙許可目録記載のとおり病院開設許可処分(以下「本件開設許可」という。)を行った。」
3 同5頁6行目「原告医師ら」の次に「(控訴人昭島市医師会及び同北多摩医師会以外の控訴人ら。以下同じ)」を加える。
4 同頁23行目末尾の次に「したがって,医療計画の目的には,過当競争による乱立の弊から病院・医師を保護することも含まれるとみるべきである。そして,医療を提供する体制はある日突然できあがるものではなく,長い年月を経たうえでできあがるものであるから,法の趣旨は,医療計画によってこれまでの医療提供体制を破壊して,一から作るというものではなく,既存の病院・診療所・医師等による医療提供体制を前提としたうえで,これを確保することを目的としたものというべきである。」を加える。
5 同7頁2行目末尾の次に「そして,控訴人らの有するこのような利益は,経済的利益とは別個の医師としての幸福追求権の現れであり,憲法13条が保障するところである。」を加える。
6 同8頁20行目「解することができる。」の次に「また,そもそも基準病床数の制度とは,二次保健医療圏(本件では,北多摩西部保健医療圏)全体の病床数に一定の枠(平成14年度は,4458床)をはめ,それを超える病床を規制するものであって,東京都自らが「既存病床数が基準病床数を超える病床過剰の二次保健医療圏では,原則として,病床の新増設は認められない。」と明言するとおりである。」を加える。
第3当裁判所の判断
当裁判所の判断は,次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,このうち控訴人ら関係部分に限る。)。
1 原判決16頁19行目末尾の次に「そして,上記のような法の趣旨からすると,地域の医療提供体制が長年月を経て次第に形成される場合があるとしても,医療計画がこのような医療提供体制に関わっている既存の病院や医師等の経済的利益を保護する目的を有するものと解することはできない。」を加える。
2 同17頁9行目冒頭から同10行目「あったとしても、」までを「のみならず,」に改める。
3 同頁16行目「いうほかない。」の次に,「なお,控訴人らは,基準病床数の制度とは二次保健医療圏全体の病床数に一定の枠をはめ,それを超える病床を規制するものであると主張するが,上記のとおり,基準病床数は公的医療機関等でない病院開設者等の病院開設許可の要件ではないのであり,医師の経済的利益の保護を目的として定められたとは解されないから,控訴人らの上記主張は採用することができない。」を加える。
4 同頁24行目「他の関連法規」を「関連法令の趣旨・目的」に改める。
5 同頁25行目「関連法規」を「関係法令」に改める。
6 同19頁7行目「さらにいえば、」から同13行目末尾までを削る。
7 同頁24行目「関連法規」を「関係法令」に改める。
8 同20頁1行目「関連規定」を「関係法令」に改める。
9 同頁11行目の次に行を改め,次のとおり加える。
「オ なお,控訴人らは,医療体制の確保により良質かつ適切な医療業務を提供する利益は,経済的利益とは別個の医師としての幸福追求権の現れであり,憲法13条が保障するところであると主張するけれども,憲法13条は,国民の幸福追求に対する権利は,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすると規定するに止まるのであって,同条が控訴人らに対しその主張のような利益を権利として保障していると解することはできない。」
10 同頁12行目「オ」を「カ」に改める。
第4結論
よって、本件訴えをいずれも却下した原判決は正当であるから、本件控訴をいずれも棄却することとし、控訴費用の負担について行訴法7条、民訴法67条1項、61条,65条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大喜多啓光 裁判官 園部秀穗 裁判官 定塚誠)