大判例

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東京高等裁判所 平成2年(ネ)1397号 判決

(一) 建築基準法は、敷地及び建物の効率的な利用のために有効かつ安全な通路の確保を図るとの趣旨から、道路位置指定を受けた私道については同法四三条の建物敷地の接道義務に抵触することのないように、私道の変更又は廃止を禁止し、又は制限する権限を特定行政庁に付与し(同法四五条)、更に、道路位置指定を受けた土地は、それが未だ道路としての形態を有していない場合においても、建築物又は敷地を造成するための擁壁を建築、築造することを禁止し(同法四四条)、私道の敷地権利者の私権の行使に一定の制限を加えている。そして、道路位置指定を受けた土地が現実に道路としての形態を有し、かつその利用が道路敷地権利者の個人的な利用に止まらず、建物の住民の生活道路等として、一般の通行の用に供されるに至っている場合においては、一般人も通行の自由を有するものであるということができる。

もとより、道路位置指定を受けた私道についての右一般人の通行の自由は、前記公法上の規制による反射的利益であって、これによって、私人が私法上の通行権を取得したものと解することはできない。

しかしながら、右反射的利益に基づく通行の自由といえども、道路位置指定を受けた私道を通行するに至った経緯、通行の利用形態等からみて、私人の日常生活上必要不可欠な通行利益と認められるに至ったものは、民法上保護に値する自由権(人格権)として保護されるべきものであり(すなわち、通行の自由権は、道路位置指定の直接の効果として発生するものではなく、通行の自由(自由に通行することができる事実状態)が私人の日常生活上必要不可欠な利益として権利化するに至ったものである。)、私人が右自由権を侵害されたときは、右権利に基づいて妨害の排除をし、かつ、予防することができると解するのが相当である。≪中略≫

(三) 以上認定事実によれば、本件土地は、昭和二二年一二月に旧市街地建築物法七条但書の規定によって建築線の指定がされた後、現行建築基準法付則五項により同法四二条一項五号の規定による道路位置指定があったものとみなされた建築基準法上の道路ではあるが、右建築線の指定以後、道路として築造されたことはなく、一度も一般人の通行の用に供されたことがない現況非道路の土地であり、したがって、一般人はもとより、本件土地の北側に隣接する控訴人土地(二三番二八)を所有する控訴人やその前所有者ら、同地上建物の居住者らにおいても、本件土地を通路として使用したことがないものであって、現状においては、前記反射的利益としての通行の自由すら生じていないものである。そうすると、控訴人の主張にかかる本件土地の通行の自由権を認めることはできないから、これに基づく妨害排除及び妨害予防の各請求はいずれも理由がない。

(越山 赤塚 桐ヶ谷)

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