大判例

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東京高等裁判所 平成2年(ネ)2480号 判決

民事執行法一八八条によって担保権の実行としての競売(不動産競売)に準用される同法八四条は、買受人が売却代金を納付したときは、債権者が一人である場合または債権者が二人以上であって売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行裁判所は売却代金の交付計算書(いわゆる「弁済金交付計算書」)を作成して、債権者に弁済金を交付し(同条二項)、それ以外の場合は配当表を作成して配当を実施すべき(同条一項)旨を規定し、これを受けて民事執行規則五九条一項は前者の場合は弁済金の交付の日(いわゆる「弁済金交付日」)を、後者の場合は配当期日を定めるべき旨を規定しており、債権者が競合する場合の配当等の手続については、各債権者間の債権計算上の利害対立の有無により弁済金交付と配当を区別していることが明らかである。そして、弁済金交付手続と配当手続の具体的な規律関係は、売却代金の分配手続という同質性にもかかわらず、截然と区別され、配当手続においては配当表の内容に対する配当異議の申出及びそれに続く配当異議の訴えという不服申立手続が認められている(同法八九条、九〇条)のに対し、弁済金交付手続においては各債権者間の利害の対立がないことから弁済金交付計算書の内容に対する不服申立ては規定上明らかに認められておらず、本来「期日」における実施も予定されていないのであって、各債権者等に裁判所書記官が弁済金を交付して速やかに手続を完結させることとされているわけである。このような「配当」と「弁済金交付」の振分けは右のような同法八四条一項、二項の規定するところに従って実質的に決せられるのであって、執行裁判所が配当期日として指定したか、弁済金交付の日として指定したかという形式によって左右されるものではないと解すべきであり、本件のように、執行裁判所が配当期日を指定した後、配当表原案の作成過程で売却代金をもって各債権者の債権及び執行費用の全額を弁済してなお剰余金が生ずることが判明したものの配当期日を弁済金交付日に変更することなく、そのまま配当期日を実施した場合であっても、それは配当期日をいわば弁済金交付日に流用するような形で弁済金交付手続が実施されたに過ぎないものと見るべきであり、その実質が弁済金交付である以上、その弁済金交付計算書の内容について債務者等に配当異議の申出及びそれに続く配当異議の訴えという不服申立手続の許容される余地はないと言わざるを得ない。このように解すると配当期日において配当異議の申出をして当該債権者に対する配当の実施を阻止しようと考えていた債務者(不動産競売における所有者)から配当異議の申出による不服申立ての機会を奪うことになるとの懸念も生じないわけではないが、仮に右のような配当異議を許容すると、本来弁済金交付日の到来によって直ちに弁済金の交付を受けられたはずの債権者にいたずらに債権回収の遅延を甘受させることにもなり、既に配当等の段階に至っていることをも考慮すれば、右のような債務者救済の要請を配当異議の申出及びそれに続く配当異議の訴えの提起を許容してまで貫徹させるべきものということはできない。

(枇杷田 塩谷 原)

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