大判例

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東京高等裁判所 平成2年(ラ)584号 決定

二 抗告人は、川崎紙工と、その経営に当たっていた相手方とは、経済的一体の関係にあるものというべきところ、川崎紙工の経理については、商業帳簿が適正に作成されず、また、作成されたものについては、仮払金等の経過勘定科目を不正に利用したり、計上資産の価額を偽って表示するなどの粉飾決算が行われていたものであるから、川崎紙工についてはもとより、相手方についても、破産法(以下「法」という。)三七五条四号に該当する行為があるものというべきであり、したがって、三六六条の九の一号の事由が認められるものとして、免責不許可とすべきである旨主張する。

法三六九条の九の一号の規定によると、破産者に三七五条の罪に該当する行為があると認められるときには、免責不許可の決定をすることができる旨定めているが、当該破産者が会社の経営者(代表取締役)として三七六条の罪に該当する行為をしたことをもって免責不許可の決定をすることを認めた規定はない。ところで、前記認定のとおり、川崎紙工については、商業帳簿を適正に作成せず、仮払金、未収金等の経過勘定科目を不正に利用し、資産の減価償却を行わないなどの方法により約一億円の累積損失が計上漏れとなっていたものであるが、これは、あくまでも川崎紙工における経理処理上の問題であるから、川崎紙工の破産について代表者である相手方が右経理処理に関する破産犯罪責任を問われることがあるとしても、法三七六条の罪が成立するだけであり、もとより、相手方個人の破産について当然に三七五条の罪が成立する余地はない。本件は、相手方個人の破産について相手方の免責が求められている事案であり、川崎紙工の破産についての相手方の責任を問うものではないから、相手方と川崎紙工との経済的一体性が肯認されるからといって、会社の破産についての責任を理由に相手方個人の破産免責を否定することは、法律上許されないというべきである。したがって、相手方について法三六六条の九の一号の事由に該当するとして免責不許可とすることはできない。

(佐藤 岩井 坂井)

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