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東京高等裁判所 平成2年(人ナ)3号 決定 1990年4月28日

主文

本件請求を棄却する。

本件手続費用は、請求者の負担とする。

理由

一  請求の趣旨及び理由

請求者兼被拘束者(以下単に「被拘束者」という。)は、「被拘束者を釈放する。本件手続費用は、拘束者の負担とする。」旨の裁判を求め、その理由の要旨は、別紙人身保護請求書の「請求の理由」(同請求書添付の別紙は省略)及び別紙補充意見書各記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  当裁判所の準備調査の結果によれば、被拘束者は、逃亡犯罪人引渡法の逃亡犯罪人として、中華人民共和国(以下「中国」という。)から日本国に対してなされた仮拘禁の請求に基づき、同法二五条一項による東京高等裁判所裁判官発付の仮拘禁許可状により平成元年一二月三一日福岡刑務所に仮に拘禁され、平成二年一月一一日東京拘置所に移監されたこと、その後、同年二月二二日中国から日本国に対し、同人について引渡しの請求があり、同月二三日東京高等検察庁検察官は、東京高等裁判所に対し、同法八条に基づき審査の請求をするとともに、被拘束者に対し引渡しの請求があった旨を告知し、これにより、被拘束者の仮拘禁許可状による拘禁は、拘禁許可状による拘禁とみなされることとなったこと、同年四月二〇日東京高等裁判所は被拘束者を引き渡すことができる場合に該当する旨の決定をしたこと、同月二三日、法務大臣は、東京高等検察庁検事長に対し被拘束者について中国への引渡しを命じたこと、拘束者は、引き続き被拘束者を拘禁していたところ、被拘束者は、平成二年四月二八日午後〇時四九分、東京拘置所において、右引渡命令に基づき、拘束者から、法務大臣の発した適式な受領許可状を持参する請求国である中国の官憲に引渡されたことが認められる。これによれば、右引渡により拘束者による被拘束者に対する拘束は解かれたものというべきである。

2  そうすると、被拘束者の本件請求は、その主張するところを判断するまでもなく理由のないことが明白であるから、人身保護法一一条一項によりこれを棄却することとし、手続費用の負担につき、同法一七条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 枇杷田泰助 裁判官 塩谷 雄 裁判官 松津節子)

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