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東京高等裁判所 平成2年(行ケ)149号 判決 1992年9月29日

原告

(株)石田衡器製作所(京都市左京区)

被告

特許庁長官

主文

特許庁が、平成1年審判第12165号事件について、平成2年4月5日にした審決を取り消す。

事実

第一当事者の求めた裁判

一、原告主文同旨の判決

第二請求の原因

一、特許庁における手続の経緯

原告は、昭和55年3月25日、名称を「分散供給装置」とする考案につき、特許庁に対し、実用新案登録出願をしたところ、昭和62年9月14日、出願公告(実公昭62―36097号)がなされたが、昭和62年11月13日に登録異議申立があり、平成1年3月24日、拒絶査定がなされたので、同年7月27日、審判を請求した。

特許庁は、右請求を平成1年審判第12165号事件として審理の上、平成2年4月5日、「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決をした。

二、実用新案登録請求の範囲第1項の記載

装置中央上方から投入される被供給物を該装置中央から外方へと分散させる円錐形状の傾斜面を有する1個の分散テーブルと、該分散テーブルを中心にその周囲に放射状に配列されて、該分散テーブルから供給される被供給物をさらに外方へ供給する複数の供給トラフとを備えているとともに、上記分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されていることを特徴とする分散供給装置。

三、本件審決の理由の要点

1. 本願考案の要旨は、前項記載のとおりである。

2. 各引用の例の記載内容

(一)  実公昭49―6104号公報(引用例1)

同引用例には、装置中央に山形頂部を有する傘形の、電磁吸着装置により振動する振動円板と、振動円板の周囲に各々連接する数個のホッパーが配置され、振動円板の振動により一定層化にされると共に辷動落下する被供給物をホッパーで受け、ホッパーの下端に設けられた計量装置の作動により振動円板の振動が制御される粒状粉状物質等の定量分割装置が記載されている。

(二)  特開昭50―85067号公報(以下「引用例2」という。)

同引用例には、振動ボール・ホッパー・フィーダを中心にその周辺に放射状に配列されて、該振動ボール・ホッパー・フィーダから供給される部品(被供給物)をさらに外方へ供給する複数の送路シュートを備え、該振動ボール・ホッパー・フィーダと送路シュート部とが、それぞれ個別に駆動される振動発生装置または直進型振動フィーダに連係されている部品整列装置が記載されている(別紙図面(三)参照)。

3. 対比

(一)  引用例1の山形頂部を有する傘形の振動円板は、本願考案の円錐形状の傾斜面を有する分散テーブルに相当するものであり、かつ被供給物である部分が振動円板の中央から外方へと辷動落下することは、本願考案の分散に相当するものと認められるから、両者は、装置上方から投入される被供給物を該装置中央から外方へと分散させる円錐形状の傾斜面を有する1個の分散テーブルと、該分散テーブルが駆動制御される電磁振動装置に連係されている点で一致し、分散テーブルを中心にその周囲に放射状に配列されて、該分散テーブルから供給される被供給物をさらに外方へ供給する複数の供給トラフを備え、右分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点を備えるのに対し、引用例1にはそれらの点が記載されていない点で一応相違する。

(二)  よって、右相違点について検討すると、本願考案の供給トラフは分散テーブルから外方へ被供給物を供給するものであって、それ以外の意義は格別認められない。

(三)  そのようにみると、引用例2に記載されている振動ボール・ホッパー・フィーダから外方へ被供給物を供給する送路シュート部は、本願考案の供給トラフに相当し、該送路シュート部は被供給物を搬送するために直進型振動フィーダに直結されて、直進型振動をするものであり、その振動は振動ボール・ホッパー・フィーダの振動とは異なることから、送路シュート部と振動ボール・ホッパー・フィーダが、それぞれ個別に駆動する電磁振動装置に連係されることは明らかである。

(四)  そして、本願考案において、「それぞれ個別に駆動制御される」の意味は、「そそれぞれ個別に駆動される」と同程度の意味であって、請求人(原告)が審判請求の理由中で主張しているような組合せ秤の計量値と関係づけられた信号によって制御されるという意味の駆動制御とは認められない。また、右主張は実用新案登録請求の範囲の記載に基づかない考案の要旨外の主張であって認めることはできない。

(五)  してみれば、本願考案は、引用例1記載の装置に引用例2記載の複数の送路シュート部を組み合わせて、当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。

四、審決を取り消すべき事由

1. 審決の理由1の本願考案の要旨の認定は認める。但し、同要旨認定のうち、「分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」との部分は、「分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」場合のほか、「各供給トラフとの間でそれぞれ駆動制御される電磁振動装置に連係されている」場合も含むものとして解釈すべきである。同2は認める。同3の(一)及び(三)は認め、同(二)、(四)及び(五)は争う。

2. 審決は、本願考案の要旨の解釈を誤った結果、本願考案と引用例1に記載された考案(以下「引用考案1」という。)との相違点を看過した違法がある。

本願考案の要旨の「分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される」とある部分は、「分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」という趣旨と「各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」という趣旨とを含むものとして解釈すべきところ、審決は、審決の理由の要点3(一)摘示に係る本願考案と引用考案1の相違点について、「供給トラフは分散テーブルから外方へ被供給物を供給するものであって、それ以外の意義は格別認められない」としているが、このことは、審決が本願考案の要旨の「分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」との部分を「分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」の趣旨とのみ理解してこの点のみを引用例1との相違点として捉え、右記載に含まれる「各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」という点も引用例1との相違点であることを看過したことを示している。

「各供給トラフが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」との部分の技術的意義について検討すると、各供給トラフが「それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」との記載は、その文言から「各供給トラフは、各供給トラフ毎に電磁振動装置に連係されていて、これらはそれぞれ対応する電磁振動装置によって個別に駆動制御されるもの」というものであり、それは(1)各供給トラフは各供給トラフ用電磁振動装置によって個別に駆動され、さらに、(2)各供給トラフ用電磁振動装置は、各供給トラフを他の供給トラフとは無関係に、ある目的に適合するように、すなわち分散テーブルから供給される被供給物に関して決められた条件に基づいて、それぞれ個別に駆動して、被供給物を外部に供給するようになっているということである。これは文言中の「駆動制御」なる字句は「駆動」と「制御」とが結合したものであるということによるものである。すなわち、通常「駆動」とは「機械などを仕事をさせるために動かす」という意味を持ち、「制御」とは「ある目的に適合するように対象となっているものに所要の操作を加えること」ということから、駆動制御は「ある目的に適合するように対象となっている機械などを仕事をさせるために動かすこと」を意味するものであり、このことから「駆動」と「駆動制御」とは明らかに相違するものであり、本願考案の供給トラフの動作は「分散テーブルから供給される被供給物を各供給トラフが同時に無条件で外部に供給するもの」のみに限られるものではない。本願考案の供給トラフと電磁振動装置との関係について、実用新案公告公報(甲第1号証)に記載された本願考案の実施例を参照して説明すると、供給トラフ3は複数あってこれらの供給トラフ3は、各供給トラフ3毎にそれぞれ別個の電磁振動装置7に連係されて、ある目的に適合するように、すなわち、その状況の変化に適応できるようにそれぞれ独立してそれぞれの電磁振動装置7によって駆動されるものである。このことは右公報の第5欄第2行ないし第8行の「各供給トラフ3はプールホッパー14が被供給物を排出して空になった時、秤量機13からの信号でもって振動を開始し、各トラフ3毎に設けたタイマーにより一定時間だけ振動するようにしてあり、振動時間は各トラフ3毎に異ならせても良いし、同一時間としてもよい。」及び同欄第31行ないし第35行の「組合せ選択されなかった計量ホッパー15内の被供給物は排出されず、次回の組合せ演算に再度その重量値が使用される。従って、該当プールホッパー14は開閉されず、又、該当供給トラフ3も振動を行わない。」等の記載に徴して明らかである。すなわち、各供給トラフ3は他の関係状況に応じてその振動の開始時期、終了時期、時間をそれぞれ異ならせることができ、また異ならせるのである。これが「各供給トラフが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」ことのもつ意味である。

これに対して、審決が本願発明の供給トラフと同等であるとして引用した引用例2記載の考案(以下「引用考案2」という。)の送路シュート部については、審決は、本願考案要旨の「分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」とある部分のうち、「分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動される電磁振動装置に連係されている」点において、引用考案2の送路シュート部が本願考案の供給トラフに相当するとしたものであるが、引用考案2の送路シュート部はそれらに共通の1個の直進型振動フィーダが連係されているものであって、各送路シュート部毎に別個の直進型振動フィーダが連係されているものではない。したがって、引用例2の各送路シュート部は本願考案の供給トラフのように、他の関連状況に応じて各送路シュート部毎にその振動の開始時期、終了時期、時間をそれぞれ異ならせることができるものではなく、引用考案2は、本願考案と引用考案1との相違点である「各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」点を開示するものではない。

このように、審決は、本願考案の要旨の解釈を誤った結果、引用考案1との間に「各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」という点において相違することを看過し、これに対する判断を示さなかった違法がある。

3. 被告は、本願考案の「各送路シュート部を個別に駆動されるようにすること」は、「通常採用されるもの」、又は「周知である」と主張し、立証のために乙第2号証ないし第4号証を提出しているが、審決においてはかかる点についてはなにも説示するところがなく、また証拠の提示もされていないのであるから、かかる主張及び立証は許されない。

第三請求の原因に対する認否及び被告の主張

一1. 請求原因1ないし3は認め、同4は争う。但し、審決が認定した本願考案の要旨のうち、「分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される」とあるのは、「分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」という趣旨と「各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」という趣旨を含むものとして解釈すべきものであること、引用考案2が「該フィーダ」と「送路シュート部」との間でそれぞれ個別に駆動され、各送路シュート部間でそれぞれ個別に駆動されるものでないことは認める。

2. 被告の主張

(1)  審決の理由の要点3の(四)において、「本願考案において、『それぞれ個別に駆動制御される』の意味は、『それぞれ個別に駆動される』と同程度の意味であって、組合せ秤の計量値と関係づけられた信号によって制御されるという意味の駆動制御とは認められない。」とした趣旨は次のとおりである。

本願考案において、分散テーブルと各供給トラフとがそれぞれ個別に駆動されるものである。なかでも、分散テーブルと供給トラフとが個別に駆動される点は、本願考案において第一義的に重要な点である。各供給トラフがそれぞれ個別に駆動される点については、組合せ秤において重要な構成となるものの、本願考案においては、分散テーブルによって分散供給された被供給物を、さらに外方へ供給するために、複数の供給トラフが設けられているに過ぎず、第二義的な意味しかもたない。

したがって、引用考案2は、送路シュート部と振動ボール・ホッパー・フィーダが、それぞれ個別に駆動する電磁振動装置に連係されることを開示するものであるが、そこに示されたような搬送装置において、本願考案の供給トラフと対応する送路シュートを複数個配置してなるものにあっては、各送路シュートを必要に応じて駆動、停止し得るようにする場合に、各送路シュート部にそれぞれ別個に駆動部を設けるか、又は共通の駆動部を設けるかは任意に選択できることであり、むしろ、各搬送シュート部について個別に駆動されるようにすることは通常採用されるものであって、引用考案2に開示されていないとはいえ、格別なものではない(乙第2ないし第4号証)。

また、「それぞれ個別に駆動制御される」の意味は、「それぞれ個別に駆動される」と同程度の意味とした点については、「制御」という場合、一般的には、「ある目的に適合するように対象となっているものに所要の操作を加えること」を意味する(乙第1号証「改訂自動制御便覧」112頁右欄12行ないし14行)。してみると、本願考案においては、制御の仕方が実用新案登録請求の範囲に限定がない以上、本願考案における「制御」とは、分散テーブルから供給される被供給物を外方へ供給するために、分散テーブルと各供給トラフとをそれぞれ個別に駆動(振動)することと同じであり、駆動制御といっても単に個別に駆動し得る程度の駆動と差がないものであるから、「駆動制御」も「駆動」も同じ意味に解したものである。

(2)  原告が実用新案公告公報(甲第1号証)記載の実施例に基づいて、「各供給トラフは他の関係状況に応じてその振動の開始時期、終了時期、時間をそれぞれ異ならせることができ、また異ならせるのである。これか『各供給トラフが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている』ことのもつ意味である」と主張しているが、これは「駆動制御」の意味を、組合せ演算を行なう実施例レベルでとらえているにほかならず、甲第1号証第6欄12行16行に、本願考案が組合せ演算を行わない場合にも適用し得ると記載されていることからしても、「駆動制御」の意味を実施例レベルに限定すべきでない。したがって、本願考案の要件である「駆動制御」は組合せ秤の計量値と関連づけられた信号によって制御されるという意味での駆動制御に限定されないものである。

理由

二、取消事由について判断する。

1. 審決が認定した本願考案の要旨のうち、「分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される」との部分は、「分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」場合と「各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」場合を含むものであると解釈すべきことは当事者間に争いはない。

2. 引用例1及び2の記載内容が審決の理由の要点2のとおりであり、本願考案と引用考案1との一致点及び相違点で同3(一)のとおりであることは、当事者間に争いがない。しかして、相違点として摘示された「分散テーブルと各供給トラフとが、それぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」点は、前記のとおり、「分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」場合と「各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される」場合を含むものであることは当事者間に争いはないから、この2つはいずれも本願考案の構成要件であるというべきである。したがって、本願考案の進歩性を否定するためには、いずれの要件についても先行する公知技術の開示ないし示唆のあることが必要であることはいうまでもないところである。しかして、審決の理由の要点3(三)摘示の引用考案2による開示が分散テーブルと供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動される電磁振動装置に連係される点に関する開示であり、各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動される電磁振動装置に連係される点に関する開示でないことは、当事者間に争いがないところであって、審決には、各供給トラフとの間で個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点についてはこれを開示ないし示唆する先行の公知技術はなんら示されていない。

審決は、本願考案と引用考案1との相違点について、「よって、上記相違点について検討すると、(イ)本願考案の供給トラフは分散テーブルから外方へ被供給物を供給するものであって、(ロ)それ以外の意義は格別認められない。」と判断している。このうち、(イ)の部分は、分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点の技術的意義について述べたものであることは、その摘示自体から明らかであるが、(ロ)の部分は、(a)分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点のみについての判断で、(イ)に述べた以外に技術的意義はないものと判断し、他の相違点である各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点については全く触れていないのか、はたまた、(b)相違点の一つである分散テーブルと各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点について(イ)で判断したことを前提として、他の相違点である各供給トラフとの間でそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点について格別意義がないと判断したのか、必ずしも明らかでないが、(ロ)の部分において、格別の技術的意義がないことについて何ら具体的な説明を加えていないところから推すと、審決は(a)の意味で判断したものと認めるのが相当である。そうであれば、審決は相違点を看過し、これに対する判断を遺脱したものというべきである。(もし、(b)の意味であれば、前記のように、いやしくも各供給トラフとの間で個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点が本願考案の構成要件であると解せられる以上、その点の進歩性を否定するためには、先行する公知技術を示すか((引用例2にこの点の開示のないことは被告も認めるところである。))、公知技術を示すまでもなく技術的に全く無意味であると考えれば、その旨の具体的判断を示すべきであるが、そのいずれもがなされていないし、この点について拒絶理由を通知したことを認めるに足りる証拠もないから、相違点に対する判断を遺脱したものというべきである。)

3. 被告は、本願考案において、各供給トラフとの間で個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている点は二義的なものにすぎないと主張し、原告も、各供給トラフの個別の駆動制御される電磁振動装置に連係されている点について専ら実施例に基づいて主張しているが、そうであっても右連係が本願考案の構成要件と解せられる以上、本願考案に係る出願を拒絶するためには、この点について、拒絶理由を示し、審決において診断を示すことが必要である。本件においてこの点に欠けるところがある以上、審決は違法なものというほかない。

また、被告は、引用考案2のような搬送装置において、本願考案の供給トラフに相当する送路シュートを複数配置してなるものにあっては、各送路シュートを必要に応じて駆動、停止し得るようにする場合に、各送路シュート部にそれぞれ別個に駆動部を設けるか、又は共通の駆動部を設けるかは任意に選択できることであり、むしろ、各送路シュート部について個別に駆動されるようにすることは当業者によって通常採用し得た程度のものであると主張して成立に争いのない乙第2号証ないし第4号証を提出したが、これらは本願考案と引用考案1との相違点である「各供給トラフがそれぞれ個別に駆動制御される電磁振動装置に連係されている」との引用例1との構成の相違点が本願出願前当業者によって通常採用し得た程度のものであったことを主張立証するものであって、前述のとおり、かかる点について審決は判断していないのであるから、この点は新たな立証として許されないものというべきである。

(松野嘉貞 濱崎浩一 押切瞳)

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