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東京高等裁判所 平成2年(行ケ)245号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告の主張する審決の取消事由の存否について判断する。

1 成立に争いのない甲第二号証(願書、同添付の明細書、図面)及び甲第三号証(手続補正書)によれば、次の事実を認めることができる。

本願発明は、転写マーク等として用いる粘着性転写シートに関するものであり、従来の転写シートでは、合成樹脂フイルム又は紙の材質やその厚さ等の関係から、転写シートが被貼着材になじまず、貼着した際違和感があり、また、露出した印刷層が他物との接触等によりはげ落ちたりする欠点を有していたとの知見に基づき、かかる欠点を解消して、容易に保護膜上に所望の文字、模様等の画線を箔や印刷で形成でき、転写マーク等の生産性を向上させ、また保護膜の材料やその厚みを変えることにより被貼着材との違和感がなく、しかも貼着作業を容易化でき、転写後においては画線構成層を保護し、且つ、印刷層や箔のはげ落ちや変色を防止することができる粘着性転写シートを提供することを技術的課題(目的)とし(明細書第三頁第三行ないし第九行、同頁第一五行ないし第四頁第二行、手続補正書第二頁第一四行)、特許請求の範囲第一項(本願発明の要旨)記載の構成を採用し(手続補正書別紙第一頁第二行ないし第八行)、この構成により、(一)保護膜上に凹版及び孔版に限らず各種の印刷方式で、文字、模様等の画線構成層を印刷することができ、また、その上メタリツクな感を呈するマーク等の生産も容易であり、転写も容易に行える、(二)転写後は保護膜及び印刷層の無印刷部を通して箔押層が見えるため、メタリツクなマークとなり、更に画線構成層を形成する印刷層、箔押層及びシートフイルムの色彩、形状等を種々変更することにより、各種の転写シートを形成できる、(三)保護膜を数ミクロンの厚さに形成できるので、被貼着材に転写しても違和感がなく、柔軟なものや凹凸面にも保護膜自身が柔軟性を有するため粘着しやすく、その上保護膜の材料を適宜選択することにより、転写後においては画線構成層を被覆保護することができ、その変色等を防止することができる(明細書第九頁第二行ないし第一九行)という作用効果を奏する。

2 第一引用例及び第二引用例に審決認定の技術内容が記載されていること、本願発明と第一引用例及び第二引用例に記載されたものとの一致点及び相違点が審決認定のとおりであることは、当事者間に争いがない。

本願発明と第一引用例及び第二引用例に記載された技術内容の唯一の相違点は、本願発明においては、転写フイルム(本願発明でいう剥離シート)の接着剤につき、従来の熱融着型接着剤に代えて感圧性接着剤を使用するというものであるが、これにつき、原告は、第一引用例、第二引用例及び周知例に、転写フイルムの接着剤として、熱融着型接着剤に代えて感圧性接着剤を使用することについての開示がないから、右相違点に係る本願発明の構成は当業者が容易に行い得るものではなく、また、本願発明で使用する感圧性接着剤は、常温で接着させるので、被転写材の耐熱性を考慮する必要がなく、比較的簡易にかつ美麗に被転写材に貼着させることができるとの作用効果があると主張する。

しかし、本願発明で使用する感圧性接着剤は、常温で短時間わずかの圧力を加えるだけで被着体に粘着する性質を有し、これを利用した粘着テープ等は周知技術であることは当事者間に争いがなく、更に、成立に争いのない乙第一号証の一ないし三(審決で周知例として引用した「実用プラスチツク用語辞典」)によれば、本件出願前、既に転写フイルムの接着剤として「単に加圧だけですむもの」が利用されていることが認められ、その「単に加圧だけですむもの」が感圧性接着剤を意味することは明らかであるから、転写フイルムの接着剤として感圧性接着剤を使用することそのものが周知であると認められる。

この感圧性接着剤を第一引用例及び第二引用例に記載された転写フイルムの接着剤として使用することにつき、技術上格別の困難のあることは窺われないので、第一引用例及び第二引用例に感圧性接着剤の使用についての示唆がなくても、これらに記載された転写フイルムの接着剤として、熱融着型接着剤に代えて感圧性接着剤を使用することは、当業者が適宜容易に行える程度のことであるというべきである。したがつて、この点に関する審決の判断に誤りはない。

また、感圧性接着剤を使用することにより、美麗に被転写材に貼着させることができるとの作用効果については、明細書に記載がないばかりでなく、本願発明の奏する前記1認定の(一)ないし(三)記載の作用効果は第一引用例及び第二引用例記載の転写フイルムにおける熱融着型接着剤に代えて感圧性接着剤を使用することにより当業者が予測できる程度の作用効果にすぎず、何ら格別のものということを得ない。

したがつて、審決に本願発明の奏する作用効果を看過した誤りはない。

3 以上のとおりであつて、相違点についての審決の判断及び作用効果についての審決の認定に誤りはないから、審決に原告主張の違法は存しない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編注〕本願発明の要旨は左のとおりである。

剥離シートの一表面に、保護膜が形成され、該保護膜の上に、印刷層、箔押層そしてシートフイルムのうち少なくとも一つからなる転写すべき模様、文字等を形成する画線構成層が形成され、さらに該画線構成層の上に感圧性接着剤を塗布してなる粘着性接着剤層が形成された、粘着性転写シート

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