大判例

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東京高等裁判所 平成20年(ツ)45号 判決 2008年10月29日

東京都●●●

上告人

●●●

同訴訟代理人弁護士

荒井哲朗

白井晶子

東京都台東区浅草橋5丁目1番13号

被上告人

株式会社アークライフ

同代表者清算人

●●●澤●●●

東京都●●●

被上告人

●●●澤●●●

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

上告人は,原判決は,民法,債権管理回収業に関する特別措置法3条,弁護士法73条の解釈を誤った違法がある旨主張するので,以下,上告理由について検討する。

1  原審の確定した事実関係の概要は次のとおりである。

(1)  上告人は,平成2年8月14日から同年12月5日までの間,株式会社アルコ(以下「アルコ」という。)から,5回にわたり合計12万8000円を借り入れた。

(2)  アルコは,上告人が上記(1)の貸金債務について期限の利益を喪失したため,平成4年,上告人に対し,残元本9万4177円,未払利息1671円及び残元本に対する平成3年4月6日から支払済みまで年3割6分の割合による遅延損害金の支払を求める支払命令を申立てたところ,豊島簡易裁判所はその旨の支払命令を発した(以下,同支払命令に係る債権を「本件債権」という。)。

(3)  アルコは,平成11年10月28日,大和債権回収株式会社に対し,本件債権を譲渡した。

(4)  大和債権回収株式会社は,同年11月29日,大和ファイナンス株式会社(以下「大和ファイナンス」という。)に対し,本件債権を譲渡した。

(5)  大和ファイナンスは,平成14年9月30日付けで解散決議をして貸金業を廃業することとなり,その清算手続を行うため,同月2日,被上告人会社に対し,本件債権を含む複数の債権を譲渡した。

(6)  被上告人会社は,大和ファイナンスからその債権譲渡の通知書の作成及び発送の代理権を授与されていたところ,平成17年10月21日ころ,上告人に対し,同日付けの大和ファイナンス及び被上告人会社の共同作成に係る「債権譲渡・譲受のご通知」と題する書面(以下「本件通知」という。)をもって,本件債権の譲渡を通知した。

(7)  被上告人会社の従業員であった●●●木は,平成18年10月中旬ころ,上告人に対し,本件債権の支払を催告するため,「本格的調査(近所・大家・不動産・役所・親族・職場等)を行い判らない場合は,貴殿の居住所・職場への訪問をする事になります。当社も相当の費用・時間をかけて行うので貴殿が如何なる生活状況でも関係無く。一括にて全額回収となります!」,「穏便な解決を望むのであれば!」,「本書到達後一週間以内に誠意ある金額を下記口座に振り込んで下さい」と印刷され,赤いサインペンの手書きで「裁判で判決出てます!」と記入した「集金予告通知」と題する請求書(以下「本件請求書」という。)を作成し,これを大きな赤い文字で「訪問予告通知在中」と印字した長形3号の黄色の封筒に封入して郵送する方法により,本件債権の支払を催告した(以下「本件催告」という。)。そして,その封筒には,被上告人会社の請求金額を記載した回答書(以下「本件回答書」という。)が同封されていた。

なお,被上告人会社及び●●●木は,上告人に対し,直接電話をしたり,訪問したりするなどの債権取立行為はしていない。

2  原審は,要旨次のとおり判示して,上告人の主張する本件催告による不法行為の成立を認めることはできないとした。

(1)  本件債権が弁済により消滅していると認めることはできない。

(2)  被上告人会社は,債権譲渡により,本件債権を取得した。

(3)  被上告人会社は,大和ファイナンスから本件債権を含め複数の債権を譲り受けているが,同社の解散を契機としてその事業及び財産を清算するために債権譲渡を受けたのであり,本件債権を含む複数の債権の譲受け及び取立てについて,これを業として行うものではないと認められるから,債権管理回収業に関する特別措置法3条,弁護士法73条に違反しないというべきである。

(4)  上告人は,本件催告の前に本件通知を受領し,本件債権が残存していることを了知していたのであり,また,本件回答書により,被上告人会社からの請求金額を知ることができた。

(5)  本件催告は,社会的相当性を逸脱した違法かつ不当なものと断定することは相当でなく,被上告人会社及び●●●木において,上告人から金銭をおどし取る,あるいはだまし取ろうとしたことを裏付ける的確な証拠はないから,上告人主張の不法行為の成立を認めることはできない。

3  ところで,前記1のとおり原審が認定した事実に照らせば,被上告人会社は,本件債権を含む多数の債権を大和ファイナンスから債権残高よりも安価で買い入れた上,その取立てを行うことによって収益を上げる目的をもって,上記債権を譲り受けた上,上告人に対し本件催告をしたものと推認されるから,たとえ,上記債権の譲受けが1回の契約で行われたとしても,債権回収を業として行う意図であったと解するのが相当であり,本件債権の譲受け及びその取立行為は,債権管理回収業に関する特別措置法3条,弁護士法73条に違反するものと解するのが相当である。

しかしながら,そのゆえに本件催告が直ちに不法行為を構成するものということはできない。なぜなら,前記1(6)(7)のとおり,上告人は,本件催告の前に本件通知を受領し,また,本件回答書により,被上告人会社からの請求金額を知ることができたと考えられる上,被上告人会社及び●●●木は,上告人に対し,直接電話をしたり,訪問したりするなどの債権取立行為はしていないというのであるから,本件請求書の記載が前示のとおり過激な表現を含むものであることを考慮しても,本件催告が,社会的相当性を著しく逸脱し,損害賠償を認めるほど違法なものであったということはできないからである。

したがって,原判決には,債権管理回収業に関する特別措置法3条,弁護士法73条の解釈を誤った違法があるが,原判決の判断は結論において是認することができる。

4  よって,本件上告は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石川善則 裁判官 宮岡章 裁判官 德増誠一)

上告状

平成20年3月5日

東京高等裁判所 民事部 御中

〒●●● ●●●

●●●

上告人 ●●●

〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-19-5 虎ノ門1丁目森ビル2階

あおい法律事務所(送達場所)

電話 03-3501-●●●

FAX 03-3501-●●●

上記訴訟代理人 弁護士 荒井哲朗

〒111-0053 東京都台東区浅草橋5-1-13 アークライフビル3階

被上告人 株式会社アークライフ

上記代表者清算人 ●●●澤●●●

〒●●● 東京都●●●

●●●

被上告人 ●●●澤●●●

損害賠償請求上告事件

訴訟物の価格 金40万円

貼用印紙額 金8000円

上記の当事者間の東京地方裁判所平成19年(レ)第145号損害賠償請求控訴事件について、平成20年2月26日に言い渡された判決は不服であるから上告をする。

原判決の表示

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

上告の趣旨

原判決を破棄し、さらに相当の裁判を求める。

上告の理由

関係会社の略称は原判決の例に倣い、上告人という呼称は原審控訴人としての同人を示す意味で用いることがあり、その他略語表記は通常の例に倣う。

1 本件は、被上告人会社が、債権管理回収業に関する特別措置法(以下、「サービサー法」という。)所定の法務大臣の許可を得ていないのに、また、アルコと上告人との間の金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求権を譲り受けていないのに、あたかもこれを譲り受けて取り立てる権限があるかのごとく装い、「集金予告通知」と題し、「これより、本格的調査(近所・大家・不動産・役所・親族・職場等)を行い判らない場合は、貴殿の居住所・職場への訪問をする事になります。当社も相当の費用・時間をかけて行うので貴殿が如何なる生活状況でも関係無く。一括にて全額回収となります!」と記載し、黒枠で囲んだ一層大きな文字で「穏便な解決を望むのであれば!」と記載したうえ、「本書到達後一週間以内に誠意ある金額を下記口座に振り込んでください」などと記載した書面(甲1の2。以下、「本件文書」という。)を送付して、上告人から金銭を喝取、騙取しようとし、●●●を恐怖と不安に陥れて精神的苦痛を被らせたという事案であり、本件請求は、被上告人会社に対しては固有の不法行為責任及び使用者責任、被上告人●●●澤に対しては共同不法行為責任及び会社法第487条第1項に基づき損害賠償請求をするものである。

本件上告は、原判決が、①被上告人会社が上告人に対して債権を有していたとしたうえで、②上記取立行為がサービサー法3条、弁護士法73条に違反するものではなく、③本件文書の送付行為は不法行為を構成しないとする点に、それぞれ、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとしてするものである。

以下、適宜原判決に言及して上告の理由を述べる。

2 まず原判決は、アルコが上告人に対して有していた債権を被上告人会社が転々譲り受けたかという争点について、アルコが大和債権回収に対して上告人に対する債権を譲渡する際及び大和債権回収が訴外大和ファイナンスに上告人に対する債権を譲渡する際にいずれも譲渡契約書上の譲渡にかかる「貸付残高」が「0」と記載されていた(乙9、乙10)と認定しながら、これを「いずれも譲渡当事者間の債権額の表示であって、それ自体債務者に対する関係を想定したものではな」いとして、被上告人会社が上告人に対して有価の債権を転々譲り受けたと認定している。

しかしながら、「貸付残高」は、字義どおり「貸付残高」なのであって、これが「譲渡当事者間の債権額の表示」の問題であるというのは債権譲渡秩序を著しくかつ不当に不安定にするものであって、債権譲渡法の解釈を誤ったものというほかはない。仮に原判決のいうように債権譲渡が「譲渡当事者間」における債権額の表示と「債務者に対する関係」におけるそれを異ならせて行うなどということを軽々に認めることになれば、債権譲渡関係が法の予定しない著しい錯綜をみせるであろうことは、債権の一部譲渡(民法はこれを禁じていない。)がなされて各債権譲渡について「譲渡当事者間」における債権額の表示と「債務者に対する関係」におけるそれが異ならせられたときに債権の帰属や対抗要件に関して生じる混乱を想起してみれば、およそ明らかである。

なお、原判決は、上告人が、アルコが上告人に有していた債権が消滅していると主張しているとの前提で判断を示されているが、上告人の原審における主張は、要するに「アルコが上告人に債権を有していたかどうかではなく、被上告人会社が上告人に対する債権を有していたかが問題である」というものである(平成19年9月13日付控訴人第3準備書面2頁)。原判決が、アルコが大和債権回収に対して上告人に対する債権を譲渡する際及び大和債権回収が大和ファイナンスに上告人に対する債権を譲渡する際にいずれも譲渡契約書上の譲渡にかかる「貸付残高」が「0」と記載されていたという事実を「債権が消滅したか」という項目において判断し、「被上告人会社がアルコの上告人に対する債権を転々譲渡によって取得したか」を検討するにあたって正しく言及していないように見える(原判決12頁ないし14頁)のは、上告人の主張を正解せず、債権が消滅しているかという問題と(有価の)債権が譲渡されて被上告人会社が上告人に対して債権を有することになったかという問題を混同しているところに起因するものと考えられる。

3 次いで、原判決は、弁護士法73条の要件である「業として」、サービサー法3条の要件である「債権管理回収業」にかかる同法2条2項の「営業」の解釈として、本件においては「これまで被上告人会社が大和ファイナンスから複数回にわたり債権譲渡を受けたことや、大和ファイナンス以外の者から債権譲渡を受けたこと(がない)」として「営業性を帯びるものではない」という。

しかし、「反復性」が「譲り受け行為」に認められなければ「回収行為」に「反復性」があっても弁護士法やサービサー法の上記要件を満たさないというのは、明らかに法律の解釈を誤っているものというほかはない。

弁護士法の趣旨は不当に他人の事件に介入し、不当な権利要求を行うなどして国民の公正な法律生活を侵害することを防止しようとするところにあり、サービサー法は、このような弁護士法の趣旨を没却することのないよう、サービサー業務を許可制度に係らしめ、常務に従事する取締役の1人以上に弁護士の選任を義務づけてその人的構成の公正を図り、業者の適格性について日弁連の意見を聴取することとし、様々な行為規制を整備してその違反に対して刑事罰や行政処分などの制裁処分を科すこととして業務の適性を図る手当をしたうえで、その限度で債権管理回収業務を弁護士以外の者にすることを許容するものであって、本件のように回収行為が反復されているときにも譲り受け行為が1回であれば放任されるというのでは、これら法律の趣旨を全く没却することになることは明らかである。本件では、被上告人はアルコが大和債権回収に譲渡した債権を転々譲り受けによって取得してこれを回収していたと主張するのであるが、アルコと大和債権回収の間の債権譲渡契約書には、膨大な「一覧表」が添付されているのであって(原審はこれを取り調べたし、譲渡にかかる債権の数が1万2000件以上にものぼることは、乙9添付別紙下部に「57/238ページ」と記載されており、1枚で51の「債権」が記載されたものが238ページ分存在することが一見して明らかである。)、この回収を行うことが「反復性」を欠くというのは、およそ非常識であるというほかはない。原判決が引用する最判は本件にはあたらない(原判決が二度引用する最判昭和50年4月4日は、「1回」の行為を問題にしているのである。)。被上告人会社は1万2000以上にものぼる債権の譲渡を受けてこれを回収するがごとき行為を行ったというのであって、「たまたま知人である●●●から契約締結後の付随的業務の処理を依頼され、これを取り扱ううち事態が紛争に発展し、行きがかり上その処理をも依頼されて引き続きこれを執り行ったもの」(上記最判の原審が認定した事実関係)であるとか、「たまたま縁故者が紛争解決に関与するとか、知人のため好意で弁護士を紹介するとか、社会生活上当然の相互扶助的協力をもって目すべき行為」(上記最判の多数意見が引用する最大判として反対意見が引用する最大判昭和46年7月14日)であるとか、あるいはこれらと同視するべき行為であるとは、到底見ることができない。

弁護士による法律事務の独占を画一的に墨守するべきであるという考え方は、こんにち的ではないかも知れない。違反行為の態様(行為者の属性、行為者の固有業務との関連性、委任者の認識、報酬の相当性、行為の性質、事件性の大小、経済的価値の多寡、行為の客観的態様)などによっては、あるいは違法性がないということになることも理解できないではない。しかし、原判決が引用する最判平成14年1月22日も、こんにち的要請を意識しつつ弁護士法違反行為の実態等を見るべきであると判示しているのであり、(いうまでもないことであるが)弁護士法は73条を放棄しておらず、サービサー法はこんにち的要請を考慮した結果上記のような規律を設けるに至っているのである。原判決は法律解釈を著しく誤り、近時検挙事案をも生じている(甲4ほか、裁判所が知るべき公知の事実に属する社会事象である)この種違反行為を放任するものであって、到底是認されるべきものではない。本件のように、「取り立て行為の規制違反」を犯した「悪質な貸金業者」のうち「違反情状の特に重いもの」として貸金業登録を取り消された(甲6)被上告人会社が、私生活の平穏を著しく脅かす態様で取立行為を行うという威嚇的な書面の送付を行うという事態は、まさに弁護士法やサービサー法が回避しようとした事柄である。原判決が引用するどの最判を見ても、このような事態を容認しようとしているとはおよそ考えられない。

また、原判決は、「大和債権回収から大和ファイナンスへの債権譲渡を含む被上告人らが本件に関係するとする債権譲渡のいずれもが、いわゆるバルクセールによるものであるとは認められない」旨いうが(原判決15頁)、同債権譲渡に関する債権譲渡契約書(乙10)別紙末尾には「貸付残高」の合計金額が12億3822万7072円と記載されているところ(平成19年6月26日付控訴人第2準備書面2頁記載のとおり。●●●16頁)、譲渡価格は2億2565万3830円であると記載されているのであって、そのうえ、原判決は「貸付残高が「0」と表示された債務者に対する債権を含めてその譲渡金額が定められている」というのであるから、なおさら、同債権譲渡が「バルクセール」(格安の価格で譲り受けて業として回収して利益を得るためにされる不良債権等の譲渡)でないというのは、事実の評価を誤ったものであるというほかはない。また、乙9別紙は、その表題も「償却内訳リスト」というものなのであり、同譲渡が不良債権の譲渡であることは容易に見うるところであって、このような債権の1万2000件以上にも及ぶ回収がいわゆるサービサー業にあたらないというのであれば、一体いかなる業務がサービサー業にあたるというのか、理解できない(なお、被上告人会社に対する債権譲渡に関する契約書であるという乙5には別紙が添付されていないのでそもそも上告人に対する債権が譲渡されたことを示すものでない上、「バルクセール」であることを基礎付ける金額の比較はできない。)。

なお、その余の要件について念のために指摘しておくと、「法律事件に関する法律事務」とは、「債務者において支払を遅延し回収困難の状態にあったもの及びこげつき債権として回収困難にあったもので、いずれも債権が通常の状態ではその満足ができないもの」(最判昭和37年10月4日の原審である福岡高判昭和36年11月17日刑集16巻10号1423頁で認定されている例)などの「法律事件」に関して、「債権者から債権の取立ての委任を受けて、その取立てのため、請求、弁済の受領、債務の免除等の諸種の行為をすること」(上記認定の対象となった事件について一連の行為として摘示されている例)などの「法律事務」をいい、サービサー法にいう「回収」とは経済的に債権の満足を得る行為であって、請求行為はまさにこれにあたる。

4 このように、原判決は本件行為の性質を見誤った上、次いで、あたかも上告人が、「支払金額を一切明示することなく本件文書を送付したか」という点を争点としているかのような説示をするのみで、本件においてもっとも焦点を当てられるべき本件文書の内容について判断を示すことなく、上告人の請求に理由がないと結論している。

しかし、上告人は、訴状においても控訴状においても(そして本上告状においても)まず本件文書の記載内容を引用して示しているとおり、本件においては、「これより、本格的調査(近所・大家・不動産・役所・親族・職場等)を行い判らない場合は、貴殿の居住所・職場への訪問をする事になります。当社も相当の費用・時間をかけて行うので貴殿が如何なる生活状況でも関係無く。一括にて全額回収となります!」などと記載した文書が送付されていることを重要な違法要素として主張している。このような文書が、正常な神経を有する一般人にいかに恐怖の感情を生じさせるかについて、原判決は何ら言及してさえいないが、上告人は女児のみを家において働きに出ることもある母子家庭の生活者なのであって、わざわざ弁護士にまで相談をしたことからもその恐怖心は正常の神経を有する者であれば十分に理解しうるところである。

この点の主張に正しく応答しようとしない原判決は、市井の人間の感覚から乖離し、「怖いもの」に素直に恐怖心を感じる人間の正常な心情に対する想像力に全く欠けている。本件文書は、一見して、「怖い」。被上告人会社は、そのことを自覚して本件文書を作成しているのである(●●●24頁)。

5 以上のとおりであって、原判決には、民法(債権譲渡法)、弁護士法73条、サービサー法3条(同2条2項)の解釈を誤り、審理不尽及び理由不備をおかし、これらが判決に影響を及ぼすことが明らかである。

損害賠償請求訴訟において民事裁判所は、違法行為による損害の回復に加えて、違法行為の一般的抑止という職責を負っている。本件同様のサービサー法違反行為について検挙事案が報道されるなどしている状況において、民事裁判所が適切な判断をしないようでは、違法行為の助長にもつながる。本件がごとき違法な取立て行為に対して、違法行為を助長するにも似た愚を冒す判断をしてはならない。

原判決を破棄し、被上告人の行為が社会的に正当な業務の範囲内にあるかどうか等をさらにご審理いただくため、本件を原審に差し戻されたい。

添付書類

1 委任状 1通

2 上告状副本 6通

3 資格証明書(既に平成19年3月28日に清算が結了している旨の登記がなされているが、実体上の効力を生じるものではない(大判大正5年3月17日民録22-364)原判決もこの点を問題視していない。)。 1通

以上

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