東京高等裁判所 平成20年(行コ)110号 判決 2009年3月11日
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は,控訴人兼A訴訟承継人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2(1) 芦屋税務署長が平成17年5月31日付けで控訴人Bに対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
(2) 芦屋税務署長が平成17年5月31日付けで原審第604号事件原告A(承継人B,同C及び同D)に対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
(3) 目黒税務署長が平成17年5月31日付けで控訴人Cに対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
(4) 吹田税務署長が平成17年5月31日付けで控訴人Dに対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
第2事案の概要(略語等は,原則として原判決に従う。)
1 本件は,控訴人兼A承継人ら(控訴人ら)が,その平成16年分所得税につき,同年2月26日に土地及び建物を譲渡したことに伴う譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を,所得税法69条1項の規定に従い,他の各種所得の金額から控除すべきであるとして更正の請求をしたところ,各処分行政庁が,平成17年5月31日付けで,控訴人らの上記各更正の請求に更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件各通知処分)をしたことから,控訴人らが,上記損失の金額が生じなかったものとみなす租税特別措置法(改正措置法)31条1項後段の規定は,平成16年4月1日に施行された平成16年法律第14号(所得税法等の一部を改正する法律)により改正されたものであるところ,これを同年1月1日にさかのぼって適用するものとする同改正法附則27条1項の規定(本件改正附則)は,租税法律主義を定めた憲法の規定に違反するものであり,本件各通知処分は違法であると主張して,その取消しを求めた事案である。
なお,原審第604号事件原告Aは,平成▲年▲月▲日死亡し,控訴人らがこれを承継した。
2 原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却した。
当裁判所も,原審と同様に,控訴人らの請求をいずれも棄却すべきものと判断した。
3 関係法令,前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,以下のとおり付加・訂正するほかは,原判決の事実及び理由の「第2 事案の概要」1から3まで(原判決2頁13行目から8頁8行目まで及び21頁初行から30頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決6頁初行の次に改行の上,次のとおり加える。
「 原審第604号事件原告Aは,平成▲年▲月▲日,死亡し,控訴人らがこれを承継した。」
(2) 原判決21頁20行目の次に改行の上,次のとおり加える。
「 納税者が不利益を受ける租税法規の遡及適用の問題を2つの類型に分け,租税法規が納税義務の内容自体を遡及的に納税者の不利益に変更する場合(第1類型)には,納税義務の性質,不利益変更の程度,保護される公益の性質等を総合的に比較衡量して立法の合理性を判断し,納税義務の内容自体を遡及的に不利益変更するわけではないが,遡及適用の結果,納税者が一定の不利益を受ける場合(第2類型)には,合理性がないといえるかどうかによって,その合憲性を判断するという極めて緩やかで立法府の裁量を広く肯定するとする考え方には根拠がなく,本件の立法が租税法規の不利益遡及立法に該当することを正面から認めて,より厳格な違憲審査基準を採用すべきである。
違憲審査基準については,①ある法令が憲法上の権利を制約する場合,規制目的が非常に強力な利益を促進するかどうかを審査するとともに,そのような目的との関係において,その規制立法の達成手段が必要不可欠であることが要求される厳格な審査,②規制立法の目的が重要な利益を促進するかどうかを審査し,その規制目的との関係で規制手段が実質的関連性を有することが必要で,「より制限的でない他の代替手段がないか否か」が具体的・実質的に審査される厳格な合理性の審査,③規制立法の目的が正当な利益を促進するかどうかを審査し,その規制目的との関係で規制手段が著しく不合理であることが明白でないことを要求するにとどまる合理性の審査という3つを基準として整理した場合,①の厳格な審査の基準に従えば,本件改正附則の合憲性が否定されることは明らかであり,②厳格な合理性の審査基準を採用した場合であっても,本件改正附則が違憲であるとの判断は免れない。本件改正附則の目的の正当性が客観的に裏付けられているかどうか疑問である上,仮に,不動産の安売り防止が規制目的として肯定し得るとしても,規制手段の必要性と合理性を立証することができないからである。そして,最も緩やかな③合理性の審査基準によって本件改正附則の合憲性の判断をしたとしても,改正措置法を平成16年1月1日から3月31日までの期間に行われた不動産取引に遡及的に適用せずに,公布後施行の大原則に従い,公布後の同年4月1日以降の取引に適用することで何らの支障は生じないのであるから,結局,その規制手段は,上記期間における遡及的適用を肯定する限度で,著しく不合理であるといわざるを得ない。」
(3) 原判決22頁17行目「期間税について,」から24行目「到底許されない。」までを,次のとおり改める。
「 課税の対象となる所得の累積が暦年を通じて行われるという要素を持つ給与所得と異なり,不動産の譲渡所得は,極めて限られた機会に,いわば1回限りのものとして行われるのが通常であり,これに対する課税は,随時税である相続税や贈与税に類似する性質のものである。
期間税にあっても,その納税義務に結びつく個々の課税要件事実の成立と実行には,その時点において効力を有している租税法規に対する納税者の信頼が付着しているのであって,この信頼を保護すべきことは,随時税の場合と何ら異なることはない。納税者がある経済取引をする場合において,その結果が当該取引時点をその内に含む課税期間に係る所得税(当該期間の終了時に納税義務が成立する所得税)の債務内容に影響を与えることが予測されるときは,納税者は,その取引の時点において効力を有している租税法規に照らして,課税期間の終了時に成立するであろう所得税の内容を想定し,その判断に基づいて取引を決するのである。納税者がそのように判断することが合理的であることはいうまでもなく,納税者の当該租税法規に対する信頼は当然保護されるべきであり,かかる信頼を裏切ってはならないという強い要請が働くと考えるべきである。
控訴人らは,本件各土地及び本件各建物の売買契約(本件譲渡)の締結及び実行の時点では,所得税の課税において,その譲渡により生じた損失の額がその他の各種所得の額と損益通算がされるものと信じていたのである。不動産は,我が国においては,個人にとって最も重要な資産であるから,個人がその所有不動産を譲渡する場合には,特に慎重にそのタイミングを測るとともに,事前の市場調査,譲渡価格の設定,譲受けを希望する者の情報収集と希望者との価格交渉等を経て取引が成立するのが通例である。特に本件各土地及び各建物のような高額な物件について買主を探し取引を成立させることは,容易にできることではなく,また慎重な納税計画を必要としている。このため,不動産の譲渡に関する課税に当たっては,その取引時点において効力を有していた租税法規に対する納税者の信頼を保護しなければならない要請が特に強いといわなければならない。
控訴人らは,平成15年11月ころから,改正前措置法31条1項の適用があることを前提として,多額の含み損を抱えた本件譲渡による損失と,控訴人らが有限会社E(E)の解散・清算から受ける多額の配当所得を通算をすることにより,税負担を合法的に軽減することを計画立案し,遅くとも平成15年11月下旬にはその実行に着手した。その後,控訴人らは,本件譲渡を平成16年2月26日に完了し,Eの清算を同月28日に結了させているが,これは改正措置法の成立・公布・施行に約1か月先行している。ところが,本件改正附則により,同年1月1日から3月31日までの間に行われた不動産取引にさかのぼって改正措置法が適用されることになり,同年2月26日に実行を完了した本件譲渡によって生じた合計5億1753万5571円もの譲渡損失と同月28日のEの清算に伴う残余財産(総額9億8115万4167円)の分配により発生した配当所得との損益通算が認められなくなった結果,控訴人らは,全体として5億1700万円を超える損益通算が否定されることになり,極めて甚大な損害を受けることになった。」
(4) 原判決23頁6行目の次に改行の上,次のとおり加える。
「(5)改正措置法に盛り込まれた不動産譲渡損の損益通算廃止及びその遡及適用の措置は,平成15年の政府税調においても全く議論の対象とされておらず,同年12月17日に公表された自民党の「平成16年度税制改正大綱」で唐突に取り上げられたものである。そして,平成16年分所得税の課税期間の初日を1月以上経過した同年2月3日に本件改正法案が国会に提出され,平成15年会計年度末ぎりぎりの同年3月26日に成立し,同月31日に公布されたものである。この間,一般国民に対して,損益通算の廃止,特にその遡及適用の措置が事前に周知されることはなかった。
本件改正附則は,このように国民に対する十分な事前の周知がされることなく施行されたものであり,納税者の予測可能性や法的安定性を害するものであったが,本件の立法には,納税者にそのような犠牲を強いてまで,平成16年1月1日に遡及させるほどの合理性はない。
被控訴人は,改正措置法による損益通算の廃止措置は,税率の引下げ等の措置と「一つのパッケージ」になって土地市場の活性化という政策目的の実現に資するものであり,早急の実施が適切かつ必要であった旨主張し,これを更に敷衍して,「損益通算の廃止ないしパッケージ全体の適用時期を遅らせるとすれば,その間に節税のための損益通算を目的とした安売りによる土地の売却を招いて,土地市場に不測の影響を及ぼすことが予想された」とし,不意打ちの「後出し遡及立法」を意図していたことを主張している。
しかしながら,本件の立法に当たって,国は,個人が抱えている含み損のある不動産が全国にどのくらい存在し,不動産の譲渡損失の損益通算禁止の措置を1年間遅らせることによってどの程度の土地の売却がなされ,それが土地市場に対してどのような影響を与えるかについての経済分析を一切行っていない。このような分析を根拠としない「土地市場に対する不測の悪影響のおそれ」なるものは,漠然とした危惧や抽象的な懸念にすぎず,納税者の予測可能性と法的安定性を犠牲にしてもなお本件立法を正当化できるだけの合理的な根拠にはなし得ない。
仮に,被控訴人主張のように不動産譲渡損の損益通算制度を廃止すると不動産の安売りを助長することになるとしても,その改正措置法の施行は,同法が公布された平成16年3月31日以後とすれば十分であり,同年1月1日までさかのぼる必要はない。期間税である所得税についても,年度途中から改正法を適用することとした立法例は,過去にも存在したのである。」
第3当裁判所の判断
1 前記第2の前提事実に証拠(甲2から5まで,15,乙5から7まで,11,14)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(1) 平成16年度の税制改正に関し,平成15年12月15日に政府税制調査会において「平成16年度の税制改正に関する答申」が取りまとめられ,これには,「あるべき税制」の構築に向けた基本的視点として,現在,我が国が,少子・高齢化,グローバル化等の構造変化に直面している中で,公平な社会を構築し,将来にわたり持続的な経済社会の活性化を実現するため,税制を新たな社会にふさわしい姿に再構築するための抜本的改革を進めていかなければならないとし,その際,①個人や企業の自由な選択を妨げず,経済活動に中立で歪みのない税制を基本としつつ,構造改革を推進し,経済社会の活性化を図るため必要な対応を行うこと,②経済社会の構造変化に対応しきれず,税負担の歪みや不公平感を生じさせている税制上の諸措置の適正化を図ること,③納税者にとって分かりやすい簡素な税制を構築すること,④安定的な歳入構造を構築すること,⑤地方分権の推進と地方税の充実確保を図ることの各視点が重要であるとの記載がある。
そして,これを受けて自由民主党において取りまとめられた「平成16年度の税制改正大綱」において,平成16年度改正においては,デフレ不況を一刻も早く克服するための思い切った経済活性化対策に取り組むこととした,として,土地譲渡益課税については,土地市場の活性化に資する観点から,長期譲渡所得の税率を引き下げるとともに,長期譲渡所得の100万円特別控除,譲渡損失の他所得との損益通算を廃止するとしている。
(2) 改正前措置法では,土地建物等の長期譲渡所得に係る損益通算の制度は,分離課税の対象となる土地建物等の長期譲渡所得に対する課税については,利益が生じた場合には26パーセントの比例税率による分離課税とされていたが,損失が生じた場合には最高税率50パーセントで総合課税の対象となる他の所得の金額から控除することができることとなっており,税率や特別控除の取扱いにおいて,株式等に対する課税の取扱いと異なっていた。そこで,改正措置法では,株式等に対する課税とのバランスを踏まえ,長期譲渡所得の税率を26パーセント(うち住民税6パーセント)から20パーセント(うち住民税5パーセント)へ引き下げ,土地建物等の長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額については,土地建物等の譲渡による所得以外の所得との通算及び翌年以降の繰越を認めないこととし,さらに,税負担の調整のための措置として控除することとされていた長期譲渡所得の100万円の特別控除が廃止された。これにより,土地市場における使用収益に応じた適切な価格形成の実現を図り,土地市場の活性化を図ること,ひいては土地価格を安定化することが期待された。
(3) これらの改正は,適用を1年間遅らせるとした場合,節税のための損益通算を目的とした安売りによる土地の売却を招いて,土地市場に不測の影響を及ぼすおそれがあることから,その適用を遅らせ,翌年から行うこととすることは適当でないこと及び長期譲渡所得の税率の引下げ等とが一つのパッケージとされていることから,本件改正附則により,平成16年1月1日以後に行う譲渡について適用することとされた。
(4) 控訴人らは,平成15年11月ころ,控訴人らが出資者であったEの銀行借入金の返済のために,同社が保有する上場有価証券を売却し,銀行借入金を返済した後,同社を解散・清算し,残余財産を控訴人ら出資者に分配することとしたが,これにより控訴人らに多額の配当所得が発生するため,控訴人らが保有していた本件各土地及び各建物を売却することによって生ずる損失と損益通算することで税負担を合法的に軽減することを計画し,改正前措置法の適用を受けることを前提として本件譲渡を行った。
控訴人らは,本件改正附則が適用される結果,合計5億1700万円を超える損益通算が否定されることになった。
2 以上の事実を踏まえて,本件争点について判断する。
(1) 所得税はいわゆる期間税であり,これを納付する義務は,国税通則法15条2項1号の規定により暦年の終了の時に成立するものとされている。また,その年分の納付すべき税額は,原則として所得税法120条の規定により確定申告の手続によって確定するところ,譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を各種所得の金額から控除する(損益通算する)ことは,所得税の納税義務が成立した後の納付すべき税額を確定する段階で初めて行うものであり,個々の譲渡の段階で行うものではなく,対象となる譲渡所得の計算も,個々の譲渡の都度されるものではなく,1暦年を単位とした期間で把握される。したがって,本件のように,所得税に関する法規が暦年の途中に改正され,これがその年分の所得税について適用される場合,暦年の最初から改正法の施行までの間に行われた個々の取引のみについてみれば,改正法が遡及して適用されることになるとしても,所得税の納税義務が成立する暦年の終了時においては改正法が既に施行されているのであるから,改正法が遡及して適用され納税義務の変更をもたらすものであるということはできないというべきであり,本件改正附則は,厳密な意味では遡及立法であるということはできない。
(2) しかしながら,本件のように暦年当初への遡及適用によって納税者に不利益を与える場合には,憲法84条の趣旨からして,その暦年当初への遡及適用について合理的な理由のあることが必要であると解するのが相当である。
そして,暦年当初への遡及適用に合理性があるか否かについては,「租税は,今日では,国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え,所得の再分配,資源の適正配分,景気の調整等の諸機能をも有しており,国民の課税負担を定めるについて,財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件等を定めるについて,極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがって,租税法の定立については,国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的,技術的な判断にゆだねるほかはなく,裁判所は,基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。」(最高裁昭和60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照)と解されるところから,立法府の判断がその合理的裁量の範囲を超えると認められる場合に初めて暦年当初への遡及適用が憲法84条の趣旨に反するということができるものというべきである。
(3) 本件改正附則の合理性についての判断は,以下のとおり付加・訂正するほかは,原判決の事実及び理由の「第3 争点に対する判断」における記載(原判決11頁15行目から15頁6行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
ア 原判決13頁19行目「これが」を「不動産の譲渡所得は1回限りのものとして行われるのが通常であるからさかのぼって適用する必要はなく,改正措置法」と改める。
イ 原判決13頁22行目「所得税の」から14頁6行目までを,次のとおり改める。
「改正措置法を暦年途中である平成16年4月1日から適用した場合には,適用前の譲渡について生じた損失又は利益を事業所得のような経常的な所得の金額の計算上生じた損失又は利益とどのように損益通算するのか等の問題が生じ,これらの問題を立法によって解決するとしても,これにより納税申告事務及び徴収事務の負担が増大し,混乱が生じることは明らかであり,同じ暦年において取扱いが異なることにより納税者間に不平等が発生するという問題も容易に予想される。
そうすると,改正措置法を成立・施行前の平成16年1月1日にさかのぼって適用する合理性・必要性があったものということができる。」
ウ 原判決15頁6行目の次に改行して,次のとおり加える。
「 控訴人らは,本件の立法については,自由民主党の税制改正大綱の内容が全国紙の一部にわずかに報道されただけで,事前の予告が不十分で,周知されていなかったにもかかわらず,国民に不利益な損益通算の廃止措置を遡及適用させたのであるから租税法律主義に反すると主張する。しかし,納税者個人の予測可能性に反することのみをもって直ちに不利益遡及立法に該当するものと解し,租税効果に対する予測可能性を保障しようとすると,およそ不利益な内容を含む租税法規の改正はできないこととなる。また,納税者の予測が各個人によってまちまちで,どのような場合に予測可能性があるかを判定することが困難であることからすると,納税者個人の予測を完全に保護することが,かえって法的安定性を害する結果になることも否定できないところである。そうすると,租税法規の改正に当たっては,納税者個人の予測可能性を完全に充足することまでは要求されていないものと解される。」
(4) 以上の諸事情を総合的に勘案すると,改正措置法31条1項後段の規定を歴年当初に遡及適用を行うものとした本件改正附則には,合理的な理由があり,立法府の合理的裁量の範囲を超えるところはないというべきである。
3 したがって,本件改正附則が憲法84条の趣旨に反するものということはできない。
4 よって,控訴人らの請求はいずれも理由がない。
第4結論
以上によれば,原判決は相当であるから,本件控訴をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 一宮なほみ 裁判官 土屋文昭 裁判官 始関正光)