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東京高等裁判所 平成20年(行コ)410号 判決 2011年3月23日

主文

1  第一審原告らの控訴及び第一審被告の控訴に基づいて、原判決を以下のとおり変更する。

(1)  第一審被告は、第一審被告補助参加人Z1に対し4007万4405円、同Z2社に対し3218万3445円、同Z3社に対し126万4200円、同Z4社に対し311万2725円、同Z5社に対し58万2855円、同Z6社に対し109万7355円及び同Z7社に対し183万3825円並びに前記各金員に対する平成18年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。

(2)  第一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用(補助参加によって生じた費用を除く。)は、第一、二審を通じてこれを5分し、その2を第一審原告らの、その余を第一審被告の各負担とし、補助参加によって生じた費用は各補助参加人らの各負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  第一審原告ら

(1)  原判決中、第一審被告補助参加人Z1に対する支払を求める請求を棄却した部分を取り消す。

(2)  第一審被告は、第一審被告補助参加人Z1に対し、9935万3100円及びこれに対する平成18年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。

2  第一審被告

(1)  原判決中、第一審被告敗訴部分を取り消す。

(2)  第一審原告らの請求を棄却する。

第2事案の概要

1  事案の要旨

(1)ア  第一審被告補助参加人Z1(以下「Z1」ともいう。)は、平成17年1月28日から平成18年3月14日まで、山梨県北巨摩郡小淵沢町(以下「旧小淵沢町」という。)の町長であった。

イ  A(以下「A」という。)は、平成5年1月から平成17年1月27日まで、旧小淵沢町の町長であった。

ウ  B(以下「B」という。)は、昭和51年4月1日から平成5年3月31日まで旧小淵沢町の建設課に勤務し、Z1町長により平成17年4月1日付けで建設課長に任ぜられた。

エ  旧小淵沢町は、平成18年3月15日、山梨県北杜市(以下「北杜市」という。)との合併により、第一審被告である北杜市がその事務を承継した。

オ  第一審原告らは旧小淵沢町、現北杜市の住民である。

カ  第一審被告補助参加人Z2社(以下「Z2社」という。)、同Z3社(以下「Z3社」という。)、同Z4社(以下「Z4社」という。)、同Z5社(以下「Z5社」という。)、同Z6社(以下「Z6社」という。)、及び同Z7社(以下「Z7社」という。以下、Z2社外5名の会社を「補助参加人会社ら」という。)は、旧小淵沢町の公共工事の入札に参加した建設業を営む業者である。

(2)  本件は、第一審原告らが、平成17年度における旧小淵沢町の発注工事(平成17年4月27日から同年11月10日までの入札実施分。以下、特に断らない限り、「平成17年度の旧小淵沢町の発注工事」とは、この期間のものを意味する。)のうち、原判決別紙3損害一覧表記載の22件の各工事について、①補助参加人会社らが、入札に参加した他の入札業者と談合し、これにより落札予定業者とされた業者が落札価格により落札するという不法行為を行った結果、旧小淵沢町に公正な競争によって形成されたであろう落札価格と現実の落札価格との差額相当額である上記損害一覧表記載の損害を生じさせた、②また、旧小淵沢町の町長であったZ1が、入札業者の指名権を濫用して談合を容易に実行することのできる指名業者の組み合わせを実現した上、自ら又は職員を介して、設計価格又は予定価格をZ2社に漏えいして談合に加担したとして、旧小淵沢町の執行機関の訴訟承継人である第一審被告に対し、地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき、補助参加人会社ら及びZ1に対し、民法709条及び719条に基づく上記損害及び弁護士費用相当分の損害及びこれに対する不法行為の後である平成18年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するよう求める住民訴訟である。

(3)  原判決は、補助参加人会社らの談合を認定した上、第一審原告らの請求につき、補助参加人会社らに原判決別紙1談合工事一覧表記載の損害額の支払を請求するように求める限度で認容(弁護士費用相当分については棄却)し、補助参加人Z1について、設計価格又は予定価格を漏えいしたことを認める的確な証拠がないとして、補助参加人Z1に対する第一審原告らの請求を棄却した。そこで、補助参加人会社らが、敗訴部分を不服として、また第一審原告らが、補助参加人Z1に対する請求が棄却されたことを不服として、それぞれ控訴をしたものである。第一審原告らは、当審において、Z1の行為は、談合の幇助である旨の主張に変更した。

2  前提事実、争点及び争点についての当事者の主張

前提事実、争点及び争点についての当事者の主張については、3に「当審における当事者の主張」を付加し、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の「2 前提となる事実」、「3 争点」及び「4 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決5頁18行目の「(甲7)」を「(甲7 小淵沢町作成の「小淵沢町建設工事競争入札参加者の資格及び選定要綱」《以下「選定要綱」という。》の3条1項)」に改める。

(2)  原判決7頁1行目の「金入り設計書」を「設計価格(単価、金額)が記載された設計書(以下『金入り設計書』という。)」に改める。

(3)  原判決7頁8行目から14行目末尾までを以下のとおりに改める。

「(3) 平成17年度における旧小淵沢町発注工事(平成17年4月27日から同年11月10日までの入札実施分。ただし設計を除く。)

旧小淵沢町は、別紙2(本判決添付のもの)平成17年度落札結果表記載の各工事(平成17年4月27日から同年11月10日までの入札実施分87件の工事。ただし、設計を除く。以下、同表記載の工事番号を付して当該工事を特定する。)について、それぞれ指名競争入札を実施し、別紙2平成17年度落札結果表の指名業者1(落札業者)欄記載の各業者が落札した。各工事の設計価格、予定価格、落札価格、落札率(予定価格に対する落札価格の割合。小数点3桁以下は四捨五入する。)、工種、入札に参加した各指名業者及び落札業者の業者名、入札価格(設計価格、予定価格、落札価格及び入札価格はいずれも消費税抜きの価格であり、契約価格は落札価格に消費税が加算されたものとなる。)は、別紙2平成17年度落札結果表記載のとおりである(甲5、70の1ないし14、88の1及び3、丁20、弁論の全趣旨)。

(4)  平成16年度における旧小淵沢町発注工事(ただし、設計を除く)の落札結果

旧小淵沢町は、別紙3平成16年度新・落札結果要旨表記載の各工事について、それぞれ指名競争入札を実施し、同表記載の指名業者1(落札業者)欄記載の各業者がそれぞれ落札した。各工事の設計価格、予定価格、落札価格、落札率(予定価格に対する落札価格の割合。小数点3桁以下は四捨五入する。)、属性(工種)、入札に参加した各指名業者及び落札業者の業者名、入札価格(設計価格、予定価格、落札価格及び入札価格はいずれも消費税抜きの価格であり、契約価格は落札価格に消費税が加算されたものとなる。)は、別紙3平成16年度新・落札結果要旨表記載のとおりである(甲35、弁論の全趣旨)。」

(4)  原判決7頁15行目の「(4)」を「(5)」に改め、17行目の「原告らが談合であると主張する」の次に「平成17年4月27日から同年11月10日までの入札実施分の」を加える。

(5)  原判決14頁20行目から21行目の「の証言によれば、以下の事実が認められる。」を「は、次のとおり証言する。」に改める。

(6)  原判決15頁4行目の「事実が認められる」を削る。

(7)  原判決16頁16行目の「同年4月4日(月)に、」を削り、18行目の「作成した。」の次に「その作成年月日は、同年4月4日ではなく、その後に本件町外5業者及び舗装の入札参加業者としてZ2社を含む補助参加人会社らが確定した後に作成された。」を加え、19行目から20行目の「と主張する」を削る。

(8)  原判決16頁21行目の「Z1が主張する」を「Z1が行った」に改める。

(9)  原判決20頁14行目から15行目の「設計価格(単価、金額)が記載された設計書(以下「金入り設計書」という。)」を「金入り設計書」に改める。

(10)  原判決23頁18行目の「(以下「a1」という。)」を「(以下「a1」という。)」に改める。

(11)  原判決30頁20行目の「上記平成16年度の舗装工事を除いた他の工事の平均落札率」を「上記平成16年度の舗装工事を除いた他の工事の平均落札率(76.77%)」に、22行目の「上記平成16年度の舗装工事の平均落札率」を「上記平成16年度の舗装工事の平均落札率(56.72%)」にそれぞれ改める。

3  当審における当事者の主張

(1)  第一審原告ら

Z1は、以下の行為を行い、Z2社を含む入札業者が談合を行うことを幇助した。このZ1の責任の根拠につき、民法719条1項前段に基づく責任を主張したが、控訴審においては、Z1の責任の根拠を民法719条2項の「幇助」に変更する。

ア 不正業者指名について

Z1は、Z2社が入札参加業者に談合の働きかけをすることを知りながら、Z2社から入札参加業者の組み合わせの指示を受け、B建設課長にZ2社の指示どおりの選定をした指名業者案を作成させ、入札業者の指名権を濫用して談合を容易に実行することのできる指名業者の組み合わせを実現し、もって談合を幇助した。

イ 設計価格又は予定価格の漏えいについて

Z1は、みずからあるいはB建設課長その他の職員を介して、Z2社をはじめ特定の業者に設計価格又は予定価格を漏えいした。また、設計価格の記載された指名案を役所内にて回覧させ、事実上公開するなどして指名業者名、設計価格又は予定価格を漏えいし、もって談合を幇助した。

原判決は、設計価格については、Z1のほか、Bや設計を担当した業者の関係者も知り得る立場にあったことから、Z1がZ2社に対して本件工事76の設計価格又は予定価格を漏えいした事実を認めなかったが、Bは、本件では一貫してZ1の指示の下に行動しているのであり、Bが関与したのであれば、それはZ1の関与を物語る。設計を担当した業者の関係者等が知り得るというのは抽象的な可能性にすぎず、このことからB、Z1の関与を排除したのは、事実認定に関する経験則、条理に反している。

(2)  第一審被告

ア 北杜市における平成17年度及び平成18年度の平均落札率は、95.6%、平成19年度は95.3%、平成20年度も95.9%であって95%を超えている。原判決が「公正な競争がなされた場合の平均落札率は80%が相当である」と判断したが、これは北杜市において入札業務に携わる担当者の実務感覚と大いに異なっており、この点は誤りである。

イ 仮に、第一審被告に損害が発生していると認められる場合には、公正な競争によって決定される落札価格は談合の結果、実際には形成されなかったものであり、また、その落札価格は、当該具体的な工事の種類、規模、場所、内容、入札当時の経済情勢及び各社の財務状況、当該工事に係る入札への参加者数並びに地域性と多種多様な要因が複雑に絡み合って形成されるものであるから、これを証拠に基づき具体的に認定することは極めて困難である。したがって、賠償額の算定に当たってはある程度手堅く控えめな金額をもって認定されることもやむを得ないのであり、本件に現れた一切の事情を考慮すれば、第一審被告の被った損害額は、各工事の契約金額の5%に相当する金額を損害として認定すべきである。

(3)  補助参加人会社ら

ア 旧小淵沢町の入札制度において、談合は不可能ないし著しく困難である。

平成17年度の旧小淵沢町の入札制度は、①「指名競争入札通知書」は業者ごとに個別に渡され、現場説明会は、複数の案件について同一会場で同時に実施されるなど、特定の工事の指名業者の組み合わせは分からないようにされていること、②入札書とともに積算内訳(見積書)の提出が義務づけられ、予定価格調書作成時には、業者は既に入札会場に集まっている時間となっており、町長が当該工事の設計価格を知るのは、入札直前であり、設計価格をZ2社に漏えいする暇がないこと、③予定価格は、業者が入札会場に集まっている時間帯に設計価格から何%かを切り下げて決められ、しかも、その切り下げる割合は工事毎に異なるから入札参加業者がこれを正確に知ることは不可能である。

イ a2(以下「a2」という。)の代表者C(以下「C」という。)の証言は信用出来ない。

Cは、Z2社らが入札参加業者に指名されなければ、a2が従前どおり舗装工事を受注できるという関係にあり、Z1とZ2社を陥れる強い動機がある。またCがDを訪ねた日時より以前である平成17年4月4日には、指名業者が格付表により決められていて、既に、a2が指名業者から外されていた。さらに、a2が平成16年度に落札した舗装工事はダンピングの疑いが強い。このような事実からCの証言は信用できない。

ウ 平均落札率の上昇には合理的な理由があること

平成16年度の舗装工事はダンピングの疑いがあり、平成17年度の平均落札率の上昇には合理的理由があるから、平成16年度と平成17年度の落札率の安易な比較は誤っている。落札率は、当該工事の個別具体性により高くも低くもなるのであり、落札率の高さは、あくまで談合が存在した事実と矛盾しないというにすぎない。旧小淵沢町を除く北杜市の発注した舗装工事、山梨県の峡北林環部、峡北農務部、峡北林建設部の発注した舗装工事の平均落札率は、北杜市が97.37%、峡北林環部が98.08%、峡北農務部が95.87%、峡北林建設部が96.44%であり、90%台の落札率は適正な価格であって不自然ではない。一方、旧小淵沢町の平成15年度の水道工事において、a3(以下「a3」という。)が落札率96.47%で(丁2の3)、また平成16年度の水道工事において、a4(以下「a4」という。)が95.77%、a5が97.06%、又は98.00%の落札率で(甲33の3、35)、それぞれ落札しているのであり、落札率の高さは結果論にすぎない。

(4)  補助参加人Z1

ア Z1は、B課長に入札参加資格基準及び建設業者格付表の作成を指示するに当たり、その内容について特段の注文は付けていない。Z1はBの選定につき、特段不自然なものでないためこれを承認した。

原判決が、落札率が95%以上に上昇したことにつき談合によるものであり、町外業者を指名し、落札率が低い町内業者の指名を減少させたことにより、談合が容易にできる環境を作ったものと断定しているが、これは入札参加業者の指名につき、業者の格付表及び入札参加資格表を機械的に適用して指名した結果にすぎず、これを談合を容易にする意図的なものとみることは不当である。

イ 予定価格の決定も、入札会場に業者が入った後、入札の30分前ころに決定しており、それ以前に業者に漏えいすることはできない。

4  争点

本件の争点は、①補助参加人会社らは、平成17年度の旧小淵沢町の発注工事のうち、第一審原告らが指摘する原判決別紙3損害一覧表記載の22件の各工事について、入札に関し談合をしたか(争点1―談合の有無)、②Z1は、上記22件の各工事の入札に関し、指名権を濫用してZ2社の意に沿った指名業者を決定し、また指名業者名、設計価格又は予定価格を漏えいするなどして、公正な自由競争を妨げる補助参加人会社らの談合を幇助したか(争点2―Z1の談合幇助の有無)、③談合又はこれに対する加担(幇助)が認められる場合に旧小淵沢町に発生した損害額はいくらか(争点3―損害額)である。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所は、第一審原告らの請求は、第一審被告が、補助参加人Z1に対し、4007万4405円、同Z2社に対し3218万3445円、同Z3社に対し126万4200円、同Z4社に対し311万2725円、同Z5社に対し58万2855円、同Z6社に対し109万7355円及び同Z7社に対し183万3825円並びに前記各金員に対する平成18年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求すべきことを求める限度において理由があり、その余は理由がないものと判断する。

その理由は、後記2ないし5のとおり付加し、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1項に記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決31頁14行目、70頁4行目の「一番の」をそれぞれ「最大手の」に改める。

(2)  原判決32頁12行目の「立候補を反対し」を「立候補に反対し」に改める。

(3)  原判決34頁13行目の「Z2社の支援を受けた」を削る。

(4)  原判決38頁8行目、41頁14行目、42頁14行目において引用された「別紙5」を本判決添付の「別紙5」に改める。

(5)  原判決41頁10行目の「証拠(甲32)」を「証拠(甲32の1・2)」に改める。

(6)  原判決43頁8行目の「本件格付表(甲36)」を「本件格付表(甲36の4枚目以下)」に改める。

(7)  原判決46頁12行目から13行目の「舗装工事を除いた平均落札率をみても、平成16年度は76.76%である」を「旧小淵沢町の平成16年度における舗装工事を除く、各工事全部の予定価格の合計は7億8677万8000円であり、その落札価格の合計は6億0400万円であるから、平成16年度の舗装工事を除く全工事の平均落札率は76.77%(小数点3桁以下、四捨五入)である」に改める。

(8)  原判決47頁1行目の「76.6%」を「76.77%」に改める。

(9)  原判決47頁5行目、14行目、48頁12行目、18行目、49頁1行目、50頁12行目、51頁25行目、52頁10行目、23行目、56頁9行目、13行目、24行目、57頁13行目、58頁1行目、62頁18行目、63頁1行目、13行目、17行目、64頁1行目、23行目、65頁4行目、69頁12行目、71頁8行目、72頁18行目、73頁18行目の「推認」をそれぞれ「推計」に改める。

(10)  原判決47頁9行目の「以下、各工事」を「以下、平成17年度の各工事」に改める。

(11)  原判決47頁20行目の「86.6%」を「86.58%」に改める。

(12)  原判決49頁14行目の「355万円ないし374万円」を「3550万円ないし3740万円」に、15行目の「430万円」を「4300万円」に、それぞれ改める。

(13)  原判決50頁25行目の「97.6%」を「97.57%」に改める。

(14)  原判決51頁6行目の「いずれも高率であり」の次に「この4件の工事の予定価格の合計は1億2560万円で、落札価格の合計は1億1820万円であるから」を加える。

(15)  原判決52頁12行目の「経費率は30ないし40%と高く」の次に「(証人A40頁、丙1資料10―1)」を加える。

(16)  原判決52頁17行目の「証拠(甲41)」を「証拠(甲41資料1)」に改める。

(17)  原判決57頁22行目の「95.56%」を「95.67%」に改める。

(18)  原判決60頁16行目、61頁25行目及び70頁21行目から22行目の「安全性点数」をそれぞれ「安定性点数」に改める。

(19)  原判決64頁20行目の「98.72%」を「97.72%」に改める。

(20)  原判決65頁26行目の「a6・Z2社JV」を「Z2社・a6JV」に改める。

(21)  原判決66頁18行目の「受注価格の低落を図るため」を「受注価格の低落防止を図るため」に改める。

(22)  原判決75頁2行目から3行目の「『小淵沢町建設工事競争入札参加者の資格及び選定要綱』第7条(6)(甲7)」を「選定要綱7条(6)号(甲7)」に改める。

(23)  補助参加人会社らは、当審において、第2の3(3)のとおり、本件工事の入札が談合によるものでなく正当な競争入札に基づくものである旨の主張反証等を行った。そこで、原判決の以下の部分を削除する。

① 原判決48頁6行目の「このように」から10行目の「主張反証等を行っていない。」

② 同49頁5行目の「このように」から9行目の「主張反証等を行っていない。」

③ 同50頁2行目の「このように」から6行目の「主張反証等を行っていない。」

④ 同53頁7行目の「このように」から12行目の「主張反証等を行っていない。」

⑤ 同56頁1行目の「このように」から5行目から6行目にかけての「主張反証等を行っていない。」

⑥ 同58頁13行目の「このように」から16行目から17行目にかけての「主張反証等を行っていない。」

⑦ 同59頁23行目の「このように」から同60頁1行目から2行目にかけての「主張反証等を行っていない。」

⑧ 同61頁9行目の「このように」から13行目から14行目にかけての「主張反証等を行っていない。」

⑨ 同64頁10行目の「このように」から15行目の「主張反証等を行っていない。」

⑩ 同68頁11行目から12行目にかけての「にもかかわらず」から16行目の「主張反証を行っていない」

⑪ 同69頁22行目の「このように」から26行目の「主張反証等を行っていない。」

⑫ 同71頁18行目から19行目にかけての「にもかかわらず」から21行目から22行目にかけての「主張反証等を行っていない」

⑬ 同72頁26行目から同73頁1行目にかけての「にもかかわらず」から3行目から4行目にかけての「主張反証等を行っていない」

⑭ 同74頁3行目の「このように」から7行目の「主張反証等を行っていない。」

2  本件の特色と事実認定・判断のあり方

本件は、住民が法と証拠に基づき地方公共団体の財政規律の是正を求めるという住民訴訟本来の目的を有するものである。本件の対象は、公共工事の談合であるが、公正取引委員会の審判手続による審決がされているものではなく、刑事手続が先行しているものでもない。すなわち、本件においては、直接証拠はない。そこで、住民である第一審原告らとしては、文字どおり徒手空拳の状態で資料を収集・分析し、事実を推理して主張を展開し、裁判所の判断を求めるほかないのである。これは困難な作業であるが、第一審被告補助参加人らの立場を考慮すると、本件要証事実についても、通常の民事訴訟と同じく、高度の蓋然性が認められるレベルで証明されることが必要であり、証明度を軽減することは相当とは解されない。

このような場合には、裁判所としては、第一審原告らにおいて主張し証明しなければならない事実(要証事実)に関し証拠及びそこから導かれる間接事実から推認することができるかについて、経験則を駆使し、洞察力の限りを尽くして、事実認定・判断をしていくことが必要である。すなわち、本件の特色に即した事実認定・判断が求められるのである。

以下に説示するところは、当裁判所として、上記のような姿勢で、中立的な立場に立ち、事柄を虚心に捉え、どのような事実があったと考えるのが経験則に合致し、合理的であるかを、慎重の上にも慎重に認定・判断したものである。

3  争点1(談合の有無)について

(1)  関係証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

ア 旧小淵沢町における公共工事の入札手続

(ア) 旧小淵沢町では、公共工事の入札においては、平成17年度及びそれ以前の数年間も含め、指名競争入札による設計価格及び予定価格(設計価格から一定の割合を歩切りした価格)、指名業者の組み合わせを公表しない最低価格自動落札方式が採用されていた(甲32の1・2)。

(イ) 旧小淵沢町の公共工事については、選定要綱が定められ、入札参加を希望する業者は、あらかじめ選定要綱の第2条ないし第4条等の手続を履践し、入札参加者名簿に登載される必要があり、また工事を執行しようとする所管課長は、選定要綱に基づき、資格審査一覧表(別表1)及び入札参加資格基準審査一覧表(別表2)を作成して小淵沢町競争入札参加業者選定委員会の審査を経ることとされていた(甲7)。ただし、実際には年度ごとに選定要綱どおりの別表1、2が作成されていたのではなく、前年までの別表1に記載された業者について選定委員会の構成員の意見を聞き、問題がなければ、入札参加業者として決定することとされていた(甲8)。

(ウ) Bの前任者にあたる平成16年度の建設課長であるEは、年度の初めに工事工種ごとにそれまでの実績等を基にして入札指名の候補となるべき業者の一覧表を作成し、総務課長に渡していた(甲49)。平成13年度、平成14年度の建設課長であり、平成16年度、平成17年度の総務課長であったFは、建設課長のときには、①山梨県土木発行の経営審査書に基づき「入札参加者名簿」を確認し、②年度ごとに「当該業者の総合数値、等級」を記載した「候補者」の名簿を作成し、総務課長に公文書としてではなく手持ち資料として渡していた(甲81の1・2、丁49)。工事の所管課長は、建設課長が作成した「候補者名簿」を参考にして入札指名業者案を作成していた(弁論の全趣旨)。

(エ) A町長は、町長自身は入札参加業者の選定には関わらないことが望ましいと考え、所管課から業者選定案が作られて入札手続担当課である総務課に提出され、総務課の意見が付された上、指名検討委員会を経て町長の決裁をするという方式を採用していた(証人A、17頁)。これに対して、Z1町長は、所管課長が指名参加資格のある業者の中から指名業者案を作成した段階で、入札担当課である総務課の課長に提出される前に、所管課長から工事内容及び入札参加業者の説明を受けていた(第一審被告自認、原審準備書面(2)、第1、1、当審Z1)。

(オ) 平成5年1月にAが町長となる前のG前々町長の時代には、旧小淵沢町の公共工事の多くは3回まで行われる入札においてすべての入札参加者が予定価格より高い価格で入札し、最終的にZ2社が随意契約でほぼ予定価格と同額で契約するという方法で落札されており、平均落札率は99%以上であった(甲14)。その当時の建設課長はZ1であり、Bは建設課に勤務し、一時係長であった。

(カ) Aは、平成5年に町長に就任後、公共工事の入札で談合をさせないため、指名競争入札において業者の数を多くして指名業者を分からなくする、追加指名を行う、同一工事の二度入札・同時開札、確実に談合に応じないと見られる業者を指名業者に入れるなどのさまざまな工夫を実践した。その結果、随意契約は例外的なもの以外はなくなり、落札率(落札価格/予定価格)は、平成5年が90.7%、平成6年が91.9%、平成7年が92.2%、平成8年が92.9%、平成9年が93.4%、平成10年が89.6%、平成11年が87.5%、平成12年が90.0%、平成13年が85.6%、平成14年が88.2%、平成15年が86.64%、平成16年が75.43%と低下した(甲14、丁2の2・3)。

イ 本件格付表の作成経緯、作成方法及びその運用結果

(ア) 平成17年1月28日から旧小淵沢町の町長が、AからZ1に替わった。Z1は、A町長時代の入札執行のあり方に批判的見解を持っていたことから、町長就任後、全体を見直すとして同年3月まで公共工事の入札を実行しないことを課長会議で決定し、Bを建設課長に任じた上、本来は、F総務課長がすべき業務ではあったが、Bに指示をして、入札参加基準を北杜市の基準に合わせるべく変更するとともに、併せて入札参加業者の入れ替えをした(丙1、当審Z1)。

(イ) Bは、Z1の指示に基づき、本件格付表を作成した。本件格付表には、舗装工事の業者名のうち、Z2社を除く補助参加人会社らの業者名の横にレ印が付けられている(甲36)。

(ウ) 平成17・18年度入札参加資格申請受付簿によれば、Z5社の入札参加申請が受け付けられた順番は、1094番中の1084番である(丁21)。

(エ) Bは、平成17年4月14日付けにて本件工事1、2、3、5、6の5件の工事の外1件の設計業務について入札執行依頼書を作成した(甲77)。この入札執行依頼書には、現場説明日時、入札日時、工事名、事業量、工期、指名業者名、設計価格までが記載されているが、各工事の設計価格は、別紙2平成17年度落札結果表記載の各工事の設計価格と異なっている。このうち、本件工事6の設計価格について、同依頼書には1285万7143円(税抜)と記載されている(甲77)。

ウ 旧小淵沢町における平成16年度及び平成17年度の入札及び落札結果

(ア) 旧小淵沢町における平成16年度及び平成17年度(平成17年4月27日から同年11月10日までの入札分)の指名業者と落札回数は別紙5のとおりである(平成17年12月及び平成18年1月分の入札を加算すると各業者の指名回数と落札回数が別紙5と若干異なるが、第一審原告らが監査の対象としたのは、平成17年11月10日の入札分までであるので、平成17年12月及び平成18年1月分は審理の対象ではない。以下、「平成17年度」とあるのは、入札結果に関するものは、平成17年11月10日の入札分までを意味する。)。

(イ) 平成17年度には、入札参加業者が大幅に入れ替えられ、Z2社の外、Z7社、Z5社、Z6社、Z3社、a7(以下「a7」という。)、a8(以下「a8」という。)、a9(以下「a9」という。)、a10(以下「a10」という。)、a11(以下「a11」という。)が新たに指名業者となった。上記の業者は、Z2社以外は、いずれも町外の業者である。

(ウ) 平成17年度における入札及び落札結果は、別紙2平成17年度落札結果表記載のとおりである。Z2社を除く上記9業者は、それぞれ8回から十数回指名され、1回から数回落札した。これ以外に落札した町外業者は、本件工事45(建築工事)のa12(以下「a12」という。落札率99.02%)だけである。

(エ) Z4社は、平成16年度も舗装工事で指名されていた町外業者であるが1回も落札できなかった。ところが、平成17年度には舗装工事その他で13回指名され、舗装工事を4回落札した。

(オ) Z2社は、平成16年度までは入札参加業者に指名されていなかった。ところが、平成17年度においては土木、建築、舗装、管工事のすべての工事について、入札参加業者として指名され、合計30件の工事について指名を受けて、うち11件を落札した。

(カ) a13(以下「a13」という。)は、土木、建築、舗装、管工事の建設工事の許可を有する町内業者であり、平成16年度も土木、管工事の入札参加業者に指名されていたが、平成17年度は土木で14回指名されて4回落札し、管で3回指名されて1回落札した(甲5、6、丁21)。平成17年度においては、本件格付表に管工事業者として1社のみ入札参加業者として選定されていたのにもかかわらず、管工事である本件工事19、42、50には指名されなかった(甲5、36)。

エ 業者の積算ソフトの利用

入札に参加する業者は、積算ソフトを利用して工事価格を算出する。そして、積算ソフトの利用により、旧小淵沢町の想定する工事の設計価格の近似値を推計することができ、その誤差は±5%程度である(甲64、丁30)。また、設計価格からの歩切りの割合は数%であるから、予定価格の推計は必ずしも困難な作業ではない(証人H、同I、代表者J、同K)。

オ 平成17年度における入札及び落札結果の分析

(ア) Z2社の落札率は、本件工事35を除くと97.36%であり、これを含めても96.61%である。

(イ) 本件工事35にはa13が指名業者として入札に参加した。a13が指名業者として参加した工事は、別紙4平成17年度a13入札参加分記載のとおりである。これらの各工事の落札率は、本件工事2が71.94%、本件工事5が74.03%、本件工事14が87.27%、本件工事16が87.93%、本件工事28が83.02%、本件工事29が79.23%、本件工事31が72.45%、本件工事35が72.26%、本件工事40が66.67%、本件工事44が78.99%、本件工事46が89.60%、本件工事47が96.03%、本件工事56が83.48%、本件工事66が84.64%、本件工事70が71.40%、本件工事77が77.35%、本件工事78が85.47%、本件工事81が85.05%、本件工事82が79.26%である。また、a13が入札に参加した19件の工事の平均落札率は79.02%であり、a13が落札した工事5件の平均落札率は80.66%である。

(ウ) Z7社、Z5社、Z6社、Z3社、Z4社、a7、a8、a9、a10、a11、a12はいずれも町外業者であるが、原判決別紙4記載のとおり、平成17年度の上記町外業者が落札した全工事の落札率は95.91%である。平成16年度の町外業者の落札率は65.81%であったのに対し、同17年度は30%以上上昇した。

(エ) 平成16年度の旧小淵沢町発注工事の平均落札率は、75.43%であった(別紙3平成16年度新・落札結果要旨表)。これに対し、平成17年度の旧小淵沢町発注工事の平均落札率は、94.08%であり、18.65%上昇した。

(2)  上記認定事実に基づき、原審及び当審において、補助参加人会社らが主張するところにも言及しながら、談合の有無について判断する。

ア 平成17年度発注工事の平均落札率が94.08%であることの意味

上記(1)オ(エ)のとおり、平成16年度の旧小淵沢町発注工事の平均落札率が75.43%であったのに対し、平成17年度の旧小淵沢町発注工事の平均落札率は、94.08%であり、18.65%上昇したことが認められる。そして、平成16年度と平成17年度の違いとしては、①談合の阻止に意欲的であったA町長が退任し、Z1町長となってから途端に平均落札率が上昇していること、②平成17年度においては、平成16年度と対比して、町外業者の平均落札率が著しく増加し、殊に落札率95%以上の工事の大半は平成17年度に新しく入札参加業者に指名された町外業者によるものであること、③Z2社は平成17年度に実施された各工事の入札のうち、合計30件の工事につき入札参加業者として指名され、うち11件を落札し、その落札率は、本件工事35を除くと97.36%であり、有意的に高いこと、④入札指名業者が減少し、談合することが従前よりも容易にできる環境が形成されたこと、⑤追加指名などの談合防止施策が採られなかったことなどがある。平均落札率が高いという事実は、補助参加人会社らも認めるとおり、談合があったことと矛盾しない事実である。

これに対して、平成17年度においても、a13が指名業者として入札に参加した工事については、上記(1)オ(イ)のとおり、19件の工事の平均落札率は79.02%、a13が落札した5件の工事の平均落札率は、80.66%である。ただし、本件工事47はa13が入札参加業者として入札に参加しているものの落札率は96.03%と高率であり、この落札率からみれば、本件工事47については、談合が成立していたことと矛盾しないこととなる。しかし、この本件工事47を含めても、上記のとおりa13が入札参加業者として入札に参加した工事の平均落札率は79.02%、a13が落札した5件の工事の平均落札率は80.66%であって発注工事全体の平均落札率94.08%と比べて有意的に低い。これらの事実からすると、少なくとも、a13は、平成17年度の大部分の工事において談合に応じることなく、競争による入札をしたものと推認することができる。したがって、a13が指名業者として入札に参加した各工事(本件工事47を除く。)の入札においては、談合がされずに競争があったものと認められる。

イ Z2社の工事落札の特徴

平成17年度の入札及び落札結果において、特に際立つことは、Z2社が平成17年度に実施された各工事の入札のうち、合計30件の工事につき入札参加業者として指名され、うち11件を落札したことである。他にそのような業者は見当たらない。この30件の工事について、設計価格、予定価格とZ2社の工事価格、入札価格、及び落札価格、落札率(落札価格/予定価格)をまとめると別紙6のとおりとなる。これによると、Z2社は、設計価格を概算した工事価格が設計価格に比して、107.62%から91.44%の間に分散しているが、入札価格は予定価格に比して、102.71%から94.09%の間に収斂し、さらに落札価格は予定価格に比して、98.32%から95.05%に収斂している(ただし、設計価格が変更となった本件工事6とa13が指名業者として参加した本件工事35を除く。)。上記のとおりZ2社の工事価格は、設計価格と+7.62から-8.56の誤差があり、平成17年度の旧小淵沢町の舗装工事の歩切り率(予定価格/設計価格)は4.52%から3.07%の間に分散している(別紙2から算出)ことからすると、Z2社が落札した工事の落札価格が、予定価格の98.32%から95.05%に収まるということは通常では考え難いことであり、Z2社は予定価格を知っていたのではないかとの合理的な疑いを生じさせる。また、Z2社がこのような高い落札率で落札することを可能にするためには、他の入札参加業者がそれより低い入札価格を入れないことが必要であるから、Z2社は他の指名業者が誰であるかを知り、その業者らとの間で談合が成立していたのではないかとの合理的な疑いを生じさせる。

そこで、第一審原告らが談合があったと主張するZ2社が落札した10件の工事(本件工事35を除く。)及び舗装工事12件(Z2社が落札した2件の舗装工事は先の10件に算入している。)の計22件の工事の入札について、Z2社と他の入札参加業者との間で談合がされたものと推認することができるか否かについて判断する。

ウ 第1回目の平成17年4月27日の入札について

(ア) 第1回目(4月27日)には、土木工事である本件工事1、2、3、管工事である5、6の入札及び落札があった。これらの工事の所管課は建設課であり、指名業者案はBが作成し、Z1が決裁した(当審Z1)。第一審原告らは、本件工事3と6には談合があったと主張する。そこで、この点について検討する。

本件のような公共工事の指名競争入札における談合とは、指名された入札業者が互いに通謀し、ある特定の落札希望者をして契約者とするために他は一定の価格以下に入札しないことを協定することである。したがって、談合を成立させるためには、設計価格を正確に積算することができれば、予定価格を知ることまでは必要ではないが、入札に参加する業者間で「契約者とする落札希望者」と「落札価格」についての協定を行うのであるから、まずは指名された入札業者が誰であるかを知ることが必要となる。また、指名業者が判明後、業者間で上記協定をするのであるから、談合が成立するためには、この指名業者とされた業者の中に談合に応じない業者がいないことが必要となる。

この点について、補助参加人会社らは、旧小淵沢町においては、指名競争入札通知書は業者ごとに個別に渡され、現場説明会は、複数の案件について同一会場で同時に実施されるから、特定の工事の指名業者の組み合わせは分からず、談合は不可能である旨主張する。

別紙2平成17年度落札結果表によると、平成17年4月27日の5件の工事の入札について、同時に行われたという同年4月20日の現場説明会(丁23)には、合計17業者が参加したこととなる。

この5件の工事のうち、a13は、土木工事の本件工事2と管工事の本件工事5の入札に参加し、本件工事2は71.94%で町内業者のa14(以下「a14」という。)が、本件工事5は74.03%でa13が落札している。これらの落札率が発注工事全体の平均落札率94.08%よりも低率であることから、本件工事2、5については競争が行われたことが推認され、したがって、談合は成立していないとみてよい。一方、本件工事1、3、6は、a13が入札に参加せず、Z2社が入札に参加しており、本件工事1は88.37%で町内業者であるa15(以下「a15」という。)が、本件工事3は98.32%でZ2社が、本件工事6は96.70%でZ2社が落札している。

補助参加人会社らは、(1)エのとおり、積算ソフトを利用して工事価格を算出し、予定価格の推計は容易にできるのであるから、本件工事1、3、6の入札において、真に競争が行われたのであれば、設計価格及び予定価格を予想し、少なくとも予定価格以下で入札をするのが入札参加業者としての合理的行動であると解される。ところが、本件工事1、3、6については、落札業者以外はいずれも予定価格を超えた価格で入札しており、真に工事の落札を目指す者の行動としては、不自然、かつ不合理である。本件工事1、3、6と本件工事2、5との落札率の相違は、同一の機会に行われた入札の結果としては、奇異なことというほかない。

一方、談合が成立するためには、上記のとおり指名業者とされた業者の中に談合に応じない業者がいないことが必要となる。本件においては、これらの5件の工事の現場説明会が同時に行われ、その場に談合に応じることなく入札していたa13がいた。a13は本件格付表の土木と管の両方に有資格業者として選定されており、現に本件工事2の土木工事、5の管工事の両方に指名を受け現場説明会に出席した。a13は、5件の工事の設計価格は公開されていないから、本件工事1、3、6についても指名を受ける資格を有し、実際に指名を受けている可能性がある。a13が本件工事5を74.03%で落札し、本件工事2についても85.32%(入札価格/予定価格)で入札していることからすると、a13が本件工事1、3、6の工事のいずれかに指名された場合には、同様に予定価格よりもかなり低い率で入札していたとみられるところ、そのようにした場合には、a15の88.37%、Z2社の98.32%、96.70%という高率での落札は成立しないこととなる。

ところが、上記5件の工事について現場説明会が同時に行われ、同じ町内業者であり、談合に応じないa13が同席していたのにもかかわらず、Z2社は、本件工事3及び6について、98.32%、96.70%という高率の入札をした上、この2件をいずれも落札しており、しかも、落札業者以外はいずれも予定価格を超えた価格で入札している。この本件工事1、3、6の入札に参加した業者の入札にかかる行動は極めて不自然、かつ不合理であり、これらの業者、特に、Z2社は、a13が本件工事1、3、6については指名されていないこと、すなわち、a13がこれらの5件の工事のうち、どの工事に指名され、どの工事に指名されていないかを知っていたというほかに合理的な説明が困難である。

(イ) 本件工事6の入札参加業者は、880万円で落札したZ2社、辞退したa4、町内業者のa16、a17、a3の5業者である。a4は、本件工事5にも指名されており、本件工事5につき1220万円の入札をしているが、本件工事5が設計価格795万円、予定価格770万円の工事であることからすれば、a4は本件工事5の入札に間違って本件工事6の入札書類を提出したものと解される(甲88の6、90)。そうすると、本件工事6の指名参加業者らの入札価格は、a4が、本来、本件工事6の入札として予定していた金額は1220万円であり、a16が1270万円、a17が1245万円、a3が1231万円であり、またZ2社の工事積算価格も1296万8082円(丁12、21頁)であるから、設計価格940万円、予定価格910万円の工事としては、指名参加業者らの入札価格及び工事積算価格は、いずれも設計価格を遙かに超えた高額なものとなっている。指名参加業者は、積算ソフトを使用して工事価格を積算しているのであるから、本件工事6の入札に参加した指名参加業者の全員が設計価格より異常に高い価格で入札をすることは、通常は考えられない。

ところで、Bが作成した平成17年4月27日の入札分の5件の工事の入札執行依頼書(甲77)によると、本件工事6についての設計価格が1285万7143円とされていることが認められる。この点につき、第一審被告は、Bがダクタイル鋳鉄管の単価を誤って2万5000円/mとして計算し、入札執行依頼書にその単価に基づく計算結果を記載したものである旨主張する。しかし、実際に行われた本件工事6の設計価格は、その設計概要(丁52の1)に明らかなとおり、ダクタイル鋳鉄管の施工を前提にダクタイル鋳鉄管の単価を3025円/mとして工事価格940万円と積算されており、この工事価格は単価等を含め正しいものといえる(甲89の1・2、90)。ところが、Bが一旦作成した入札執行依頼書の設計価格1285万7143円という金額は、その根拠は不明ではあるが、a4、a16、a17、a3が本件工事6の入札において提示した入札価格に近似したものとなっている。また、同様にZ2社が本件工事6について積算した工事価格とも近似している。これらの本件工事6の指名参加業者が一様に本件工事6の予定価格910万円を超過して、積算ソフトを使用した工事価格としては考えられない金額である1220万円から1270万円を入札価格とし、Z2社も同様な工事価格を積算しているのは甚だ奇妙というほかない。もっとも、本件工事6について、Bが作成した甲77の入札執行依頼書に記載された本件工事6の設計価格1285万7143円という数字を入札参加業者が知っていた、換言すれば、この数字が漏えいされていたとすれば、この事態を合理的に説明することができる。

さらに、Z2社は、本件工事6について、1296万8082円で積算しておきながら、本来の予定価格である910万円に近似した880万円で入札し、落札している。これは積算した工事価格から416万円余も値引きするものであり、競争入札に参加する工事業者の行動としては不可解極まりない。この点について、Z2社は、当初の工事価格の積算において、直接工事費を高く見積もりすぎた積算ミスがあったと言い、その積算のデータは処分してしまって残っていない旨弁解する(丁54)。しかし、これは、第一審原告らから甲77を前提とする主張がされるまでは、積算ソフトを使用し自社で算出すれば、役所の設計価格に限りなく近い価格を算出することができると陳述していたこと(丁30)と明らかに矛盾する。そもそも、Z2社の積算価格の根拠は薄弱である上、積算ミスの内容も不明であり、減額の幅が極めて大きいにもかかわらず、結果として予定価格に近い入札価格となったことの説明としては、全く不十分である。また、真に積算ミスであるとすれば、a4、a16、a17、a3も同様に積算ミスをしていたことになり、これまた経験則上極めて不自然であり、このような弁解を信用することはできない。

以上によれば、指名参加業者が一様に本件工事6の入札価格及び工事価格を1220万円から1270万円の高額なものとしながら、Z2社が入札価格を880万円と416万円も値引きをして入札した事実は極めて不可解であるが、甲77の入札執行依頼書の設計価格1285万7143円がZ2社ほかの入札参加業者に伝えられた後、その後に誤りに気付いた者から、入札直前にZ2社だけに正しい予定価格が伝えられたと考えれば合理的に説明することが可能である。

(ウ) 以上の検討によると、第1回目(4月27日)の入札の評価に当たっては、①土木工事の本件工事1、2、3、管工事の5、6の5件の工事について現場説明会が同時に行われ、a13が入札に参加した工事の落札率は本件工事2が71.94%、本件工事5が74.03%であるのに対し第一審原告らが談合があったと主張する本件工事3の落札率は98.32%、本件工事6の落札率は96.70%であり、同時に行われた入札における同種の工事の落札率との間に20%以上という有意的な差があること、②役所の設定する設計価格は、積算ソフトを使用すれば、誤差数%程度で容易に算出でき、予定価格の歩切り率もある程度推測が可能であるにもかかわらず、本件工事1、3、6の入札に参加した業者のうち、落札業者以外が、いずれも予定価格を超えた入札価格で入札をしていて、真に競争入札に参加している業者の行動としては不自然、かつ不合理であること、③同一の現場説明会の会場に談合に応じていなかったと認められるa13が同席しており、a13も本件工事1、3、6の工事に指名される資格を有し、どの工事に入札するのかが分からないとすれば、本件工事1、3、6の入札に参加する業者もa13の入札価格を意識した入札をするのが入札に参加する業者としての合理的行動であるのに、特に、本件工事3と6について、Z2社は、a13が指名されていないことを知っていたとしか説明できない高率の入札価格で入札し、他の指名参加業者も予定価格を超えた価格で入札し、Z2社が落札する結果になっていること、④本件工事6は、設計価格940万円、予定価格910万円の工事であるところ、この入札に参加または参加予定の業者の入札額及びZ2社の工事積算価格が積算ソフトを使用して算出した工事価格としては考えられない金額である1220万円から1270万円であり、これらの入札に参加または参加予定の業者の入札価格及びZ2社の工事積算価格が、Bが作成した入札執行依頼書(甲77)の設計価格1285万7143円と近似していること、⑤ところが、Z2社は、本件工事6について、積算した工事価格から416万円も大幅な値引きをして880万円で入札し、これを落札しており、工事業者の合理的な経済行動としては極めて不可解であること、⑥このZ2社の入札行動を合理的に説明するとすれば、甲77号証の設計価格1285万7143円という数字がZ2社ほかの入札参加業者に伝えられて、各業者が一旦その価格に近似した見積書を作成した後に、正しい設計価格及び予定価格がZ2社だけに伝えられたと解するほかないことなどの間接事実等が重要である。そしてこれらを総合すれば、本件工事3及び6の入札については、Z2社の意向に沿った入札参加業者が指名され、または指名された入札参加業者名が知らされ(漏えいされ)、さらに少なくとも本件工事6の設計価格もしくは予定価格がZ2社に知らされ(漏えいされ)、この2件の工事の入札に参加した業者の間でZ2社を落札者とする談合が成立していたことが推認されるというべきである。

エ 第2回目の平成17年6月8日の入札について

(ア) 第2回目(6月8日)には、本件工事7の電気工事、本件工事10ないし13の4件の舗装工事、本件工事14の土木工事、本件工事16の管工事の計7件の工事の入札及び落札があった。これらの工事の所管課は建設課であり、指名業者案はBが作成し、Z1が決裁した(当審Z1)。第一審原告らは、このうち本件工事10ないし13については談合があったと主張する。

そこで検討するに、この7件の工事のうち、本件工事10ないし13の4件の舗装工事については、Z2社を含む補助参加人会社ら6業者のみが指名され、それぞれ95.70%、95.63%、93.66%、96.41%の落札率でZ6社、Z7社、Z4社、Z3社が各一回ずつ、順番に落札している。この舗装工事の落札率は、上記のとおり高率である上、特徴的であることは落札価格と他の指名業者の入札価格との差の幅が、別紙7記載のとおり、本件工事10が3.15%、本件工事11が1.05%、本件工事12が5.90%、本件工事13が3.73%と極めて小さいことである。この点について、補助参加人会社らは、舗装工事は工種が少なく、また施工に必要な資材の種類も少なく、資材単価がほぼすべて山梨県の実施設計単価表に細かく掲載されていることから、設計価格の予測は、積算ソフトを使用することによりほぼ正確にできる旨主張し、補助参加人会社らの各証人も同様の証言をする。しかし、設計価格がほぼ予測でき予定価格の推測も出来たとしても、真に競争があれば、各社の努力により経費を削り、他の入札業者より少しでも安い入札価格で入札することになるはずである。それにもかかわらず、上記のように入札価格の分散率が低いということは、競争がされていないとの合理的な疑いを生じさせる。

ところで、舗装工事の見積書の工事費の内訳は、直接工事費、共通架設費(安全費+共通架設費《率分》)、現場管理費、一般管理費からなり、このうち、調達価格等を基準に算定するのは直接工事費と共通架設費の安全費分であり、共通架設費(率分)は直接工事費の一定割合、現場管理費は直接工事費+共通架設費の一定割合、一般管理費は、直接工事費+共通架設費+現場管理費の一定割合として、それぞれ算出される(甲80、丁30、33の2・4・8、35の2ないし13、弁論の全趣旨)。したがって、設計価格を正確に予測するには、直接工事費及び安全費の算出を正確にすることが前提となる。本件工事10ないし13についての補助参加人会社らの直接工事費について、落札業者の直接工事費を基準に比較すると別紙7のとおりであり、本件工事10が9.12%、本件工事11が8.78%、本件工事12が10.39%、本件工事13が9.51%と約10%程度のバラツキがある。舗装工事の工事費の内訳は、上記のとおりであって、直接工事費が約10%も相違している以上、入札価格は、それ以上の割合で相違してくるはずであるのに、本件工事10ないし13においては、逆に1.05%から5.90%の範囲に差が縮小しており、極めて不自然、かつ不合理である。このことは工事の入札に参加した指名参加業者が予定価格を知り、かつ、落札者を誰にするかを決定していた、すなわち、談合をしていたのではないかと強く疑わせる。

(イ) また、第2回目の入札の7件の工事のうち、a13は、本件工事14の入札に参加し、同工事は町内業者であるa18(以下「a18」という。)が落札率87.27%で落札した(別紙2平成17年度落札結果表)。上記6件の工事の入札の現場説明会は平成17年6月1日に行われた(丁33の8)が、当日出席した業者は、電気工事の5業者、舗装工事の補助参加人会社ら6業者、土木工事の5業者、管工事の4業者(a13は土木工事で算入済み)の計20業者である。しかし、電気関係の5社は舗装工事の指名を受けているはずがなく、管工事の指名を受けて出席していたa4、a3、a16、a17はいずれも舗装工事を受注する資格がない(甲15、55)。a15は、舗装工事について経営事項審査の評価がなく、舗装の建設業の許可を有していないと解される(甲55)。一方、a19は、本件格付表の土木工事と舗装工事に選定されている(甲36の3枚目以下)。a18は、本件格付表の舗装工事に選定されていないが、経営事項審査では舗装はBランクである(甲55)。a13は、本件格付表には、土木工事と管工事に選定され、舗装工事には選定されていないが、経営事項審査では舗装はBランクである(甲36の3枚目以下、55)。そして、本件工事の指名業者には、本件格付表の各工事の業者として選定されていない業者も指名されている。すなわち、管工事はa13だけが選定されているが、他の業者も指名されており、建築工事である本件工事43で指名された町外業者のa20(以下「a20」という。)、a21(以下「a21」という。)、a22(以下「a22」という。)、本件工事45で指名されたa23、a24は、本件格付表の建築工事の業者として選定されていない。

したがって、第2回目の入札における現場説明会において、本件工事10ないし13の各舗装工事の指名を受けていた可能性のある業者は、20業者のうち、補助参加人会社ら6業者とa19、a18とa13の9業者ということになる。また、このとき舗装工事としては、平成17年度の第1回目の入札であり、舗装工事の入札結果の実績がなく、どの業者が指名を受けているのか、本来は不明なはずである。それにもかかわらず、談合に応じていないとみられるa13を含め補助参加人会社ら以外の業者も指名を受けている可能性が否定できない状況下において、補助参加人会社らが予定価格に近似した入札を行い、本件工事10ないし13につき、95.70%、95.63%、93.66%、96.41%と高い落札率で落札したのであるが、このことは、競争入札の結果としては極めて不自然である。これらのことからすると、Z2社を含む補助参加人会社らは、本件工事10ないし13の指名業者が、補助参加人会社ら6社のみであることを知っており、この6社において誰を落札者とするかを予め決定していた、すなわち、談合が成立していたのではないかと強く疑わせる。

(ウ) 原判決第3、1、(1)ウのとおり、平成16年度において、旧小淵沢町の指名を受けていたa2の代表者Cが、Z2社を訪ね、同社の代表者D(以下「D」という。)に対し、平成17年度の旧小淵沢町発注の舗装工事における入札参加業者にa2を加えて欲しい旨依頼したところ、Dが、同年度の旧小淵沢町発注の舗装工事における入札参加業者は、Z2社、Z4社、Z7社、Z3社、Z6社に決まっている旨述べ、Cがa2も仲間に入れて欲しい旨申し入れたのに対し、約1週間後にDからCにa2の代わりにZ5社を入れる旨の電話連絡がされたことが認められる。

Cは、Dからの電話連絡の際、DがZ5社の指名参加願いの提出が一番遅くなったと話していた旨証言している(C証言17頁)。

このC証人の証言内容は、当審において提出された入札参加資格受付簿により明らかとなったZ5社の入札参加申請が受け付けられた順番が1094番中の1084番であること(上記(1)イ(ウ))と一致し、またBが作成し、同人が建設課長として保管していた本件格付表の舗装工事業者の部分に、Z2社を除く補助参加人会社らの業者名の横にレ印を付していること(上記(1)イ(イ))と一致しており、C証言は信用できる。

補助参加人会社らは、このCの陳述及び証言内容について、その信用性を争い、CがZ2社を訪ねた平成17年4月21日ころには、本件格付表は平成17年4月4日付けで作成されていたから、C証言には矛盾がある旨主張する。そこで判断するに、甲36号証(2枚目から9枚目)の文書は「起案 平成17年4月4日」とあることから明らかなように、同日に決裁が回された「小淵沢町における公共工事入札参加資格基準について(伺い)」と題する文書(平成17年度における入札執行時の入札参加基準を北杜市の基準に準拠することについての伺い)であり、甲36号証の4枚目以下には「有資格建設業者格付け表」(本件格付表)が添付されているから、本件格付表は同日には作成されていたとみることができる。そうすると、4月4日には、a2は「有資格建設業者各付け表(舗装工事)」(甲36の9枚目)に登載されていなかったのであるから、同日より後にCが入札参加資格業者に加えて欲しい旨依頼したところで叶わない状況になっていたということができる。DはそれにもかかわらずCの依頼を受けた上で、1週間後に断りの電話をしているのであるが、このDの行動をどのように理解するかが問題となる。このようにCの依頼を受けた場合、Dとしては即答することはできるとしても、その場では聞き置くとして預り、後日断りの返事をする蓋然性は経験則上高いということができる。そのように解すれば、C証言に矛盾がある旨の補助参加人会社らの主張は、その前提を欠くことになり、採用することができない。

(エ) 以上の検討によると、第2回目(6月8日)の入札においては、①本件工事10ないし13の4件の舗装工事につき、補助参加人会社らのみが指名され、それぞれ95.70%、95.63%、93.66%、96.41%の高い落札率でZ6社、Z7社、Z4社、Z3社が各一回ずつ、順番に落札しており、落札率が極めて高いこと及び順送りに落札していることが際立つこと、②この4件の舗装工事の入札に参加した補助参加人会社らの工事内訳書によると直接工事費が落札業者のそれを基準にすると約10%相違しているにもかかわらず、落札価格と入札価格の差は、逆に1.05%から5.90%の範囲に縮小しており、極めて不自然、かつ不合理であること、③補助参加人会社ら以外の業者も指名を受けている可能性が否定できない状況下において、補助参加人会社らが予定価格の近似した入札を行い、いずれも高い落札率で順番に落札したことは極めて不自然であること、④本件工事10ないし13の工事の所管課は建設課であり、Bが指名業者案を作り、Z1が決裁したものであるが、Bが建設課長として作成保管していた公文書ではないが内部文書である本件格付表の舗装工事業者の部分に、Z2社を除く補助参加人会社らの業者名の横にレ印を付していたこと、⑤Cがa2も仲間に入れて欲しいと依頼したのに対し、Dが、舗装工事の入札参加業者は、Z2社、Z4社、Z7社、Z3社、Z6社に決まっており、また1週間後にはZ5社を入れる旨Cに伝えられ、本件工事10ないし13の舗装工事の入札指名業者は、Dの話にでたとおりであって、舗装工事の入札指名業者は、Z2社の意向どおりに決定される実情にあったとうかがえることなどの間接事実が重要である。ことに、②、③の事実は、補助参加人会社らにおいて予定価格を知っていなければ合理的に説明できないものであると解される。これらに加えて、①、④、⑤の間接事実を総合すると、本件工事10ないし13の入札については、指名業者名がZ2社の意を受けて決定され、また予定価格が漏えいされて、この工事の入札に参加した補助参加人会社らの間で予め落札者を決定する談合が成立していたことが推認されるというべきである。

オ 第3回目の平成17年6月17日の入札について

(ア) 第3回目(6月17日)には、本件工事17の建築工事、本件工事18の舗装工事、本件工事19の管工事の計3件の工事の入札及び落札があった。第一審原告らは、このうち、本件工事18と19には談合があったと主張する。

そこで検討するに、本件工事18の舗装工事は、補助参加人会社ら6社が指名され落札率91.55%でZ5社が落札し、本件工事19の管工事は、Z2社のほか、a10、a11、a18の4社が指名され、Z2社が落札率94.34%で落札した。これは、平成16年度の旧小淵沢町発注工事の平均落札率75.43%と比較すると、有意的に高い落札率であるといえる。

(イ) 舗装工事については、第2回目の4件の舗装工事で談合が成立していると推認されることは上記エ(エ)のとおりである。本件工事18の舗装工事における入札参加業者は第2回目の4件の舗装工事における入札参加業者と同一であるが、これがZ2社の意向を汲んだものと解されることは上記エ(エ)と同様であり、落札率は91.55%と高率であり、第1回目の入札時の4件の舗装工事では落札していなかったZ5社が落札していることによれば、本件工事18の入札についても、指名業者がZ2社の意向どおりに指名されることにより、指名業者名が漏えいされ、入札参加業者間に落札者をZ5社とする談合が成立していたものと推認される。

Z5社は、本件工事18を260万円で落札したが、工事原価が312万5119円となり赤字工事であった旨主張する。しかし、設計価格が293万円、予定価格が284万円であり、Z2社を含め補助参加人会社らがいずれも予定価格以下で入札していること、舗装工事の経費率が他の工事に比して高率であり、これを圧縮して利益を出すことが容易であること(甲80、証人A)からすると、本来、予定価格以下で実行可能な工事と解される。本件工事18について、Z5社の赤字が事実とすれば、そもそもZ5社が旧小淵沢町から遠い南アルプス市に所在し、機材の搬入搬出により多くの経費を要するという体質にあること、工事自体が予定価格284万円であり、利益幅がそもそも小さいものであったこと、工期を短縮する等の適切な工事管理がされなかったことなどによるものと解され、Z5社の実際の施工結果がたまたま赤字に終わったとしてもこれが談合によるとの前記の認定・判断を覆す根拠としては不十分であるというべきである。

(ウ) また、本件工事19は管工事であるが、入札参加業者は、Z2社、a10、a11、a18の4社である。このうちa10とa11は、上記ウ(ウ)のとおり、Z2社が落札し談合が行われたことが推認される本件工事3の入札参加業者である。a18は、零細な町内業者であり、町内最大手のZ2社から談合に応じることを求められたときには、これを拒絶できる状況にはないとみられ、またa15が88.37%と高率で落札し、談合があったことが強く疑われる本件工事1の入札参加業者としてZ2社とともに入札に参加している。さらに本件格付表に管の工事業者として1社のみ選定され本件工事5の入札参加業者として参加していたa13が指名されていないが、これは極めて不自然であり、同社が談合に加わる仲間でないことから指名されなかった蓋然性があると評価することができる。これらの事実によれば、本件工事19の入札についても、Z2社の意向を受けて指名業者名が決定される形で指名業者が漏えいされ、入札参加業者間にZ2社を落札者とする談合が行われたものと推認されるというべきである。

カ 第5回目の平成17年8月16日の入札について(第4回目の入札については、第一審原告らは談合を主張していない。)

(ア) 第5回目(8月16日)には、本件工事35ないし37、40、41の土木工事、本件工事38、39の舗装工事、本件工事42の管工事の計8件の工事の入札及び落札があった。第一審原告らは、このうち、本件工事36と38、39の入札には談合があったと主張する。そこで、この点につき検討する。

(イ) 本件工事36は、設計価格3820万7000円、予定価格3660万円であり、Z2社のほか、a8、a25(以下「a25」という。)、a9、a10、a11の6社が入札参加業者として指名され、Z2社が落札価格3550万円、落札率96.99%で落札した。この落札率は、同日に入札が行われ、Z2社が落札した本件工事35の落札率72.26%と比較すると24.73%もの差があり、極めて不自然である。

その差が生じた原因を考えるに、本件工事35の土木工事には、入札参加業者として談合に応じていないa13が指名されていた。したがって、本件工事35については談合が成立しない以上、Z2社が落札を目指すとすれば、真に競争入札を実行するほかない。Z2社が本件工事35を落札した落札率が72.26%であるのは、その結果であったと解するのが相当である。

これに対して、本件工事36の土木工事の入札参加業者として指名された業者は、Z2社、a8、a25、a9、a10、a11の6社であり、このうち、a8、a9、a10、a11は、入札において談合が成立していると推認される本件工事3の入札参加業者である。また、町外業者であるa25は、甲府市所在の大手の建設業者であり、積算ソフトを使用すれば、設計価格及び予定価格を推測することは相当程度可能であるのに、本件工事36の設計価格3820万7000円を大幅に超える4300万円で入札をしており、指名競争入札に参加した参加業者の入札行為としては極めて不自然であり、a25は、本件工事36について、全く落札する意思がなかったことをうかがうことができる。

これらによれば、本件工事36については、入札参加業者間でZ2社を落札者とする談合が行われていたものと推認される。そして、本件工事35について、Z2社が真に競争入札を実行していることからすると、Z2社は、本件工事35の入札参加業者としてa13が指名されており、反対に本件工事36の入札については、a13は指名されていないこと、すなわち、指名業者が誰であるかを知っていたことも推認されるというべきである。

(ウ) 本件工事38及び39は、いずれも舗装工事である。

本件工事38については、入札参加業者として補助参加人会社らのうち、Z5社、Z4社、Z3社が指名されたほか、町内業者のa26(以下「a26」という。)、a27(以下「a27」という。)、a19が指名され、Z5社が95.18%の高い落札率で落札した。

本件工事38は、このように談合が疑われる95.18%という高い落札率で落札されていること、原判決第3、1、(7)イ(イ)のとおり、a26、a27、a19は、従業員が4人から6人程度の小規模な町内業者であり、既に第3回目までの入札において、町内最大手のZ2社が談合を実現している結果を同業者として見ているのであるから、Z2社から談合に応じることを求められたときには、これを拒絶できる状況にはないとみられること、他の入札参加業者はいずれも既に談合が成立したと推認される本件工事10ないし13の舗装工事の入札参加業者であることによれば、本件工事38の入札については、談合を取り仕切るZ2社の意向に沿うように入札参加業者が指名されるか、または指名された入札参加業者名が漏えいされ、入札参加業者間にZ5社を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

(エ) 本件工事39については、補助参加人会社らのうち、Z4社、Z3社、Z2社が指名されたほか、町外業者のa28(以下「a28」という。)、a29(以下「a29」という。)、a11が入札参加業者として指名され、Z4社が93.36%の高い落札率で落札した。

原判決第3、1、(7)イ(ウ)のとおり、a28とa29はいずれも甲府市所在の建設業者であるが、Z4社、Z3社、Z2社、a11とともにいずれも山梨県建設業協会の会員であり、同協会の会長を務めたa29の相談役が、平成18年1月に山梨県東八代郡豊富村(現山梨県中央市)の排水溝工事に関し、山梨県建設業協会の副会長や理事、豊富村長とともに逮捕されたこと、山梨県建設業界は、平成6年にも大規模な談合を行ったことで公正取引委員会から排除勧告を受けたこと、補助参加人会社ら間では、既に、本件工事10ないし13、18、38の各舗装工事の入札において談合が成立していたことによれば、本件工事39の入札についても、Z2社の意向に沿うように入札参加業者が指名されるか、または指名された入札参加業者名が漏えいされ、入札参加業者間にZ4社を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

また、以上によれば、第1回から第3回まで及び第5回の入札時において、Z2社は談合の中心的な役割を果たしているということになる。

キ 第6回目の平成17年9月13日の入札について

(ア) 第6回目(9月13日)には、本件工事43、45の建築工事、本件工事44、46ないし49の土木工事、本件工事50ないし52の管工事の計10件の工事の入札及び落札があった。第一審原告らは、このうち、本件工事43と50には談合があったと主張する。そこで、この点について検討する。

本件工事43の建築工事は、Z2社のほか、町外の建設業者であるa20、a21、a22、a9、a36、a37、a38の8社が入札参加業者として指名されZ2社が97.98%の高い落札率で落札した。

本件工事43の設計価格は7234万円、予定価格は6940万円であり、5000万円を超える建築工事であるから、本来は「A」ランクの評価を受けた業者が指名されるべきで、建築について「C」ランクの評価であるZ2社には、指名を受ける資格がない。それにもかかわらず、Z2社が指名を受け、指名を受ける資格のある町外業者である入札参加業者らが、いずれも設計価格を超過した価格で入札している。本来指名を受ける資格のないZ2社が指名を受け、積算ソフトを使用すれば、設計価格の推測が相当程度可能であるのに、町外業者らが揃って、設計価格を超過した入札価格で入札をしたことから、これらの町外業者は、真に、競争入札をする意志がなかったことをうかがうことができる。

このことに加え、落札率97.98%という高率でZ2社が落札していること、第1回から第3回まで及び第5回の入札時においてZ2社が談合の中心的役割を果たしてきたことを総合すれば、本件工事43の入札についても、Z2社の意向どおりに指名業者が決められ、これらの入札参加業者の間でZ2社を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

(イ) 本件工事50の管工事は、Z2社のほか、a3、a4、a16、a17が入札参加業者として指名され、Z2社が95.56%の高い落札率で落札した。本件格付表に管工事の業者として1社のみ選定されたa13は指名されていないが、これは極めて不自然であり、同社が談合に加わる仲間でないことから指名されなかった蓋然性があると評価することができる。

a3、a4、a16、a17は、上記ウのとおり、談合の成立が推認される本件工事6の入札参加業者である。このことに加え、落札率95.56%の高率でZ2社が落札していること、第1回から第3回まで及び第5回の入札時において、Z2社が談合の中心的役割を果たしてきたことを総合すれば、本件工事50の入札についても、Z2社の意向に沿うように入札参加業者が指名されるか、または指名された入札参加業者名が漏えいされ、入札参加業者間にZ2社を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

ク 第7回目の平成17年10月14日の入札について

(ア) 第7回目(10月14日)には、本件工事54、55、64の舗装工事、本件工事56ないし60の土木工事、本件工事62、63の管工事の計10件の工事の入札及び落札があった。第一審原告らは、このうち、本件工事54、55、60、64の入札には談合があったと主張する。そこで、この点について検討する。

本件工事54の舗装工事については、補助参加人会社ら6社が入札参加業者として指名され、本件工事55については、Z6社が抜けてa10が入札参加業者として入り、本件工事64については、Z7社が抜けてa11が入札参加業者として入っており、本件工事54は、Z4社が93.41%、本件工事55は、Z7社が94.31%、本件工事64はZ2社が98.11%の高い落札率で落札した。

本件工事54、55、64の舗装工事については、いずれも高い落札率で落札されていること、いずれの組み合わせにおいても既に談合の成立が推認される工事の入札参加業者であることによれば、本件工事54、55、64の入札についても、談合を取り仕切るZ2社の意向に沿うように入札参加業者が指名されるか、または指名された入札参加業者名が漏えいされ、引き続きこれらの入札参加業者間において、本件工事54の入札については、Z4社を、本件工事55の入札については、Z7社を、本件工事64の入札については、Z2社を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

(イ) 本件工事60の土木工事については、Z2社、a7、a25、a9、a10、a11の6社が入札参加業者として指名され、Z2社が95.60%の高い落札率で落札した。

本件工事60についても、上記のとおり高い落札率で落札されていること、この工事の入札参加業者のうち、Z2社、a7、a9、a10、a11は、談合が成立したと推認される本件工事3の入札参加業者であり、a25も談合が成立したと推認される本件工事36の入札参加業者であることによれば、本件工事60の入札についても、Z2社の意向に沿うように入札参加業者が指名されるか、または指名された入札参加業者名が漏えいされ、入札参加業者間にZ2社を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

ケ 第8回目の平成17年10月28日の入札、及び第10回目の同年11月10日の入札について

(ア) 第8回目(10月28日)には、本件工事65ないし75の計9件の各工事の、第10回目(11月10日)には本件工事77ないし87の計11件の各工事の入札及び落札があった。第一審原告らは、このうち、本件工事67、68、79、80の各工事には談合があったと主張する。そこで、この点について検討する。

本件工事67の舗装(土木)工事については、Z4社、a26、a27、a10、Z3社の5社が入札参加業者として指名され、Z4社が94.11%の高い落札率で落札し、本件工事68の舗装工事については、Z2社、a7、Z7社、Z6社、a11の5社が入札参加業者として指名され、Z2社が95.05%の高い落札率で落札した。

この本件工事67、68の落札率が、上記のとおり高率であること、各工事の入札参加業者は、談合が成立したと推認される本件工事3、38の入札参加業者であることによれば、本件工事67、68の入札についても、Z2社の意向に沿うように入札参加業者が指名されるか、または指名された入札参加業者名が漏えいされ、入札参加業者間に上記各落札業者を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

(イ) 本件工事79の舗装工事については、Z3社、a7、Z7社、Z4社、a10、Z6社の6社が入札参加業者として指名され、Z3社が95.48%の高い落札率で落札し、本件工事80の舗装工事については、Z6社、Z7社、Z5社、Z4社、Z3社の補助参加人会社5社が入札参加業者として指名され、Z6社が93.70%の高い落札率で落札した。

これらの本件工事79、80の落札率が上記のとおり高率であること、各工事の入札参加業者は、談合が成立したと推認される本件工事3の入札参加業者であることによれば、本件工事79、80の入札についても、Z2社の意向に沿うように入札参加業者が指名されるか、または指名された入札参加業者名が漏えいされ、入札参加業者間に上記各落札業者を落札者とする談合が成立していたものと推認されるというべきである。

コ 第9回目の平成17年11月7日の入札について

(ア) 第9回目(11月7日)には、本件工事76の管工事(大東豊第三配水池築造工事)の1件の工事の入札及び落札があった。第一審原告らは、この本件工事76の入札には談合があったと主張する。そこで、この点について検討する。

本件工事76は、大東豊第三配水池築造工事であり、工種とすれば管工事である。本件工事76については、a30(以下「a30」という。)・Z2社、a31(以下「a31」という。)・a11、a32(以下「a32」という。)・a10、a33(以下「a33」という。)・Z7社、a34(以下「a34」という。)・a8、a35(以下「a35」という。)・a9の各特定建設工事協同企業体(以下「JV」という。)が入札参加業者に指名され、a30・Z2社JVが落札価格2億1400万円、落札率97.72%で落札した。

本件工事76の設計価格は2億2824万円、予定価格は2億1900万円であるが、各入札参加業者が提出した見積書の工事原価、一般管理費、工事価格及び入札価格は、原判決別紙6記載のとおりである。これによると、a30・Z2社JV以外は、積算した工事価格がいずれも設計価格を超えており、しかも、a30・Z2社JVは、工事価格から約5%強の値引きをして入札価格としているのに対し、他のJVはいずれも積算した工事価格をもって入札価格としている。積算ソフトにより、±5%程度の正確な積算ができ、旧小淵沢町の予定価格への歩切り率については既に実施された入札結果から相当程度推定が可能であることからすると、これらのa30・Z2社JV以外の入札参加業者の入札価格は、正当に競争入札に参加し、受注を目指す入札参加業者のものとしては不自然、かつ不合理である。

この本件工事76の現場説明会は平成17年10月28日午前10時に行われているが(丁66の11)、当日の入札案件は本件だけであるからこれに出席した業者は、本件工事76の入札参加業者として指名を受けた業者をその場で認識することができる。そして、入札参加業者としての指名を受けた各JVの地元業者は、Z2社、a11、a10、Z7社、a8、a9であり、既に談合が成立したと推認される本件工事3、36の入札参加業者である。また、各JVのうちa30、a31、a32、a34、a33及びa35の6社は、この6社を含むプレストレスト・コンクリート工事業を営む約20社間において、遅くとも平成13年4月1日ころから平成16年3月31日ころまでの間、国土交通省の関東地方整備局及び近畿地方整備局、並びに福島県が発注する橋梁の新設工事について、受注価格の低落を図るために、① 上記建設業者間の話合い等により受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する、② 受注すべき価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する旨の合意の下に、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにし、その結果、公共の利益に反して、関東地方整備局発注の上記橋梁工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、これは、法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、法3条に違反するとして平成16年11月18日、公正取引委員会により、独占禁止法(平成17年法律第35号による改正前のもの。)49条1項に基づき審判開始決定を受けたことが認められる(甲21)。

また、平成17年11月9日付けで旧小淵沢町とa30・Z2社JVとの間で締結された本件工事76についての契約書によると、完成予定は平成18年3月7日とされている(丁67の11)。ところが、調査嘱託の結果によれば、a30が、本件工事76の入札前である平成17年10月31日付けで旧小淵沢町に、「施工計画を照査しましたところ、別紙のとおり6月末日迄の工程となりました。工期延期等を御検討願えますでしょうか。」との質問書を提出し、旧小淵沢町が建設課名でa30に「冬季に入るので降雪、異常低温等が生じた場合は請負業者と協議対応致します。」と回答したことが認められる。この点につき、第一審被告は、入札参加業者とされた他のJVに対しても同様の回答を送付したはずと主張するがその控えはなく、その事実を客観的に示す証拠はない。さらに、本件工事76についてのa30・Z2社JVと下請業者との契約書では、未だ旧小淵沢町からの工期延長の決定がなされる以前の段階で平成18年6月30日を完成予定とする契約が締結されていることが認められる(甲58の2の1)。

(イ) 以上の検討によれば、①本件工事76の落札率が97.72%という高率であること、②a30・Z2社JV以外の入札参加業者の入札価格が、いずれも設計価格を超えていて競争入札に参加する入札参加者の行動としては不自然であること、③入札対象工事は本件工事76のみであり、現場説明会に出席することにより、指名を受けている入札参加業者が判明するものであること、④落札業者は談合の中心的役割を果たしているZ2社を含むJVであること、⑤入札参加業者のうち、各JVの地元業者は、既に談合が成立したものと推認される本件工事3、36の入札参加業者であること、⑥各JVのうちa30、a31、a32、a34、a33及びa35についても、関東地方整備局及び近畿地方整備局や福島県が発注の工事において談合した事実が指摘されていること、⑦本件工事76についての旧小淵沢町の対応が、予めa30・Z2社JVに工期延長可能であることを知らせたが、他のJVにはこれを知らせた形跡がなく、正式な工期延長の前に延長を前提とする下請契約を黙認するなどa30・Z2社JVが落札することを予定していると疑われかねないものであることなどの間接事実が重要である。そしてこれらを総合すれば、本件工事76の入札については、入札参加業者間にa30・Z2社JVを落札者とする談合が成立しており、これを旧小淵沢町も了解していたものと推認するのが相当である。

(3)  まとめ

以上によれば、補助参加人会社らは、本件工事3、6、10ないし13、18、19、36、38、39、43、50、54、55、60、64、67、68、76、79及び80の22件の各工事について、それぞれ談合を取り仕切るZ2社の意向に沿うように入札参加業者が指名され、または指名された入札参加業者名が知らされ、各工事の入札参加業者間でそれぞれ談合が行われて落札したものであり、不法行為を構成する。したがって、補助参加人会社らは不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

4  争点2(Z1の談合幇助の有無)について

(1)  第一審原告らは、Z1が、Z2社が入札参加業者に談合の働きかけをすることを知りながら、Z2社から入札参加業者の組み合わせの指示を受け、B建設課長にZ2社の指示どおりの選定をした指名業者案を作成させ、入札業者の指名権を濫用して談合を容易に実行できる指名業者の組み合わせを実現し、談合に加担した。また、Z1が、みずからあるいはB建設課長その他の職員を介して、Z2社をはじめ特定の業者に設計価格又は予定価格を漏えいし、もって本件談合を幇助した旨主張する。

ところで、地方自治体の首長は、公共事業の入札に当たり、適切な仕組み及び方法をとることにより、業者の間で談合されることのないよう努めるべきものであるところ、特定又は不特定の業者が談合を容易に実行しやすくなるように、一定の入札指名業者の組合せをし、どのような組合せをしたかを業者に認識させるようにし、又は、業者の意向を受けて入札指名業者の組合せをし、さらに、予定価格について業者に認識させるようにした場合において、談合による入札が実施されたときは、談合を幇助したものとして、不法行為を構成するものというべきである。

(2)  そこで、この点について判断するに、原判決は、①平成17年度の旧小淵沢町発注工事の入札及び落札結果は、68件の公共工事のうち、Z2社が30件の工事の入札参加業者に指名され、うち11件の工事を落札し、その落札割合は40.20%であり、同年の旧小淵沢町発注工事の入札における全ての入札指名業者の中で突出した結果となっていること、②Aが町長になる前のG町長の時代には、Z1は建設課長であり、Z2社が落札率が99%以上で当時の公共工事のほとんどを独占していたこと(上記3(1)ア(オ))、③A前町長の時代には、Z2社は、旧小淵沢町の公共工事の入札参加業者に指名されることもなくなっていたが、Z1が町長となるや旧小淵沢町の公共工事につき入札参加業者に多数回指名され、多くの工事を高い落札率で落札していることなどの間接事実から、旧小淵沢町(ひいては、町長のZ1)は、入札参加業者を指名する際にZ2社を優遇していたものと推認している。確かに、①の事実とZ1が町長となったこととの関係について全く偶然であると考えるよりは、相関関係があるとみることが経験則上相当であるから、Z1が町長となって以降の旧小淵沢町はZ2社に対し、入札業者の指名などで特段の配慮をしたと推認することは合理的かつ相当である。

これらを前提としつつ、本件事実関係においては、以下の事柄について検討が加えられなければならない。

(3)ア  本件事実関係においては、上記3(2)ウないしコに説示したとおり、本件工事3、6、10ないし13、18、19、36、38、39、43、50、54、55、60、64、67、68、76、79、80の22件の各工事については、いずれも、指名された入札参加業者間にそれぞれ各工事の落札業者をして落札させ、同人を契約者とするために他の業者は一定の価格以下に入札しないことを協定する談合行為がされたものと推認することができる。

イ  また、上記3(2)ウないしコに説示したとおり、これらの各工事において、談合が成立するためには、各工事について、指名された入札参加業者の組み合わせを知ることが必要であるところ、上記22件の各工事について、指名された入札参加業者の組み合わせが談合を取り仕切っていたZ2社の意向を受けて決められる方法で、Z2社あるいは入札参加業者に漏えいされていたと推認することもできる。

ウ  そして、これを具体的にみると、とりわけ、①平成17年4月27日の入札においては、その入札結果から談合に応じていないと認められる業者であるa13が、現場説明会に同席しているにもかかわらず、本件工事3、6の入札参加業者において、a13が指名されていないことを知っていたとしか説明できない入札価格で入札し、いずれもZ2社が高い落札率で落札していること(上記3(2)ウ)、②本件工事6についての入札参加業者の入札価格から、甲77号証の入札執行依頼書に記載された誤った設計価格が、Z2社ほかの入札参加業者に伝えられた後、Z2社にだけ正しい予定価格が伝えられたと解するほかないこと(上記3(2)ウ)、③平成17年6月8日の入札においても、談合に応じていないa13が、現場説明会に同席しているにもかかわらず、本件工事10ないし13の入札参加業者である補助参加人会社らにおいて、a13が指名されていないことを知っていたとしか説明できない入札価格で入札し、補助参加人会社らのうちの4社が順番に高い落札率で落札していること(上記3(2)エ)、④平成17年6月17日の第3回目の入札における本件工事19、同年8月16日の第5回目の入札における本件工事42、同年9月13日の第6回目の本件工事50は、いずれも管工事であるから本来、本件格付表に管工事の業者として1社のみ選定されたa13が指名されるべきであるのに同社が指名されておらず(上記3(1)ウ(カ)、(2)オ、キ)、これらの管工事の入札参加業者の指名は不自然であること、⑤平成17年11月7日の第9回目の入札の本件工事76については、入札対象工事をこの工事1件としていて入札参加業者が自ずと判明する形にし、しかも、a30・Z2社JVにのみ予め工期延長可能であることを知らせ、正式な工期延長の決定がされる前に下請業者と工期延長を前提とする契約をすることを許していること(上記3(2)コ)などの間接事実が重要である。これらの間接事実のうち、①ないし③は、当時の旧小淵沢町は、特定の業者が談合を容易に実行しやすくなるように、特定の業者の組み合わせをし、どのような組み合わせをしたかをZ2社に認識させるようにしたか、又はそもそも最初からZ2社の意向を受けた入札参加業者の組み合わせにより指名業者案を作成していたものとしか説明することができない。そして、そうすることができるのは、旧小淵沢町長であったZ1である。したがって、Z1が、Z2社が談合を容易に実行しやすくなるように、特定の業者の組み合わせをし、どのような組み合わせをしたかをZ2社に認識させるようにしたか、又はそもそも最初からZ2社の意向を受けた入札参加業者の組み合わせにより指名業者案を作成していたと推認せざるを得ないのである。また、④⑤の間接事実は、Z1において、Z2社が談合を容易に実行しやすくなるように行動した事実と整合するものと評価することができる。

さらに、本件工事6については、Z2社は予定価格を明らかに認識していたと認められるところ、予定価格を決定できるのはZ1であるから、Z1はZ2社に対し、本件工事6の予定価格を自ら又はBを介するなどして知らせたものと推認することが相当である。

そうすると、Z1は、公共事業の入札に当たり、適切な仕組み及び方法をとることにより、業者の間で談合されることのないよう努めるどころか、業者が談合を容易に実行しやすくなるような入札指名業者の組合せをし、これをZ2社に認識させ、又は、Z2社の意向を受けた入札指名業者の組合せにより指名業者案を作成したものであり、さらに、本件工事6については予定価格をZ2社に認識させたものであり、談合による入札が実施されたのであるから、これらの行為により、談合を幇助したものと評価せざるを得ないのである。

ところで、Z1が22件の工事すべての入札談合を幇助したと認定してよいかについては問題になるが、本件の入札談合は、Z2社を中心とした一定の仲間を加えた構造的なものであることを考えると、特段の事情の認められない限り、22件の工事すべてについてZ1が談合を幇助したものと推認することが相当である。そして、本件事実関係の下においては、そうした特段の事情は、これを認めることはできない。

エ  この点について、Z1は、入札参加業者の指名につき、業者の格付表及び入札参加資格表を機械的に適用して指名した結果にすぎず、これをもって談合を容易にする意図的なものとみることは不当である旨主張する。

そこで判断するに、上記3(1)イ(ア)のとおり、Z1は、町長就任後、全体を見直すとして平成17年3月まで公共工事の入札を実行しないことを課長会議で決定し、Bを建設課長に任じ、本来はF総務課長がすべき業務であるのにBに指示をして、入札参加業者の入れ替えをした上、上記3(2)ウないしコのとおり、極めて不自然な落札結果となった入札参加業者の指名をしているのであり、この旧小淵沢町が行った平成17年度の公共工事の入札についての入札参加業者の指名は、業者の格付表及び入札参加資格表を機械的に適用して指名したものと評価することは困難である。さらに、上記3(1)ア(エ)のとおり、Z1は、所管課長が指名参加資格のある業者の中から指名業者案を作成した段階で所管課長から工事内容及び入札参加業者の説明を受けており、この時点で指名業者案の内容を知る機会があり、その際町長としての意見を言うことも可能である。そうすると、Z1及び第一審被告の上記主張は採用することができない。

また、Z1は、予定価格の決定も、入札会場に業者が入った後、入札の30分前ころに決定しており、それ以前に業者に漏えいすることはできない旨主張する。

そこで判断するに、前記のとおり、Z1は、所管課長が指名業者案を作成した段階で工事内容等につき所管課長からの説明を受けており、その際工事内容に照らして予定価格案についての心づもりを形成することは可能である。したがって、それ以降において、心づもりを形成した予定価格案を業者に認識させる(知らせる)ことは、十分することができたものと解される。そうすると、Z1の上記主張は採用することができない。

(4)  以上によれば、Z1は、談合のあった22件の本件各工事について、Z2社が談合を容易に実行しやすくなるような入札指名業者の組合せをし、これをZ2社に認識させ、又は、Z2社の意向を受けた入札指名業者の組合せにより指名業者案を作成し、さらに、本件工事6については予定価格をZ2社に認識させるなどして、Z2社が取り仕切った談合に協力し、これを幇助したものであり、不法行為を構成する。したがって、Z1は、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになる。この点の第一審原告らの主張は、理由がある。

5  争点(3)(損害額)について

(1)  責任原因

以上のとおり、本件事実関係の下においては、補助参加人会社らは、本件工事3、6、10ないし13、18、19、36、38、39、43、50、54、55、60、64、67、68、76、79及び80の22件の各工事の入札ついて、談合して落札したことにより不法行為責任を負い、また、Z1は、談合を幇助したことにより不法行為責任を負うものである。

したがって、補助参加人会社らは、当該入札において、「談合がなければ公正な自由競争によって形成されたであろう落札価格に基づく契約金額」と「補助参加人会社らが談合の上入札したことにより現に締結された請負契約の契約金額」との差額分について、旧小淵沢町に対し、損害を与えたこととなり、これを賠償すべき責任がある。なお、本件工事76は、a30・Z2社JVが落札したものであるが、上記3(2)コのとおり、JVを構成する両社が談合に関与していたと推認されるから、共同不法行為者のZ2社は、その利益配分の割合にかかわらず、本件工事76につき、談合が行われたことにより、旧小淵沢町が被った全損害を賠償すべき責任がある。

また、Z1も、談合が認められる上記22件の本件各工事について、落札業者である補助参加人会社らとそれぞれ連帯して、旧小淵沢町が被った上記損害を賠償すべき責任を負うべきこととなる。

(2)  損害額

そこで、旧小淵沢町が被った損害額について検討する。

ア 談合がなければ公正な自由競争によって形成されたであろう落札価格は、談合の結果、現実には形成されなかった価格であり、しかもこの想定落札価格は、当該工事の種類、規模、特殊性、地域の特性、入札参加者の数及び各業者の受注意欲・財政状況、入札当時の経済情勢等の多種多様な要因が複雑に絡み合って形成されるため、証拠に基づいて具体的に想定落札価格を認定することは極めて困難である。

そうすると、本件においては、旧小淵沢町に損害が生じたことは認められるものの、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときに該当するといえるから、民事訴訟法248条を適用して、相当な損害額を認定するのが相当である。この場合において、認定すべき損害額は、証拠資料からここまでは確実に存在したであろうと考えられる範囲に抑えた額ではなく、合理的に考えられる中で実際に生じた損害額を最も近いと推測できる額をいうと解すべきである。そして、本件においては、平成17年度と平成16年度以前とでは、旧小淵沢町の町長が交代したほか、町の体制が変化したこと以外には、公共工事の設計価格の積算ソフトに格段の進歩があったなど入札価格に変動を与えるような特段の事情の変化が生じたことは証拠上認められないから、損害額の算定にあたっては、入札価格の変化によってもたらされた落札率の相違を基礎に考えるのが合理的である。

イ 第一審原告らは、この損害額の算定につき、旧小淵沢町の平成16年度の測量・設計及び舗装工事に関する入札を除いた工事の入札における平均落札率が76.76%(正しくは76.77%)であること、また平成17年度の旧小淵沢町の公共工事の入札においても談合に応じておらず正当な競争入札を行った会社と認められるa13が入札に参加し、他の入札参加業者も公正な自由競争をせざるを得なかった19件の工事(本件工事47を含む。)の平均落札率が79.02%であること、さらに多くの談合事案が含まれていると考えられるが、平成17年度の旧小淵沢町の公共工事の入札のうち、Z2社を除く町内業者が落札した工事の平均落札率が85.42%であることから、平成17年度の平均落札率としては、予定価格の80%、少なくとも85%が妥当であり、これを超える部分が損害となる旨主張する。

これに対し、補助参加人会社らは、落札率は、当該工事の個別具体性により高くも低くもなること、平成16年度の舗装工事はダンピングの疑いがあり、平成17年度の平均落札率の上昇には合理的理由があり、平成16年度と平成17年度の落札率の安易な比較は誤っていること、旧小淵沢町を除く北杜市の発注した舗装工事の平均落札率は97.37%であり、山梨県の峡北林環部、峡北農務部、峡北林建設部の発注した舗装工事の平均落札率は、98.08%、95.87%、96.44%であり、90%台の落札率は適正な価格であって不自然ではない旨反論する。

確かに、補助参加人会社らの指摘するとおり、平成16年度の舗装工事における平均落札率は56.72%であり、A前町長時代の平成15年度の舗装工事の平均落札率が81.32%であることと比較してもかなり低く(甲41資料1)、平成16年度の他の工種の工事の各平均落札率(土木86.58%、水道87.07%、建築66.79%)と比較しても相当低い率である(甲33の3)。また、平成16年度の舗装工事を落札した業者はa2とa1であるが、両社はいずれも長野県の業者であり、長野県諏訪郡富士見町が平成15年度及び平成16年度に発注した舗装工事では、上記両社がいずれも90%以上の落札率で落札し、また長野県岡谷市が平成17年度に発注した舗装工事では、a1がやはり90%以上の落札率で4件を落札していること(丙1資料15、16、18)からすると、平成16年度の旧小淵沢町の発注にかかる舗装工事において上記両社のみが落札した結果形成された落札率は正当な競争入札により形成された結果としては、低すぎるというべきである。したがって、平成16年度の平均落札率を算定するに当たっては舗装工事分を含めるのは相当でないと解される。

ところで、町の発注にかかる公共工事について当該年度の全工事をすべて合計して落札率を算出したときには、当該年度にたまたま1件、その年度の総工事費のうちの相当の割合を占める巨額な設計価格の工事があった場合には、その工事についての落札率の高低が当該年度の全工事の落札率の高低を左右することとなる。実際にも平成16年度の旧小淵沢町の発注にかかる公共工事(設計を除く。)の全工事の総予定価格は8億4303万円であるのに対し、同年度の工事②(町立小淵沢小学校耐震補強・大規模改修・増築工事)の予定価格は3億5100万円であり、同年度全体の予定価格の41.64%に達し、その落札率は64.96%であるから同年度全体の落札率を低下させている。一方、平成17年度の旧小淵沢町の発注にかかる公共工事(設計を除く。)の全工事の総予定価格は11億8409万3000円であるのに対し、同年度の本件工事76(大東豊第三配水池築造工事)の予定価格は2億1900万円であり、同年度全体の予定価格の18.50%に達し、その落札率は97.72%であるから同年度全体の落札率を上昇させている。

本件においては、上記22件の工事につき談合がされたと認められるものであるが、これらの工事のうち本件工事76以外は、予定価格が比較的低い工事であり、これらの各工事の工種、規模、落札率にはそれぞれ相当程度の差異があり、単純に全体の落札率をもって損害額を算出するのは相当ではないと解される。すなわち、民事訴訟法248条を適用して相当な損害額を算定する場合においても、その算定に当たっては合理的な根拠をもって実際に生じた損害額に最も近いと推測できる額を認定するのが相当である。

ウ 上記の見地から、本件について具体的な損害額を検討するに、平成17年度の旧小淵沢町の公共工事の入札のうち、Z2社を除く町内業者が落札した工事の平均落札率が85.42%であり、また、平成16年度の旧小淵沢町の発注にかかる公共工事(設計を除く。)のうち舗装工事分を除き、さらに上記工事②(町立小淵沢小学校耐震補強・大規模改修・増築工事)を除いた場合の平均落札率は、86.33%である(丁14)。一方、平成17年度の旧小淵沢町の発注にかかる公共工事(設計を除く。)のうち本件工事76を除いた場合の平均落札率は93.25%である。これらの落札率の差をみるに、平成17年度の旧小淵沢町の公共工事の入札のうち、Z2社を除く町内業者が落札した工事の平均落札率と同年度の各工事のうち本件工事76を除いた場合の平均落札率との差は、7.83%であり、また前者と平成16年度の旧小淵沢町の発注の公共工事のうち、設計、舗装工事及び工事②(町立小淵沢小学校耐震補強・大規模改修・増築工事)を除いた場合の平均落札率との差は6.92%である。

この6.92%ないし7.83%という落札率の差は、談合のあった平成17年度の22件の本件各工事のうち、特殊な要素を除いた場合の平均落札率と談合が一応ないと解される旧小淵沢町の公共工事の入札にかかる特殊な要素を除いた場合の平均落札率との差であるから、本件における談合による損害額を算定するについては、これらの落札率の差を採用すべきである。そうすると、本件において旧小淵沢町が補助参加人会社らによる22件の本件各工事の入札の談合により被った損害額は、本件各工事の契約金額(落札価格に消費税を加えたもの)の7%に相当する金額であると算定するのが相当である。

エ 以上によれば、本件工事3、6、10ないし13、18、19、36、38、39、43、50、54、55、60、64、67、68、76、79及び80の各入札について、旧小淵沢町が被った損害額は、別紙1談合工事及び損害額一覧表記載の損害額欄記載のとおりであり、補助参加人会社らは、各会社の小計欄の金額の、補助参加人Z1は全部の合計欄の金額につき損害賠償義務があるというべきである。

(3)  まとめ

よって、別紙1談合工事及び損害額一覧表記載の損害額欄記載のとおり、第一審被告補助参加人Z1は4007万4405円、同Z2社は、3218万3445円、同Z3社は126万4200円、同Z4社は311万2725円、同Z5社は58万2855円、同Z6社は109万7355円及び同Z7社は183万3825円、並びに各金員に対する不法行為の後である平成18年1月1日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務があるというべきである。

6  結論

以上によれば、第一審原告らの請求は、第一審被告が、第一審被告補助参加人Z1に対し4007万4405円、同Z2社に対し3218万3445円、同Z3社に対し126万4200円、同Z4社に対し311万2725円、同Z5社に対し58万2855円、同Z6社に対し109万7355円及び同Z7社に対し183万3825円並びに前記各金員に対する平成18年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求すべきことを求める限度において理由があり、その余は理由がない。これと異なる原判決は一部失当であって、上記限度で、第一審原告らの控訴は理由があり、第一審被告の控訴は理由がある。したがって、原判決を上記のとおり変更することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤新太郎 裁判官 柴田秀 加藤美枝子)

別紙1 談合工事及び損害額一覧表

番号

工事名

工種

指名業者1

(落札業者)

落札価格

損害額

1

3

東部処理区下水道幹線管渠布設81他工事

土木

Z2社

29,300,000

2,153,550

2

6

大東豊地区水道管布設替工事

Z2社

8,800,000

646,800

3

19

篠原地区水道管布設替工事(第1工区)

Z2社

5,500,000

404,250

4

36

町道西1級16号線道路改良工事

土木

Z2社

35,500,000

2,609,250

5

43

小淵沢東スポーツセンター

屋内ゲートボール場建設工事

建築

Z2社

68,000,000

4,998,000

6

50

町道西1級16号線水道管布設替工事

Z2社

14,000,000

1,029,000

7

60

町道東1級1号線(下笹尾工区)改良工事

土木

Z2社

43,500,000

3,197,250

8

64

簡易水道舗装復旧工事(上笹尾)

舗装

Z2社

11,970,000

879,795

9

68

町道西1級16号道路舗装工事

舗装

Z2社

7,300,000

536,550

10

76

大東豊第三配水池築造工事

a30・Z2社JV

214,000,000

15,729,000

小計

32,183,445

11

13

下水道管渠舗装復旧工事(258他)

舗装

Z3社

12,340,000

906,990

12

79

町道東1級1号線(上笹尾工区)道路舗装工事

舗装

Z3社

4,860,000

357,210

小計

1,264,200

13

12

下水道管渠舗装復旧工事(194他)

舗装

Z4社

11,520,000

846,720

14

39

下水道管渠舗装復旧工事(169他)

舗装

Z4社

11,950,000

878,325

15

54

下水道管渠舗装復旧工事(207他)

舗装

Z4社

12,330,000

906,255

16

67

上笹尾地区農道932号線改良舗装工事

舗装

(土木)

Z4社

6,550,000

481,425

小計

3,112,725

17

18

道の駅バックヤード舗装工事

舗装

Z5社

2,600,000

191,100

18

38

下水道管渠舗装復旧工事(161他)

舗装

Z5社

5,330,000

391,755

小計

582,855

19

10

下水道管渠舗装復旧工事(147他)

舗装

Z6社

12,700,000

933,450

20

80

下笹尾地区農道1120号線舗装工事

舗装

Z6社

2,230,000

163,905

小計

1,097,355

21

11

下水道管渠舗装復旧工事(165他)

舗装

Z7社

13,350,000

981,225

22

55

下水道管渠舗装復旧工事(216他)

舗装

Z7社

11,600,000

852,600

小計

1,833,825

合計

533,630,000

40,074,405

別紙2~7〔省略〕

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