東京高等裁判所 平成20年(行タ)77号 決定 2009年4月21日
東京都千代田区<以下省略>
申立人
公正取引委員会
同代表者委員長
A
同指定代理人
南雅晴
同
髙原慎一
同
秋沢陽子
同
佐藤真紀子
同
岩丸華子
同
大谷美穂
奈良県橿原市<以下省略>
相手方
ナント種苗株式会社
同代表者代表取締役
B
主文
申立人が平成18年11月27日にした審決(平成14年(判)第61号)につき,相手方がその執行を免れるために供託した保証金100万円の全部を没取する。
理由
1本件申立ての趣旨及び理由は,別紙「保証金没取の申立書」に記載のとおりである。
2一件記録によれば,申立人は,平成18年11月27日,相手方に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則2条の規定により,なお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)54条2項により排除措置を命ずる審決(本件審決)をしたこと,相手方は,本件審決を不服として,同年12月27日,当庁に対し,審決取消しの訴え(当庁平成18年(行ケ)第20号)を提起するとともに,平成19年1月24日,本件審決の執行を免れるため審決執行免除の申立てをし,当庁は同年5月24日保証金として100万円を供託することによって本件審決確定まで執行を免除する旨決定し,相手方は同年6月1日奈良地方法務局葛城支局に100万円を供託したこと(同支局平成19年度(金)第247号),当庁は平成20年4月4日上記相手方の訴えに係る請求を棄却し,相手方は同月17日上告及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所第一小法廷は,同年9月25日,これらの申立てについて,上告を棄却し,上告審として受理しない旨決定し(最高裁判所平成20年(行ツ)第224号,同(行ヒ)第255号),本件審決は確定したことが認められる。
3審決の執行免除と審決確定による保証金没取の制度の趣旨は,独占禁止法に違反する行為の速やかな排除という公益上の要請と審決の執行による回復困難な損害の回避という被審人保護の要請との調和を図るとともに,審決執行免除の申立ての濫用を防止することにあるところ,本件審決における被審人である相手方の主張内容,本件審決後その確定までに経過した期間及び保証金の額等の諸事情に照らすと,本件については,保証金の全部を没取するのが相当である。
4よって,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 一宮なほみ 裁判官 北村史雄 裁判官 田川直之 裁判官 始関正光 裁判官 吉村真幸)