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東京高等裁判所 平成21年(ネ)5802号 判決 2010年3月17日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  控訴の趣旨

(1)  原判決を取り消す。

(2)  東京地方裁判所が平成21年3月30日に控訴人・被控訴人間の債権査定申立て事件(基本事件・同裁判所平成20年(再)第175号)についてした決定を取り消す。

(3)  被控訴人の届け出た再生債権(再生債権認否書受付番号株主-161)の額を0円とする。

(4)  訴訟費用は第1、第2審とも被控訴人の負担とする。

2  控訴の趣旨に対する答弁

(1)  本件控訴を棄却する。

(2)  控訴費用は控訴人の負担とする。

第2事案の概要

1  事案の要旨

(1) 控訴人は、平成20年6月26日、転換社債型新株予約権付社債(以下「本件CB」という。)をフランス系金融機関であるBNP Paribas S.A.(BNPパリバ証券会社。以下「BNPパリバ」という。)を割当先として発行するに当たって、関東財務局長あてに臨時報告書(以下「本件臨時報告書」という。)を提出した。控訴人は、BNPパリバとの間でスワップ契約(以下「本件スワップ契約」という。)を締結し、本件CBの払込金の全額が本件スワップ契約の当初支払に充てられた(以下、本件CBの発行と本件スワップ契約の内容を一体とみて「本件仕組み」ということがある。)。ところが、本件臨時報告書には、当該新株予約権付社債の発行による「手取金の額及び使途」として、本件スワップ契約の対価として使用すること及び当該スワップ契約の内容の記載がなく、手取金が299億5000万円であること及びこれを短期借入金の返済等に用いることしか記載しなかった(以下「本件記載」という。)。控訴人は、平成20年8月13日、関東財務局長に対し、「本件取引により調達する資金につきましては、割当先との間で締結するスワップ契約に基づく割当先への支払に一旦充当し、同スワップ契約に基づく受領金を財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定です。」との訂正報告書を提出してこれを公表するとともに、同日東京地方裁判所に対し、民事再生手続開始の申立てをし、同月18日再生手続開始決定を受けた。被控訴人は、同月11日市場において控訴人株式35万株を2965万円で購入し、控訴人の上記公表及び民事再生手続開始の申立て後の同月15日にこれを350万円で売却処分した。

被控訴人は、上記民事再生手続において、本件記載は金融商品取引法(以下「法」という。)21条の2第1項にいう「虚偽記載等」に当たり、購入額と売却額との差額分の損害を被ったと主張して、東京地方裁判所に対し、同項に基づき差額分の損害賠償請求権を有するとして債権届出をした。控訴人が再生債権の認否に際して被控訴人の届出債権の全額を否認したため、被控訴人が民事再生法105条1項に基づき当該届出債権の額を2615万円とする旨の査定の申立て(同裁判所平成20年(再)第175号)をしたところ、東京地方裁判所は、平成21年3月30日、被控訴人の申立てに基づいて「申立人の届け出た再生債権(再生債権認否書受付番号株主-161)の額を2615万円及びこれに対する平成20年8月18日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員と査定する。」との決定(以下「本件決定」という。)をした。そこで、控訴人は、本件決定に対して異議の訴えを提起し、本件決定の取消しとともに、被控訴人が届け出た再生債権を0円とする旨の裁判を求めた。

(2)  原審は、① 本件CBの手取金が本件スワップ契約の当初支払に充てられること及び本件スワップ契約の仕組み並びに本件スワップ契約により手取金の額欄記載の金額の資金調達ができなくなるおそれがあることを記載しなかったのは、本件臨時報告書における当該事項の記載として株主、投資家、社債権者、会社債権者等の利害関係人(以下「投資家等」という。)が投融資を行い、又は権利を行使する等の際に必要な情報が記載されていないことになるから、法21条の2第1項の「虚偽記載等」に当たる、② 臨時報告書に本件仕組みの記載がされていたとすれば、被控訴人は、控訴人株式35万株を購入することはなかったから、虚偽記載等により被控訴人に生じた損害は、その取得価格2965万円から購入日である同年8月11日時点の上記株式が本来有したものと想定される価格(以下「想定株価」ということがある)を差し引いたものである、③ 同日時点における想定価格はその売却価格である350万円を超えないものと推認することができ、取得価額と売却価格の差額2615万円が被控訴人の損害であると判断して、本件決定を認可する旨の裁判をした。

2  前提事実、争点及び当事者の主張

標記の点は、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決2ページ15行目から16ページ3行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。当審における補充的主張の要旨を次項に付け加える。

3  当審における補充的主張の要旨

(被控訴人の主張)

1 法21条の2第1項の「虚偽記載等」について

本件CBの手取金が本件スワップ契約の当初支払に充てられること及び本件スワップ契約の仕組みを臨時報告書に記載しなかったことは「虚偽記載等」に当たる。

投資家が自己責任の下で投資判断を行うには資金調達に関する正確な情報が適時に提供されることが前提であるところ、本件CB発行と本件スワップ契約は明らかに一体として一つの仕組みを形成し、控訴人が本件CB発行で調達するものとされている300億円はその全額がBNPパリバに交付され、控訴人はその返還として資金調達ができるにすぎなかった。しかも、その返還時期及び返還金額は控訴人の株価に影響され、株価が下落した場合は資金調達がゼロになる可能性があった。したがって、本件スワップ契約の内容には本件CB発行により調達する金額及び調達の時期に影響を与える重要な内容が含まれており、スワップ契約の内容を開示しないことは投資家の投資判断に重大な影響を及ぼし、その利益を阻害するものである。また、あたかも本件CB発行のみがされるかのごとき記載がされたことにより、本件CB発行額の全額が控訴人に支払われてその財務基盤が大幅に改善されたとの誤解を投資家に与えるものである。

したがって、控訴人は、被控訴人に対し、法21条の2第1項に基づく損害賠償責任を負う。

2 虚偽記載等によって生じた損害について

ア 被控訴人は、本件仕組みが臨時報告書に記載されていれば、控訴人株式を購入することはなかった。

被控訴人が控訴人株式を購入した理由は、① 控訴人のビジネスモデルに成長性及び魅力を感じたこと、② 本件CB発行による資金調達で財務基盤が大幅に改善され中長期的な成長が見込まれると判断できたこと、③ 本件CBを引き受けたのはBNPパリバ(フランスの大手金融機関)であり、BNPパリバが控訴人の信用保証をしたも同然であると判断したこと、④ 控訴人株式の株価がファンダメンタル(PBR、PER、配当利回り)からして割安な水準であると判断したことからであり、仮に増資への変容により1株当たりの利益が希薄化し、需給悪化により株価が下落し、資金調達ができなくなる可能性がある本件仕組みの存在が臨時報告書に記載されていたならば、被控訴人が100円を切る捨て値で控訴人株式を取得することは有り得ない。

したがって、虚偽記載等により被控訴人に生じた損害は、控訴人株式35万株の取得価格2965万円から購入日である同年8月11日時点の本来有する想定価格を差し引いたものである。

イ 購入日である同年8月11日時点の想定株価は1株当たり10円を超えるものではない。

被控訴人は、平成20年8月15日の寄付き(初値10円)で売却している。これは同月13日に民事再生手続開始の申立て及びスワップ契約の存在を公表した控訴人株式に対する市場における最初の評価であるから、遅くとも民事再生手続開始の申立ての準備を開始した時点(同月6日)での想定株価は10円を超えないものであると推認できる。また、控訴人自身が民事再生手続開始の申立てをした同月13日時点での想定株価が無価値であることを認めているのだから、その2日前の同月11日時点の想定株価が10円を超えているとは考えられない。

(控訴人の主張)

(1) 法21条の2第1項の「虚偽記載等」について

本件CBの手取金をいったん本件スワップ契約の想定元本として預け入れることは、調達資金の額及び時期にとって重大なリスクではなく、法第21条の2第1項の「虚偽記載等」には当たらない。すなわち、本件臨時報告書を提出した平成20年6月26日時点では、本件スワップ契約により早期に300億円規模を調達することができることが金融工学の観点から合理的に見込まれ、本件スワップ契約は調達資金の額及び時期にとって重大なリスクではなかった。

(2) 虚偽記載等によって生じた損害について

ア 本件仕組みが臨時報告書に記載されていれば、被控訴人が控訴人株式を購入することはなかったとの点については否認する。被控訴人は、臨時報告書の提出後、控訴人株式の株価が急速に下落し続けた平成20年8月11日になって控訴人株式を購入していることからみて、臨時報告書の記載を見て控訴人株式の株価が上昇すると考えて購入したわけではなく、臨時報告書の記載と無関係に100円を切る捨て値となったところで一発博打を打つ意図で35万株という大量の株式を取得したものである。

イ 購入日における控訴人株式35万株の想定価格が被控訴人の売却価格である350万円(1株当たり10円)を超えないものであることは否認する。仮に本件臨時報告書に本件スワップ契約の存在を記載したとしても、その場合に形成されたであろう株価が実際の株価を下回ることはあり得ない。すなわち、本件スワップ契約の存在は株価下落要因ではなく、株価上昇要因であり、本件スワップ契約に基づく取引によって、控訴人の自己資本が大幅に充実、改善されるのであって、当時の控訴人にとっては飛躍的に信用力を増強させる措置であった。

第3当裁判所の判断

1  本件記載が、法第21条の2第1項が定める「虚偽記載等」に当たるか。

当裁判所も、本件スワップ契約の存在により資金調達の可能性及び金額が控訴人株式の株価に依存するものとなるのであるから、本件CBは、所定の利息の支払をすれば償還期日までの間BNPパリバによる払込みによって、約300億円の資金が調達できるとの資金調達手段としての内容に本質的に変容されており、この変容は本件臨時報告書を基にした利害関係人の投融資又は権利の行使等の判断に重要な影響を及ぼすものであり、その記載を欠いた本件記載は「虚偽記載等」に該当するものと判断する。その理由は原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の1(原判決16ページ5行目から21ページ21行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。

控訴人は、本件スワップ契約により早期に300億円規模を調達することができることが金融工学の観点から合理的に見込まれ、本件スワップ契約は決して重大なリスクを生じさせるものではないから「虚偽記載等」には当たらないと主張する。しかし、原判決が詳細に判示するとおり、法の定める開示制度の趣旨に照らして、新株予約権付社債発行に係る臨時報告書の「新規発行による手取金の額及び使途」(開示府令19条2項2号イ、1号ヘ)に当たっては、手取金の額及び使途についての情報であって、投資家等が投融資を行い、又は権利行使等の判断に影響を与える重要な情報については虚偽の記載又は記載の欠落は許されず、虚偽の記載又は記載自体を欠いたときには「虚偽記載等」に当たると解するのが相当であり、本件CBによる払込金の全額が本件スワップ契約の支払金に充てられることは資金調達の可能性及び金額が控訴人株式の株価に依存するものとなることから、本件臨時報告書を基にした投資家等の投融資又は権利の行使等の判断に重要な影響を及ぼす情報であり、これを欠いた本件記載は虚偽記載等に該当するものというべきである。さらに付け加えると、本件CBの手取金が本件スワップ契約の当初支払に充てられること及び本件スワップ契約の仕組みについての記載がないことは、あたかも本件CB発行のみがされるかのごとき外観が作出されたことにより、本件CB発行額のすべてが控訴人に支払われて財務基盤が改善されているとの誤解を投資家に与えかねないものであり、また、見方を変えて、仮に本件仕組みがありのままに記載されていたとすれば、控訴人が通常の新株発行や社債発行等の通常の手段では資金調達が困難となり、このような手段によってしか資金調達ができなくなっている状況にあるとの評価がされ、投資家は控訴人に対する株式投資を手控えるのが通常であるとの見方もできるのであり(控訴人が臨時報告書に本件スワップ契約の存在を記載しなかったのは本件仕組みを公表することによる控訴人の資金繰りに対する懸念を回避するためのものであったとするのが、経験則に照らして合理的な見方である。)、このような実質的な観点からみても、本件CBの手取額の全額が本件スワップ契約の当初支払金に充てられることは、投資家等が投融資を行い、又は権利行使等の判断に影響を与える重要な情報であり、この記載を欠いたときには法第21条の2第1項の「虚偽記載等」に当たるということができる。

その他、控訴人は、本件スワップ契約は決して重大なリスクを生じさせるものではないなどとるる主張するが、その内容は原審における主張を繰り返すものであるか、控訴人側の資金調達の事情をいうものであって、法が定める企業内容等の開示制度の趣旨を正しく理解せず、投資家の視点からの検討を欠いたものであって、いずれも採用することができない。

2  虚偽記載等によって生じた損害について

(1)  当裁判所も、本件仕組みが臨時報告書に記載されていたとすれば、被控訴人は控訴人株式を購入することはなかったものと認められるから、本件虚偽記載等により被控訴人に生じた損害は控訴人株式35万株の取得価格2965万円から同日当時の本来有したものと想定される価格を差し引いたものであるところ、同月11日当時の想定価格は同月15日における処分価格である350万円を超えないから、本件記載によって被控訴人に生じた損害は2615万円が相当であると判断する。その理由は、当審における控訴人の主張に対する判断を次項に付け加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の2(原判決21ページ22行目から25ページ8行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。

(2)  控訴人は、本件虚偽記載等がなければ、被控訴人は控訴人株式を購入することはなかったとの原判決の認定に対し、臨時報告書の提出後、控訴人株式の株価が急速に下落し続けていた平成20年8月11日になって控訴人株式を購入していることからみて、臨時報告書の記載を見て株が上がると考えて購入したわけではなく、臨時報告書の記載と無関係に100円を切る捨て値となったところ一発博打を打つ意図で、35万株という大量の株式を取得したと主張する。

しかし、本件虚偽記載等がなければ控訴人株式を購入することはなかったか否かの判断に当たって、被控訴人が臨時報告書の記載を実際に見て控訴人株式が上昇するとの投資判断をして購入したかどうかが判断の分かれ目となるわけではなく、臨時報告書に、仮に本件CB発行額の全部が本件スワップ契約の当初支払に充てられること及び本件スワップ契約の内容(本件仕組み)が記載されていたとすれば、被控訴人が控訴人株式を現実に購入しなかったかどうかが検討されるべきである。この見地からすれば、本件仕組みは、手取金の額欄記載の金額の資金調達ができなくなるおそれがあり、また、控訴人が通常の新株発行や社債発行等の通常の手段では資金調達ができず、もはやこのような手段によってしか資金調達ができないとの評価も成り立ち得るような控訴人の信用を大きく毀損する情報であるといえ、投資家等にとってみれば、控訴人株式の購入に否定的にならざるを得ない材料である。そして、臨時報告書の記載は、個々の投資家等が臨時報告書を実際に閲覧することがないとしても、これを基に様々な媒体を通じて投資家の間に伝播することが前提とされているものであり、仮に臨時報告書に本件仕組みが記載されていたとすれば、控訴人に投資しようとする投資家等にとって、その内容が消極的な意味で投資判断に極めて重要な情報を含むものであることに照らして、様々な媒体を通じて上記情報に接する可能性が高く、この情報に接していたとすれば控訴人株式の取得を取りやめるのが通常の投資家の合理的な投資判断であるということができる。そうすると、被控訴人について、これと異なる判断をする特段の事情は認められないから、臨時報告書に本件情報が記載されていたとすれば、控訴人株式を購入するに当たって本件情報に接することができ、その合理的な投資判断に基づき控訴人株式を取得することはなかったものと認めるのが相当である。

以上によれば、被控訴人は、臨時報告書の虚偽記載等がなければ、言い換えれば本件仕組みが臨時報告書に記載されていたとすれば、控訴人株式35万株を購入しなかったものということができるのであるから、本件虚偽記載等による損害は、控訴人株式の取得価格2965万円(同株式を購入しなかった場合の利益状態)から購入日時の控訴人株式35万株が本来有したものと想定される価格(同株式を購入したことによる現実の利益状態)を差し引いたものであると解するのが相当である。

(3)  控訴人は、控訴人株式35万株の平成20年8月11日当時の想定価格は同月15日における処分価格である350万円を超えるものではないとの原判決の認定に対し、仮に本件臨時報告書で本件スワップ契約の存在を記載したとしても、その場合に形成されたであろう株価が実際の株価を下回ることはあり得ないと主張する。

しかし、前記のとおり、本件CBの手取金の全部が本件スワップ契約の当初支払に充てられること及び本件スワップ契約の仕組みは極めて重要な投資情報であり、本件仕組みが臨時報告書に記載されていれば、臨時報告書の記載を基に各媒体を通じて投資家等の間に広く伝播され、控訴人の資金調達はより早期に困難となって民事再生開始手続の申立ても実際に申立てがされた平成20年8月13日よりも早期となった可能性もある。しかも、民事再生開始手続の申立てをすることの検討が開始されたのは同月7日、被控訴人が控訴人株式を購入したのは同月13日の民事再生開始手続の申立ての2日前の同月11日のことであり、民事再生開始手続の申立ての原因は被控訴人による控訴人株式購入以前において既に存在していたことは明らかであるから(なお、控訴人は民事再生手続によって控訴人株式が無価値となったことを自認している)、当時の控訴人会社の資金繰り等の状況、被控訴人の売却価額が民事再生手続開始の申立て及びスワップ契約の存在を公表した控訴人株式に対する市場における最初の評価であること等をも併せ考慮して、購入日時点の控訴人株式35万株の想定価格は同月15日における処分価格である350万円を超えるものではないとした原判決の判断は相当というべきであり、控訴人の上記主張は採用することはできない。

なお、控訴人は、本件臨時報告書に本件スワップ契約の存在を記載したとしても、その場合に形成されたであろう株価が実際の株価を下回ることはあり得ないと主張するが、本件は、本件仕組みをありのままに記載したとすれば、被控訴人が控訴人株式を購入しなかったであろう事案であり、その損害は控訴人株式の購入価格と購入時における本来有すべき想定価格との差であり(言い換えれば、客観的価値のない控訴人株式を高い価格で購入させられたということにある。)、この場合の損害の算定においては、本件臨時報告書に本件スワップ契約の存在を記載した場合に形成されたであろう株価とは直接の関係はないから、控訴人の上記主張は失当である。

(4)  その他、控訴人は、被控訴人の被った損害について、法21条の2第2項による損害額の推定規定を用いることを前提にして、株価の下落要因は臨時報告書の虚偽記載等によるものではなく他の要因によるものであると主張するが、本件においては上記推定規定を適用するまでもなく損害の算定が可能な事案であるから、控訴人の主張はその前提において採用することはできない。

3  よって、以上と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤村啓 裁判官 坂本宗一 大濵寿美)

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