東京高等裁判所 平成21年(行コ)294号 判決 2010年8月26日
控訴人
国
同代表者法務大臣
A
処分行政庁
中央労働委員会
同代表者会長
B
同指定代理人
G他6名
控訴人補助参加人
Z労働組合大阪地方本部
(以下「補助参加人大阪地本」という。)
同代表者執行委員長
C
控訴人補助参加人
Z労働組合aサービス支部aアフターサービス分会
(以下「補助参加人分会」という。)
同代表者分会長
D
上記両名訴訟代理人弁護士
宮里邦雄
同
豊川義明
同
徳住堅治
同
鎌田幸夫
同
城塚健之
同
篠原俊一
同
今村幸次郎
同
河村学
同
松本恵美子
同
渡辺達生
同
齋藤耕
同
西村武彦
同
今重一
同
小野寺義象
同
北見淑之
同
鶴見聡志
同
佐藤由紀子
同
大久保さやか
同
野呂圭
同
嶋田久夫
同
樋口和彦
同
秋元理匡
同
金子直樹
同
竪十萌子
同
志村新
同
鷲見賢一郎
同
山内一浩
同
水野英樹
同
穂積剛
同
尾林芳匡
同
杉本朗
同
中谷雄二
同
田原裕之
同
海道宏実
同
吉川健司
同
中村和雄
同
塩見卓也
同
渡辺輝人
同
古川拓
同
正木みどり
同
谷真介
同
梁龍成
同
谷智恵子
同
杉本吉史
同
原野早知子
同
増田尚
同
長岡麻寿恵
同
岩城穣
同
中森俊久
同
村田浩治
同
井上耕治
同
大江洋一
同
永嶋靖久
同
佐藤真理
同
増田正幸
同
高橋敬幸
同
東島浩幸
同
小山一郎
同
名和田陽子
被控訴人
Yエンジニアリング株式会社
同代表者代表取締役
E
同訴訟代理人弁護士
倉地康孝
同
川口伸也
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とし、補助参加によって生じた費用は控訴人補助参加人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2事案の概要
1 事案の要旨
被控訴人との業務委託契約に基づいてa株式会社の音響製品等(以下「a社製品」という。)の修理等業務に従事する個人営業のaサービス代行店(以下、これを「個人代行店」といい、法人等企業形態のaサービス代行店を「法人等代行店」といい、これらを併せて「代行店」という。)により労働組合として結成されたとする補助参加人分会、補助参加人大阪地本及びZ労働組合aサービス支部(以下「組合支部」という。)は代行店の待遇改善について被控訴人に対し団体交渉を申し入れたが、被控訴人が補助参加人分会が出席する交渉及び代行店に関する事項についての交渉に応じなかったので、補助参加人ら及び組合支部は上記団交拒否が不当労働行為に当たるとして大阪府労働委員会(以下「府労委」という。)に救済申立てをした。本件は、被控訴人が、府労委から、組合支部に対するものを除き、労働組合法(以下「労組法」という。)7条2号に当たる不当労働行為であるとされ、団体交渉に応ずべきことなどを命じられたため、これを不服として中央労働委員会(以下「中労委」という。)に再審査を申し立てたところ、中労委により再審査申立てを棄却する旨の命令がされたことから、個人代行店は労組法上の労働者に当たらないなどと主張して、同命令の取消しを求めた事案である。
原判決は、被控訴人の請求を認容したため、控訴人がこれを不服として控訴した。
2 前提事実
前提事実は、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1(原判決3頁8行目から7頁15行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
3 争点及び争点に関する当事者の主張は、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2及び3(原判決7頁16行目から27頁23行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所も、被控訴人の請求は理由があるからこれを認容すべきものと判断する。その理由は、後記2のとおり当裁判所見解を付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の1及び2(原判決27頁25行目から58頁14行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決41頁18行目の(書証省略)を(書証省略)と改める。
2 当裁判所の見解
事案にかんがみて、個人代行店の労働者性について原判決の説示を敷衍して、当裁判所の見解を述べる。
(1) 労組法は、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する労働者(同法3条)が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進し労働者の地位を向上させること、その交渉のために労働者が労働組合を組織して団結することを擁護すること、使用者と労働者の関係を規制する労働協約締結のため団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的としている(同法1条)。したがって、同法上の労働者は、同法の目的に照らして使用者と賃金等を含む労働条件等の交渉を団体行動によって対等に行わせるのが適切な者、すなわち、労働契約、請負契約等の契約の形式いかんを問わず、労働契約上の被用者と同程度に、労働条件等について使用者に現実的かつ具体的に支配、決定される地位にあり、その指揮監督の下に労務を提供し、その提供する労務の対価として報酬を受ける者をいうと解するのが相当である。同法条の労働者の意義について原判決の説示するところも、これと同趣旨をいうものと解される。
そして、同法の労働者に該当するか否かは、上記要件の徴憑となる事実、具体的には、労務提供者に業務の依頼に対する許諾の自由があるか、労務提供者が時間的・場所的に拘束を受けているか、労務提供者が業務遂行について使用者の具体的な指揮監督を受けているかなどについて、その有無ないし程度、報酬が労務の提供の対価として支払われているかなどを総合考慮して判断すべきものと解される。また、本件は被控訴人と個人代行店が業務委託契約を締結している場合であるところ、業務委託契約を締結して受託者が業務に従事する場合、委託者と受託者との間に労働条件等についての現実的かつ具体的な支配、決定の関係が存在しないときでも、委託者の必要に応じて受託業務に従事する以上、委託内容により拘束、指揮監督と評価できる面があるのが通常であるから、契約関係の一部にでもそのように評価できる面があるかどうかによって労働者性を即断するのは事柄の性質上相当でなく、委託契約に基づく委託者と受託者の関係を全体的に見て、上記の労組法の目的に照らし、使用者による現実的かつ具体的な支配関係が認められるか否かという観点に立って判断すべきものと考えられる。
(2)ア そこで、被控訴人と個人代行店との契約内容、個人代行店の業務の実態についての前記引用に係る原判決の認定に基づいて、検討すると、以下のことを指摘することができる。
(ア) 出張修理業務については、個人代行店が営業日、営業日における営業時間、受注可能件数を提示し(個人代行店については、標準的な目安として1日に受注可能件数8件とされているが、絶対的なものではないと解される。)、被控訴人が当該提示内容に合わせて発注する仕組みとなっている。個人代行店は、あらかじめ営業日、営業時間、受注可能件数について提示し、当該提示をした同代行店の業務担当地域における出張修理業務の遂行に支障のない限り、その内容で決定され、また、業務に支障がある場合には、コールセンター長からその指定の変更が申し入れられ、最終的に当該代行店と同センター長とが協議を行ってその指定内容の変更の成否が決定されている。したがって、上記の仕組みで決定される営業日、営業時間数、受注可能件数の枠内では、特段の事情がない限り、被控訴人により割り振られた出張修理業務を拒否することはできないが、その範囲外では、業務の依頼に対しこれを拒否する自由があり、そのことが債務不履行になることはないといえる。個人代行店が上記枠内で被控訴人からの受注を拒否できないのは、同代行店が提示している受注枠内で発注がされているからであり、これをもって同代行店に受注の諾否の自由がないと評価することはできない。
そして、本件委託契約においては、個人代行店が他の企業から同契約における修理業務等と同種の業務を受託することは何ら制限されていないから、同代行店は、被控訴人からだけ修理業務等を受注する営業をすることも、そうでない営業をすることもできるものである。個人代行店には、その実態において被控訴人のみから修理業務等を受注している者もあるが、それは、当該代行店の自主的な選択の結果というほかなく、本件委託契約上の制約でも、被控訴人からの個別の指示によるものでもない。
(イ) 個人代行店のうち出張訪問カードに関する処理をファックスやイスデン回線を通じた通信により行っている一部の個人代行店を除く者は、その営業日に、各業務担当地域に設置されたサービスセンターにあるパソコンを使用して出張訪問カードを打ち出すなどしてその日の出張修理業務の内容を確認するため、午前9時ころまでに同センターに出向き、その日の出張修理業務が終了した後、伝票類の処理や出張訪問カードに修理業務の進捗状況等を記入するため同センターに戻っているが、個人代行店は、被控訴人の従業員と異なり、被控訴人の就業規則の適用はなく、出勤義務はなく、出退勤管理を受けていない。一部の個人代行店は上記のとおりその余の個人代行店が営業日に行っている上記作業のために同センターに出向くことはなく、同代行店が上記のとおり同センターに出向くのは被控訴人から出張修理業務を受注する手続の一環として、また、受託した出張修理業務の処理の報告等のためであると認められる。
そして、被控訴人は、個人代行店の業務終了後の報告等により、顧客からの修理依頼等が確実に履行されているか否かを確認する他に、同代行店の業務内容や業務遂行時間以外の行動等について関知する関係にないことが証拠上うかがわれるのであって、被控訴人が出張修理業務に関して個人代行店を時間的・場所的に拘束しているとみることはできない。
(ウ) 本件委託契約上、出張修理業務に係る個人代行店の業務担当地域は、被控訴人において指定し、変更することができるものとされているが、その趣旨は、出張修理業務を円滑に行うために、被控訴人において同代行店を必要とする地域と同代行店の所在地との相互関係を考慮して規整されるものであり、同代行店制度上当然に想定された規整であり、修理を求める顧客の住所地や同代行店の所在地を無視して被控訴人が自由に決定できるものではない。また、個人代行店が被控訴人からの変更の申し入れを拒否した事例はあり、そのために当該代行店に不利益が課されたことはない(書証(省略)、弁論の全趣旨)。
要するに、出張修理業務について場所的に制約があるのは、修理を依頼する顧客の住所地と個人代行店の所在地との関係で生ずる制約であるに過ぎず、業務遂行時間以外について被控訴人から所在場所を指定されることはないことが事実うかがわれるのであって、上記指定・変更権を有していることをもって、被控訴人が出張修理業務に関して個人代行店を場所的に拘束しているとみることはできない。
(エ) 個人代行店は、営業日ごとに、被控訴人が作成する出張訪問カードにより個別の出張修理業務を受注し、顧客から代理受領した修理代金を修理日の翌日に被控訴人に入金することなどの義務を負っているが、出張訪問カードによる受注は、個別の出張修理業務を発注する手続の一環としてされているものであり、また、修理代金の入金処理等、個人代行店が修理業務の受託に付随するものとし本件委託契約上その義務を負っているに過ぎず、これらの事実をもって被控訴人が個人代行店に労務管理上の指揮監督をしているとみることはできない(個人代行店は、修理代金の入金処理等の他にも在庫修理等の付帯業務を負担することとなっている(書証省略)が、同様に考えられる。)。
また、個人代行店は、その行う業務が被控訴人からの業務委託であることの性質上、被控訴人から貸与された制服の着用や被控訴人の社名が記載された名刺の携行、各種マニュアルに基づく業務の遂行が求められているものの、受注した修理業務等を実際にいかなる方法で行うかは個人代行店の裁量にゆだねられているものと認められる(弁論の全趣旨)。
なお、控訴人は、書証(省略)(Fの審問調書)の供述等を根拠に、サービスセンター長は個人代行店とミーティングをもって個々の部分に問題がありそうな部分について具体的な指示をしている旨主張するが、このような業務の遂行上必要な情報の伝達をもって、直ちに労働者性を基礎付ける指揮命令がされていると評価するのは適切でない。
(オ) 個人代行店は、本件委託契約上、同契約を締結していない第三者に対して被控訴人から受注した修理業務を再委託することを禁止されているものの、同契約を締結している他の代行店に再委託することは禁止されておらず、その意味で、被控訴人から受注した修理業務を自ら行うことは契約の要件とされていない。また、個人代行店は、修理に要する部品を有償支給ないし貸与される。そして、同代行店は、貸与された部品について管理及び棚卸の責任を負い、差損を負担する(本件委託契約7条)ものとされているのであって、この貸与は、実質的な消化仕入れであり、有償支給の一種とみることができる。さらに、個人代行店は、本件委託契約において工具等を自前で用意することを合意しており、実際に工具や計測器類を自己の費用で購入して使用しており、その出張業務を行うについては、自家用車を使い、当該自動車に係るガソリン代等の費用を自ら負担している。
(カ) 個人代行店が受注した修繕業務を行った場合にはその報酬として出来高に応じて報酬が支払われ、最低保証はない。この報酬は、修理に要した時間の長短ではなく、修理する機器、修理内容に応じて決まるものである(書証(省略)及び弁論の全趣旨によれば、一部作業時間を基礎として算定される委託料があることが認められるが、例外的なケースに属する。)。個人代行店は、修理に使用した部品の代金の2パーセント相当額が支払われるほか、被控訴人の開発商品を販売したり、物件を紹介したりした場合には、開発商品販売量の一定割合の額及び物件紹介に係る粗利益の一定割合の額が委託料として支払われる。そして、委託料について被控訴人による源泉徴収や社会保険料等の控除は行われず、個人代行店には委託料全額とこれに対する消費税を加えたものが支払われ、したがって、同代行店は、自営業者として営業届を提出するものとされ、その税務申告は、個人事業者として行われており、被控訴人の近畿支社における個人代行店の半数近くの者は、個人事業者が利用できる青色申告の承認を得ていることが認められる。
イ 以上の諸点を総合考慮するに、本件委託契約に基づく被控訴人と個人代行店との関係には拘束、指揮監督とみられる部分があるが、全体として見れば、個人代行店は、一定の制約はあるものの基本的には被控訴人からの業務の依頼に対し許諾の自由を有し、業務に関し、時間的・場所的な拘束を受けず、業務の遂行について被控訴人から個々に具体的な指揮監督を受けることがなく、また、報酬は行った業務内容に応じた出来高で支払われているということができる。したがって、同代行店は、自己の計算と危険の下に業務に従事する独立の自営業者の実態を備えた者として、被控訴人から業務を受注する外注先と認めるのが相当である。
(3)ア 控訴人及び補助参加人らは、①個人代行店は、被控訴人の主要業務の一つである修理業務に関して、恒常的に不可欠な労働力として被控訴人の企業組織に組み込まれて労務を提供していること、②同代行店が締結している業務委託契約の内容が、事実上又は契約上、被控訴人により一方的に決定されていること、③同代行店は、その業務遂行に関して、被控訴人から、時間的・場所的な拘束を受け、休日の設定、変更について規制を受け、作業内容のみならずその遂行の態様にまで及ぶ具体的な指示を受けているなど、被控訴人の指揮監督の下で業務を遂行していると評価することができること、④同代行店には、被控訴人から発注された業務の受注について諾否の自由がないこと、⑤同代行店の報酬は、出来高払いとされているが、労務提供の対価としての性格を有していること、⑥同代行店は被控訴人への専属性が高いことの各事由を総合的に勘案すると、同代行店は、被控訴人との関係において、通常の商取引関係にある事業者とみるのは相当でなく、被控訴人の指揮監督の下に労務を提供し、その対価として報酬を受け取っている者として、労組法上の労働者に該当すると主張する。
しかし、①の点についてみれば、被控訴人はその修理業務のうち被控訴人の従業員だけではまかなえない部分を代行店に業務委託してその業務を行っているところ、代行店が処理した成果はそのまま被控訴人の成果となる関係にあるから、代行店が本件委託契約に基づいて処理する修理業務が被控訴人の業務計画を構成する一部分となること、また、代行店が処理した修理業務に係る売上が被控訴人の経営計画を構成する一部となることは、本件委託契約及びその委託の内容上当然のことである。また、個人代行店は、その行う業務が被控訴人からの業務委託であることの性質上、被控訴人から貸与された制服の着用や被控訴人の社名が記載された名刺の携行、各種マニュアルに基づく業務の遂行が求められており、代行店となるために研修を受けることが義務付けられているが、これらは、いずれも、被控訴人の委託する修理業務等が、a社の電気機器の修理補修という専門技術的分野において被控訴人が設定している一定の質、水準に相応するものでなければならないという本件委託契約の委託内容による制約に過ぎないというべきである。そして、本件委託契約上、個人代行店は、被控訴人だけから修理業務等を受注すべきものとされてはおらず、他の企業等から同種の修理業務を受注することは制限されていないことをも考慮すれば、上記の各事実をもって、同代行店が被控訴人の企業組織に組み込まれていると評価するのは適切でない。
次に②の点についてみると、本件委託契約書及び覚書のいずれも被控訴人が作成したものであるとしても、個人代行店は、これに合意しており、その意思が反映されたものとなっている。本件委託契約締結後、被控訴人の申し入れにより委託料の変更及び一部の個人代行店について業務担当地域の変更がされている事例があるが、それぞれ同代行店に同意を得て行われているものである。そして、実際の修理業務等の発注は、被控訴人がその顧客と調整したところにより行われ、それにより個人代行店の受注する業務の日時や場所が決まること、また、修理の方法等について一定の指示があることが認められるが、いずれも本件委託契約の委託の内容の性質上そのように定めるほかないものである。したがって、上記の各事実をもって、個人代行店の業務の内容を被控訴人が一方的に決定し、同代行店を指揮監督していると評価するのは困難である。
⑥の点についてみると、既に説示したとおり、本件委託契約においては、個人代行店が他の企業から同契約における修理業務等と同種の業務を受託することは何ら制限されていないから、同代行店は、被控訴人からだけ修理業務等を受注する営業をすることも、そうでない営業をすることもできるものであって、同代行店で被控訴人のみから修理業務等を受注している者は、当該代行店の自主的な選択の結果というほかないから、同代行店が労働者性を根拠付ける専属性を有するとみることはできない。
③及び④についてみると、既に説示したとおり、個人代行店が被控訴人の業務依頼に対し諾否の自由がないとか、時間的・場所的な拘束を受けているというのは、一面的な見方であり、本件委託契約の法律関係を全体としてみれば、諾否の自由が認められ、また、時間的・場所的な拘束はなく、修繕方法の実際のやり方は個人代行店の裁量にゆだねられていると見るのが相当である。
⑤の点については、既に説示したとおり、報酬は行った業務内容に応じた出来高で支払われているということができるのであって、労務提供の対価として性格は希薄ということができる。
さらに、被控訴人が個人代行店にサービスセンター内のパソコン等を使用させ、同代行店が修理業務で使う特殊で高価な機器を無償で貸与していることは、本件委託契約に基づく業務に関して、被控訴人が効率的、確実な業務遂行のため個人代行店に便宜供与を行っているに過ぎず、これらは個人代行店の労働者性を根拠付けるものとはいえない。
イ 控訴人及び補助参加人らは、個人代行店の委託契約(書証省略)と法人等代行店の委託契約(書証省略)の契約条項の差異(法人等代行店と異なり、個人代行店は、被控訴人が指示する附帯業務を行うこととされている、個人代行店には修理期間に関し法人等代行店ほどの裁量が与えられていない、業務遂行の方法についても種々具体的な義務を負っている、受託業務を未契約の第三者に再委託することを禁じられている、被控訴人が指定、変更する業務担当地域において業務を行うこととされている、委託料の取扱いについても法人等代行店と異なるなど)を挙げ、これらの差異からしても個人代行店が労動性を有することは明らかである旨主張する。
しかし、個人代行店が労組法上の労働者であることか否かについては、被控訴人と同代行店との契約内容、個人代行店の業務の実態に基づいて判断されるべきところ、同代行店が労働者性を有しないことは上記説示のとおりであり、また、上記の検討結果に照らしてみれば、これらの差異は、個人代行店が法人等代行店と異なって労働者性を有することを根拠付けるようなものではないというべきである。したがって、控訴人及び補助参加人らの上記主張は採用することができない。
ウ 本件委託契約に基づく被控訴人と個人代行店との関係を全体的に見れば、上記のとおり認めるのが相当であって、控訴人及び補助参加人らの主張は、いずれも採用することができない。
(4) 以上から、個人代行店が被控訴人との関係で労組法上の労働者に当たるということはできない。
3 以上の次第で、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 小林敬子 裁判官 中嶋功)