東京高等裁判所 平成22年(行コ)156号 判決 2010年9月15日
住所
<略>
控訴人
X
東京都
被控訴人
国
代表者法務大臣
千葉景子
処分行政庁
公正取引委員会
代表者委員長
竹島一彦
指定代理人
田中久美子ほか6名
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求める裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取り消す。
(二) 公正取引委員会は,経済産業省資源エネルギー庁に対して,政策調整を行わなければならない。
(三) 被控訴人は,控訴人に対し,金30万円を支払え。
(四) 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨
第2事案の概要
1 事案の概要と訴訟の経緯
本件は,公正取引委員会が経済産業省資源エネルギー庁に対する政策調整を怠っているとして,行政事件訴訟法3条6項により,上記政策調整の義務付けを求める義務付け訴訟であり,控訴人は,関連請求として,被控訴人の職員の不作為による違法を主張して,国家賠償法1条1項により被控訴人に対し慰謝料30万円の支払を求めている。
原判決は,控訴人の義務付けの訴えを不適法として却下し,国家賠償請求を棄却したので,これに不服の控訴人(1審原告)が控訴した。
2 関係法令の定め,前提となる事実,当事者の主張は,控訴人が当審において追加した主張を別紙「控訴理由書(写し)」として追加するほか,原判決「事実及び理由」中の第2の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,本件訴え中,控訴人の政策調整の義務付けを求める部分は不適法であり,国家賠償を求める請求は理由がないと判断する。
その理由は,次のとおり付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の「第3記載のとおりであるから,これを引用する。
(控訴理由について)
控訴人は,平成20年7月,公正取引委員会に対し,独占禁止法45条1項に基づく報告をし,適当な措置をとるべき旨求めたが,公正取引委員会は,同年9月26日付け通知書をもって,控訴人に対し,独占禁止法違反行為は認められず,措置を執らなかった旨の通知(同項3項)をしている。
本件において,控訴人は,これとは別に,公正取引委員会に対し,資源エネルギー庁に対する政策調整をすることを求めているが,公正取引委員会の行う政策調整は,国家機関間の行為であって,それが行政事件訴訟法3条6項に規定する処分に当たらないことは前示(引用した原判決書記載)のとおりである。したがって,本件訴え中,公正取引委員会に資源エネルギー庁に対する政策調整を求める請求に係る部分は,不適法というほかない。
また,公正取引委員会の行う政策調整は,公益のために行われるものであって,個々の国民の具体的権利利益のためにされるものではない。したがって,地球温暖化防止を自らの使命としている控訴人が,原子力エネルギー政策等に強い関心を持ち,その適正化のために種々の活動をしているとしても,公正取引委員会が資源エネルギー庁に対し,控訴人の意に沿った措置をとらなかったことにより,控訴人の権利又は法的に保護された利益が侵害されたとすることはできないから,控訴人の損害賠償(慰謝料)請求は,理由がない。
なお,控訴人は,控訴理由において,以上判示した点のほか,種々の法的主張をしているが,いずれも独自の見解に基づくものであり,採用できない。
第4結語
よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 三代川俊一郎 裁判官 小野洋一)
file_2.jpg別紙