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東京高等裁判所 平成23年(く)308号 決定 2011年7月07日

主文

本件即時抗告を棄却する。

理由

本件即時抗告の趣意は,弁護人竹内明美,同坂本誠一及び同小泉恒平共同作成の即時抗告申立書に記載されたとおりであるから,これを引用する。

論旨は,要するに,類型証拠の開示に関する裁定請求において,弁護人が開示を求めた各証拠の開示命令請求をすべて棄却した原決定の判断は誤っているから,これを取り消して,弁護人の裁定請求に係る各証拠の開示を命じるとの決定を求める,というものである。

論旨に対する検討に先立ち,本件即時抗告の適法性についてみるに,記録によると,原決定は平成23年6月25日に被告人に,同月27日に竹内明美主任弁護人にそれぞれ送達され,同月30日に本件即時抗告が申し立てられていることが認められるところ,このような場合の即時抗告申立期間は被告人本人に送達されたときから進行を始めると解されるから,本件即時抗告の申立ては刑訴法422条に定める3日の期間経過後になされたものであって,不適法と言わざるを得ない。

なお,念のため,記録を調査し,所論のいう点を踏まえて原決定の内容について検討すると,本件各事案の内容及び性質,既に開示済みの証拠の内容,開示を求める各証拠の重要性の程度及び被告人の防御の準備に及ぼす必要性の程度,関係者やその家族が○○組系暴力団から強度の報復を受けるという証拠開示によって生じるおそれがある弊害の大きさなどを総合考慮し,さらには開示を求める証拠が存在しないことなどの理由によって,弁護人が開示を求めた各証拠に係る開示命令請求をいずれも棄却した原決定の判断に誤りは認められない。

以上のとおり,本件申立ては不適法であり,かつ理由もないので,刑訴法426条1項によりこれを棄却することとして,主文のとおり決定する。

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