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東京高等裁判所 平成23年(行コ)25号 判決 2011年10月19日

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  千葉県知事が控訴人Aに対し平成20年12月15日付け千葉県道整指令第○号でした建築不許可処分を取り消す。

3  千葉県知事が控訴人Bに対し平成20年12月15日付け千葉県道整指令第○号でした建築不許可処分を取り消す。

4  千葉県知事が控訴人Cに対し平成21年2月17日付け千葉県道整指令第○号でした建築不許可処分を取り消す。

5  千葉県知事が控訴人Dに対し平成21年2月17日付け千葉県道整指令第○号でした建築不許可処分を取り消す。

6  千葉県知事が控訴人Eに対し平成21年2月17日付け千葉県道整指令第○号でした建築不許可処分を取り消す。

第2事案の概要

1  控訴人らが千葉県知事に対し現行の都市計画法65条1項に基づき居住用建築物に係る各建築許可を申請したところ,同知事は,いずれの申請についても市川都市計画道路×号線のうち市川市が施行している都市計画道路事業の工事の施行の障害となることを理由として不許可決定(以下,控訴人らに対する各不許可決定を併せて「本件不許可処分」という。)をした(控訴人A及び同Bについては平成20年12月15日,控訴人C,同D及び同Eについては平成21年2月17日)。

本件は,控訴人らが,被控訴人に対し,都市計画法(平成8年法律第48号による改正前のもの。以下,特段の断りない限り同じ。)21条1項に基づき平成7年2月28日付けでされた前記都市計画道路に係る都市計画変更決定が違法であって取り消されるべきものであるから,その違法を承継した本件不許可処分も違法である等と主張して,本件不許可処分の取消しを求めた事案である。

原審は,上記都市計画変更決定に違法事由があるとは認められない等として,控訴人らの請求を棄却したため,控訴人らが控訴した。

2  事案の概要の詳細は,当審における当事者の主張を3ないし7のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決10頁19・20行目の「平成7年法律第13号による改正前の都市計画法(以下,「旧都計法」という。)」を「都市計画法(平成8年法律第48号による改正前のもの。以下,特段の断りなき限り同じ。)」と,同行目以降の各「旧都計法」をいずれも「都市計画法」と,同18頁18行目の「都市計画法」を「現行の都市計画法」と,それぞれ改める。)。

3  本件変更決定の程度について(争点1なしい3について)

(控訴人らの主張)

車線数及び交差点に係る本件変更決定の内容は,軽微な変更にとどまるものではない。

(1) 本件変更決定は従前の4車線道路から2車線道路に変更するものであり,軽微な変更にとどまるものではない。

2車線道路であれば,必要な幅員はせいぜい6メートルであるにもかかわらず,本件道路部分のF線の跨線橋部分で12メートルもの幅員が予定されていたということは,昭和42年当時に本件道路部分について2車線を予定していたと考えることは不合理である。むしろ,跨線橋の立体交差部分の全幅を車道とし,副道に歩道を設置するならば,幅員12メートルで4車線を設置することが可能である。

また,平成7年に行われた地元自治会の住民に対する説明では,複数の計画案を示して説明がされているが,その説明の中には20メートルの幅員で4車線を設置する構造図も含まれており,当時,4車線が計画されていたことをうかがわせる事情である。

仮に都市計画として車線数について断定的な計画がなかったとすると,本件変更決定及びこれと一体となる本件事業認可により2車線とすることが確定したものであるから,この時点で重要な変更決定が行われたというべきである。

(2) 本件変更決定は,交差点に右折車線を設けるものであり,右折を容易にし,かつ直進車が右折車に妨げられないため,交通が集中する。本件道路部分に市川都市計画道路××号G線(国道○号)及び市川都市計画道路×××H線を接続する役割を期待しているものである。すなわち,F線と踏切交差による交通渋滞が恒常化し,何ら改善策が取られない中,本件変更決定により立体交差が実現すると,周辺の交通事情からみて,同立体交差を通行しようとする自動車の本件道路部分への交通の集中を招く。

交差点における交通の確保は道路にとって重要な要素であり,交差点の構造が変わることにより交通量も大きく変化するのであるから,本件変更決定における交差点の変更は軽微な変更とはいえない。

(3) 本件変更決定前の大臣認可の申請手続きで交通量推計資料(甲3。以下「本件交通量推計資料」という。)が添付資料として添付されていたことからすると,本件変更決定に交通量調査が必要であったことが明らかであり,この点からも本件変更決定が,軽微な手続ではなく,交通量調査資料が必要なものであったことが明らかである。

(被控訴人及び参加行政庁の主張)

本件変更決定の内容及び程度は軽微なものにとどまる。

(1) 本件変更決定前においても本件道路部分は2車線で計画されていた。

従前の都市計画において,本件道路部分のF線と交差部分である跨線橋部分は,橋梁部分の本線車道に並行して副道を設ける必要があることから広い幅員で計画されたものである。

旧道路構造令においては,第4種道路の2車線道路の最小車道幅員は6.5メートルと規定され,また,第4種道路には各側に歩道を設けるものと規定されているから,跨線橋部分では,路肩を設けずに歩道の幅員を最小の1.5メートルとしても,12メートルの幅員のうち車道部分の幅員は9メートルにしかならず,4車線にはなり得ない。

また,第4種道路にはその各側に歩道を設けるものとされているが,本件道路分の跨線橋部分は,平坦な市街地に設置されるものであり,歩道を設置しないことが許される「地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない箇所」(旧道路構造令9条1項ただし書)に設置されるものではない。

(2) 本件変更決定における交差点の部分改良に係る変更は,本件変更決定時の道路構造令が定める基準に合わせて区域を変更したもので軽易なものである。

ア 本件変更決定によって,右折車線を設けることを目的として,市川都市計画道路××号G線(国道○号)及び市川都市計画道路×××H線を拡幅するという変更をしたことは明らかであるが,都市計画では,右折車線の設置等の道路の詳細な構造について定めるものではなく,両都市計画道路及び本件道路部分に右折車線を設けることが法律上決定されたのは,本件変更決定から5か月後の平成7年7月の本件事業認可においてである。したがって,法律上は,本件変更決定において右折車線の設置という点で何らかの変化が生じたものではない。

イ 右折車線は道路における一般的な構造とされ,交差点における交通容量を回復させる機能を持つにすぎず,上記各交差点での右折車線は,同交差点での交通容量(道路上のある地点において車両を通過させる能力)を回復させる機能(渋滞緩和機能)を持つにすぎないのであって,そもそも本件事業認可に係る道路部分の総体的な交通量に影響を与えるような性質のものではない。

また,右折車線の性質が上記のようなものであるため,一般的に右折車線の有無を区別して交通量予測をすることはなく,ましてや右折車線があることにより特定の道路に交通が集中することを前提に交通量予測をすることはない。このことは本件交通量推計資料(甲3)の元となった市川市都市計画道路網交通量推計業務報告書(甲10。以下「本件交通量推計報告書」という。)においても同様である。

4  公聴会の要否について(争点1について)

(控訴人らの主張)

(1) 都市計画法21条は同法16条を準用しているものではないが,都市構造に大きな影響を及ぼす根幹的施設を定める場合等には変更決定においても同条が直接適用されるべきである。

そして,本件都市計画道路は,I道路,J道路,K道路,L線といった大動脈道路との接続が予定された根幹的な都市施設であり,市道ではあるが,その都市計画決定は千葉県知事が行わなければならないものであるところ(都市計画法15条1項3号),本件変更決定においては,道路の性格,構造,骨格等が変更されるのであるから,上記の場合に当たり,公聴会の開催が必要である。

(2) 本件都市計画道路は,昭和39年に基本線が決定され,本件変更決定は平成7年にされたものであるから,30年以上が経過している。その間には,騒音等による環境悪化を恐れた多数の地域住民からの請願を受け,市川市議会が道路事業の凍結を決議した経緯もある。このような事情があるのであるから,都市計画の変更決定を行うに当たっては,地域住民の意見を聞き,変更決定に反映させるべきであった。

(3) 控訴人らを含む住民は,説明会において市川市の担当者が約束した交通量調査や環境調査結果が知らされることを待っていたものであり,その間に都市計画変更決定や事業認可がされたことも,取消訴訟の出訴期間が徒過したことも全く知らなかった。このように,変更決定や事業認可の違法性を争う機会を控訴人らを含む地元住民に保証するためにも,利害関係を有する住民らの意見を聴く公聴会の開催が必要であり,それを行わず,変更決定や事業認可が当分行われないと誤信させた市川市又は被控訴人の行為は,都市計画手続に住民が参加する機会を奪ったものであり,都市計画法16条1項,17条2項,18条1項,2項,21条1項,2項の規定に反して違法である。

(被控訴人及び参加行政庁の主張)

都市計画法16条1項の規定からも明らかなように,公聴会等を開催するか否かは都市計画決定権者である都道府県知事又は市町村の裁量にゆだねられており,また,公聴会,説明会等の方法のうち,いかなる方法を選択するかも同様に都市計画決定権者の裁量にゆだねられている。

本件変更決定は,α川・β川河川改修事業に伴う,F線との立体交差部分の構造変更及び都市計画道路の線形及び幅員を変更するものであり,起点終点の変更及び車線数の増減を行わないものであるから,道路網の全体的な再整備等の広範囲の多数の住民に直接影響を及ぼすような都市計画の変更とは異なり,被控訴人が公聴会を開催しないと判断したことは,裁量の範囲内であって違法となるものではない。

5  基礎調査の要否及び基礎調査の適否について(争点3について)

(控訴人らの主張)

(1) 都市計画の変更決定においても基礎調査が必要である。

都市計画法21条の条文からみて,都市計画の変更決定においては,必然的に都市計画法13条1項による基礎調査(道路においては交通量調査)が予定されている。実際問題として都市計画決定の際には基礎調査が必要と定められているのに,変更決定の際に不要というのは不合理である。

平成14年法律第85号により新設された都市計画法21条の2においては,一定の範囲の住民らが都市計画決定・変更決定の提案をする際には,その提案が正式な提案として認められるためには,同法13条所定の要件を充たすものでなければならないとされており,この理は,都市計画法21条による変更決定の場合にも異なることはない。

(2) 都市計画の変更決定について常には基礎調査が必要ではないとしても,本件変更決定の内容は前記3の控訴人らの主張のとおり,重大な変更に当たり,基礎調査に基づいて行われるべきである。

また,実質的にみても,本件変更決定前には20年以上の長期にわたり都市計画の実質的な変更は行われていない。この間の社会経済状況の著しい変化,都市計画道路に対する請願や市川市市議会の議論の状況を踏まえれば,本件変更決定は,実質的には新計画の決定と評価されるものであり,当然交通量調査が行われるべきである。

(3) また,本件変更決定において基礎調査として利用された本件交通量推計資料(甲3)は,不適切である。

すなわち,同資料は,都市計画道路網の交通量を推計する本件交通量推計報告書(甲10)を転記したものであるが,都市計画道路網の調査は,地域全体における道路の配置等を検討するためのものであって,将来の都市計画全てが完成したものとして数字を算出するものであり,目標年次も定められていない推計であるから,特定道路の交通量を推計し得るものではなく,これに基づき道路構造を設計することはできない。本来,特定道路の交通量調査は,他の道路の交通容量を現況実態調査や交通センサスのデータ等を基に新設道路の交通量を推計するものであり,本件交通量推計資料や本件交通量推計報告書の転用が全く意味をなさない。かかる資料に基づく本件変更決定は,基礎調査に基づいたものとはいえず,都市計画法13条1項14号の基準に合致しない。

また,本件交通量推計報告書における調査は,上記のとおり全ての都市計画道路が完成したものとして数値を算出するものであるが,全ての道路が完成することは現実的ではなく,当該都市計画道路が完成された時点では存在しないはずの道路にも交通量が分散され,同時点における推計値としては過小なものとなる。

さらに,本件交通量推計資料及び本件交通量推計報告書は,平成2年の交通センサスが存在するにもかかわらず,昭和58年当時の交通センサスに基づいており,交通量を少なく見積もった疑いがある。

(被控訴人及び参加行政庁の主張)

(1) 都市計画変更の理由は基礎調査の結果その必要が生じた場合に限らないことは都市計画法21条1項の規定から明らかであり,本件変更決定は,同項の「その他都市計画を変更する必要が生じたとき」に該当することから行われたものである。

都市計画法21条2項においても,変更後の都市計画の内容が都市計画法13条1項各号の定める基準に従う必要があると解されるものではあるが,同項6号及び14号の趣旨は,都市施設が適切な規模で必要な位置に配置されることを確保するため,都市計画(変更)決定において,客観的,実証的な基礎調査の結果に基づく土地利用,交通等の現状の正しい認識及び将来の的確な見通しを踏まえて合理的な判断がされることを求めるものであると解され,都市計画変更決定に際し,改めて基礎調査を行うことを求めるものではない。

そして,本件変更決定による変更は,前記3における被控訴人及び参加行政庁の主張のとおり交通量に関する基礎調査やその結果いかんはその内容と関係がなく,基礎調査の結果に基づく必要もない。

(2) なお,本件変更決定以前にも市川市における都市計画道路網に係る調査検討は随時行われていたものであり,同調査検討によっても本件都市計画道路に係る都市計画変更の必要性は生じていなかった。

また,本件交通量推計資料(甲3)は,単に参考資料として添付されたものであり,都市計画法6条1項の基礎調査として位置づけられているものではない。本件都市計画道路に係る都市計画の変更案を策定している当時,本件交通量推計報告書(甲10)がまとまっており,市川市は,これを基に本件交通量推計資料を作成し,参考資料として千葉県知事に提出しているにすぎない。

本件交通量推計報告書は,市川市の都市計画道路網を変更するための資料として作成されたものであり,その予測の手法も現行の道路構造令2条21号に規定する「計画交通量」の予測の基本的な手順に則ったものとなっている。また,道路は一度建設すれば恒久的に使用されるものであり,現況や短期の予測に基づいて計画すると不相当な規模の道路となる可能性が高いことから,できる限り長期にわたる予測をするべきであるとされており,全ての都市計画道路が完成することを前提としている本件交通量推計報告書を用いることが不適切ではない。

6  環境対策の不備について(争点4について)

(控訴人らの主張)

都市計画法は,その趣旨からみて良好な都市環境を実現し,国土の有効な活用を目指しているものであるから,環境基準を満たさない道路は良好な都市計画を実現するものとはいえず,受忍限度を超えるものであり,都市計画法の趣旨に反し,当該道路に係る都市計画(変更)決定は違法である。

行政側の対応措置は,限定的なその場しのぎの対策であり,これから建設する道路に対する対応としては不十分である。

(被控訴人及び参加行政庁の主張)

環境対策を講ずれば,環境保全目標(環境基準と同値)をおおむね達成できる見込みである。

平成16年9月1日付けで市川市長が市川市環境審議会に環境結果に係る環境保全の見地からの意見を諮問したところ,騒音については適切な環境対策を実施することにより環境保全目標を達成可能であり,大気質,振動については環境保全目標を達成できる旨の答申を得ている。

したがって,市川市が受忍限度を超えて損害賠償責任を負うような道路を建設することはあり得ない。

また,市川市が環境対策として設置することとしている遮音壁については,一部基礎工事が着手されている。

7  事情の変更

(控訴人らの主張)

平成17年に行われた基礎調査による交通量によれば,現行の都市計画法21条により本件道路部分の都市計画を変更しなければならない。しかし,本件においては,いまだ上記基礎調査による都市計画の変更決定は行われておらず,かかる状態においてされた本件不許可処分は違法である。

(被控訴人及び参加行政庁の主張)

市川市が平成16年3月に公表した環境影響予測結果における推計交通量1日当たり3万0600台は,本件事業認可に係る道路部分の沿道住民等の要望による環境対策検討のため,M道路等を考慮しない,現在供用されている道路網だけの道路網を前提とし,環境対策の検討のため,環境への影響が最大となる交通量を見込んだ当面の交通量予測であり,本件交通量推計資料(甲3)における1日当たり9800台との推計は,市川市全体の都市計画道路が全て完成することを前提とするものである。上記2つの推計交通量は,前提条件が異なるのであるから,推計結果が異なるのは当然である。

また,前者の環境影響予測結果における交通量の推計は,都市計画法6条1項の規定による調査でないことはもちろん,厳密な意味での将来の交通量予測(交通量推計調査)といえるものでもない。

したがって,上記のような経緯により推定された交通量に基づいて本件都市計画道路に係る都市計画を変更しなければならない理由はない。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

2  控訴人らの主張する違法事由(前記第2の7を除く。)について(争点6)

(1)  都市計画法は,都市計画事業認可の基準の一つとして,事業の内容が都市計画に適合することを規定しているのであるから(同法61条),都市計画事業認可が適法であるためには,その前提とされた都市計画が適法であることが必要である。そして,本件事業認可は,本件変更決定による変更の結果新たに定められた都市計画を前提とするものであるから,本件変更決定の適法性は本件事業認可の適法要件になると解すべきである。

控訴人らは,本件不許可処分の違法事由として,前記第2の7を除き,本件変更決定の違法性を主張する。

しかし,都市計画事業の認可,告示がされると,当該事業地内における建築等が制限される(都市計画法65条1項)とともに,土地収用法上の諸効果が発生する(同法70条1項)のであるから,本件事業認可は行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政事件訴訟法3条1項,2項)に当たり,それ自体が抗告訴訟の対象となるのであって,本件変更決定の違法性を含む本件事業認可の違法性は,原則として,後行行為に承継されず,本件事業認可と後行の行政処分が連続した一連の手続を構成し,一定の法律効果の発生を目指しているような場合に限り,後行の行政処分の違法事由として本件事業認可の違法性を主張することができるというべきである。

以下,本件変更決定の違法性を含む本件事業認可の違法性が本件不許可処分に承継されるか否か検討する。

(2)  都市計画法(ただし,(2)の中では,都市計画法及び現行の都市計画法を意味する。)59条の認可がされると,事業地内の土地の所有者は施行者に対し当該土地を時価で買い取るべきことを請求できる(同法68条1項)とともに,都市計画事業の認可をもって土地収用法20条の事業の認定に代えるものとされ,都市計画事業の認可の告示は同法26条1項の規定による事業の認定の告示とみなされ(都市計画法70条1項),これにより土地収用法上の諸効果が発生する。したがって,都市計画事業の認可は,最終的には事業地内に存する土地の収用等を通じて事業を完了させることを目的とした処分とみることができる。

一方,都市計画法65条に基づく建築許可処分は,事業認可の告示による効果として,当該事業地内において,都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その他工作物の建設を行い,又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行うことを,都道府県知事の許可にかからせたものである。これは,都市計画事業の段階においては,事業の施行期間が明らかにされ,いずれ正当な補償のもとに土地が収用等されるのであるから,それまでの間都市計画事業の施行の障害となる建築行為等がされることは,いずれ極めて近い時期にその建築を壊さなければならず,施行者にとっても事業の促進に当たって障害が大きいこと等から,これらの不経済な損失を防止するため,上記の都市計画事業の施行の障害となるおそれのある建築等を一般に禁止しつつ,施行者の意見を聞きながら,申請に係る行為が現在の土地利用の維持管理的なものであってやむを得ないと認められるとき等にはこれを許可することができることとし,事業の施行と当該事業地内の土地利用との調整を図る処分であるとみることができる。

このように事業認可と後行の建築許可処分は,都市計画事業の完了に向けて関連する処分ではあるが,建築不許可処分は事業の施行と当該事業地内の土地利用との調整を図る処分であって,両処分の関係は,目的と手段との関係にみられるような,連続した一連の手続を構成し,一定の法律効果の発生を目指す関係には当たらない。

また,実質的にみても,事業認可により事業施行期間も定められ,当該事業地内に土地を所有している者にとっては,その権利への影響がすでに具体的かつ現実的なものとなっている上,事業認可については遅滞なく告示されることとなるのであるから(都市計画法62条),事業認可の違法性を事業認可の取消訴訟で争わせることが不合理なものとはいえないことは明らかである。その上,事業認可の違法性を,事業認可の取消訴訟で争い得るばかりでなく,事業認可と連続した一連の手続を構成し,一定の法律効果の発生を目指しているとみることのできる収用裁決等の取消訴訟においても争い得るとする以上,これに加えて建築不許可処分の取消訴訟においてもまた争い得るとしなければならない合理的な必要性も認められない。

したがって,本件変更決定の違法性を含む本件事業認可の違法性は本件不許可処分に承継されず,本件変更決定の違法性を含む本件事業認可の違法性をもって本件不許可処分が違法であるということはできない。

控訴人らの主張は採用することができない。

3  現行の都市計画法65条1項の申請に対する不許可処分は,都道府県知事の裁量処分としてなされるところ,都市計画事業の段階においては,事業の施行期間が明らかにされ,いずれ正当な補償のもとに土地が収用等されることが予定されている上,それまでの間都市計画事業の施行の障害となる建築行為等がされることは,いずれ極めて近い時期にその建築を壊さなければならず,施行者にとっても事業の促進に当たって障害が大きいことは前判示のとおりであるから,申請に係る行為が現在の土地利用の維持管理的なものであってやむを得ないと認められるとき等以外は原則として許可することを予定していないというべきである。そして,前判示のとおり,控訴人らの申請内容は,いずれも建物の新築に係るものであって,現在の土地の維持管理的な行為にとどまるものとはいえないのであり,これらの申請に対してされた本件不許可処分について千葉県知事がその裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとはうかがわれず,その他これを認めるに足りる証拠はない。

また,控訴人らは,平成17年の基礎調査に基づく変更をしないことが違法であると主張するが,仮に,千葉県知事が現行の都市計画法21条1項に基づき都市計画を変更する法的義務があるとしても,本件変更決定及び本件事業認可に基づく本件不許可処分が直ちに違法になるものではない。また,控訴人らの主張する平成17年の基礎調査の結果とは,市川市が平成16年3月に公表した環境影響予測結果における推計交通量1日当たり3万0600台を指すものと認められるところ,同推計は,本件事業認可に係る道路部分の沿道住民等の要望による環境対策検討のため,M道路等を考慮しない,現実に供用されている道路だけの道路網を前提とした交通量予測であると認められ(甲6,30,丙66),これをもって交通の将来の見通しをたてることは合理的なものとはいえず,千葉県知事が同推計値に基づき本件道路部分につき都市計画変更決定をすべきであることが現行の都市計画法21条1項の規定から明らかであるとは認められないのであるから,千葉県知事がいまだ変更決定をしないことが違法であるということもできない。控訴人らの主張を採用することはできない。

以上によれば,本件不許可処分はいずれも適法であって,その余の点を判断するまでもなく,控訴人らの本件不許可処分の取消しを求める請求はいずれも理由がない。

5  また,仮に,本件変更決定の違法性を含む本件事業認可の違法性が本件不許可処分に承継されると解する余地があるとしても,当裁判所も,控訴人らの主張する本件変更決定の違法性は認められず,本件変更決定は適法であると判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決の上記部分のうち,各「旧都計法」をいずれも「都市計画法」と改める。)。

(1)  原判決19頁16行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。

「1 本件変更決定における変更の程度

(1) 控訴人らは,千葉県知事又は市川市は,本件道路部分の車線数を昭和42年の都市計画決定当時は4車線であったものを,本件変更決定時に2車線に変更したと主張する。

しかし,本件都市計画道路は旧道路構造令上第4種道路に該当するものと認められるところ(弁論の全趣旨),旧道路構造令9条1項によれば,第4種道路には,その各側に歩道を設けるものとされており,昭和42年の都市計画決定時において幅員12メートルで計画されていた本件道路部分の跨線橋については(甲5),同条3項のトンネル,橋又は高架の道路においては歩道の幅員を最低1.5メートルまで縮小することができる旨の規定を適用するとしても,車道部分の幅員の最大値は9メートルとなるものと認められる。そして,旧道路構造令7条1項によれば,第4種道路においては道路の最小の車道の幅員は6.5メートルとされ,同幅員は2車線道路を前提としていたものと解されるのであるから,前記のように最大でも9メートルにすぎない本件道路の車道部分を4車線で計画することは,旧道路構造令上許されないものであったことが認められる。これに本件都市計画道路のうちγから北側部分で昭和43年3月20日に供用開始されている部分については2車線であること(丙2)を併せ考慮するならば,千葉県知事又は市川市が内部的に本件道路部分を4車線とするよう計画していたとは認められない。

この点に関し,控訴人らは,歩道を設けなければ4車線を設置することが可能であると主張するが,旧道路構造令9条1項ただし書は,地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない箇所については歩道を設ける必要がない旨規定しており,本件道路部分が上記の箇所に該当するものとは認められない。その上,前記のとおり,第4種道路では,2車線道路の車道の幅員が最小でも6.5メートルを要すること,交通量が1日当たり2万4000台以上である場合には,交通量の増加に応じ6.5メートルの整数倍の数値を幅員と規定していること(旧道路構造令7条)からすると,旧道路構造令は4車線の場合には最小でも車道の幅員13メートルを要することを前提としているものと解され,前記跨線橋部分の幅員12メートルではこれに不足することが明らかである。控訴人らの主張は採用することができない。

また,控訴人らは,F線との立体交差部分について20ないし36メートルの幅員が確保されている点について,4車線を計画していたことの証左である旨主張するが,跨線橋の建設手法として土盛りの必要から長い法面が必要になり,その分広い敷地が必要になる上,跨線橋の設置により車両の沿道への出入りに支障を来すため,本線車道に平行して副道を設ける必要があること(弁論の全趣旨)からすると,千葉県知事又は市川市はこの部分においても2車線の計画をしていたものと認められ,控訴人らの主張は採用することができない。

さらに,地元のδ自治会会長からの平成7年3月27日付け16項目の質問状に対し,市川市は,同年4月17日,他の項目に対する回答と併せて,現計画案を含めて6案の検討を行った結果,現計画案が最善であると判明した旨回答した上,同年7月7日には,同自治会に対し,6案の内容を回答し,そのうち第1案ないし第3案は,F線との交差部分を含む部分を4車線とするものであるが,上記各案は,車道部分を13メートル又は17メートルとするものであり,いずれも昭和42年12月14日に変更決定された都市計画における跨線橋部分の幅員12メートルを超えるものであって,従前の跨線橋部分の幅員を変更することを前提としたものと認められ(甲26,丙62,63),これによると,市川市は,4車線化を含めて検討対象としたことは認められるとしても,当初から4車線を計画していたとは認められない。控訴人らの主張は採用することができない。

したがって,本件変更決定によって当初4車線の計画が2車線に変更されたものであるとは認められず,車線数について変更があったものとは認められない。

なお,控訴人らは,4車線ではなく3車線であった可能性も主張するが,現行の道路構造令(昭和45年政令第320号)においては,第4種道路の2車線以上の車線数は4以上の偶数とするとされ,特別な場合を除き奇数車線としない旨が規定されているところ(同令5条3項),これは3車線道路の事故率が一定の交通量を超えると2車線道路の事故率を大幅に上回ることを考慮して規定されたものであって(乙11),このような事情は旧道路構造令下の道路交通状況でも異なるものではないと認められること,前記のとおり旧道路構造令下でも一定の交通量を超えた場合第4種道路の車線の幅員が2車線の道路の最小幅員の整数倍と規定されていること及び前判示の各点を総合考慮するならば,控訴人らの主張を考慮しても前記認定を左右するには足りない。

(2)  交差点について

本件変更決定において本件都市計画道路と市川都市計画道路××号G線(国道○号)及び市川都市計画道路×××H線との交差点において右折車線が設けられ,本件都市計画道路と交差する都市計画道路の幅員が拡張されたことは前判示のとおりである。

しかし,現行の道路構造令27条2項は,道路が同一平面で交差する場合には,必要に応じて屈折車線を設けるものと規定し,平面交差点においては,①右折を認めない場合,②第3種第4級,第3種第5級,第4種第3級,第4種第4級の道路において,当該道路および交差道路のピーク時の処理能力に十分余裕がある場合,③設計速度時速40㎞/h 以下の2車線道路において,設計交通量が極めて少ない場合を除き原則として右折車線を設けるものとする道路構造令の運用の解説が存在すること(丙73)に照らすならば,一定の交通量を有する道路の交差点において右折車線を設置することが道路の一般的な構造であると認められる。

また,本件都市計画道路の西側には県道N線が,東側には県道O線が,それぞれ市川都市計画道路××号G線(国道○号)及び市川都市計画道路×××H線と交差する形で存在しており,また,平成27年の全線開通を目標とするM道路も市川都市計画道路××号G線(国道○号)と交差するものと認められ(丙1,2),このような道路網の状況に照らすならば,本件道路部分に右折車線を設けることによって,本件都市計画道路に交通が過度に集中するものとは認められない。

以上によれば,本件変更決定の交差点に係る部分が,交通量の増減をもたらす重大な変更に当たるものとは認められない。」

(2)  同19頁17行目冒頭の「1」を「2」と改める。

(3)  同20頁1行目の「この「必要があると認めるとき」とは」から同頁19行目末尾までを「本件変更決定における変更の内容及び程度については前判示のとおりであり,都市計画案の縦覧及び意見書の提出に加え,更に住民の意見を反映させることが不可欠な場合であるとか,道路網の全体的な再検討や用途地域を全般的に再検討したり,都市構造に大きな影響を及ぼす根幹的な施設を定めるような場合に当たるとは認められず,また,後記3(1)の本件変更決定に係る市川市の広報誌の内容及び説明会の開催状況をも併せ考慮すると,事業の進行が長期間中断していたことを考慮しても,千葉県知事が公聴会を開催しなかったことが不合理なものとはいえないのであるから,その裁量権の逸脱,濫用に当たるとは認められない。」と改める。

(4)  同20頁20行目冒頭の「2」を「3」と改める。

(5)  同21頁10・11行目の「平成13年9月9月16日」を「平成13年9月16日」と改め,同頁20行目の「事実は認められない」の次に「(甲14,15,丙37,38)」を加える。

(6)  同22頁3行目冒頭から同23頁12行目末尾までを次のとおり改める。

「 (2) また,千葉県知事又は市川市において,本件道路分を当初4車線とする計画があったと認められないことは前判示のとおりであるから,同計画を特に住民らに秘匿していたとの控訴人らの主張は採用することができない。」

(7)  同23頁13行目冒頭から同24頁15行目末尾までを以下のとおり改める。

「4 争点3及び5について

(1) 都市計画法21条1項により都市計画が変更される場合においても変更の結果新たな都市計画が定められることになるのであるから,当該都市計画についても,その内容は,同法13条1項各号の定める基準に従って定められなければならないというべきであって,都道府県知事又は市町村が,従前の都市計画を変更して新たに都市計画施設を都市計画に定めるに当たっては,同項6号,14号の定める基準に従うことを要するというべきである。

控訴人らの争点3及び5に関する主張は,本件変更決定に際し,改めて都市計画法所定の基礎調査を実施することなく,これを行ったことが,同法13条1項6号及び14号の定める基準に従ったものではなく違法である旨主張するものと解される。

都市計画法は,都市計画について,健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条),都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず,当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き),都市施設について,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項6号),このような基準に従って都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであって,裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては,当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くことなる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となると解するのが相当であり,前記都市計画法13条1項6号,14号の基準に従っているか否かも,同基準に従わなかった結果,都道府県知事又は市町村の都市計画変更決定に至る判断が上記の裁量権の逸脱,濫用に当たるものとなっているといえるか否かという観点から判断するのが相当である。

そして,前記のとおり,都市計画の変更の理由は多様なものであり,変更の内容及び程度も様々であるから,都道府県知事又は市町村が従前の都市計画を変更して新たに都市計画施設を都市計画に定めるに当たり都市計画法13条1項6号,14号の定める基準に従ったものか否かを判断するに際しても,変更の理由,内容及び程度を考慮するのが相当である。

(2) そして,本件変更決定は,F線との立体交差部分の構造変更及びα川・β川改修工事による河川区域の変更に伴う線形・幅員の変更を理由とするものであって,推計される交通量の増減等を理由とするものではなく,また,本件変更決定の内容及び程度も交通量の増減をもたらすものであったとは認められないことは前判示のとおりである。

また,本件変更決定に係る本件道路部分は,総延長1万1780メートルにわたる本件都市計画道路のうち事業が完了していない1680メートル部分であることは前判示のとおりであり,同部分に係る都市計画事業の内容と完了部分の内容との整合性が求められるものであったと解される。

上記のような事情に照らすならば,本件変更決定は従前の都市計画を大幅に変更するものではなく,従前の都市計画における所期の目的を達成するための調整的な変更にとどまるといえる。

そして,証拠(甲3,34)及び弁論の全趣旨によれば,本件変更決定に際し,千葉県知事は,都市計画法6条1項の規定によりおおむね5年ごとに行うこととされている既存の都市計画に関する基礎調査以外に,改めて同項所定の基礎調査を実施することなく,本件都市計画道路の1日当たりの交通量を9800台と推計する本件交通量推計資料(甲3)を参照した上で本件変更決定を行ったものと認められる。

そして,同資料は,本件交通量推計報告書に基づいて作成されたものであると認められるところ,本件件交通量推計報告書は,西暦2010年を目標年次とした将来交通需要予測を行い,都市計画道路網の計画変更のための基礎資料として作成されたものであり,具体的には,東京都市圏交通計画委員会作成の平成22年将来自動車OD表を基本として,「市川市道路網計画調査(平成2年3月)」におけるゾーニングでの自動車OD表を作成し,これを将来道路網を対象に配分して交通量を推計したものであり,前記OD表作成に当たっては将来の交通量の増加も考慮されているものと認められる(甲10)。そして,道路はひとたび建設されれば恒久的に使用されるものであり,現況や短期の予測に基づいて計画すると不相当な規模,構造の道路となる可能性が高いことから,できる限り長期にわたる予測に基づいてその規模,構造を検討するのが合理的であることに照らすならば,千葉県知事が本件交通量推計報告書に基づく本件交通量推計資料を参照したことは合理的なものと認められ,また,同資料を参照した上で行われた本件変更決定が上記の既存の都市計画に関する基礎調査の結果に基づかないものであるとも認められない。

(3) これに対し,控訴人らは,都市計画法21条1項から,都市計画の変更決定をするについて,必然的に同法13条1項による基礎調査(道路においては交通量調査)を実施することが予定されていると主張する。

しかし,同法21条1項は,①同法6条1項の規定による都市計画に関する基礎調査又は同法13条1項14号に規定する政府が行う調査の結果都市計画を変更する必要が明らかとなったときに加えて,②都市計画区域が変更されたとき,③遊休土地転換利用促進地区に関する都市計画についてその目的が達成されたと認めるとき,④その他都市計画を変更する必要が生じたときについても,遅滞なく,当該都市計画を変更すべきことを定めているものであって,都市計画変更の理由は基礎調査の結果その必要が生じた場合に限られないことはその文理上明らかであり,また,都市計画を変更する場合には同法6条1項の規定による都市計画に関する基礎調査又は同法13条1項14号に規定する政府が行う調査を要する旨を規定するものではないことも明らかであって,控訴人らの主張は採用することができない。

次に,控訴人らは,本件推計資料及び本件交通量推計報告書は,地域全体における道路の配置等を検討するためのものであって,将来の都市計画全てが完成したものとして交通量を算出するものであり,目標年次も定められていない推計であるから,特定道路の交通量を推計し得るものではなく,これに基づき道路構造を設計することはできない,また,交通量の推計値としては過小なものとなる等と主張するが,前判示に照らして採用することができない。

また,控訴人らは,本件推計資料及び本件交通量推計報告書が当時最新の平成2年の交通センサスのデータを用いていないこと等から交通量を少なく見積もった疑いがある旨主張するが,本件交通量推計報告書において交通量の将来の増加が考慮されていることは前判示のとおりであり,前記判断を左右するには足りず,控訴人らの主張は採用することができない。

(4) 以上によれば,千葉県知事の判断が,都市計画法13条1項6号及び14号の定める基準に従わず,その結果その判断に裁量権の逸脱,濫用があったと認めるには足りず,その他,千葉県知事に裁量権の逸脱,濫用があったことを認めるに足りる証拠はない。

以上によれば,本件変更決定は,都市計画法13条1項6号及び14号の定める基準に従ったものであると認められる。」

(8)  同24頁16行目冒頭の「4」を「5」と改め,同24頁17行目冒頭から同頁19行目の「環境保全措置をとる必要はなく」までを以下のとおり改める。

「 (1) 控訴人らは,都市計画法は,その趣旨からみて良好な都市環境を実現し,国土の有効な活用を目指しているものであるから,環境基準を満たさない道路は良好な都市計画を実現するものとはいえず,受忍限度を超えるものであり,都市計画法の趣旨に反し,当該道路に係る都市計画(変更)決定は違法であると主張する。

(2) しかし,本件変更決定時に千葉県知事が参照した本件交通量推計資料が不合理不適切であったと認められず,市川市が平成16年3月に公表した環境影響予測結果における推計交通量1日当たり3万0600台をもって交通の将来の見通しをたてることは合理的なものとはいえないことも前判示のとおりであるから,市川市又は被控訴人が1日当たり3万台を超えるような交通量を想定して環境保全措置をとる必要があるとは認められず」

(10)  同25頁3行目冒頭の「(2) なお」を「(3) 次に」と改める。

(11)  同25頁15行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。

「6 以上によれば,本件変更決定は適法であると認められる。」

6  以上によれば,控訴人らの本件不許可処分の取消しを求める請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大竹たかし 裁判官 山﨑まさよ 裁判官 林俊之)

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