東京高等裁判所 平成24年(ネ)7717号 判決 2013年3月28日
埼玉県<以下省略>
平成24年(ワネ)第3628号控訴提起事件控訴人
同年(ワネ)第3620号控訴提起事件被控訴人
亡X1訴訟承継人 X2(以下「承継人X2」という。)
東京都<以下省略>
平成24年(ワネ)第3628号控訴提起事件控訴人
同年(ワネ)第3620号控訴提起事件被控訴人
亡X1訴訟承継人 X3(以下「承継人X3」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士
荒井哲朗
同
浅井淳子
同
太田賢志
同
佐藤顕子
同
五反章裕
同訴訟復代理人弁護士
見次友浩
東京都渋谷区<以下省略>
平成24年(ワネ)第3620号控訴提起事件控訴人
同年(ワネ)第3628号控訴提起事件被控訴人
第一商品株式会社(以下「一審被告会社」という。)
同代表者代表取締役
A
さいたま市<以下省略>
平成24年(ワネ)第3620号控訴提起事件控訴人
同年(ワネ)第3628号控訴提起事件被控訴人
Y1(以下「一審被告Y1」という。)
東京都<以下省略>
平成24年(ワネ)第3620号控訴提起事件控訴人
同年(ワネ)第3628号控訴提起事件被控訴人
Y2(以下「一審被告Y2」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士
川戸淳一郎
同
滝田裕
主文
1 平成24年(ワネ)第3620号控訴提起事件について
本件控訴をいずれも棄却する。
2 平成24年(ワネ)第3628号控訴提起事件について
(1) 原判決主文1項ないし4項を次のとおり変更する。
(2) 一審被告会社は,承継人X2及び承継人X3に対し,各798万1742円(ただし,各510万1564円の限度で一審被告Y1と,各288万0177円の限度で一審被告Y2とそれぞれ連帯して)及びこれに対する平成20年9月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
(3) 一審被告Y1は,承継人X2及び承継人X3に対し,一審被告会社と連帯して,各510万1564円及びこれに対する平成20年9月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
(4) 一審被告Y2は,承継人X2及び承継人X3に対し,一審被告会社と連帯して,各288万0177円及びこれに対する平成20年9月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
(5) 承継人X2及び承継人X3の一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2に対するその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用中当審において生じた部分及び原審において一審原告X1と一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2との間に生じた部分は,これを5分し,その2を承継人X2及び承継人X3の負担とし,その余は一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2の負担とする。
4 この判決は,2項(2)ないし(4)に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 平成24年(ワネ)第3628号控訴提起事件
(1) 承継人X2及び承継人X3
ア 原判決を次のとおり変更する。
イ 一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2は,承継人X2及び承継人X3に対し,連帯して各1329万9570円及びこれに対する平成20年9月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
エ 訴訟費用中当審において生じた部分及び原審において一審原告X1と一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2との間に生じた部分は,全て一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2の負担とする。
エ 仮執行宣言
(2) 一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2
本件控訴をいずれも棄却する。
2 平成24年(ワネ)第3620号控訴提起事件
(1) 一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2
ア 原判決中一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2敗訴部分をいずれも取り消す。
イ 上記取消部分につき,承継人X2及び承継人X3の請求をいずれも棄却する。
ウ 訴訟費用中当審において生じた部分及び原審において一審原告X1と一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2との間に生じた部分は,全て承継人X2及び承継人X3の負担とする。
(2) 承継人X2及び承継人X3
主文1項と同旨
第2事案の概要
1 本件は,一審被告会社で商品先物取引及び外国為替証拠金取引(以下「FX取引」という)を行った一審原告X1(以下「一審原告」という。)が,一連の取引において,一審被告会社,一審被告Y1及び一審被告Y2(以下,併せて「一審被告ら」という。)並びに一審被告B(以下「一審被告B」という。)に適合性原則違反,新規委託者保護育成義務違反,説明義務違反及び一任売買等の違法行為があった旨主張して,一審被告ら及び一審被告Bに対し,不法行為(一審被告会社につき,固有の不法行為責任と選択的に使用者責任)に基づく損害賠償として,損金相当額合計2418万9140円及び弁護士費用相当額241万円の合計2659万9140円並びにこれに対する不法行為後の日である平成20年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
原審は,6割の過失相殺をした上で一審被告らに対する請求を一部認容し,一審被告Bに対する請求を全部棄却したため,これを不服とする一審原告及び一審被告らが控訴したが,一審被告Bに対する請求を全部棄却した部分については控訴されず,原判決中,同部分は確定した。
一審原告は,控訴提起後の平成24年11月20日に死亡したため,相続人である承継人X2及び承継人X3(以下,併せて「承継人ら」という。)がその地位を当然承継した。
2 争いがない事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の1及び2記載のとおりであるから,これを引用する(以下,原判決を引用する場合,「原告」を「一審原告」と,「被告」を「一審被告」と,「別紙」を「原判決別紙」と読み替える。)。
(原判決の補正)
(1) 原判決3頁8行目の「現在は」を「原審口頭弁論終結時は」と,同頁9行目の「年金受給者である」を「年金受給者であったが,平成24年11月20日死亡し,その子らである承継人らが一審原告を相続した」と,それぞれ改める。
(2) 原判決3頁13行目冒頭から同頁14行目の「という)は」までを「一審被告Y1,一審被告Y2及び一審被告Bは」と改める。
(3) 原判決4頁5行目の「原告の主張」を「承継人らの主張」と改める。
(4) 原判決8頁19行目の「被告ら」を「一審被告会社従業員ら」と改める。
(5) 原判決9頁6行目の「被告Y1,被告Y2及び被告B」を「一審被告Y1及び一審被告Y2」と改める。
(6) 原判決10頁10行目,同頁20行目及び同頁23行目の各「原告」をいずれも「承継人ら」と改める。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所は,承継人らの一審被告らに対する請求を4割の過失相殺をした上で認容すべきであると判断する。その理由は,原判決を次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1) 原判決11頁11行目の「現在は」から同頁12行目末尾までを「原審口頭弁論終結時は無職で,年約260万円の年金を受給していたが,平成24年11月20日死亡し,その子らである承継人らが一審原告を相続した。」と改める。
(2) 原判決11頁16行目の「通院加療中である」を「通院加療中であった。なお,本件取引当時は気分の浮き沈みがあり,そう状態とうつ状態との別でいえば,そう状態にあるような状況であった」と改める。
(3) 原判決13頁23行目の「C(以下「C」という)」を「C」と改める。
(4) 原判決15頁8行目から同頁9行目までの「商品取引に委託者の保護に関するガイドライン」を「商品先物取引の委託者の保護に関するガイドライン(甲30)」と改める。
(5) 原判決15頁13行目の「仕組みが複雑困難」を「仕組みが複雑で理解することが困難」と改める。
(6) 原判決16頁9行目の「金地金と取引」を「金地金の取引」と改める。
(7) 原判決23頁19行目冒頭から同頁25行目末尾までを削る。
(8) 原判決24頁1行目の「約4000万円から5000万円」を「少なくとも4000万円前後」と改める。
(9) 原判決24頁16行目の「そして,」の次に「本件取引において,差引損益累計が損失に転じたのは,本件取引の開始時から3か月以上が経過した後である平成20年8月上旬頃に至ってからであり,この間の同年6月23日,一審原告は,一審被告会社審査部のD係長から,習熟度調査の一環として,これまでは順調であったとしても,今後,無理な取引はしないよう勧められていること(乙A16),他方において,当初,一審原告は,一審被告会社に対し,投資可能金額を700万円と申告していたところ,本件取引において,最終的には自己の判断に基づいて種々の注文をしたとはいえ,証拠(甲27,乙A15,乙B15,原審における一審原告本人,同一審被告Y1本人,同一審原告B本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件取引は,おおむねその全てが一審被告会社従業員らからの助言又は提案を了承して一審原告が注文をしたもので,一審原告から,自発的又は積極的に,その独自の判断で具体的な注文がされたことをうかがうことができず,約5か月間の本件取引の期間中に,本件先物取引において4種類,本件FX取引において7種類もの取引が行われたのは,一審被告従業員らの勧誘におおむねその全てが起因することなどの」を加え,同行目の「6割」を「4割」と改める。
(10) 原判決24頁21行目の「6割」から同頁24行目末尾までを「4割の過失相殺をした上で,弁護士費用相当額145万円を加えてこれを2分すると,一審被告会社は,承継人らに対し,各798万1742円及びこれに対する不法行為後の日である平成20年9月10日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。」と改める。
(11) 原判決25頁1行目の「6割」から同頁4行目末尾までを「4割の過失相殺をした上で,弁護士費用相当額93万円を加えてこれを2分すると,一審被告Y1は,承継人らに対し,各510万1564円及びこれに対する不法行為後の日である平成20年9月10日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。」と改める。
(12) 原判決25頁7行目の「6割」から同頁10行目末尾までを「4割の過失相殺をした上で,弁護士費用相当額52万円を加えてこれを2分すると,一審被告Y2は,承継人らに対し,各288万0177円及びこれに対する不法行為後の日である平成20年9月10日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。」と改める。
2 結論
よって,承継人らの本件控訴に基づき,6割の過失相殺をした上で一審被告らに対する請求を認容した原判決を変更することとし,他方において,一審被告らの本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 設樂隆一 裁判官 門田友昌 裁判官 島村典男)