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東京高等裁判所 平成25年(行コ)317号 判決 2013年12月24日

主文

1  控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  第1事件(控訴人X1関係)

⑴  (主位的請求)

麻布税務署長び平成21年5月7日付けでした過少申告加算税賦課決定処分(本件第1賦課決定処分)並びに同年12月4日付けでした相続税の再更正処分(本件第1再更正処分)のうち,課税価格7億6729万2000円,納付すべき税額2億5373万8300円を超える部分及び過少申告加算税再賦課決定処分(本件第1再賦課決定処分)を取り消す。

(本件第1再更正処分の取消しを求める訴えについての予備的請求)

麻布税務署長は,平成19年3月8日の相続開始に係る相続税について,課税価格を7億6729万2000円,納付すべき税額を2億5373万8300円とする更正処分をせよ。

⑵  国税不服審判所長が平成22年9月14日付けでした,麻布税務署長が平成21年5月7日付けでした相続税の更正処分(本件第1更正処分)及び本件第1再更正処分に対する審査請求を却下する旨の裁決(本件第1却下裁決)並びに本件第1賦課決定処分及び本件第1再賦課決定処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決(本件第1棄却裁決)を取り消す。

3  第2事件(控訴人X2関係)

⑴  (主位的請求)

麻布税務署長が平成21年5月7日付けでした過少申告加算税賦課決定処分(本件第2賦課決定処分)並びに同年12月4日付けでした相続税の再更正処分(本件第2再更正処分)のうち,課税価格7億6729万2000円,納付すべき税額2億5373万8300円を超える部分及び過少申告加算税再賦課決定処分(本件第2再賦課決定処分)を取り消す。

(本件第2再更正処分の取消しを求める訴えについての予備的請求)

麻布税務署長は,平成19年3月8日の相続開始に係る相続税について,課税価格を7億6729万2000円,納付すべき税額を2億5373万8300円とする更正処分をせよ。

⑵  国税不服審判所長が平成22年9月14日付けでした,麻布税務署長が平成21年5月7日付けでした相続税の更正処分(本件第2更正処分)及び本件第2再更正処分に対する審査請求を却下する旨の裁決(本件第2却下裁決)並びに本件第2賦課決定処分及び本件第2再賦課決定処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決(本件第2棄却裁決)を取り消す。

4  第3事件(控訴人X3関係)

⑴  (主位的請求)

麻布税務署長が平成21年5月7日付けでした過少申告加算税賦課決定処分(本件第3賦課決定処分)並びに同年12月4日付けでした相続税の再更正処分(本件第3再更正処分)のうち,課税価格7億6729万2000円,納付すべき税額2億5373万8300円を超える部分及び過少申告加算税再賦課決定処分(本件第3再賦課決定処分)を取り消す。

(本件第3再更正処分の取消しを求める訴えについての予備的請求)

麻布税務署長は,平成19年3月8日の相続開始に係る相続税について,課税価格を7億6729万2000円,納付すべき税額を2億5373万8300円とする更正処分をせよ。

⑵  国税不服審判所長が平成22年9月14日付けでした,麻布税務署長が平成21年5月7日付けでした相続税の更正処分及び本件第3再更正処分に対する審査請求を却下する旨の裁決並びに本件第3賦課決定処分及び本件第3再賦課決定処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決を取り消す。

第2事案の概要(用語の略称及び略称の意味は,原判決に従う。)

1⑴  控訴人らは,いずれもDの子である。

⑵  控訴人らが,平成19年12月27日にD死亡に伴う相続税の申告(本件当初申告)をしたところ,麻布税務署長は,a社の株式を相続財産として申告していないなどとして,平成21年5月7日に本件各更正処分及び本件各賦課決定処分,同年12月4日に本件各再更正処分及び本件各再賦課決定処分をそれぞれ行った。控訴人らは,平成22年5月11日,本件修正申告を行った。

⑶  国税不服審判所長は,平成22年9月14日,本件各審査請求のうち,本件各更正処分及び本件各再更正処分について本件各却下裁決を,本件各賦課決定処分及び本件各再賦課決定処分について本件各棄却裁決を行った。

⑷  本件は,控訴人らが,a社株式はDの相続財産に含まれないとして,①主位的に,本件各再更正処分の一部並びに本件各賦課決定処分及び本件各再賦課決定処分の取消し,予備的に本件各再更正処分に対する更正の義務付け,②本件各却下裁決及び本件各棄却裁決の取消しをそれぞれ求めた事案である。

2  原判決が,本件各再更正処分の一部の取消し,その更正の義務付けを求める各訴えを却下し,その余の請求を棄却したことから,控訴人らが,これを不服として控訴した。

3  関係法令の定め,前提事実,被控訴人の主張する本件各再更正処分,本件各賦課決定処分及び本件各再賦課決定処分の根拠,争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は,後記4のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1ないし5に記載のとおり(ただし,「原告」は「控訴人」,「被告」は「被控訴人」,「別紙」は「原判決別紙」,「別表」は「原判決別表」とそれぞれ読み替える。以下引用部分について同じ。)であるから,これらを引用する。

4  当審における当事者の主張

⑴  a社株式の帰属者

(控訴人らの主張)

ア 立証責任

a社株式が相続財産に属することの立証責任は,被控訴人にある。a社株式がDに属していたことについては合理的な疑いがあり,その立証がされていない。

イ a社株式の出捐者

a社設立資金1200万円は,控訴人らがb社から借り受けたものであり,このことは,b社の平成15年12月8日付け支払請求書及び東京三菱銀行の同月9日付け振込受付書等(証拠<省略>),b社の総勘定元帳(証拠<省略>),平成15年12月5日付けIの東京三菱銀行担当者あてメール(証拠<省略>)の各記載から明らかである。

確かに,Iは,b社の控訴人らに対する1200万円の貸付金を,平成18年12月31日にb社からDに対する立替金に振り替え,平成19年1月31日にDの預金と相殺する決済処理をしているが,これは,IがD及び控訴人らの承諾なく行った誤った処理である。1200万円の貸付けが,b社からDに対するものであれば,その決済処理を3年も放置することはなく,もっと早い時期に行っていたし,Dは,平成18年12月にハワイの病院に入院し,平成19年3月8日には死亡したから,Iが,上記の決済処理をした時期にDから承認を取ることはできなかった。

b社から控訴人らに対する貸付契約書が作成されなかったのは,その役割を担うH弁護士が,平成17年秋に病に伏せ,平成18年10月に死亡したからである。b社からDに対する貸付契約書も存在していない。

控訴人X1が,税務調査の際,a社株式取得資金の原資が不明である旨申述したのは,急な質問に対し,過去の書面を見ることができず,N弁護士からの忠告に従い,誤った回答をすることを極力避けたためである。b社の1200万円の支払請求書等(証拠<省略>)が発見されたのは,平成22年3月15日より少し前の時点であり,控訴人X1は,この段階でa社株式取得の経緯について明確に記憶を喚起できた。E税理士が,税務調査の際,a社株式取得資金がDから控訴人らに贈与されたと申述したのは,個人的な憶測にすぎず,事実関係を把握,調査した上で回答したものではない。控訴人らを含む関係者の主張は,上記支払請求書等(証拠<省略>)の発見後は一貫している。

ウ a社株式の取得の意思決定及び同株式の管理

a社は,控訴人らがb社の事業を承継するスキームの一貫として,b社株式をc社から買い取る受皿会社として設立されたものであり,Dがa社の株主になることはこのスキームと矛盾する。現に,控訴人らは,a社の株式申込証(証拠<省略>)の名義人であり,控訴人X1は,a社の代表取締役に就任した。a社は,設立直後,b社から多額の資金を借り入れ,c社からb社株式を買い取っているが,その際作成された融資契約書(証拠<省略>),議決権信託契約書(証拠<省略>)及び譲渡不能約束手形(証拠<省略>)には,控訴人らが署名している。

a社の株主総会議事録(証拠<省略>)には,総株主数及び出席株主数3名とされているが,それは控訴人らを意味しており,平成18年11月21日当時のa社の株主名簿(証拠<省略>)においても,控訴人らが設立当初から株主であったとされている。a社の法人税確定申告書(証拠<省略>)も同様であり,このようにa社株主が設立当初から控訴人らの名義となっていることを重視すべきである。

また,a社は,c社からb社株式を3回買い取り,その資金をb社から借り入れ,b社からの配当金と相殺して返済しているが,その借入金債務について控訴人らが株主として個人保証しており,これらのことからすると,控訴人らがa社株式を自らに帰属するものとして管理したことは明らかである。

(被控訴人の主張)

ア a社株式取得資金1209万4500円(株式払込金1200万円及び株式払込金取扱手数料9万4500円)をDが出捐したことや,a社株式取得の意思決定をDがしたことなどから,a社株式は,本件相続開始時,Dの財産であったと認められる。

イ Dが,いまだ若年の控訴人らに,将来b社の事業を承継させようと考え,b社株式の買取りの受皿としてa社を設立したことと,a社株式がDに帰属することは両立する。

a社株取得資金について,控訴人らの主張や供述は,①不明,②Dからの贈与,③Dからの借入金,④Dからの贈与とみなすべきもの,⑤b社からの借入金と変遷しており,株式の取得資金の調達方法を認識していなかったから,a社設立に関与したとは認められない。

a社の株主総会議事録,株主名簿において,控訴人らが株主と記載されていることをもって,a社株式を控訴人らが管理していたとは認められない。

⑵  本件修正申告の効力

(控訴人らの主張)

修正申告に解除条件を付すことが法の許容しないものであるなら,端的に修正申告の効力を否定すべきであって,本件修正申告を無条件のものと解すべきではない。F税理士の事前相談に対し,G統括官から,更正額を基にした修正申告書を提出すれば訴えの利益が失われる旨の回答を受けたとしたら,F税理士が修正申告をすることはなかったのであり,同統括官から満足な回答がなかったために,やむを得ず条件付の修正申告をした。

被相続人死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金は,相続により取得されたものとみなされ,相続税の納税義務を発生させるから,それを申告しないこと自体が罰則の対象となり,控訴人らは,本件修正申告を余儀なくされたのであって,任意に申告したものではない。

本件においては,本件修正申告の効力を否定し,本件各再更正処分を取り消すか,本件各賦課決定処分及び本件各再賦課決定処分を取り消した上,更正処分の義務付けの訴えを認容すべきである。

(被控訴人の主張)

本件修正申告書(証拠<省略>)は,国税通則法19条に定める要件及び記載事項を全て充足している適式な修正申告書だから,本件修正申告は,本件修正申告書の提出により確定的に効力が生じた。本件説明書面が,本件修正申告書と一体のものであり,本件修正申告に条件を付したものと解することはできない。

G統括官は,麻布税務署を訪れたF税理士に対し,先行した更正額を基とした修正申告書を提出すれば訴えの利益が失われる旨回答した。控訴人らが,本件修正申告を行っても審査請求の利益が失われないと考えたとしても,そのような錯誤に陥ったことにつき重大な過失がある。また,本件説明書面の記載内容に照らして,控訴人らに心裡留保があったとはいえず,仮に心裡留保があったとしても,課税庁職員はそれを知らなかったし,知ることもできなかった。

本件修正申告をしなかったとしても,本件相続開始時点において適用される相続税法では,同法69条の処罰の対象とはならないから,控訴人らが本件修正申告を任意に行ったものではないとの主張は的外れである。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,⑴本件修正申告は有効であり,これにより本件各再更正処分の取消しを求める訴えの利益は失われた,⑵控訴人らの義務付けの訴えは,不適法である,⑶本件各賦課決定処分及び本件各再賦課決定処分並びに本件各却下裁決及び本件各棄却裁決はいずれも適法であると判断する。その理由は,次のとおり改め,後記2ないし4のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3に記載のとおりであるから,これらを引用する。

⑴  原判決50頁5行目「b社」を「a社」に改める。

⑵  原判決53頁15行目「47巻7号4955頁」を「16巻12号2557号」に改める。

2  判示の順序について

控訴人らは,a社株式が相続財産に属することを前提としてされた本件各再更正処分が違法であることは明白であり,明白に違法な本件各再更正処分により不利益を被った控訴人らに救済手段が与えられるべきであるとして,第1に,a社株式の帰属者の問題を,第2にa社株式の帰属者に誤りがある課税処分により不利益を受けた控訴人らの救済手段を論じているので,当審における当事者の主張に対する当裁判所の判断を示すに当たっては,控訴人らの主張に沿い,a社株式が相続財産に属するかの点から示すこととする。

3  a社株式の帰属者

⑴  a社株式の帰属者がDであったとする原審の認定は,その説示するところによれば,正当と認めることができる。

⑵ア  控訴人らは,控訴人らがb社から1200万円を借り入れて,a社株式を取得したと主張する。

イ  b社の帳簿上,平成15年12月9日,控訴人らに1200万円を貸し付けた旨が記帳されていたが,その後のb社からa社に対する貸付金(c社からのb社株式買取資金の貸付金等)とともに,平成16年3月31日,a社に対する貸付金に,同年12月31日,長期貸付金にそれぞれ振り替えられ,平成18年12月31日,長期貸付金のうち1200万円がDに対する立替金に振り替えられ,平成19年1月31日,D名義の普通預金口座からb社の当座預金口座に1200万円を含んだ5409万6483円が現実に入金され,Dに対する立替金の残高が帳簿上,いったん清算されている(証拠<省略>)。

前記帳簿処理を行ったのは,Dから絶大な信頼を受け,D個人の銀行預金通帳及び銀行印を託されたIであり(証拠<省略>),その処理内容がI個人を何ら利するものではないことからすると,Iが,Dの意向を無視して独断でそのような処理をしたとは想定しがたく,Dの了解なしに独断で誤った処理をしたとのIの証言や陳述書(証拠<省略>)の記載は,Dの指示を受けて実施したとする平成20年10月20日の税務調査におけるIの申述内容(証拠<省略>)に照らして容易に信用できない。特に,帳簿上の処理にとどまらず,a社の株式取得のために使われた1200万円が,Dの普通預金から現実に補てんされていることは,それがa社設立から3年後のことであり,当時Dが入院していたとしても,Dの意を受けた処理であったことを強く推認させるところである。

また,控訴人X1が,税務調査の際に,a社株式取得資金の原資が不明であると申述したのは(証拠<省略>),控訴人らがb社から資金を借り入れたものではないことをうかがわせ,基本的で重要な事柄について税務調査の段階では記憶を喚起できなかったとする控訴人X1の主張及び本人尋問の結果は不自然で,採用することはできない。

ウ  控訴人らは,b社の平成15年12月8日付け支払請求書等(証拠<省略>),b社の総勘定元帳(証拠<省略>),平成15年12月5日付けIの東京三菱銀行担当者あてメール(証拠<省略>)には,b社から控訴人らに対する貸付けである旨の記載がされており,a社株式取得資金の出捐者が控訴人らであったことを裏付けていると主張する。

しかし,b社の総勘定元帳の記載の状況が,むしろDがa社株式取得資金の出捐者であったことを推認させるものであることは前記のとおりであり,上記の支払請求書等やメールの記載も,Iがb社の総勘定元帳の記載を前記のとおり訂正したことからすると,控訴人らがa社株式の取得資金を出捐した証拠としてあまり大きな価値を有するとはいえない。

エ  以上の点や,原判決引用に係る前記認定事実によれば,控訴人らの当審における主張を考慮しても,a社株式取得資金の出捐者は,Dであると認めるのが相当である。

⑶ア  控訴人らは,控訴人らがa社株式の取得の意思を決定し,同株式の管理をしたと主張する。

イ  原判決引用に係る前記認定事実によれば,a社は,Dが控訴人らにb社の事業を承継させるに当たり,事業承継が円滑に行われるようにD側のb社に対する持ち株比率を上げることを企図して設立された会社であり,D以外のb社の株主であったc社からb社株式を買い取る以外の事業活動は想定されておらず,b社株式の購入資金をb社から借り入れ,b社からの配当金で返済するものとされたこと,b社から資金を借り入れ,c社からb社株式を購入してb社の株主となるためには,b社及びc社の理解が必要であるが,b社の経営を握るDは,そのような理解を得て実行することができる最も重要な立場にあったこと,この事業承継スキームは,Dが発案し,その意を受けたI,L弁護士及びH弁護士らの助言と協力を得て,実行に移されたものであることが認められ,これらの点からすると,H弁護士が,具体的手続を考案し,控訴人らから了承を得たものであるとしても(証拠<省略>),あくまでDの意向に基づいて実行されたもので,その主体的な意思決定はDが行っていたと認めるのが相当である。

ウ  控訴人らは,控訴人らが株式申込証(証拠<省略>)の名義人であり,控訴人X1がa社の代表取締役に就任していること,a社の株主名簿(証拠<省略>),株主総会議事録(証拠<省略>)及び法人税確定申告書(証拠<省略>)において,控訴人らが株主と扱われていること,a社がb社からb社株式買取資金を借り入れる際の融資契約書(証拠<省略>),議決権信託契約書(証拠<省略>)及び譲渡不能約束手形(証拠<省略>)に控訴人らがそれぞれ署名し,その借入金債務について,控訴人らが株主として個人保証したことなどから,控訴人らがa社の株主として実質的に関わり,株式を管理していた旨主張する。

しかしながら,これらはいずれも控訴人らの名義上の関わりを示すものにすぎず,それ以上に控訴人らがa社の株主として実質的な関わりを有していたことを認めるに足りる証拠はなく(控訴人らの上記個人保証も,債務の担保として実質的にどれほどの意味があったかは明らかでない。),前記認定のとおり,この事業承継スキームが控訴人らへの円滑な事業承継を意図したものであることからすると,税金対策等の事情から,実質的行為者を秘して控訴人ら名義の書面を作成することも十分に想定されるところである。したがって,本件においては,上記の書面等において控訴人らがa社の株主や役員とされていることをさほど重視することはできない。

⑷  以上のような,a社の株式の出捐者,同社の設立経緯及び活動の実体を総合考慮すると,同社の株主は,Dであったと認めるのが相当である。

4  本件修正申告の効力

原判決が適切に説示するとおり,本件修正申告は,無条件のものであり,控訴人らの心裡留保及び錯誤の主張は理由がなく,本件修正申告に基づいて,控訴人らは,本件各再更正処分の取消しを求める訴えの利益を失ったと認めるのが相当である。

控訴人らは,違法な本件各再更正処分等を争う途が奪われるから,本件修正申告が有効であるかどうかにかかわらず,控訴人らの権利救済のための手段が別途認められるべきであるとも主張するが,上記のとおり,a社株式がDの相続財産に属するとしてされた本件各再更正処分に違法はないから,主張の前提を欠いている。

第4結論

よって,控訴人らの本訴請求のうち,本件各再更正処分の一部の取消し及びその更正の義務付けの訴えを求める部分はいずれも不適法であり,控訴人らのその余の請求は理由がないから,前者の各訴えを却下し,その余の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判官 田村幸一 浅見宣義 西森政一)

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