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東京高等裁判所 平成26年(ラ)278号 決定 2014年3月20日

主文

一  原審判を次のとおり変更する。

二  被相続人の遺産を次のとおり分割する。

(1)  原審判別紙遺産目録(土地)一から三まで記載の各土地共有持分は、いずれも抗告人らの持分各一〇分の二の割合による共有取得とする。

(2)  原審判別紙遺産目録(その他)一記載の現金のうち、七六八万八三九〇円を相手方Y1の、六三一万一六一〇円を相手方Y2の、それぞれ取得とする。

(3)  原審判別紙遺産目録(その他)二記載の各預貯金(合計一三七万六七八〇円)はいずれも相手方Y2の取得とする。

(4)  原審判別紙遺産目録(その他)三記載のa株式会社の株式は、全部、抗告人X1の取得とする。

(5)  抗告人X1は、上記株式取得の代償として、相手方Y1及び相手方Y2に対し、それぞれ六〇六万一五〇〇円を、抗告人X2及び抗告人X3に対し、それぞれ二六万四八一七円を、本決定確定の日から一か月以内に支払え。

三  手続費用は、原審及び当審とも各自の負担とする。

理由

第一抗告の趣旨及び理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「即時抗告申立書」(写し)記載のとおりであり、これに対する相手方両名の反論は、別紙「反論書」三通(いずれも写し)記載のとおりである。

第二事案の概要

本件は、平成二四年○月○日に死亡した被相続人の長男であるA(平成二二年○月○日死亡。以下「A」という。)の子である抗告人らが、被相続人の長女である相手方Y1(昭和二六年○月○日生)及び二女である相手方Y2(昭和二七年○月○日生)に対して、被相続人の遺産分割を申し立てた事案である。

原審は、被相続人の預貯金債権を遺産として分割の対象とすることにつき当事者全員の合意があるので、被相続人の遺産は、原審判別紙遺産目録(土地)記載の各土地共有持分(いずれも各一〇分の六)並びに原審判別紙遺産目録(その他)記載の現金、各預貯金債権及びa株式会社(以下「a社」という。)の株式五万八四五〇株(以下「本件株式」という。)であるとして、上記各土地共有持分は、抗告人らが持分各五分の一の割合で共有取得とし、上記現金のうち七六八万八三九〇円は相手方Y1の、六三一万一六一〇円は相手方Y2の取得とし、上記各預貯金はいずれも相手方Y2の取得とした上、本件株式(合計五万八四五〇株)は、抗告人らがそれぞれ六四九四株、相手方両名がそれぞれ一九四八四株を取得するものとし、抗告人らに対し、相手方両名に代償金としてそれぞれ五八万五一七九円を支払うよう命じた。

そこで、抗告人らが、本件株式を抗告人らと相手方両名の分割取得としたことを不服とし、a社のような同族会社の株式を遺産分割するに際しては、その経営基盤を損なわないよう、株式の分散を防止するという社会経済的な要請を考慮すべきであり、経営と資本の一致を図るため、将来、a社の代表取締役に就任する予定の抗告人X1が本件株式の全部を取得すべきである一方、相手方両名はa社の経営に関心がなく、しかも、本件株式は無配株であるから、これを取得しなくても相手方両名に経済的な損失は発生せず、抗告人X1は相手方両名に対して合計一二一二万円余りの代償金を支払う用意があるなどと主張して、本件抗告をしたものである。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所は、原審判と異なり、本件株式の全部を抗告人X1の取得とした上、抗告人X1に代償金の支払を命ずるのが相当であり、これを前提に被相続人の遺産を分割すべきものと判断する。その理由は、次のとおり原審判を補正するほか、原審判の「理由」の二ないし四に説示されたとおりであるからこれを引用する(ただし、「申立人」を「抗告人」と、「別紙」を「原審判別紙」と、それぞれ読み替える。)。

(原審判の補正)

(1) 原審判三頁二行目の「A(以下「A」という。)」を「A」と改め、同頁三行目から同頁四行目の「相手方Y1(以下「相手方Y1」という。)」を「相手方Y1」と改め、同頁四行目から同頁五行目の「相手方Y2(以下「相手方Y2」という。)」を「相手方Y2」と改める。

(2) 原審判三頁一一行目の「預貯金債権」の次に「(合計一三七万六七八〇円)」を加える。

(3) 原審判三頁二〇行目から同頁二一行目の「a株式会社(以下「a社」という。)株式」を「a社の本件株式」と改める。

(4) 原審判四頁二行目の「四五八万三二九六円」の次に「(遺産総額である四一二四万九六七〇円の三分の一は一三七四万九八九〇円となり、更にその三分の一は四五八万三二九六・六六円となるが、後記のとおり、抗告人X1は、その希望に沿って本件株式を取得することを考慮して、円未満を切り捨てることとし、抗告人X2及び抗告人X3については、円未満を切り上げることとする。)」を加える。

(5) 原審判四頁三行目及び同頁四行目の「四五八万三二九六円」をいずれも「四五八万三二九七円」と改め、同頁五行目及び同頁六行目の「一三七四万九八九一円」をいずれも「一三七四万九八九〇円」と改める。

(6) 原審判四頁九行目から同頁一〇行目の「各土地共有持分及び別紙遺産目録(その他)三記載のa社株式をすべて取得し」を「上記各土地共有持分は、抗告人らの共有取得とし、本件株式は、その全部を抗告人X1の取得とし」と改める。

(7) 原審判四頁一四行目の「a社株式」を「本件株式」と改める。

(8) 原審判四頁一九行目の「持分五分の一」を「持分一〇分の二」と改める。

(9) 原審判四頁二一行目冒頭から同五頁一〇行目末尾までを次のとおり改める。

「(3) 本件株式

ア 一件記録によれば、次の事実を認めることができる。

(ア) a社は、被相続人の父であり、初代社長のD(以下「D」という。)が昭和二四年○月○日に設立し、その後、被相続人の夫であるEが二代目社長となり、同人の長男であるAが三代目社長を承継したが、平成二二年○月○日に死亡したため、現在はAの妻であるBが社長を務めている。抗告人X1は、AとBの長男であり、a社の次期社長に就任する予定である。

(イ) a社は、天窓工事、板金工事、硝子工事その他建築に付随する工事の請負施工等を目的とする会社で、資本金の額は三〇〇〇万円、発行済株式の総数は六〇万株、従業員数は六名、年商は約一億二七〇〇万円であって、建築業の傍ら、所有不動産の賃貸により年間約四五〇〇万円の賃料収入があり、これにより安定経営が確保されているが、非公開会社であり、その株式を譲渡により取得するにはその承認を要するとして、株式の譲渡制限を設けている。

(ウ) 被相続人は、創立者であるDと前妻のFとの間の長女であるが、Dと後妻のGとの間には三男のC(以下「C」という。)が、DとHとの間にはI(以下「I」という。)がいるところ、平成二三年○月○日の時点におけるa社の株主は一〇名で、Cが二四万六六〇〇株を、Bが一六万四五〇〇株を、被相続人が五万八四五〇株を、Iが四万九四五〇株を、その余の六名が五〇〇〇株ないし三万株を保有していた。

(エ) 抗告人X1は、本件株式の単独取得を希望し、当審において、抗告人X1名義の残高一二五〇万一〇〇〇円の預金通帳(b銀行c支店)を提出している。

イ 上記認定の事実によれば、a社は、初代社長のD及びその親族がこれまで経営に当たってきたものであり、また、その大半の株式をDの親族が保有しているという典型的な同族会社であり、その経営規模からすれば、経営の安定のためには、株主の分散を避けることが望ましいということができる。このことは、会社法一七四条が、株式会社はその譲渡制限株式を取得した者に対して自社に当該株式を売り渡すことを請求できる旨を定款で定めることができると規定し、また、中小企業における経営の承継の円滑化を図ることを目的として制定された中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成二〇年五月一六日法律第三三号)が、旧代表者の推定相続人は、そのうちの一人が後継者である場合には、その全員の合意をもって、書面により、当該後継者が当該旧代表者からの贈与等により取得した株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないことを合意し、家庭裁判所の許可を受けた場合には、上記合意に係る株式等の価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないものとすると規定している(四条一項一号、八条一項、九条一項)ことなどに表れている。これらの規定は、中小企業の代表者の死亡等に起因する経営の承継がその事業活動の継続に悪影響を及ぼすことを懸念して立法されたものであり、そのような事情は、民法九〇六条所定の「遺産に属する物又は権利の種類及び性質」「その他一切の事情」に当たるというべきであるから、本件においても、これを考慮して遺産を分割するのが相当である。

そして、上記認定のa社の株主構成や、抗告人X1がa社の次期社長に就任する予定であり、残高一二五〇万一〇〇〇円の預金通帳を提出して代償金の支払能力のあることが認められることなどに鑑みると、本件株式は、全部これを抗告人X1に取得させるのが相当である。

ウ これに対して、相手方両名は、被相続人は相手方両名に本件株式を受け継がせる意思であったと主張して、被相続人作成名義の委任状(乙一の一)を提出している。しかし、同委任状には、「二人に委任します」とのみ記載されており、株主総会等の際に、その議決権の行使を相手方両名に委任したものと推認されるのであって、本件株式を相手方両名に受け継がせることまでうかがわせるものではないから、これをもって、被相続人が相手方両名に本件株式を受け継がせる意思であったと認めることはできないというべきである。しかも、相手方両名はこれまでa社の経営に関与したことはなかったのであって、今後、新たにa社の経営に関与するのが相当でもないから、上記のとおり、被相続人が保有していた本件株式は、抗告人X1に取得させるのが相当である。したがって、いずれにしても、相手方両名の主張を採用することはできない。」

(10) 原審判五頁一二行目冒頭から同頁一五行目の「そして、」までを削る。

(11) 原審判五頁二四行目冒頭から同六頁四行目までを次のとおり改める。

「(5) 代償金の支払

そうすると、抗告人X1は、原審判別紙遺産目録(土地)記載の各土地の共有持分一〇分の二(四三一万八四八〇円)と本件株式(一二九一万七四五〇円)の合計一七二三万五九三〇円を、抗告人X2及び抗告人X3は、いずれも上記共有持分一〇分の二(四三一万八四八〇円)を、相手方Y1は、現金七六八万八三九〇円を、相手方Y2は、現金六三一万一六一〇円と預貯金一三七万六七八〇円の合計七六八万八三九〇円を、それぞれ取得するところ、抗告人X1のみが法定相続分額(四五八万三二九六円)を超えているから、抗告人X1は、上記遺産取得の代償として、相手方Y1及び相手方Y2に対しては、それぞれ六〇六万一五〇〇円(=一三七四万九八九〇円-七六八万八三九〇円)を、抗告人X2及び抗告人X3に対しては、それぞれ二六万四八一七円(=四五八万三二九七円-四三一万八四八〇円)を本決定確定の日から一か月以内に支払うべきである。」

二  よって、上記と異なる原審判は相当ではないから、本件株式の全部を抗告人X1の取得とし、抗告人X1に上記の代償金の支払を命ずる限度で原審判を変更することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 須藤典明 裁判官 小川浩 尾立美子)

別紙 即時抗告申立書

抗告の趣旨

一 原審判を取り消す。

二 下記の通り遺産の分割をするとの審判に代わる裁判を求める。

(1) 別紙遺産目録(土地)一乃至三記載の土地共有持分は、いずれも抗告人X1、同X2及び同X3の持分各五分の一の割合による共有取得とする(原審判主文一(1)と同様)。

(2) 別紙遺産目録(その他)一記載の現金については、七六八万八三九〇円を相手方Y1が、六三一万一六一〇円を相手方Y2が、それぞれ取得する(原審判主文一(2)と同様)。

(3) 別紙遺産目録(その他)二記載の各預貯金は、いずれも相手方Y2が取得する(原審判主文一(3)と同様)。

(4) 別紙遺産目録(その他)三記載のa株式会社の株式については、全て抗告人X1が取得する。

(5) 抗告人X1は、相手方らに対して、各六〇六万一五〇一円の代償金を支払う。

抗告の理由

一 原審判は、a株式会社(以下、申立外会社という)の株式(以下、本件株式という)の分割について、これを全て抗告人らに取得させるべき事情は認められないとし、相手方らが希望する通り、法定相続分に応じて各相続人に取得させる事が相当であるとした。ところで、抗告人らは原審において、本件株式を抗告人ら(三名)において取得すべきであるとは主張していない。本件株式は申立外会社において、将来代表者に就任すると目されている抗告人X1において取得すべきであると主張をしたものであり、原審判は抗告人らの主張に関して重大な誤認をしている。抗告人X3は申立外会社の従業員ではなく、申立外会社とは何らの関わりを有していないのであって、抗告人らはこの者に、本件株式の一部であろうとも取得させる意向など、そもそもないのである。抗告人X3にも株式を取得させるべきであると主張するのであれば、相手方らが本件株式の一部を取得する事に異議など唱える筈もないのである。後に述べるように、抗告人X1は前代表取締役亡Aの長男で、ゆくゆく申立外会社の経営を担う立場にいる事からして、申立外会社の経営の安定化のために出来る限り株式が分散する事を防止すべく、同人において全ての本件株式の取得が好ましいとの主張をしたものである。従って、原審判はこの点を全く看過しており、この点だけでも取消を免れないものである。更に、原審判は、遺産分割によって取得した株式に基づいて、会社に対してどのように権利行使しようと自由であり、権利行使の内容如何によって、取得の是非を判断するのは相当でないとし、抗告人らが書証として提出した申立外会社の従業員らの陳述書記載の事情は考慮すべきではないとする。この点について、抗告人らも、既に分割により株式を取得した株主がどのような権利を主張しようと、それが株主として法的に認められた適法なものである以上、非難の余地などないのであるから、かかる理由で取得の是非を論じること自体、失当である事に異を唱えるものではない。抗告人らは、遺産分割の結果、取得した株主がどのような権利行使をするのか想定した上で分割内容を決定すべきと主張しているのではなく、同族会社の株式を分割するに際しては、後述するような会社(同族会社はその殆どが経営基盤の弱い中小企業である)の経営基盤を損なわないように株式を分散させないという社会経済的な要請を考慮して決められるべきであると主張しているのである。従って、従業員の陳述書を書証として提出したのは、相続を契機に同族会社の株式が分散する事により、ゆくゆく会社の安定した経営に支障が生じる事について全ての従業員が危機感を抱いている事実、或いは、株式はその会社を実際に経営する者が取得する事が安定した会社経営に資するものであるとの認識を会社の全ての従業員が有している現実を踏まえた上で、本件株式の分割方法を考えるべきであるとの主張の裏付資料として提出したものである。

二 ところで、国内企業の内、約九割以上を占める中小企業において、経営者の高齢化によって企業経営を次世代に如何に円滑に承継させるかという問題が、国を挙げての緊急な課題となっている。この問題が現実化する一つの典型的なケースが、同族会社である中小企業経営者及びその親族の死亡に伴う株式の承継の問題である。非公開会社である中小企業の安定した経営には、経営と資本の一致が不可欠であり、相続による株式の分散は会社の経営基盤を弱体化させてしまう。このような社会経済的要請を踏まえ、平成一八年五月に施行された会社法においては、非公開会社の譲渡制限株式を相続で取得した者に対して、会社はその株式を会社に売り渡す事を請求する事が出来る途が開かれている(会社法第一七四条。立法趣旨について、甲第一二号証参照)。更に又、平成二〇年五月に制定された「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」においても、相続による非公開株式の分散を防止する等のために、遺留分に関する民法の特例が規定され、平成二一年三月一日から施行されている(立法の背景等について、甲第一三号証)。このように、申立外会社のような非公開会社における相続による株式の分散の防止は、国家的な課題であり、国も法律の制定によってこの課題に対応して来ているのである。

三 民法第九〇六条は、遺産の分割に際しては、遺産である権利の性質、相続人の職業、その他一切の事情を考慮して為されるべきであると規定している。そうであれば、前項に述べたような非公開株式の分散の防止という、国を挙げての社会経済的要請を、判断要素の一つとして重視すべき事は明らかである。然るに、原審判は前述したように、抗告人らの主張自体を誤認したため、この点について何ら考慮する事なく、抗告人らの主張を一蹴した。前述したように、抗告人X1は先代社長の長男で、ゆくゆくは申立外会社の代表取締役に就任する事が予定されている者であり、この者が申立外会社の株式を全て取得すべきとする事に、前記の法の趣旨を踏まえれば異論はない筈である。他方、相手方らは何れも専業主婦であり、これ迄申立外会社には何らの関与もして来なかった者である。本件株式は無配株であり、これを取得しない事による経済的損失も、相手方らには生じ得ない。のみならず、抗告人X1は代償金として相手方らに対して合計金一二一二万三〇〇二円の支払いを申し入れている。相手方らはこれ迄、株式は親の形見として保有したい等と述べているが、仮にこれを言葉通りに受け取れば、申立外会社の経営には全く関心はないものと考えざるを得ない。このように、本件株式に対して、抗告人X1においては、株式の分散化を防止し、将来の会社経営の安定化を図るという切実な思いがある一方、相手方らにおいて単なる形見との認識しか有していない事実を比較衡量した場合、相続人間において、形式的に法定相続分で株式を分割取得させる事の不合理性は明らかである。

以上の通り、原審判は民法第九〇六条の法の趣旨を全く逸脱した不当なものであり、取消しを免れない。

四 抗告人らの主張する分割内容に関する各相続人の相続分の価額については別紙記載の通りである。

別紙<省略>

別紙 反論書

相手方 Y1

抗告の趣旨について

一 私は原審判通りで納得しております。

二 抗告人の申し立て内容は、全て不適切であります。

a株式会社の株式の相続については、私は1/3の法定相続分でお願いします。

抗告の理由について

一 相続人、X1がa株式会社の株式を全部相続する根拠がありません。

二については不知。

三については不知。

四 抗告人の主張する分割内容は全く納得できません。

別紙 反論書

相手方 Y2

抗告の趣旨について

一、私は原審判通りで納得しております。

二、抗告人の申立て内容は、全て不適切であります。

a株式会社の株式の相続については、私は1/3の法定相続分で御願いします。

抗告の理由について

一、相続人、X1がa株式会社の株式を全部相続する根拠がありません。

二については不知。

三については不知。

四、抗告人の主張する分割内容は全く納得できません。

別紙 反論書

相手方 Y1

相手方 Y2

一 相続人X1を次期a株式会社の社長予定者とした前提で全部の相続株式の取得を主張するのはおかしい。そもそも本件は個人の相続の問題で、会社と関係ない。

二 母、Jから生前自分の身の振り方を頼まれました。兄A亡き後、平成二二年○月頃より幾度も訴外Bより会社の株式を売ってくれと要請あり。母はその都度断わり続けた。

会社のワンマン経営化に対する不安からです。委任状(乙第一号証の一)は株式を私達に受け継がせる主旨をふくめ現金一千万円と共に託された。(乙第一号証の二)

三 甲第一四号証の一にある普通預金振り込みの一千二百五〇万円は振り込み人訴外Bが実質的に相続株式の全部を取得することに他ならない。またこの資金の出所を裁判所で確認して頂きたい。

四 抗告の理由三に記載の「相手方らは専業主婦であり、会社に何ら関与もしてこなかった者である。株式は親の形見として保有したいと述べている。会社の経営には全く関心はないものと考えざるを得ない。」は全くの事実無根であり本件は乱訴といわざるをえない。

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