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東京高等裁判所 平成3年(ネ)4284号 判決 1992年9月30日

控訴人

甲野一郎

右訴訟代理人弁護士

濱秀和

宇佐見方宏

大塚尚宏

有賀正明

永山忠彦

山岡義明

金丸精孝

服部正敬

被控訴人

社団法人共同通信社

右代表者理事

犬養康彦

被控訴人

株式会社北海道新聞社

右代表者代表取締役

北川日出治

被控訴人

株式会社東奥日報社

右代表者代表取締役

岩渕義弘

被控訴人

株式会社岩手日報社

右代表者代表取締役

久慈吉野右衛門

被控訴人

株式会社秋田魁新報社

右代表者代表取締役

林善次郎

被控訴人

株式会社山形新聞社

右代表者代表取締役

岡崎恭一

被控訴人

株式会社河北新報社

右代表者代表取締役

佐藤剛彦

被控訴人

福島民友新聞株式会社

右代表者代表取締役

木下隆

被控訴人

株式会社福島民報社

右代表者代表取締役

河田亨

被控訴人

株式会社茨城新聞社

右代表者代表取締役

後藤武一郎

被控訴人

株式会社下野新聞社

右代表者代表取締役

江口宏

被控訴人

株式会社上毛新聞社

右代表者代表取締役

佐鳥達雄

被控訴人

株式会社東京タイムズ社

右代表者清算人

池田凱満

被控訴人

株式会社神奈川新聞社

右代表者代表取締役

桶本正夫

被控訴人

株式会社山梨日日新聞社

右代表者代表取締役

三井永政

被控訴人

株式会社新潟日報社

右代表者代表取締役

上村光司

被控訴人

信濃毎日新聞株式会社

右代表者代表取締役

石原俊輝

被控訴人

株式会社静岡新聞社

右代表者代表取締役

大石益光

被控訴人

株式会社北日本新聞社

右代表者代表取締役

深山榮

被控訴人

株式会社北国新聞社

右代表者代表取締役

飛田秀一

被控訴人

株式会社岐阜新聞社

右代表者代表取締役

杉山幹夫

被控訴人

株式会社京都新聞社

右代表者代表取締役

坂上守男

被控訴人

株式会社神戸新聞社

右代表者代表取締役

荒川克郎

被控訴人

株式会社山陰中央新報社

右代表者代表取締役

又賀清一

被控訴人

株式会社山陽新聞社

右代表者代表取締役

佐々木勝美

被控訴人

株式会社中国新聞社

右代表者代表取締役

山本朗

被控訴人

株式会社四國新聞社

右代表者代表取締役

村井保夫

被控訴人

社団法人徳島新聞社

右代表者理事

井端好美

被控訴人

株式会社愛媛新聞社

右代表者代表取締役

今井琉璃夫

被控訴人

株式会社高知新聞社

右代表者代表取締役

橋井昭六

被控訴人

株式会社西日本新聞社

右代表者代表取締役

青木秀

被控訴人

有限会社大分合同新聞社

右代表者代表取締役

長野健

被控訴人

株式会社宮崎日日新聞社

右代表者代表取締役

平嶋周次郎

被控訴人

株式会社長崎新聞社

右代表者代表取締役

小川雄一郎

被控訴人

株式会社熊本日日新聞社

右代表者代表取締役

永野光哉

被控訴人

株式会社南日本新聞社

右代表者代表取締役

日高旺

被控訴人

株式会社沖縄タイムス

右代表者代表取締役

比嘉敬

右被控訴人ら訴訟代理人弁護士

太田常雄

野本俊輔

河野憲壯

右被控訴人ら訴訟復代理人弁護士

村上愛三

牧義行

緒方孝則

岩崎章

會田哲也

主文

一  本件各控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、控訴人に対し、それぞれ原判決添付別紙謝罪広告目録記載のとおりの各謝罪広告を原判決添付別紙掲載新聞目録記載の各新聞紙上に一回掲載せよ。

3  被控訴人社団法人共同通信社は、控訴人に対し、金一五〇〇万円及び内金一〇〇〇万円につき昭和六三年八月九日から、内金五〇〇万円につき同年一一月二日から、いずれも支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  控訴の趣旨に対する答弁

控訴棄却

第二  当事者の主張

原判決事実及び理由第二のとおりである。但し、以下のとおり付加訂正する。

一  原判決二枚目裏六行目の「終了」を「終結」と訂正する。

二(一)  同一一枚目表七行目の「る」と「(」の間に、「。また、摘示された事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である。」と付加する。

(二)  同一一枚目表八行目と九行目の間に、以下のとおり付加する。

「また、公共の利害に関する事項についての論評を公表した場合において、その内容が客観的にみて正当といえなくても、右論評がこれを基礎づける事実を摘示してされ、その事実が真実であるか、これを真実と信ずる相当の理由があり、したがってこれを摘示することがそれ自体不法行為とならないときは、右摘示された事実と著しく均衡を欠くとか、ことさら不当な誹謗を目的としてなされたものと認められない限り、当該論評は違法性を欠くものというべきである。」

三  同一二枚目表三行目と四行目の間に、以下のとおり付加する。

「3 本件各記事及びその見出しの論評が、それを基礎づける事実を摘示してなされ、かつ、その事実が真実であるかあるいはこれを真実と信ずる相当の理由があるか否か。」

第三  証拠<省略>

理由

一当裁判所は、控訴人の本件各控訴は棄却すべきものと考えるが、その理由は、以下に付加訂正するほかは、原判決事実及び理由第三記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一二枚目裏一一行目の「濃厚で」を削除する。

2(一)  同一三枚目表六行目の「ある。」から八行目の「認められる」までを以下のとおり訂正する。

「あるし、また、同記事は、「政官界工作立件できず」との見出しと相まって、控訴人が、他の国会議員や、通産省元幹部らとともに、右現金受領の行為について、場合によっては収賄罪に問われる可能性があったものであるが、職務権限等の問題から、刑事事件として立件されなかったことを示唆する内容のものであり、一般読者にその犯罪性を印象付けるものであって、控訴人の前記職務と地位に鑑みると、このような記事は控訴人の社会的評価を低下させるものと認められる」

(二)  同表一一行目冒頭から裏七行目末尾までを削除する。

3(一)  同一四枚目表一行目の「先の」から、三行目の「いえる」までを以下のとおり訂正する。

「同記事中の「職務権限などの点で立件は困難。」「政治家が口利き料として多額の現金を受け取りながら、《職務権限の壁》などに阻まれて刑事責任を免れるという割り切れなさだけが残った。」との表現と相まって、控訴人の行為が、前記のように、本来、収賄罪を構成する可能性のあるものであるが、ただそれが職務権限の壁に阻まれて、刑事事件として立件できなかった旨を記事二よりもさらに強いニュアンスで示唆する内容のものであり、一般読者にその犯罪性を強く印象付けるものであって、控訴人の職務と地位に鑑み、このような記事は控訴人の社会的評価を著しく低下させるものである」

(二)  同表六行目冒頭から裏四行目末尾までを削除する。

4(一)  同一五枚目表一行目の「等の」から五行目末尾までを以下のとおり訂正し、同六行目の「しかし、」を「また、」と訂正する。

「等と相まって、前記のように、控訴人の行為が収賄罪を構成する可能性のあるものであるが、職務権限等の問題から、刑事事件として立件できなかったことを示唆する内容のものであり、一般読者にその犯罪性を印象付けるものである。」

(二)  同裏八行目の「原告の」から九行目末尾までを以下のとおり訂正する。

「また、本件記事二ないし五は、右各事実の摘示及びこれらの事実に基づき、記事によってニュアンスの違いはあるものの、控訴人の行為が収賄罪を構成する可能性があることや、それが職務権限の壁に阻まれて、刑事事件として立件できなかった旨の論評により、いずれも控訴人の名誉を毀損する内容であると認められる。」

5  同一六枚目表一一行目末尾の次に以下のとおり付加する。「また、本件記事二ないし五の、控訴人の行為が収賄罪を構成する可能性があることや、それが職務権限の壁に阻まれて、刑事事件として立件できなかったという論評は、右各事実を摘示し、それに基づくものであり、かつ、摘示された事実と著しく均衡を欠くとか、ことさら不当な誹謗を目的としてなされたものとは認められないのであるから、これらの事実につき、真実性の証明があれば、原則として、違法性を欠くというべきである。」

6  同一七枚目表一行目から二行目の「保安協会」を「電気保安協会」と訂正する。

7  同二九枚目表二行目の「石田エネルギー研究所」を「株式会社石田省エネルギー研究所」と訂正する。

8  同三六枚目表三行目の「運用により」を「値上りにより」と訂正する。

9  同三七枚目表五行目の「供述しているから、」から同裏六行目末尾までを以下のとおり訂正する。

「供述しているが、しかし、中瀬古の供述する、一二〇〇万円を控訴人方に届けるに至った経緯、ことに控訴人みずから中瀬古に具体的な金額を提示していること、右金員を届けた際の状況等からすれば、右一二〇〇万円は、控訴人に帰属したものと推認するほかなく、それを中瀬古があえて明言を避け、右のような供述をしたのは、直接みずからが見聞していないことについては断定を避けるとともに、控訴人の立場に対する配慮があったものと考えられる。なお、仮に、いったん中瀬古から控訴人に渡った現金の全部または一部がその後さらに井上に渡ったとか、あるいはそれが井上を通じて中瀬古に返還された事実があったとしても、それは控訴人が前記の経緯で自己の物として受領した金員の使途、処分に属することであるから、いずれにせよ控訴人が右現金を受領した事実に変わりはないというべきである。」

10  同三八枚目裏四行目冒頭から八行目末尾までを以下のとおり訂正する。

「前記二2(七)のとおり、中瀬古は、昭和六一年秋、ホテルニュー東京で、久保田、井上らと、控訴人の秘書ら名義の株式の取り扱いについて打ち合わせた際、井上に対し、これらの株式の取引は、井上の取引にしてほしいと依頼していることが明らかである。」

11  同四三枚目裏一行目の「原告」を「中瀬古」と訂正する。

12  同四五枚目表三行目の「三万株」の次に「の売却益」を加える。

13  同四六枚目表二行目の「前記」から三行目の「等、」までを削除する。

14  同四八枚目表八行目から裏四行目末尾までを以下のとおり訂正する。

「というべきであり、本件各記事は違法性を欠くものというべく、不法行為を構成しないというべきである。なお、右事実関係からすれば、前記一二〇〇万円が最終的にもすべて控訴人の利益に帰属したか否かはともかく、控訴人は一旦は右金員を受領し、それによる利益を得たと評価されるところ、控訴人は、右金員を入手するについて、全く元手をかけず、株価下落による投資リスクを一切負っていないのであるから、それに対して、本件記事一及び五のように「濡れ手に粟」という表現を使ったとしても、それが正鵠を得ていないとか、表現として適切を欠くとは必ずしもいいがたい。

また、前記の事実関係からすれば、控訴人の行為が収賄罪を構成する可能性があるとか、それが職務権限の壁に阻まれて、刑事事件として立件できなかった旨の論評は、それが客観的にみて正確といえるか否かはともかく、右摘示された事実として著しく均衡を欠くとはいえないし、それがことさら不当な誹謗を目的としてなされたなどの事情もうかがわれないのであるから、これらの論評についても、違法性を欠き、不法行為は成立しないものというべきである。」

15  原判決添付掲載新聞目録一枚目裏二行目下段の「下野新聞」を「下新聞」と訂正する。

16(一)  原判決添付記事目録(五)一枚目表五行目の「総額役」を「総額約」と、同七行目の「生活間隔」を「生活感覚」と訂正する。

(二)  同二枚目裏一行目から二行目の「大蔵完了」を「大蔵官僚」と、五行目の「かたくなまでに」を「かたくななまでに」と訂正する。

(三)  同三枚目表二行目から三行目の「七百万円」を「七百円」と訂正する。

二よって、原判決は相当であるから、民訴法三八四条により本件控訴を棄却し、控訴費用の負担について同法九五条及び八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官髙橋欣一 裁判官矢崎秀一 裁判官及川憲夫)

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