大判例

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東京高等裁判所 平成3年(ネ)63号 判決

被供託者の中に結果的に法人格のない財団又は社団としては実在しないものが含まれていたとしても、債務者が供託時に過失なくして債権者を確知しえなかったのであれば、右供託は民法四九四条後段によりなお有効であると解するのが相当である。けだし、債務者にとって、法人格のない財団又は社団が社会的に実在しているか否かの判断は極めて困難であるから、誰が債権者であるか確知できない場合と同様に、その判断の誤りによる危険から債務者を救済する必要があるからである。なお、控訴人は、債権者不確知による供託がされた場合に、被供託者の中に実在しない団体が含まれていれば供託法九条により右供託は無効となる旨主張するが、債権者不確知による供託には、複数の被供託者の中に当初から供託物を受け取る権利を有しない者が常に入っているのであるから、被供託者の中に実在しない団体が含まれていたとしても、供託法九条が適用されて右供託が当然に無効となるものではない。≪中略≫

債権者不確知による供託がされた場合に、真の権利者である被供託者が供託物の還付請求をするためには、供託書正本又は供託通知書(民法四九五条三項、供託規則二四条一号)のほか「還付を受ける権利を有することを証する書面」(供託法八条一項、供託規則二四条二号)を添付することが必要である。本件において供託金の還付請求をするためには、前述のとおり、被控訴人内村健一破産管財人との間では既に和解契約が締結されているのであるから、控訴人は、他に被供託者とされている法人格なき財団である天下一家の会及び法人格なき社団である天下一家の会・第一相互経済研究所を各被告として、本件各債券の元利金請求権が自己に属することの確認を求める訴訟を提起して、自己が真の権利者であることを証明する必要がある。控訴人は、実在しない右二団体に対しては訴えを提起することも事実上不可能である旨主張するが、甲第一号証によれば、本件供託書上、右二団体の住所はいずれも内村健一の住所と同一の「熊本県熊本市本山町六三五番地」とされており、かつ、前記認定のとおり、内村健一が右二団体をネズミ講の会員の勧誘及び財産の管理のために利用していた実体に鑑みると、右二団体の当事者能力を認めるとするならば、その代表者ないし管理人は内村健一以外にはありえないところであるから、同人を代表者ないし管理人として訴えを提起すれば足りると解される。したがって、控訴人が主張するように、右二団体に対する訴えの提起が不可能であるということはできない。そして右訴訟において、本件各債券の元利金請求権が自己に属することあるいは右二団体が法人格のない財団又は社団として実在しないことが判決の主文ないし理由中に明らかになれば、これらの確定判決等及び前記和解契約を証する書面を還付請求手続で提出することによりその権利を証明することは可能であるというべきである。

(時岡 大谷 滝澤)

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