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東京高等裁判所 平成3年(行ケ)44号 判決

第一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第二 そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。

一 成立に争いない甲第二二号証(平成元年(行ケ)第一五〇号事件における証人実川恵子の証人調書)及び乙第一号証(パンフレツト)、

右甲第二二号証及び弁論の全趣旨により、被告訴訟代理人小原和夫が昭和五七年二月五日に料理店「祇園平八」の店頭付近を撮影した写真と認められる乙第二号証の一及び二、

前記甲第二二号証及び弁論の全趣旨により、訴外竹川茂が昭和五七年二月一八日に料理店「祇園平八」の持帰り商品を撮影した写真と認められる乙第三号証及び第四号証、

前記甲第二二号証及び弁論の全趣旨により、被告訴訟代理人小原和夫が昭和六〇年二月ころ料理店「祇園平八」の持帰り伝票を撮影した写真と認められる乙第六号証、

前記甲第二二号証、右乙第六号証及び弁論の全趣旨により、料理店「祇園平八」の従業員が昭和五六年一〇月八日に作成した持帰り伝票の写しと認められる乙第五号証を総合すれば、左記の事実を認定することができる。

1 被告は、鍋物、弁当、寿司、雑炊、湯豆腐、うなぎ及び肉料理等を提供品とする料理店「祇園平八」を経営し、京都市東山区祇園町所在の本店のほか数点の支店において営業している。

2 料理店「祇園平八」本店では、一階から四階の客室において各種の料理を提供するほか、一階入口の右側に「お持ち帰りコーナー」を設け、一般の顧客に対して各種の食料品を販売している。右「お持ち帰りコーナー」には、黒い字で大きく横書きされた「平八寿司」の下に赤い字で「お持ち帰りコーナー」と横書きされた看板が掲げられている。

「お持ち帰りコーナー」の販売員は一階のレジスター係が兼ね、来店した客に持帰りか店内での飲食かを確認し、持帰りの顧客から注文を受けると、持帰り伝票に記入する。注文された商品は、折箱あるいはヘギに収納し、本件包装紙で包んだうえその端をシールでとめ、紐掛けして顧客に手渡される。

3 乙第三号証及び第四号証の写真に撮影されている本件包装紙には、濃い緑色の地に白抜きの文字が表されている。すなわち、乙第三号証の写真に撮影されている包装紙は、中央上に「祇園」、その下に大きく「平八」の文字を肉太に縦書きし、右上に「珍味 うどんちり しやぶしやぶ 総本家」、「活魚料理・平八寿司」の文字、左下に各店舗の名称、所在地及び電話番号を、いずれも右「祇園」及び「平八」よりはるかに小さな文字で縦書きしたものであり、乙第四号証の写真に撮影されている包装紙は、右上の文字部分を「珍味 うどんちり しやぶしやぶ 元祖」とする以外は、前者と同一である。

また、本件包装紙の端をとめるシールには、青地に白抜きの肉太の書体で「祇園平八」の文字が横書きされている。

4 前記「お持ち帰りコーナー」のシヨーウインドには各種の料理が陳列されており、昭和五四年秋ころから昭和五六年一〇月ころまでは、一か月当たり二〇〇人を越える持帰り顧客があり、寿司の持帰りが多いが、「うなぎの蒲焼」(小型容器に入れたタレとしようがの薄切りを添え、折箱に詰めたもの)及び「うどんめん」(うどんちりに用いる、親指ほどの太さのうどんを、折箱あるいはヘギに詰めたもの)の持帰りも少なくなかつた。

以上の事実が認められ、原告が審判手続において提出された証拠についてるる主張する点(事実欄第二の三1)のうち、<2>、<5>ないし<7>の点は前掲各証拠に照し措信し難く、その余の点は、右事実認定を左右するには足りないというべきである。

二 そして、被告が料理店「祇園平八」本店において販売した「うなぎの蒲焼」は本件商標の指定商品である商標法施行規則別表第三二類中の加工食料品の二「加工水産物」に、「うどんめん」は加工食料品の三「加工穀物」に、それぞれ属するものと認められる。

次に、本件包装紙に表された文字のうち「祇園平八」の部分は、左上及び右下の部分に比較すると格段に大きく表示されているので、顧客(需要者)は「祇園平八」の部分のみを独立した標章と認識することが多いと考えられる。そこで、本件連合商標と本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章を対比してみると、本件連合商標が、「祇園」の文字と「平八」の文字の大きさが同一であり、かつ、振り仮名が付されているのに対し、本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章は「祇園」の文字がやや小さく、「平八」の文字が大きく表示されており、かつ、振り仮名が付されていない点において差異があることが認められる。しかしながら、本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章における「祇園」の文字と「平八」の文字の大小の差は、これを「祇園平八」という一連の標章と理解することを妨げるほどのものではない。また、本件連合商標の振り仮名は、「祇園平八」という比較的平易な漢字の普通の読み方を、普通の振り仮名の方法で表示したものにすぎない。そうすると、本件連合商標が通常の書体で表示されているのに対し本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章は肉太の書体で表示されている点を加味して考えても、本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章は、本件連合商標が有する独自の識別性をそのまま表しているものと認めるに十分であるから、本件包装紙に「祇園平八」の標章を附し、かつ、これを販売する行為は、いずれも本件連合商標の使用に該当すると解するのが相当である。

したがつて、被告は、本件審判請求の登録前三年以内に、日本国内において、本件審判請求によつて商標登録取消しを求められた本件商標の指定商品中、加工水産物及び加工穀物について本件連合商標の使用をしていたものと認めることができる。

三 この点について、原告は、本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章は料理店の営業主体の名称としてのみ認識され、包装されている物品の商標と認識される可能性がないから、商標として機能しておらず、商標法にいう商標に該当しない、と主張する。

たしかに、本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章は、その右上及び左下に表示されている文字をも併せ考えると、料理店の名称を表示するという面が強いことは否定できない。しかしながら同時に、本件包装紙は専ら被告が経営する料理店の持帰り商品を収納した折箱あるいはヘギを包装するために使用されるものであるから、本件包装紙にみられる「祇園平八」の標章が、被告の営業に係る商品について使用されるものであることも、まぎれもない事実であり、この標章によつて商標の本来の機能である商品の出所表示の機能、品質保証の機能あるいは宣伝広告の機能等を果たしていることは明らかであるから、原告の右主張は失当である。

また、原告は、「うなぎの蒲焼」は商標法施行規則別表第三二類中の加工食料品の五「その他の加工食料品べんとう」に属する、と主張する。

しかしながら、商標法施行規則別表第三二類中の加工食料品の項は「一 肉製品、二 加工水産物、三 加工穀物、四 加工野菜および加工果実、五 その他の加工食料品」と区分されており、少なくとも右加工食料品の項に関する限り、区分の基準が加工される原材料の種類におかれていることは疑いの余地がない。そして、「五 その他の加工食料品」に属するとされているものは、「肉、水産物、穀物、野菜、果実」以外のものを原材料とする加工食料品、あるいは、「肉製品、加工水産物、加工穀物、加工野菜、加工果実」及びそれらの原材料の何種類かを組み合わせ加工して製造する食料品であると理解される(ちなみに、「三 加工穀物」に属するとされているものの原材料は米麦類に限られているので、豆類あるいは芋類を原材料とする「とうふ、凍りどうふ、あぶらあげ、こんにやく、なつとう」は、「五 その他の加工食料品」に属することになる。また、「こうじ、酵母、イーストパウダー」は、米麦類を主たる原材料とするともいい得るが、増植した菌類に着目して「五 その他の加工食料品」に属するものとされていると理解される。)。そして、米飯が入つているべんとうが、右「肉製品、加工水産物、加工穀物、加工野菜、加工果実」及びそれらの原材料の何種類かを組み合わせ加工して製造する食料品に該当することは明らかであるが、米飯が入つていない、いわゆる「料理の折詰」は、これがそれらの原材料の何種類かを組み合わせ加工したものであれば、この範疇に属すると考えることができるのに対し、米飯が入つておらず、一種類の水産物のみを原材料として加工した「うなぎの蒲焼」のような食料品は、この範疇に属さず、「二 加工水産物」に属すると理解するのが相当であるから、原告の前記主張は失当である(タレ及びしようがは単なる添え物であるから、これらの原材料を考慮することは適当でない。)。

さらに、原告は、料理店「祇園平八」は「うどんめん」の需要者であり、同店の顧客がうどんちり用の「うどんめん」を注文することはあり得ず、仮にあつたとしても同店と特殊な関係にある者に対し例外的に「うどんめん」を分け与えることがあるにすぎないから、料理店「祇園平八」にとつて「うどんめん」は商標法にいう商品に該当しない、と主張する。

しかしながら、料理店「祇園平八」本店の「お持ち帰りコーナー」において、昭和五四年秋ころから昭和五六年一〇月ころまでの間、「うどんめん」を折箱あるいはヘギに詰めたものが持帰り商品として一般の顧客に販売されていたことは前記認定のとおりであるから、原告の右主張も失当である。

四 以上のとおりであるから、本件商標の指定商品中、本件審判請求に係る商品についての本件商標の登録は商標法第五〇条の規定により取り消すべきでない、とした審決の認定及び判断は正当であつて、審決には原告が主張するような誤りはない。

第三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却する。

〔編注〕本件の特許庁における手続の経緯は左のとおりである。

被告は、別紙A表示のとおり「平八」の漢字二字を縦書きして成り、第三二類「加工穀物、その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第七七五二九九号商標(昭和四〇年六月二一日商標登録出願、昭和四三年三月二五日商標権設定登録、昭和五三年九月一日及び昭和六三年五月二五日商標権存続期間の更新登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。

なお、本件商標は、別紙B表示のとおり「祇園平八」の漢字四字を縦書きし、その右側に「ぎおんへいはち」と振り仮名して成り、第三二類「加工食料品、その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第七〇二〇五六号商標(昭和三九年九月一一日商標登録出願、昭和四一年三月二四日商標権設定登録、昭和五一年六月一七日及び昭和六一年三月一三日商標権存続期間の更新登録。以下「本件連合商標」という。)と、相互に連合商標となつている。

原告は、昭和五六年一〇月一六日、本件商標の商標登録を、その指定商品中「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、肉製品、加工水産物、加工穀物、加工野菜及び加工果実」について取り消すことについて審判を請求し(昭和五六年一二月九日に審判請求の登録)、昭和五六年審判第二〇五八一号事件として審理された結果、平成二年一一月二九日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は平成三年二月一四日原告に送達された。

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