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東京高等裁判所 平成4年(ネ)612号 判決 1992年7月20日

控訴人(原告)

後藤厚

被控訴人(被告)

宗形康

ほか一名

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人らは、控訴人に対し、金五七九万三九六円及びこれに対する平成二年一二月三一日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4  仮執行宣言。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文第一項と同旨。

第二当事者の主張及び証拠

当事者双方の主張は原判決書の事実摘示に記載のとおりであり、証拠関係は本件記録中の証拠目録(原審)に記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求中原判決が認容した部分を超える部分は理由がないと判断する。その理由は、控訴人の控訴理由にかんがみ、当裁判所の次の判断を加えるほかは、原判決の理由に説示のとおりであるからこれを引用する(なお、原判決が認容した部分については、被控訴人らから不服の申立がないから、判断しない。)。

1  慰謝料のうちに制裁的要素が含まれてよいことは、当裁判所もこれを否定するものではない。しかしながら、控訴人がすでに自賠責保険から支払いを受けたことを認める慰謝料額(傷害分三八万八八〇〇円、後遺症分七五万円)は、当事者間に争いない控訴人の傷害及び後遺傷害の程度からみて、控訴人のいう制裁的要素を考慮しても相当な額と認めることができる。これ以上に慰謝料(制裁的慰謝料というか単に慰謝料というかは別として)を認めるべき理由があるとは認められない。

2  控訴人は、自動車の物損による損害の評価にも不服をいうが、不法行為を理由とする損害賠償請求において被害者が請求することができるのは、被害物件を修理する以外に同種の物を入手することができないような特別の事情がない限り、被害物件の価額を限度と解すべきものであつて、控訴人が愛着を持つていた車であるからといつて、その価額を上回る修理費用を損害と認めることはできない。

二  以上のとおり、控訴人の請求中原判決が認容した部分を超える請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴は理由がなくいずれも棄却を免れない。

(裁判官 上谷清 滿田明彦 高須要子)

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