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東京高等裁判所 平成4年(ラ)623号 決定 1992年9月02日

抗告人

甘利章成

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、売却を不許可とする。」旨の裁判を求めるというにあり、その理由は、本件建物の中二階部分に抗告人が代表取締役に就いている株式会社甘利商店の賃借権があるのに物件明細書にその旨の記載がなく、かつ、本件建物の高額な内装費用を考慮しない評価に基づいていることからも明らかなように本件土地建物の最低売却価額は低廉に過ぎるというものである。

二しかしながら、本件記録中の現況調査報告書によれば抗告人の主張するように株式会社甘利商店が本件建物を占有した事実は全く窺えないのであり、これに基づき作成された物件明細書の作成に重大な誤りはなく、また、本件記録中の評価書によれば、評価人は、本件土地については近隣土地の公示価格を基準にして本件土地の固有の状況等をも考慮に加えて算定し、本件建物については内装についても実地に検分したうえ原価法による再調達原価から減価修正をして算定したことが明らかであり、その結果本件土地建物の合計評価額を八二五七万円と評価しているのであって、その算定方法に不合理な点は窺えない。

民事執行法による不動産の売却は、目的物件の所有に対する事実上法律上の障害を解消させたうえで行うものとはされていないことなどから、その最低売却価額が実勢価格を下回ることはやむをえないことをも参酌すると、右の評価に基づき決定された本件土地建物の最低売却価額が低額に過ぎるとは到底認められず、この決定に重大な誤りがあったということもできない。

そうとすれば、本件抗告は理由がないからこれを棄却すべく、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官岩佐善巳 裁判官小川克介 裁判官南敏文)

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