東京高等裁判所 平成4年(行ケ)129号 判決 1994年8月16日
東京都北区王子1丁目4番1号
原告
日本製紙株式会社
(旧商号 十条製紙株式会社)
同代表者代表取締役
宮下武四郎
同訴訟代理人弁護士
尾﨑英男
同弁理士
千葉昭男
スウェーデン国
エスー221 00 ルンド ルーベン ラウジングス ゲータ
被告
アクチーボラグ、ツィリシュトール
同代表者
ゲスタセブレル
同訴訟代理人弁理士
岩崎幸邦
同
田中義敏
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
「特許庁が平成2年審判第8048号事件について平成4年4月15日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決
2 被告
主文と同旨の判決
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
被告は、名称を「剛性ストリップを含む包装体」とする特許第1072735号の発明(1973年12月5日スウェーデン国においてした特許出願に基づく優先権主張を伴う昭和49年12月4日出願、昭和56年11月30日設定登録。以下「本件発明」という。)の特許権者である。原告は、平成2年5月8日、被告を被請求人として、本件特許を無効とすることについて審判を請求した。特許庁は、この請求を平成2年審判第8048号事件として審理した結果、平成4年4月15日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年6月2日原告に送達された。
2 本件発明の要旨
ポリエチレン物質を被覆された紙またはボール紙のベース層からなる積層材料の包装材料ウエブから形成され、該包装材料ウエブの縁部分を互に重ね合せ密閉して形成した継目を有するチューブの開口端を密閉した形状を有し、かつ前記継目の、包装体内部に面する側がストリップで被われている形式の包装体において、前記ストリップが前記包装材料ウエブの内側を被覆する前記物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、また該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側被覆に対して密閉され得る材料で被われていることを特徴とする包装体。
3 審決の理由の要点
(1) 本件発明の要旨は前項記載のとおりである。
(2) 特公昭40-16868号公報(本訴における甲第3号証。以下、書証については本訴における書証番号を表示する。)には、「ウエッブを縦の継目をもつ管へ形成することによってウエッブの材料から包装体を作る方法において、その管が互に間隔を置きかつ管を分割している狭い部分に沿って横の密封部によって密封され、また次にその管は前記密封部分の切断によって個々の包装単位体を形成するよう分離され、・・・」(特許請求の範囲)、「包装材料が内部プラスチックの層と例えば紙またはカードボードからなる場合、支持層だけを除去してプラスチック層をそこなわないでおくことが有利であろう。」(第1頁右欄末行ないし第2頁左欄2行)及び「プラスチック材料の片8は縦の継目の内側及び横の密封部分1で互に接触する縁部9の両方と重なるように配置される。」(第2頁左欄14行ないし16行)なる記載がある。よって、これらの記載と第5図の記載からみて、甲第3号証には、「紙またはカードボードからなる支持層および内部プラスチック層からなるウエッブの縁部分を互に重ね合わせて形成された縦の継目をもつ管の開口端を密閉し、さらにプラスチック材料の片が前記縦の継目の内側に重なるように配置された包装体」の発明が記載されている。(別紙図面1参照)
(3) 本件発明と甲第3号証の発明とを対比すると、後者における「支持層」「片」は前者における「ベース層」「ストリップ」にそれぞれ相当するから、両者は、「プラスチック物質を被覆された紙またはボール紙のベース層からなる積層材料の包装材料ウエブから形成され、該包装材料ウエブの縁部分を互に重ね合せ密閉した継目を有するチューブの開口端を密閉した形状を有し、かつ前記継目の、包装体内部に面する側がストリップで被われている形式の包装体。」である点で一致するが、ストリップが、前者は包装材料ウエブの内側を被覆する前記物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、また該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側被覆に対して密閉され得る材料で被われているものであるのに対し、後者はプラスチック材料からなることしか記載がない点で相違する。
(4) そこで、上記相違点について検討する。
<1> 甲第8号証(米国特許第3147902号明細書、昭和39年12月15日特許庁受入)には、「容器の本体又は側壁1は・・・ラミネートされてスパイラル状に巻かれた構造を有し、・・・クラフト紙、チップボード、カードボード或いは他の安価な繊維材料からなる外側本体層5と内側本体層6とを含む。」(第2欄9行ないし14行)、「内側本体層6には不透性のライニング層9がラミネートされ、該層も連続する巻きの間に突き合わせシーム10をもつスパイラル状に巻かれたストリップであり、・・・内側本体層6に固定されている。容器の内側でシーム10をまたいで、そしてシームの長さに沿って連続して、狭いシーム封止用の金属ホイルテープ11が設けられる。」(第2欄19行ないし26行)、「ライニング層9は、・・・金属ホイルー紙のラミネートである。・・・ホイルの露出面は、・・・熱可塑性樹脂材とワックスの薄いスリップコーティング14(第4図)を有し、」(第2欄34行ないし41行)及び「このテープはライニングストリップ9と比べると巾が狭く、シームのスパイラル長さに連続的に沿って該シーム10に被されるかまたいで配置され、ライニングストリップのホイル面に接合される。・・・シーム封止用テープ11は、好ましくは・・・アルミニウムホイルである。・・・テープはその一側にライナホイル13上のスリップコーティング14と同種のスリップコーティング16をコーティングされている。その反対側には、テープは低温熱シール可能な熱可塑性接合材或いは接着コーティング15をコーティングされ、それは・・・コーティングされたライナホイル13に熱シールされる能力を有する。」(第2欄62行ないし第3欄17行)なる記載がある。これらの記載及び第1ないし4図(別紙図面2参照)の記載からみて、甲第8号証には、「その本体又は側壁が、スパイラル状に巻かれた紙等から成る外側本体層と内側本体層の内側に、金属ホイルー紙からなり、紙の側を内側本体層に接着して形成された、シームをもちスパイラル状に巻かれたライニング層を有し、そのライニング層の金属ホイル上にスリップコーティング層が被覆され、さらにライニング層のシームの容器内部に面する側が金属ホイルテープで被われた容器であって、該金属ホイルテープは、金属ホイルをベース層とし、そのライニング層側に低温熱シール可能な熱可塑性接合材或いは接着コーティングの層を有し、その反対側にライニング層のスリップコーティングと同種のスリップコーティング層を有するものである容器」の発明が記載されている。
<2> 甲第8号証の金属ホイルテープは、その一側にライニング層のスリップコーティングと同種のスリップコーティング層を有し、その反対側には該スリップコーティング層に低温熱シール可能な熱可塑性接合材或いは接着コーティングの層を有するものであり、その金属ホイルテープのベース層である金属ホイルはライニング層の内側を被覆するスリップコーティングより軟化温度が高いことは明らかであるから、一見、本件発明のストリップと同様の、包装材料ウエブの内側を被覆する物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、また該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側に対して密閉される材料で被われている構成を有しているようにみえる。
しかし、その金属ホイルテープの低温熱シール可能な熱可塑性接合材或いは接着コーティングの層は、金属ホイルテープをライニング層に接着するために設けられたものにすぎず、かかる金属ホイルテープは、基本的には、ベース層である金属ホイルとスリップコーティング層の2層からなるものであり、ベース層とその両側を被う層の3層からなる、本件発明のストリップとは基本的積層構成を異にする。
さらに、甲第8号証の金属ホイルテープは、紙製の内側本体層の内側に形成された、金属ホイル上にスリップコーティングを有する紙-金属ホイルラミネートからなるライニング層の継目を被うものであり、プラスチック物質を被覆された紙又はボール紙のベース層からなる積層材料の包装材料ウエブの継目を被うものである甲第3号証の発明のストリップとは、その貼着対象が基本的に異なる。
そもそも、甲第8号証の金属ホイルテープは、「・・・シームが不透性の金属ホイルの連続性を破り、容器の内容物が液体或いは油性のときは有害な毛細管漏出或いは浸出しの場所となる。」(第2欄54行ないし58行)ことを防止することを目的とするものであり、また、ライニング層の金属ホイル上及び金属ホイルテープ上に設けられるスリップコーティングは、「ホイルの微小な穴を塞ぐことと、およびスパイラル曲げ機の工具上でのコーティングされたホイルの滑り」(第2欄43行、44行)を目的とするものであるから、その金属ホイルテープ及びスリップコーティングは、各々ライニング層の金属ホイル及びライニング層及び金属ホイルテープの金属ホイルと密接不可分な関係にある。
<3> よって、甲第3号証の発明のプラスチック物質を被覆された紙又はボール紙のベース層からなる積層材料の包装材料ウエッブの継目を被うストリップの積層構成として、前述の甲第8号証のスリップコーティングを被覆された金属ホイルー紙ラミネートからなるライニング層の継目を被う、金属ホイルテープの積層構成を採用することは、意味の無いことであり、かかる事項が当業者にとって容易に推考し得たこととは到底認められない。
(5) さらに、「オーバーラップタイプの連続した結合継目をもつ外側の支持層と内側のプラスチック層とからなるチューブの開口端を閉じた形状を有し、内側の層は継目の全長に亘って外側層のオーバーラップ結合部を完全にカバーするか、別個のプラスチックストリップを結合部に沿って外側ウエブ縁の内側の境界に沿ってウエブのプラスチック層にあてがって熱シールした包装体」の発明が記載されている甲第4号証(英国特許第842498号明細書、昭和35年9月12日特許庁受入)、「クラフト紙からなる支持層とポリエチレン等からなるフィルムと熱シールプラスチックフィルムからなるウエブを互いに重ね合わせて形成したチューブの縦方向継目の包装体内側を内側ウエブのポリエチレンフィルムで覆った包装体」の発明が記載されている甲第5号証(英国特許第1013656号明細書、昭和41年3月12日特許庁受入)、「紙とポリエチレンフィルムから形成されたラミネート材を互いに重ね合わせて形成したチューブの縦方向継目の包装体内側を一方のラミネート材のポリエチレンフィルムを他方のラミネート材の紙とポリエチレンフィルムの間に挟んでシールした包装体」の発明が記載されている甲第6号証(英国特許第1041117号明細書、昭和41年11月1日特許庁受入)、「縦方向の重合継目をもつ缶胴において、内側に配置される缶胴素材の端縁をポリエチレンテープで覆った缶胴」の発明が記載されている甲第7号証(特開昭47-15439号公報)、「LDPE/nylon/LDPE、LDPE/PP/LDPE、LDPE/HDPE/LDPEなる包装材料」の発明が記載されている甲第9号証(「Modern Plastics International」1972年3月号 第15~18頁 同月マグローヒル社発行 昭和47年5月4日国立国会図書館受入)、「アルミ箔の両面に樹脂を塗布加工した包装材料」の発明が記載されている甲第10号証(「包装の歴史」第148~153頁 昭和51年5月31日 日刊工業新聞社発行)、「アルミニウム箔の両面にポリエチレンの被覆を形成せしめた包装材料」の発明が記載されている甲第11号証(実公昭37-14192号公報)、「アルミ箔の両側にポリエチレンを貼り合わせた包装材料」の発明が記載されている甲第12号証(「プラスチック年鑑」1963年 第156~161頁 1963年4月10日 株式会社工業調査会発行)、「アルミ箔の両側にポリエチレンが接着された包装材料」の発明が記載されている甲第13号証(「紙とプラスチック」1973年11月号 第26~30頁 昭和48年11月15日 加工技術研究会発行)、「アルミ箔の両側にポリエチレンを被覆しさらにその一側にセロファンを被覆した包装材料」の発明が記載されている甲第14号証(特開昭48-51795号公報)、「ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートまたはナイロンを外層とし、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの耐熱性ポリオレフィンを内層とし、アルミ箔を中間層とした包装材料」の発明が記載されている甲第15号証(実公昭46-7028号公報)について、「各種プラスチックのビカット軟化点と熱変形温度の比較」が記載されている参考資料(「プラスチック成形加工データブック」第30~33頁 昭和63年3月25日 日刊工業新聞社発行)を考慮しながら検討しても、プラスチック物質を被覆された紙またはボール紙のベース層からなる積層材料の包装材料ウエブの継目を被うストリップを、包装材料ウエブの内側を被覆する前記物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、また該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側被覆に対して密閉され得る材料で被われているものとすることは、何ら記載されておらず、またかかる事項を示唆する記載もないから、格別の資料と認めることはできない。
(6) そして、本件発明はかかる事項を必須構成要件としたことによって、包装材料ウエブを消毒することが必要な場合、消毒液を蒸発させるためにチューブ内に流される高温の空気によってもストリップが変形しないという、甲第3号証ないし第15号証の発明のいずれにおいても奏されない効果を奏するものと認められる。
(7) 以上のとおり、本件発明は、甲第3号証ないし第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、請求人(原告)の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効にすることはできない。
4 審決を取り消すべき事由
審決の理由の要点(1)、(2)は認める。同(3)のうち、甲第3号証には「プラスチック材料からなることしか記載がない」との点は争い、その余は認める(但し、一致点は他にもある。)。同(4)<1>は認める。同(4)<2>のうち、甲第8号証の金属ホイルテープがベース層である金属ホイルとスリップコーティング層の2層からなるものであり、本件発明のストリップとは基本的積層構成を異にするとの点、及び甲第8号証の金属ホイルテープと甲第3号証のストリップとは貼着対象が基本的に異なるとの点は争い、その余は認める。同(4)<3>は争う。同(5)は認める。同(6)、(7)は争う。
審決は、本件発明と甲第3号証(以下「第1引用例」という。)の発明との一致点を看過した上、両者の実質的な相違点についての判断を誤ったため、第1引用例のストリップの積層構成として、甲第8号証(以下「第2引用例」という。)の金属ホイルテープの積層構成を採用することは、当業者にとって容易に推考し得たこととは認められない旨誤って判断したものであるから、違法として取り消されるべきである。以下詳述する。
(1) まず審決は、本件発明と第1引用例の発明とを対比し、「ストリップが、前者は包装材料ウエブの内側を被覆する前記物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、また該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側被覆に対して密閉され得る材料で被われているものであるのに対し、後者はプラスチック材料からなることしか記載がない点で相違する。」と認定しているが誤りである。
本件発明と第1引用例の包装体はいずれも、包装材料ウエブを長手方向縁部分を重ね合せ密閉して長手方向の継目を有するチューブを形成し、その継目の包装体内部に面する側をストリップで被い、液体を充填した後、そのチューブを横方向に密閉し、その横方向の密閉部分に沿って包装体単位に切断することによって製造されるものである。そして、チューブを横方向に密閉するためには、包装材料ウエブの継目をチューブの内側から被っているストリップが、継目と反対側のウエブの内側被覆とも密着しなければならないから、この種の包装体のストリップは必ずその両面が包装体ウエブの内側被覆と密着するようになっているのである。
第1引用例の第5図にはプラスチック片8の両側が包装材料ウエブの内側被覆に対し密閉されることが示され、発明の詳細な説明中には「プラスチック材料の片8は縦の継目の内側及び横の密封部分1で互に接触する縁部9の両方と重なるように配置される。」(2頁左欄14行ないし16行)と記載されているが、このような記載によるまでもなく、本件発明や第1引用例の包装体を構成する上で、チューブを横方向に密閉するためにストリップの両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉されることは当然の必須の構成であり、当業者にとって技術常識に属することである。
本件発明における「該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側被覆に対して密閉され得る材料で被われている」という構成要件は、本件発明や第1引用例の包装体において必須の上記構成を含んで記述されており、「ストリップの両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉される」という点は、本件発明と第1引用例の包装体に共通の構成であって、両者の実質的な相違点は、本件発明の包装体はストリップがベース層とその両側の3層からなり、ベース層が包装材料ウエブの内側を被覆する物質よりも軟化温度の高い積層材料から成るのに対し、第1引用例の包装体はそのような構成ではないという点である。
(2) ところで、第2引用例の金属ホイルテープがベース層として金属ホイル11、その両側に熱可塑性樹脂のコーティング15とスリップコーティング16を有する3層構成であることは、同引用例の第4図及び明細書第3欄6行ないし17行の説明から明らかであり(この点について審決が、第2引用例の金属ホイルテープはベース層である金属ホイルとスリップコーティング層の2層からなるものと認定しているのは誤りである。)、また金属ホイルが耐熱性を有することは明らかであるから、第2引用例には前記実質的な相違点に係る構成が開示されているということができる。そして、第2引用例の金属ホイルテープは、本件発明や第1引用例におけるものと同じく包装体の継目を密閉するためのストリップであり、特に第1引用例の包装体ではストリップの両面は包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉され得る材料でなければならないところ、3層構成のストリップはそのような両面の材料を用い得る構造であるから、金属ホイルをベース層とする3層構成は第1引用例のストリップとして適合するものである。
したがって、第1引用例の包装体において、第2引用例の金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップを採用することは、当業者において容易に想到し得ることというべきである。
(3) 審決は、第2引用例の金属ホイルテープが2層からなるものであり、本件発明のストリップとは基本的積層構成を異にすること、第2引用例の金属ホイルテープと第1引用例のストリップの貼着対象が異なること、第2引用例の金属ホイルテープが容器の内容物の毛細管漏出防止を目的とすること、スリップコーティングがホイルの微小な穴を塞ぐことやホイルの滑りを目的とすること、金属ホイルテープとスリップコーティングがライニング層等と密接不可分な関係にあることを理由として、第1引用例の包装材料ウエブの継目を被うストリップの積層構成として、第2引用例の金属ホイルテープの積層構成を採用することは意味のないことであり、このような事項は当業者にとって容易に推考し得たこととは認められない旨判断しているが、以下述べるとおり誤りである。
まず、第2引用例の金属ホイルテープは2層からなるものであるとの認定が誤りであることは前記のとおりであるし、第1引用例のストリップの代わりに第2引用例の金属ホイルをベース層とする積層材料を用いるときには、コーティング15、16を第1引用例の包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉され得る材料とすることは、当業者が第1引用例に開示された事項から当然なすはずである。
次に、第2引用例の金属ホイルテープは、食品用容器にも用いられる包装材料ウエブの継目を被い、包装体容器を密封することを目的とするストリップである点において、本件発明や第1引用例におけるストリップと同じであるから、第2引用例の金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップの技術思想を、他の包装体のストリップに採用するためにはストリップの貼着対象が全く同一である必要はなく、第1引用例の包装体においても適用可能である。
更に、第2引用例の金属ホイルテープはスリップコーティングを有する特殊性があるが、そのことは、第2引用例に開示された金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップの技術思想を第1引用例の包装体に適用する上で何ら妨げとなるものではない。第2引用例の金属ホイルテープが同引用例の発明に特有の目的や機能を有していても、それが包装材料ウエブの継目を被うストリップである以上、金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップの技術思想は第1引用例の包装体に適用し得るものである。
しかも、第1引用例の包装体と同種の包装体の内部を加熱殺菌処理することは周知であるから、包装体の内部にあるストリップが高温によって変形しないように保護することは極めて当然のことであり、その場合に、耐熱性のある金属ホイルをベース層とするストリップを用いることによって、ストリップが変形しないという作用効果が得られることも当業者にとって自明のことであるから、第1引用例のストリップに代えて、耐熱性のある第2引用例の金属ホイルをベース層とする3層構造のストリップを採用することは、当業者が容易に想到し得ることというべきであり、この組み合わせにより本件発明の作用効果が得られることも自明である。
第3 請求の原因に対する認否及び反論
1 請求の原因1ないし3は認める。同4は争う。審決の認定、判断は正当であって、原告主張の誤りはない。
2 反論
(1) 原告は、本件発明と第1引用例の発明は、「ストリップの両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉される」という点で一致しており、両者の実質的な相違点は、本件発明の包装体はストリップのベース層と両面の3層から成り、ベース層が包装材料ウエブの内側を被覆する物質よりも軟化温度の高い積層材料から成るのに対し、第1引用例の包装体はそのような構成になっていない、という点のみであるとして、一致点及び相違点についての審決の認定の誤りを主張する。
しかし、「ストリップの両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉される」という事項は、本件発明の特許請求の範囲に記載されていない事項であって、この点は一致点として認定する必要のないものであるから、審決の一致点の認定に誤りはない。また、本件発明の特許請求の範囲の記載と第1引用例の記載事項とを対比すると、本件発明の構成要件である「該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側被覆に対して密閉され得る材料で被われている」点については、第1引用例に記載されていないのであるから、審決の相違点の認定に誤りはない。
原告は、本件発明と第1引用例の発明との実質的な相違点は上記の点のみであるとし、これを前提として相違点の判断の誤りを主張しているが、その前提自体誤っていることは前記のとおりである。
(2) 第2引用例の金属ホイルテープ上に設けられたスリップコーティングは、ホイルの微小な穴を塞ぐことと、ホイルの滑りを目的とし、独立した層としてこれらの機能を有するものであるのに対し、接着コーティングの層は、接着のために設けられているにすぎないのであって、独立した層としての機能を何ら果たすものではない。
したがって、第2引用例の金属ホイルテープは、基本的には、ベース層である金属ホイルとスリップコーティング層の2層から成るものであるとした審決の認定に誤りはない。
次に、第1引用例のストリップはベース層の両側被覆が包装体に貼着される構成となっているのに対して、第2引用例の金属ホイルテープはその片面のみが接着剤で包装体に貼着される構成となっているから、「その貼着対象が基本的に異なる。」とした審決の認定に誤りはない。
本件発明のストリップは消毒液の蒸発のために高温の空気に曝されるため、このような条件に耐えるように、特許請求の範囲記載の構成となっているのである。これに対し第2引用例の金属ホイルテープは、ウィッキング(浸出し)の防止のみを目的とするものであって、消毒液により包装材料ウエブを消毒することを前提とする本件発明とは技術的に共通するところがない。また、本件発明のストリップは内側被覆に対し密閉され得る材料で被われているのに対し、第2引用例の金属ホイルテープは、一面にスリップコーティングが、他面に熱可塑性接着剤がコーティングされている。スリップコーティングは、容器製造に際し、チューブがマンドレル上を滑ることができるようにするためのものであって、本件発明のストリップにおけるような密閉され得る材料とは異なるものである。
審決は、このような技術的機能をもつ第2引用例の金属ホイルテープの積層構成と全く技術的に共通の要素を持たない第1引用例の包装体に、第2引用例の金属ホイルテープの積層構成を適用することは意味のないことであると判断しているのであり、この判断に誤りはない。
また、第1引用例及び第2引用例には本件発明の技術的課題を示唆する記載はなく、本件発明の特許出願当時において、消毒液により包装材料ウエブを消毒することにより紙層に含まれる水分の蒸発を伴う加熱処理は周知ではなかったから、仮に第1引用例の包装体を加熱処理することがあったとしても、その加熱処理には本件発明と同様の技術的課題が全く存在しないもとでの加熱処理である。
したがって、第2引用例の積層材料が第1引用例の包装体に適用し得るものであるとしても、本件発明の作用効果を想定することは到底あり得ないことである。しかも、第2引用例の積層材料が第1引用例のものに適用し得ないものであることは先に述べたとおりであるから、本件発明の作用効果が当業者にとって到底自明ということはできず、これに反する原告の主張は理由がないものというべきである。
第4 証拠関係
本件記録中の書証目録記載のとおりであって、書証の成立はいずれも当事者間に争いがない。
理由
1 請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本件発明の要旨)及び3(審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。
2 本件発明の概要
甲第2号証(本件発明の特許公報)によれば、本件発明の概要は次のとおりであると認められる。
本件発明は、ポリエチレン物質を被覆された紙またはボール紙のベース層からなる積層材料の包装材料ウエブから形成され、該包装材料ウエブの縁部分を互いに重ね合せ密閉して形成した継目を有するチューブの開口端を密閉した形状を有し、かつ前記継目の、包装体内部に面する側がストリップで被われている型式の包装体に関するものである。
包装材料ウエブの消毒は、例えば過酸化水素のような消毒液と接触させるようにして行われるが、これらの消毒液はしばしば有害であり、包装体内の物品に好ましくない味や臭いを与えることがあるので、包装体チューブの内部を消毒した後、消毒液を包装材料ウエブから蒸発させる必要がある。この蒸発は、包装体チューブの内部に非常に高温の空気を循環させることによって行われるが、従来のポリエチレン製のストリップを用いたものでは、加熱された空気の影響で塑性変形温度にまで加熱され、その結果、ストリップの下では、包装材料である紙層に含まれる水分が蒸発して蒸気圧が発生し、その蒸気圧によってストリップがその機能を失う程度まで変形されてしまうという欠点があった。
本件発明は、上記の欠点を排除することを課題として、前記要旨のとおりの構成を採用したものであって、包装体の継目の包装体内部に面する側が、包装材料ウエブの内側を被覆する物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成るストリップによって被われ、またベース層の両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉され得る材料で被われていることを特徴とするものである。
3 取消事由に対する判断
(1) 審決の理由の要点(2)(第1引用例の記載事項)、同(3)(本件発明と第1引用例の発明との対比)のうち、第1引用例には「プラスチック材料からなることしか記載がない」との点を除くその余の事項(但し、原告は審決摘示以外にも一致点がある旨主張する。)、同(4)(相違点についての判断)のうち、<1>(第2引用例の記載事項)、<2>のうち第2引用例の金属ホイルテープがベース層である金属ホイルとスリップコーティング層の2層からなるものであり、本件発明のストリップとは基本的に積層構成を異にするとの点、及び第2引用例の金属ホイルテープは第1引用例のストリップとは貼着対象が基本的に異なるとの点を除くその余の事項、同(5)(甲第4号証ないし第7号証、第9号証ないし第15号証及び参考資料の記載事項とその検討)については、当事者間に争いがない。
原告は、第1引用例のストリップの積層構成として、第2引用例の金属ホイルテープの積層構成を採用することは、当業者にとって容易に推考し得たこととは認められないとした審決の判断の誤りを主張するので、以下この点について検討する。
(2) まず原告は、本件発明と第1引用例の発明とは、「ストリップの両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉される」という点において共通しており、両者の実質的な相違点は、本件発明の包装体はストリップがベース層とその両側の3層からなり、ベース層が包装材料ウエブの内側を被覆する物質よりも軟化温度の高い積層材料から成るのに対し、第1引用例の包装体はそのような構成ではないことを理由として、「ストリップが、前者(本件発明)は包装材料ウエブの内側を被覆する前記物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、また該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記被覆に対して密閉され得る材料で被われているのに対し、後者(第1引用例)はプラスチック材料からなることしか記載がない点で相違する。」とした審決の認定の誤りを主張する。
上記(1)のとおり本件発明と第1引用例の発明は、「プラスチック物質を被覆された紙またはボール紙のベース層からなる積層材料の包装材料ウエブから形成され、該包装材料ウエブの縁部分を互に重ね合せ密閉した継目を有するチューブの開口端を密閉した形状を有し、かつ前記継目の、包装体内部に面する側がストリップで被われている形式の包装体。」である点で一致しているところ、本件発明と第1引用例の包装体においてチューブの開口端を密閉するためには、包装材料ウエブの継目を包装体内部に面する側から被っているストリップが、継目と反対側の内側被覆とも密着しなければならないことは明らかである。本件発明の特許請求の範囲の記載(本件発明の要旨と同じ)によれば、上記の点は当然の前提として規定されているものと認められるし、また、第1引用例(甲第3号証)の第5図にはプラスチック片8の両側が包装材料ウエブの内側被覆に対し密閉されることが示され、発明の詳細な説明には「プラスチック材料の片8は縦の継目の内側及び横の密封部分1で互に接触する縁部9の両方と重なるように配置される。」(第2頁左欄14行ないし16行)と記載されていることが認められる。
ところで、審決の理由の要点によれば、審決は、本件発明と第1引用例の発明は、チューブの開口端を密閉するために、包装材料ウエブの継目を包装体内部に面する側から被っているストリップが、継目と反対側の内側被覆とも密着しているという、ストリップの配置状況の点で共通していることは認めた上(したがって、原告のいう一致点の看過はない。)、本件発明の特許請求の範囲における「ストリップが前記包装材料ウエブの内側を被覆する前記物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、また該ベース層の両側が該包装材料ウエブの前記内側被覆に対して密閉され得る材料で被われている」との記載に従い、ストリップ自体の構成を取り上げて第1引用例の発明との相違点を把握していることは明らかであるから、その認定に誤りはないものというべきである。
したがって、原告の上記主張は採用できない。
(3) 審決は、第2引用例の金属ホイルテープの低温熱シール可能な熱可塑性接合材あるいは接着コーティングの層は金属ホイルテープをライニング層に接着するために設けられたものであること(このことは当事者間に争いがない。)から、第2引用例の金属ホイルテープは、基本的には、ベース層である金属ホイルとスリップコーティング層の2層からなるものであり、ベース層とその両側を被う層の3層からなる本件発明のストリップとは基本的積層構成を異にする旨認定している。
本件明細書(甲第2号証)によれば、本件発明において、ベース層の両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉され得る材料で被われている目的は、ポリアミドまたはアルミニウム箔のような、チューブの内側被覆より高い軟化温度を有するベース層材料から成るストリップを、包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉するためであることは明らかである。そして、本件明細書には上記目的に適する物質としてポリエチレンが挙げられているが、その材料選択の趣旨からして、上記目的を達成できるものであれば特に材料を限定するものではないと認められ、第2引用例の熱可塑性接合材あるいは接着コーティングもその目的を十分達成できることは明らかである。
そうすると、熱可塑性接合材あるいは接着コーティングの層を無視して、第2引用例の金属ホイルテープは2層からなるものとした審決の認定は誤っているものというべきである(もっとも、この誤りが直ちに審決の結論に影響を及ぼすものでないことは明らかである。)。
なお、上記のとおり本件発明のストリップも第2引用例の金属ホイルテープも共に3層構成のものといえるが、第2引用例の金属ホイルテープにおけるスリップコーティングは、金属ホイルの微小な穴を塞ぐことと、スパイラル曲げ機の工具上でのホイルの滑りを確保する目的で設けられているものであって(この点は当事者間に争いがない。)、本件発明におけるベース層の両側の層のようにストリップを包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉するためのものではないから、その技術的意義は異なっており、その意味で、審決が指摘するとおり、第2引用例の金属ホイルテープは、本件発明のストリップとはその基本的積層構成を異にするということはできる。
(4) ところで原告は、第2引用例の金属ホイルテープが3層構成であること、金属ホイルは耐熱性を有すること、第2引用例の金属ホイルテープは、本件発明や第1引用例におけるものと同じく包装体の継目を密閉するためのストリップであることなどを理由として、第1引用例の包装体において、第2引用例の金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップを採用することは、当業者において容易に想到し得ることである旨主張するので、この点について検討する。
前記2項において認定したとおり、本件発明は、包装材料ウエブの消毒に用いた消毒液を蒸発させるために加熱した場合に、チューブ内に流される高温の空気により塑性変形温度まで加熱され、包装材料である紙層に含まれる水分の蒸発による蒸気圧によって、ストリップが変形しないことを技術課題として、前記要旨のとおり、ストリップが包装材料ウエブの内側を被覆する物質よりも軟化温度の高いベース層の積層材料から成り、ベース層の両側が包装材料ウエブの内側被覆に対して密閉され得る材料で被われているものとしたものである。
これに対し、第1引用例の「プラスチック材料の片8は縦の継目の内側及び横の密封部分1で互に接触する縁部9の両方と重なるように配置される。」との記載と第5図によれば、第1引用例のストリップ(プラスチック片8)は、包装材料ウエブの継目を被うために用いられるものにすぎないことは明らかである。また、第2引用例の金属ホイルテープは、ライニング層のシームの容器内部に面する側を被うものであり、「・・・シームが不透性の金属ホイルの連続性を破り、容器の内容物が液体或いは油性のときは有害な毛細管漏出或いは浸出しの場所となる。」ことを防止することを目的とするものであることは、当事者間に争いがない。
第1引用例のプラスチック片8及び第2引用例の金属ホイルテープが用いられている目的は上記のとおりであって、上記各引用例には、消毒液蒸発のための加熱に起因するストリップの変形防止についての記載はもとより示唆もなく、消毒液蒸発のために加熱することすら一切説明されていないのであり、また、上記(3)に述べたとおり、第2引用例の金属ホイルテープは、3層構成とはいっても本件発明の3層構成とはその技術的意義が異なるのであるから、消毒液の蒸発のための加熱に起因してストリップが変形するのを防止することを技術課題として、第1引用例のプラスチック片8に代えて、第2引用例の金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップを採用することは当業者において容易に想到し得るものとは到底認められない。
したがって、原告の上記主張は採用できない。
また原告は、第2引用例の金属ホイルテープは包装材料ウエブの継目を被うストリップである以上、他の包装体のストリップに採用するためには貼着対象が全く同一である必要はなく、また、上記金属ホイルテープが第2引用例の発明に特有の目的や機能を有していても、金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップの技術思想は、第1引用例の包装体においても適用し得るものである旨主張する。
しかし、金属ホイルをベース層とする3層構成のストリップの技術思想を第1引用例の包装体に適用し得るか否かが問題となる以前に、第2引用例の金属ホイルテープが、この種の包装体ストリップが共通して有する、包装材料ウエブの継目を被うという機能を有しているからといって、第1引用例及び第2引用例には本件発明の上記技術課題についての記載、示唆がない以上、そもそも消毒液の蒸発のための加熱に起因してストリップが変形するのを防止すべく、第1引用例のプラスチック片8に代えて、第2引用例の金属ホイルをベース層とする3層のストリップを採用することを想到すること自体考えられないのであって、原告の上記主張は失当である。
更に原告は、第1引用例の包装体と同種の包装体の内部を加熱殺菌処理することは周知であるから、包装体の内部にあるストリップが高温によって変形しないように保護することは極めて当然のことであり、その場合に、耐熱性のある金属ホイルをベース層とするストリップを用いることによって、ストリップが変形しないという作用効果が得られることも当業者にとって自明のことであるから、第1引用例のストリップに代えて、耐熱性のある第2引用例の金属ホイルをベース層とする3層構造のストリップを採用することは、当業者が容易に想到し得ることというべきであり、この組み合わせにより本件発明の作用効果が得られることも自明である旨主張する。
甲第16号証ないし第19号証によれば、本件発明の特許出願当時すでに、第1引用例の包装体と同種の包装体において、その内部を加熱殺菌処理することは周知であったと認められるが、第1引用例及び第2引用例の各発明には、本件発明の技術課題、すなわち、消毒液の蒸発のための加熱に起因してストリップが変形するのを防止するという技術課題がなく、したがって、ストリップの構成にもその技術思想が具現されているわけではないから、包装体内部の加熱殺菌処理が周知であるからといって、上記の技術課題の解決のために、第1引用例のストリップに代えて、第2引用例の金属ホイルテープを採用することを想到せしめるものでないことは明らかであって、原告の上記主張は採用できない。
(5) 以上のとおりであって、第1引用例のストリップの積層構成として、第2引用例の金属ホイルテープの積層構成を採用することは、当業者にとって容易に推考し得たこととは認められないとした審決の判断の誤りをいう原告の主張は採用できず、取消事由は理由がないものというべきである。
4 よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 伊藤博 裁判官 濵崎浩一 裁判官 押切瞳)
別紙図面1
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別紙図面2
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