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東京高等裁判所 平成4年(行コ)15号 判決 1992年12月17日

控訴人(被告) 日本橋税務署長

被控訴人(原告) 関東天然瓦斯開発株式会社

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項同旨

第二事案の概要

原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」欄の記載のとおりであるから、これを引用する。

第三争点に対する判断

次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由の「第三 争点に対する判断」欄の記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決三三枚目裏一一行目冒頭から同三四枚目表三行目の「設定されており」までを次のとおり改める。

「しかしながら、右にみたとおり、探鉱準備金と新鉱床探鉱費の特別控除とは、前者がなければ後者もありえないという関係にあり、両者が互いに密接な関連性を有する制度であることは否定することができないとしても、措置法上、探鉱準備金の積立限度額と新鉱床探鉱費の特別控除の限度額とは、第二の一の2、3のとおり、それぞれ異なる要件で規定されており(ちなみに、探鉱準備金の積立限度額の計算において、採掘所得の金額の計算上控除されるべき「当該収入金額に係る損失の金額」に探鉱費補助金の額に相当する金額が含まれないことは、右限度額の計算を定めた措置法五八条の二及び措置法施行令三四条の二の文言自体の解釈から明らかであることは、右にみたとおりであるのに対し、新鉱床探鉱費の特別控除の限度額の計算において、「当該事業年度において支出する新鉱床探鉱費の額に相当する金額」に探鉱費補助金に相当する金額が含まれないかどうかは、規定の文言自体の解釈からは明らかではない。)」

二  同三四枚目表五行目の「基準の一であるに過ぎない」の次に次のとおり加える。

「(探鉱費準備金の積立限度額の算出に際して、多くの場合、採掘収入基準額でなく採掘所得金額基準額が用いられているとしても、採掘所得金額によって探鉱準備金の繰入限度額が決定されるのは事実上のものに過ぎないのであるから、右基準額が探鉱準備金の積立限度額算出の基準の一であるに過ぎないことには変わりがない。)」

三  同三五枚目裏七行目から八行目の「不当とはいえない」を「不当とはいえず、これにより租税負担の公平がある程度犠牲とされる結果になるとしても、右の税制上の優遇措置を受ける理由に照らし、やむを得ないところと考えられる」に改める。

四  同三六枚目裏三行目の「認められるから」の次に次のとおり加える。

「(もっとも、被控訴人が資源開発法一九条に規定する納付金を納付したと認める証拠はなく、証拠(乙第六号証)によれば、一般の実績においても、納付された納付金額は補助金額に比べて僅かな割合であると認められるが、そのことは、一般論として、納付金の納付が探鉱費補助金の返還としての意義を有することを何ら妨げるものではない。)」

五  同三七枚目表五行目の次に改行して次のとおり加える。

「なお、鉱業権者等は探鉱費補助金の交付を受けることにより利益を得ているうえ、更に免税効果を受けることとなるが、探鉱費補助金の交付を受けていることを税制上どのように扱うかは立法政策の問題であり、その相当額を損金となるべき「当該事業年度において支出する新鉱床探鉱費の額に相当する金額」から控除すべきものとするのであれば、その旨を明文ないし規定の文言自体から明らかになるように規定することは容易であったと考えられ、前記の新鉱床探鉱費の支出が税制上の優遇措置を受ける根拠に照らし、探鉱費補助金の交付を受けながら更に税制上の優遇措置を受ける結果になるとしても、それは法の予定するところとしてやむを得ないものというべきである。」

六  同三八枚目表二行目の「仮に」から同行末尾までを「証拠(乙第二号証)によれば、日本鉱業協会が編集した「減耗控除ハンドブック」には、新鉱床探査費補助金は新鉱床探鉱費の戻入れとする旨の記載があるが、」に改め、同四行目の「定着しているとはいえないし、」の次に「他にそれが長年にわたり受入れられてきたと認めるに足りる証拠はない。」を加える。

第四結論

よって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 越山安久 大前和俊 武田正彦)

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