東京高等裁判所 平成5年(行コ)216号 判決 1994年4月27日
東京都港区新橋二丁目九番五号
中銀新橋ビル四階四一号三A
控訴人
ブァーセック社こと浅野雅実
東京都港区芝五丁目八番一号
神奈川税務署長承継人芝税務署長
被控訴人
川嶋象介
右指定代理人
野崎守
同
古川敞
右指定代理人
飯嶋一司
同
長岡忠昭
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 神奈川税務署長が平成四年二月六日付けでした控訴人に対する平成元年度分の所得税の更正処分(以下「本件処分」という。)を取り消す(損害賠償請求を取り下げた。)。
3 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
本件控訴を棄却する。
第二事案の概要
一 控訴人は、神奈川税務署長がした本件処分の取消しを求めて本件訴えを提起し、原審は、本件訴えは審査請求手続を経ていないので不適法であるとして、これを却下した。
二 争点に関する当事者の主張
1 控訴人
控訴人は、本件処分につき審査請求を経ている。
2 被控訴人
(一) 被控訴人は、控訴人の平成元年分の所得について、平成三年六月二八日付けで所得税の更正処分(以下「第一次更正処分」という。)をし、平成四年二月六日付けで第一次更正処分を取り消し、同日付けで再度所得税の更正処分(これが本件処分である。以下「第二次更正処分」ともいう。)をした。
(二) 本件訴えは、第二次更正処分の取消しを求めるものであるところ、右処分については、審査請求手続を経ていない。控訴人が審査請求をしたのは、第一次更正処分についてである。
(三) 仮に、本件訴えが第一次更正処分の取消しを求める趣旨であるとすれば、右処分に対する審査請求についての却下裁決の謄本は、平成四年一一月二〇日に控訴人に送達されているところ、控訴人が本件訴えを提起したのは、平成五年三月三一日であるから、本件訴えは、出訴期間を徒過したもので不適法であり、却下を免れない。
第三争点についての判断
証拠(甲二の1、四、乙一、三の1、2、四、五)及び弁論の全趣旨によれば、<1> 控訴人は、平成二年三月一五日、札幌西税務署に平成元年分の所得税の確定申告をした、<2> 神奈川税務署長は、平成三年六月二八日付けで、控訴人に対する第一次更正処分をした、<3> 控訴人は、同年八月五日、右処分に対する審査請求をしたが、右処分が後記第二次更正処分により取り消されたため、平成四年一一月一 二日付けで、処分の存在を欠くこととなったとして、審査請求を却下する旨の裁決をし、右裁決書の謄本は、同月二〇日、控訴人に送達された、<4>神奈川税務署長は、同年二月六日付けで、第二次更正処分(本件処分)をしたが、控訴人は、右処分については審査請求をしていない、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
右の事実によれば、本件訴えは、本件処分について国税通則法一一五条に定める不服申立て前置の手続を経ないで提起されたものであるから、不適法であり却下を免れない。
よって、本件訴えを却下した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 清水湛 裁判官 瀬戸正義 裁判官 小林正)