大判例

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東京高等裁判所 平成5年(行ス)3号 決定

1 抗告人は、抗告人が本条例に基づき公法上の閲覧交付請求権があるとして本件文書の送付嘱託を申し立てたところ、相手方がこれを拒絶したため本件申立てに及んだのであって、このような場合は、相手方に対して行政訴訟を提起し右非開示処分の違法不当を争うよりは、本訴において右条例上の閲覧交付請求権の有無を判断するのが相当であると主張する。

しかしながら、本条例を解釈し、執行する第一次的権限は相手方にあるところ、相手方が本件文書につき本条例を適用した結果、非開示の決定をしたというのであり、しかも、本条例を一読すると、開示が求められる文書の種類、内容によってはその規定の適用範囲は必ずしも一義的ではなく、解釈により、又は行政裁量により結論が分かれる場合がありうることが認められる。このような場合においては、相手方が職権により取り消すか、又は抗告人において法定の行政争訟手続によりこれを取消す旨の裁決、判決等を得たのでない限りは、右決定の効力を否定することはできないというべきである(右決定が不存在又は無効であると認められる事情は、本件記録上窺われない。)。

2 抗告人は、本件のように、住民である抗告人が原告として文書の所持者である地方公共団体に代位して訴訟を追行する場合には、被代位者である地方公共団体は文書の閲覧等をさせる条理上の義務を負うと解すべきであり、また、当該訴訟が被代位者の利益のためのものである以上、代位者と被代位者との間に利害の対立はないと主張する。

しかしながら、地方自治法二四二条の二の定める住民訴訟は、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対し、普通地方公共団体の執行機関又はその職員による財務会計上の違法行為又は怠る事実の是正を裁判所に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである。したがって、特定の財務会計上の行為又は怠る事実の適否ないしその是正の要否について、地方公共団体の執行者ひいては当該地方公共団体の判断と住民の判断とが対立することは、前提として当然想定されているのであり、これを裁判所の確定判決により解決することが、住民訴訟制度の趣旨目的であると考えられる。本件においても、原告住民である抗告人と相手方宇都宮市との間にこのような意見、判断の相違ないし利害の対立がないとはいえない。確かに、住民訴訟は、原告住民が被代位者の利益のため、これに代位して追行するものであるが、ここでいう利益とは、当事者の主観を超えた高次の客観的次元での利益であり、かつ、訴訟の追行によりその結果として究極的に実現される利益であるというべきである。

抗告人は、条理をもって本件文書の提出義務の根拠とみることができると主張するが、民事訴訟法三一二条二号の適用によっては同義務が認められない場合において、条理によりこれを基礎づけることは無理があり、そのように解しなければならない必然的理由を見いだすことはできない。

以上のように考えると、住民訴訟の場合においても、被代位者である地方公共団体の保有する文書についての代位者である原告住民からの提出命令申立てにつき、通常の訴訟と別異に解することはできないこととなる。

3 以上のとおりであって、本件文書の閲覧交付を求めるには行政訴訟その他公法上の手続によるべきであり、文書提出命令によることは許されないものと解されるので、抗告人の主張はいずれも採用することができない。

(伊東 宗方 水谷)

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