大判例

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東京高等裁判所 平成6年(ネ)1269号・平6年(ネ)1275号・平6年(ネ)1442号・平6年(ネ)1294号 判決

(一) 商法二〇三条二項、三項は、主として株式の共同引受や共同相続を念頭においた規定であると考えることができるが、契約による株式の持分の移転が禁じられているわけではないから、株式が数人の共有に属する事情は様々であり、それらすべての場合について適切な処理ができるように解釈しなければならない。つまり、株式が共有されている場合に、会社として誰を共有持分権者として処遇すればよいのかを適切に処理し得るように配慮すると同時に、共有持分権を主張する者相互の権利関係を明確にするための配慮も欠かすことができない。こうした観点からすると、まず共有者の変更の事情を会社と共有者との双方において正しく把握することができることが基本的な要請であると考えなければならない。そして、株式を譲渡するためには株券を交付することが必要であり(商法二〇五条)、また、株式の移転は取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載するのでなければ会社に対抗することができないのであるから(同二〇六条)、株式の共有持分の移転の場合に限ってこれより緩やかな要件でもって株式の持分の移転の効力を認め、これを会社に対抗することができると解すべき合理的根拠を見出すことはできない。

(二) ところで、株式が数人の共有に属する場合に、商法は、共有者は権利を行使すべき者を会社に届け出るべきものと定めており、この規定に従って権利を行使すべき者が定められて会社に届け出られているときは、会社はこの者を権利者と扱えば足りる趣旨であることは明らかであるから、その後に共有者に変更が生じたときにも、新たに権利を行使すべき者の届出がなされているのでない限り、会社としては従前の届出により権利を行使すべき者とされている者をそのまま権利を行使すべき者として処遇すれば足り、またそうする他はないというべきである。

したがって、その場合には、共有者に変更があったとして、新たに共有者になったという者から持分に関する名義書換の請求があった場合には、会社が随時これに応ずべきこととしても、会社としては、別段の支障はないようにも思われる。しかし、こうした場合に株券の所持に関係なく持分に関する名義書換を認めるべきものとすると、権利を行使すべき者として届け出られている者のあずかり知らないところで共有関係の移転が生ずることを是認する結果となり、共有者のうちで権利を行使すべき者として届け出られた者と会社との間で、共有者の範囲について食い違いが生じ、ひいては権利を行使すべき者の変更の届出に際して混乱が生ずることが考えられ、極めて不合理な結果となる。こうした不合理を回避するには、共有者の変更も、権利行使すべき者として届け出てある者(通常はその者が株券を保管していると考えられる。)を通じてしなければならないとするのが、会社にとっても共有者にとっても、もっとも合理的な方法であり、商法が予定するところでもあるというべきである。

(三) 権利を行使すべき者が届け出られていない場合には問題はいっそう複雑であるが、持分の移転があったときに、株券の提示もないのに新たに共有者となった者の請求に応じて随時名義書換えをすべきこととすると、他の共有者の知らない間に共有者の範囲が変り、また会社は共有者の内の任意の一人を相手として通知などをすれば足りる定めであるから、他の共有者の権利が害される危険があり、不合理はいっそう大きい。ことに、本件の場合にもみられるように、共有となっている株式が他の者に(本件では会社)に預けられていて、株券の現実の所持によってその交付を受けたことを証明する手段がなく、指図による占有移転という方法で持分の移転を証明するほかないような場合には、会社として真実持分の移転があったかどうかを判断することが困難になり、株券の交付を株式の権利移転の効力要件とし、かつ株主名簿の記載をもって会社に対する対抗要件としている商法の趣旨にもそぐわない結果をもたらすおそれがある。先に判示したように、商法二〇三条二項、三項は、主として株式を共同で引き受けた場合やそれまで単独名義であった株式について共同相続が発生し、未だ遺産分割が終わっていない場合を想定していると考えられるが、本件のような場合に、会社が、共有者が権利を行使すべき者を定め、これとともに名義書換手続をすべきことを求めることができるとする趣旨を含むものと解するのが相当である。共有者が権利を行使すべき者を定めず、名義書換えをしないでいる間に一部持分の処分をすれば以後は共有者の変更に応じ会社が随時名義書換えに応ずべきこととなるというのは、あまりに不合理な点が多すぎて、当裁判所の採るところでない。

(上谷 田村 曽我)

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