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東京高等裁判所 平成6年(ネ)3091号 判決 1994年12月14日

控訴人

篠塚賢二

被控訴人

株式会社リコー

右代表者代表取締役

浜田広

右訴訟代理人弁護士

野上邦五郎

杉本進介

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、金一八三万四〇〇〇円及びこれに対する昭和五六年六月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

二  被控訴人

主文と同旨

第二  当事者の主張

当事者の主張は、以下に訂正、付加するほか、原判決の事実及び理由欄「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。

一  争いのない事実(原判決別紙目録の訂正)

原判決別紙目録(一)の一枚目表五行の「図である。」を「図である(下部表示参照)。なお、上部表示のものは、下部表示の正面図における長さ切断用カッターの側面を示す。」と、同一枚目裏一一行の「幅裁断用カッターの回転式ツマミ」を「幅裁断用カッターの回動式ツマミ」と、同五枚目表二行の「幅截断カッター」を「幅截断用カッター」と、同目録(三)の一枚目表一一行の「回動式ツマミ」を「幅截断用カッターの回動式ツマミ」と、同三枚目表九行の「回動し」を「回転し」と、同四枚目裏八行の「幅截断カッター」を「幅截断用カッター」とそれぞれ訂正する。

二  主たる争点についての主張

1  控訴人

本件考案の構成要件は、「巻回テープ類を保持する本体1に固定刃2を有する引出口3を形成し、該引出口3には固定刃2と共に、引出したテープT類を剪断する可動刃4を回動自在に設けたカッター装置付テープホルダー」であること及び「操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着し、軸8と引出口3の間に一対の案内ロール5、6を装架した構造」を有することであるが、右「巻回テープ類」とは、接着テープ及びこれに類するものを意味するから、被控訴人製品(一)ないし(三)のロール紙もこれに相当するものである。

また、本件考案は、本体1の巻回テープ類が支持されている定位置から引き出されて順次切断される巻回テープ類の案内ロール5、6が介在関連する「(点で交わる)縦方向と横方向に直角切断」することが可能な各別作動の切断関連位置(右「直角切断」が不可能な左右に横並びの各切断位置でなく、右「直角切断」が可能な前後に縦並びの各切断位置)を保つ構成に係る長さ切断用カッター部分の構成及び幅截断用カッター部分の構成を、本体1に施した構成をもって一体となったカッター装置付きテープホルダーの構造を要旨とするものであるところ、被控訴人製品(一)ないし(三)におけるロール紙の長さ切断用カッター部分の構成及び幅截断用カッター部分の構成は、いずれもこれを充足している。

原判決は、被控訴人製品(一)ないし(三)のロール紙(ロール感光紙)支持機構は、いずれも本件考案の「操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着」する構成を欠いているとするが、緩挿軸については、回転刃の装着されている位置を考慮して解すべきものであって、右ロール紙の長さ切断用カッター部分の構成における回転刃(本件考案の可動刃4に相当)の装着されている緩挿軸及び幅截断用カッター部分の構成における上・下回転刃(本件考案の幅截断用切刃7に相当)の装着されている緩挿軸は、いずれも、本件考案の構成要件である「緩挿軸8」に相当するというべきであるから、右要件を充足するものである。

したがって、被控訴人製品(一)ないし(三)は、いずれも、本件考案の構成要件を充足し、かつ、本件考案と同一の作用効果を奏するものであるから、本件考案の技術的範囲に属する。

2  被控訴人

本件考案の構成要件が前記のとおりであることは認め、その余の主張は争う。

第三  証拠関係

原審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、以下に訂正するほか、原判決の事実及び理由欄「第三 争点に対する判断」の理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決三丁表四行冒頭から八行「認められるところ」までを以下のとおり訂正する。

「証拠(甲一〇)によれば、本件考案は、名称を「カッター装置付きテープホルダー」とする考案であるが、本件明細書(実用新案公報)の考案の詳細な説明の冒頭に、本件考案の対象につき、『本考案は接着テープ類を切断するカッター装置を施したホルダーに関するものである。』と明示しているように、接着テープ類を切断するカッター装置を施したホルダーに関する考案であり、これを前提に、本件明細書においては、その実用新案登録請求の範囲の記載を含め、『巻回テープ類』及び『テープホルダー』の語を用いていることは明らかであるところ」

2  原判決三丁裏四行「のみならず」から同六行「あるところ」までを以下のとおり訂正する。

「控訴人は、本件考案の『操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着』する構成に関して、緩挿軸については、回転刃の装着されている位置を考慮して解すべきものであって、右ロール紙の長さ切断用カッター部分の構成における回転刃(本件考案の可動刃4に相当)の装着されている緩挿軸及び幅截断用カッター部分の構成における上・下回転刃(本件考案の幅截断用切刃7に相当)の装着されている緩挿軸は、いずれも本件考案の構成要件である『緩挿軸8』に相当するというべきであると主張する。しかし、本件考案は、右のとおり、『可動刃4の緩挿軸8』に「幅截断用切刃7』を『固着』することを要件とするものであるところ」

二  以上によれば、控訴人の請求を理由がないものとして棄却した原判決の判断は正当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 裁判官 芝田俊文)

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