東京高等裁判所 平成6年(行ケ)37号 判決 1995年7月06日
東京都八王子市片倉町722番地の1
原告
明邦株式会社
同代表者代表取締役
村井徳三
同訴訟代理人弁理士
中村純之助
同
小林茂
同 弁護士
小松哲
新潟県中蒲原郡村松町大字石曽根1182番地
被告
株式会社安中製作所
同代表者代表取締役
安中四郎
同訴訟代理人弁理士
牛木護
主文
原告の請求を棄却する
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
「特許庁が平成4年審判第6257号事件について平成5年12月9日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決
2 被告
主文と同旨の判決
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
原告は、名称を「U字形クリップ組立体」とする特許第1272597号(昭和52年12月28日出願、昭和58年1月11日出願公告、昭和60年7月11日設定登録。以下「本件特許」といい、本件特許に係る発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
被告は、原告を被請求人として、平成4年4月6日に本件特許を無効にすることについて審判を請求した。
特許庁は、上記請求を平成4年審判第6257号事件として審理した結果、平成5年12月9日、本件特許を無効とする旨の審決をなし、その謄本は平成6年1月26日原告に送達された。
2 本件発明の要旨
U字形に彎曲した板体からなる複数個のU字形クリップと、このU字形クリップを保持する保持部材とを備え、上記U字形クリップを上下の形状が同一となるように隣接させて一列に配設し、これらのU字形クリップの彎曲部を形成する中高部に上記保持部材を接着し、上記複数個のU字形クリップを一体に形成したU字形クリップ組立体において、上記U字形クリップを、その彎曲部が上方に位置するように配置し、その開放側面に平行に切断した際に形成される平面に含まれる上記彎曲部の曲線の曲率中心と、上記彎曲部の最も高い位置にある点とを結ぶ第1の直線、および上記平面に含まれるとともに上記曲率中心を通る2本の直線であって、それぞれが上記第1の直線となす角度がほぼ等しく、しかもそれらの角度が12.5°から50°の範囲内にあるようにした第2、第3の直線を仮想したとき、これらの第2、第3の直線によって囲まれる上記彎曲部の弧状部分を上記平面と直交する方向に移動させることによって形成される彎曲部の外方表面にのみ、上記保持部材を接着するようにしたことを特徴とするU字形クリップ組立体。(別紙図面1参照)
3 審決の理由の要点
(1) 本件発明の要旨は前項記載のとおりである。
(2) 甲各号証の記載
<1> 米国特許第3647593号明細書(審決における甲第1号証、本訴における甲第4号証、以下「甲第4号証」という。)には、U字形に彎曲した薄板金属板(sheet metal)からなる複数個のU字形クリップ(U-shaped clip)Cの彎曲部(curved crown portion)14の外表面のみをリボン(ribbon)20により接着したことにより、複数個のU字形クリップを一体に形成したリボン付ファスナークリップ(ribbon-connected fastner clips)が記載されているものと認められる。(別紙図面2参照)
<2> 実公昭46-29469号公報(審決における甲第2号証、本訴における甲第5号証、以下「甲第5号証」という。)には、ベッドや自動車シート等に用いる連結金具を連続させて結束しておく結束装置において、C字形の連結金具1は断面が円形状をなしているために、その外周面の一部は円弧状をなしており、これらの複数個の連結金具1を一列に配列し、これら連結金具1の彎曲部を形成する中高部に保持部材としての可撓性を有するテープ2が接着され、このテープ2によって一列に配設された連結金具1を一定の形態に保持していることが記載され、さらに連結金具1の彎曲部とテープ2との接着範囲は第4図の記載からみて、彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれることが明らかである。(別紙図面3参照)
(3) 本件発明と甲第4号証記載の発明との対比
甲第4号証における「薄板金属板(sheet metal)」、「U字形クリップ(U-shaped clip) C」、「彎曲部(curved crown portion) 14」、「リボン(ribbon) 20」、「リボン付ファスナークリップ(ribbon-connected fastner clips)」は、それぞれ本件発明の「板体」、「U字形クリップ」、「彎曲部」、「保持部材」、「U字形クリップ組立体」に相当するものと認められる。
そこで、本件発明と甲第4号証記載の発明とを比較検討すると、両者は、U字形に彎曲した板体からなる複数個のU字形クリップと、このU字形クリップを保持する保持部材とを備え、上記U字形クリップを上下の形状が同一となるように隣接させて一列に配設し、これらのU字形クリップの彎曲部を形成する中高部に上記保持部材を接着し、上記複数個のU字形クリップを一体に形成したU字形クリップ組立体である点において一致しているが、他方、本件発明ではU字形クリップと保持部材との接着を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものとしたのに対し、甲第4号証に記載されたものにおいては、U字形クリップと保持部材との接着角度が25°から100°の範囲にない点において両者は構成上の相違が認められる。
(4) 相違点の検討
甲第5号証には、ベッドや自動車用シート等に用いる連結金具を連続させて結束しておく結束装置において、複数個の連結金具1を一列に配列し、これら連結金具1の彎曲部を形成する中高部に保持部材としての可撓性を有するテープ2が接着されたものが記載され、さらに連結金具1の彎曲部とテープ2との接着範囲は、第4図から明らかなように彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものが記載されている。しかも、本件発明において複数のU字形クリップを保持部材により接着すること、また、甲第5号証に記載された発明において複数の連結金具1をテープ2により接着することは、いずれも作業能率の向上を図るという同一の目的を持つものであるから、甲第4号証記載のU字形クリップと保持部材との接着範囲の前記角度を、甲第5号証に記載された連結金具1の彎曲部とテープ2との接着範囲である彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものに限定することに格別な創意を要したとは認められず、また、前記の数値を限定したことによって本件発明が格別な効果を奏するものとも認められない。
以上のとおりであるから、前記相違点は、甲第5号証に記載された技術事項から当業者が容易に想到し得た程度のものというべきである。
(5) したがって、本件発明は、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項1号により無効とすべきものである。
4 審決を取り消すべき事由
(1) 審決の理由の要点(1)、(2)<1>、<2>、(3)は認める。同(4)のうち、甲第5号証に審決摘示の記載があることは認めるが、その余は争う。同(5)は争う。
審決は相違点の判断を誤り、その結果、本件発明は容易に発明をすることができたものと誤って判断したものであるから、違法として取り消されるべきである。
(2) U字形クリップは板状体をU字形に彎曲させたものであるのに対し、連結金具は線状体をC字形に曲げたものであるから、U字形クリップと連結金具とは全く別異のものである。したがって、U字形クリップの彎曲部と連結金具の彎曲部とは全く別異のものである。また、U字形クリップと連結金具とでは連結部材による連結の方式が全く異なる。つまり、U字形クリップにおいては、U字形クリップの両脚部が保持部材の長さ方向に並んでいるのに対して、連結金具においては、連結金具の両脚部が保持部材(テープ2)の長さ方向と直角な方向に並んでいる。このため、U字形クリップにおいては、本件発明の特許公報(甲第3号証)の図面第11図に示されるように、保持部材11の長さ方向と直角で、かつ保持部材11の幅方向と平行な方向からみたとき、U字形クリップの中高部の彎曲が現れるのに対して、連結金具においては、甲第5号証の図面第5図に示されるように、保持部材(テープ2)の長さ方向と直角で、かつ保持部材(テープ2)の幅方向と平行な方向からみたとき、連結金具の中高部の彎曲が現れない。さらに、U字形クリップにおいては、保持部材の長さ方向と直角な平面で切断したときの保持部材の断面形状が直線状となるのに対して、連結金具においては、保持部材の長さ方向と直角な平面で切断したときの保持部材の断面形状が曲線状となる。
このように、U字形クリップと連結金具、U字形クリップの彎曲部と連結金具の彎曲部とは、それぞれ全く別異のものであるばかりでなく、U字形クリップと連結金具とは保持部材による連結の方式も大きく相違するのであるから、甲第4号証の発明に甲第5号証の発明を適用することが当業者において容易に想到し得るものとは考えられない。
また、本件発明は、具体的には、U字形クリップの離脱と横倒れを防止することを目的とし、これによって作業能率の向上を図るというものであり、そのために、U字形クリップの彎曲部と保持部材との接着範囲を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲とすることを構成要件としている。
これに対し、甲第5号証には、連結金具1の外周面とテープ2との接着範囲を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものとすることの目的が全く記載されておらず、同号証の発明においては、上記角度にすることについて何らの目的も意図していなかったものであることは明らかである。
したがって、U字形クリップの離脱及び横倒れを防止することを目的として、甲第5号証に記載された連結金具の外周面とテープとの接着範囲を25°から100°の範囲に含まれる角度にするという技術的事項を甲第4号証の発明に適用することが容易であるということはできない。
以上のとおりであるから、本件発明と甲第4号証の発明との相違点は、甲第5号証に記載された技術事項から当業者が容易に想到し得た程度のものということはできず、相違点についての審決の判断は誤りである。
第3 請求の原因に対する認否及び反論
1 請求の原因1ないし3は認める。同4は争う。審決の判断は正当であって、原告主張の誤りはない。
2 反論
甲第5号証には、「本考案はベッドや自動車用シート等において、綿等の緩衝物やシート等とフレーム等とを結合するために用いる連結金具を連続させて結束しておく結束装置」(第1欄21行ないし24行)と記載されているように、甲第5号証記載のものは、ベッド等に使用される連結手段に用いるものである。これに対し、本件特許の公告公報には、「ベッド、安楽椅子、自動車シート等に備えられるスプリングワイヤを固定する場合のように」(甲第3号証第2欄5行、6行)と記載されているように、本件発明に係るU字形クリップ組立体もベッド等に使用される連結手段に用いるものである。そして、U字形クリップも連結金具も複数一列に配列され、それぞれの彎曲部を形成する中高部には、保持部材としての可撓性を有するテープが接着される。
上記のように、U字形クリップと連結金具、U字形クリップの彎曲部と連結金具の彎曲部とは、それぞれ全く別異のものでなく、また、U字形クリップと連結金具とは保持部材による連結の方式も相違するものではない。しかも、本件発明において複数のU字形クリップを保持部材に接着すること、甲第5号証に記載された複数の連結金具1をテープ2により接着することは、いずれも作業能率の向上を図るという同一の目的を有するものである。
そして、甲第4号証に記載のU字形クリップと保持部材との接着範囲の角度を、甲第5号証に記載された連結金具の彎曲部とテープとの接着範囲である、彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものとすることに格別の創意を要するものではない。
したがって、相違点についての審決の判断に誤りはない。
第4 証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであって、書証の成立はいずれも当事者間に争いがない。
理由
1 請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本件発明の要旨)及び3(審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。
そして、審決の理由の要点2(1)、(2)(甲第4号証及び第5号証の記載事項)、3(一致点及び相違点の認定)、4のうち甲第5号証に審決摘示の事項が記載されていることについても、当事者間に争いがない。
2 そこで、原告主張の取消事由の当否について検討する。
(1)<1> まず、相違点に係る本件発明の構成、すなわち、U字形クリップと保持部材との接着を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものとした構成の技術的意義について検討する。
甲第3号証(本件発明の特許公報)によれば、本件明細書の発明の詳細な説明の項には、「第7図および第9図はそれぞれ従来のU字形クリップ組立体の一例を示す側面図である。第7図に示す組立体は、U字形クリップの彎曲部4と可撓性材料11との接着部分の接着範囲12が小さく、したがって接着力が弱く、この組立体を運搬する際に、あるいは組立体を所定の締付装置に挿入する際などに、第8図の矢印12aに示すように、U字形クリップが離脱しやすく、締付け作業能率の低下を招きやすい不具合がある。また第9図に示す組立体は、第7図に示した組立体とは逆に、U字形クリップの彎曲部4と可撓性材料11との接着部分の接着範囲12が大きく、そのためにクリップ組立体を所定の固定形態に保持する力が弱く、すなわちクリップ間に位置する可撓性材料11の微小屈曲部13が矢印14方向に彎曲しやすく、したがって締結装置を挿入する際などにこれらのクリップが第10図の矢印15に示すように横倒しになることが多く、締付け作業能率の低下を招きやすい不具合がある。本発明はこのような従来技術における実状に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、U字形クリップの離脱を防止でき、締付け作業能率の向上を図ることのできるU字形クリップ組立体を提供することにある。」(甲第3号証第3欄14行ないし37行。別紙図面1第7図ないし第10図参照)、「本発明のU字形クリップ組立体によれば、U字形クリップの彎曲部の曲率中心たとえば内接円の中心点を通り、25°ないし100°の角度をもって描かれる2本の直線を仮想したとき、この2本の直線によって囲まれる彎曲部の弧状部分を、U字形クリップの開放側面に直交する方向に移動させることによって形成される彎曲部外方表面のみに、可撓性部材を接着するようにしてあることから、運搬に際し、あるいは締付装置への挿入に際し、クリップが離脱するおそれがなくなり、同時にこの組立体の形態が良好に保たれ、したがってクリップが横倒しになるおそれがなくなり、締付け作業能率が著しく向上する顕著な効果を奏する。」(同第4欄35行ないし第5欄4行)と記載されていることが認められ、これらの記載によれば、本件発明において、U字形クリップと保持部材との接着を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものとしているのは、運搬や締付装置への挿入の際に、U字形クリップが保持部材から離脱することを防止し、併せて組立体の形態を良好に保つようにして、クリップが横倒しになることを防止し、それによって締付け作業の能率の向上を図るためであると認められる。
<2> 甲第5号証には、ベッドや自動車用シート等に用いる連結金具を連続させて結束しておく結束装置において、C字形の連結金具1は断面が円形状をなしているためにその外周面の一部は円弧状をなしており、これらの複数個の連結金具1を一列に配列し、これら連結金具1の彎曲部を形成する中高部に保持部材としての可撓性を有するテープ2が接着され、このテープ2によって一列に配設された連結金具1を一定の形態に保持していることが記載されていること、及び、連結金具1の彎曲部とテープ2との接着範囲は彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものであることは、当事者間に争いがない。
ところで、甲第5号証には、連結金具1の彎曲部とテープ2との接着範囲を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものとしたことの技術的理由については特に記載されていないが、上記のとおり、同号証には、複数個の連結金具1を一列に配列し、これら連結金具1の彎曲部を形成する中高部にテープ2が接着され、このテープ2によって一列に配設された連結金具1を一定の形態に保持していることが記載されていること、同号証中の「本考案においては、各連結金具1がその背面を可撓性のあるテープ2によって結束されているので、最端の連結金具1から順次挿通することによって極めて容易に案内杆4に連結金具1を挿通することができるものである。・・・本考案の結束装置では、可撓性を有するテープ2で連結金具1の背外面のみを結束してあるので、結束されている連結金具は、テープ2部分を中心に開くことが可能であり、これにより、案内杆4が彎曲していても、本考案により結束した連結金具1はその結束状態のまま彎曲部5を通過することができるものである。」(第3欄11行ないし第4欄1行)との記載に照らしても、同号証記載のものにおいては、上記操作を行うについて、連結金具1がテープ2から離脱することがなく、また、テープ2によって一列に配列された連結金具1が一定の形態に保持されていることが前提とされているものと認められること、並びに同号証の図面第4図ないし第7図の記載(別紙図面3参照)を総合すると、同号証記載のものにおいて、連結金具1の彎曲部とテープ2との接着範囲を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものとしているのは、連結金具1のテープ2からの離脱を防止し、併せて複数個の連結金具1を一定の形態に保持しておくようにするためであると認めるのが相当である。
上記のとおり、甲第5号証には、連結金具1の彎曲部とテープ2との接着範囲を彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものが記載されており、この構成が採択されている技術的理由は上記のとおりのものと認められるから、甲第4号証記載のU字形クリップ組立体において、運搬や締付装置への挿入の際に、U字形クリップが保持部材から離脱することを防止し、併せて組立体の形態を良好に保つようにして、クリップが横倒しになることのないようにするために、甲第5号証の上記構成を適用して、U字形クリップと保持部材との接着範囲を、U字形クリップの彎曲部の最も高い位置を中心として25°から100°の範囲に含まれるものに限定することに格別の創意を要したものとは認められない。
また、甲第4号証には、「本発明の重要な特徴は、リボン20が谷部分に付着され、隣接したクリップ間に粘着されるため、ヒンジ作用が隣接したクリップ間に実質的に何等空転等の無駄な作動なく設定され、それによってクリップの長さの操作中にクリップが分離することを最小限に止めることができることである。」(同号証の訳文10頁4行ないし10行)と記載されているから、同号証記載のものにおいても、少なくともU字形クリップの離脱防止という効果が得られるものと認められること、上記のとおり、甲第5号証記載のものにおいても、連結金具1のテープ2からの離脱を防止し、併せて複数個の連結金具1を一定の形態に保持しているものと認められることに照らすと、本件明細書に記載されている本件発明の前記効果は格別のものということはできない。
したがって、相違点についての審決の判断に誤りはない。
(2) 原告は、U字形クリップと連結金具、U字形クリップの彎曲部と連結金具の彎曲部とは、それぞれ全く別異のものであるばかりでなく、U字形クリップと連結金具とは保持部材による連結の方式も大きく相違するのであるから、甲第4号証の発明に甲第5号証の発明を適用することが容易に想到し得るものとは考えられない旨主張する。
確かに、本件発明におけるU字形クリップと甲第5号証に記載の連結金具1とは、その形状が相違しており、また、本件発明においては、U字形クリップの両脚部が保持部材の長さ方向に並んでいるのに対して、甲第5号証記載のものにおいては、連結金具の両脚部が保持部材(テープ2)の長さ方向と直角な方向に並んでいるなどといった、連結部材による連結方式に原告主張のような相違がある。
しかし、保持部材、テープ2がそれぞれ接着される箇所は、U字形クリップ、連結金具1のいずれも彎曲部を形成する中高部であり、同箇所における、U字形クリップと保持部材、連結金具1とテープ2との各接着角度が共通し、その接着によりもたらされる効果も共通しているのであるから、原告の上記主張は採用できない。
また、原告は、甲第5号証には、連結金具の外周面とテープとの接着範囲を25°から100°の範囲に含まれる角度にするという技術的事項の目的が全く記載されていないから、U字形クリップの離脱及び横倒れを防止することを目的として、甲第5号証に記載された、連結金具の外周面とテープとの接着範囲を25°から100°の範囲に含まれる角度にするという技術的事項を甲第4号証の発明に適用することが容易であるということはできない旨主張するが、上記(1)に説示したところに照らして採用できない。
以上のとおりであって、原告主張の取消事由は理由がない。
3 よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 伊藤博 裁判官 濵崎浩一 裁判官 市川正巳)
別紙図面1
<省略>
別紙図面2
<省略>
別紙図面3
<省略>