大判例

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東京高等裁判所 平成7年(う)1419号 判決

被告人 アッバス・ババモラディ 外二名

〔抄 録〕

原判決の挙示する関係証拠を総合すると、アリアスギャルは、平成六年五月二四日、イランにいるジャファルから、国際電話で、イラン航空の乗務員アリアキュバル・ネジャード(フシャング・ネマティの偽名、以下、「フシャング」という)という男に持たせて同月二六日空路イランから日本に到着するあへんを一キログラムあたり一万四〇〇〇ドルないし一万七〇〇〇ドルで買わないかと誘われて買受けることを承諾し、モハマッド、サイード、アッバスにも電話の趣旨を伝えて一緒にあへんを買うこととした事実が明らかであり、この点の原判決の認定に誤りはない。

所論は、右認定に沿うアリアスギャル、アッバス、サイード、モハマッドの各検察官調書は、検察官の誘導によって作成されたものであるから、任意性も信用性もないというが、それらの各供述内容は、いずれも具体的かつ自然であり、事柄の推移とよく照応しているのに対し、所論に沿う原審公判における各供述は、アリアスギャルが最初の電話の後もジャファルに再三電話をかけ、あへん搬送の進捗状況を問い合わせたり、買入資金の準備状況を報告したり、「まだ着かないのか」などと早期の搬送を催促していることなどの経緯と照応せず、信用することができない。

しかしながら、ジャファルは、五月二四日アリアスギャルにあへんの買取りを持ち掛ける前にフシャングにあへんを日本に搬送することを持ち掛け、同人の承諾を得て密輸入の手順を進め、また、密輸入するあへんが約五キログラムであることをアリアスギャルに告げず、単にフシャングを運搬人として日本に持ち込むあへんの中から希望する数量を一キログラム当たり一万四〇〇〇ドルから一万七〇〇〇ドルで買って欲しいという趣旨の話をし、アリアスギャルはこれを了承したにとどまる。そして、フシャングが逮捕された後、捜査に協力するため同人が日本国内のホテルからイランのジャファルに国際電話をかけた際、ジャファルは、アリアスギャルたちが全量のあへんを買わずに残った場合には、別の番号を知らせるので自分に連絡するように指示している。さらに、密輸入されるあへんの処分方法、報酬、利益分配などについて話し合いがされた形跡はなく、アリアスギャルが従前ジャファルから日本に密輸入したあへんを買い入れていたと認めるに足りる証拠もない。

以上の事実関係を基に、アリアスギャルとジャファルらとの間にあへんを密輸入することの共謀が成立したと認められるか否かを検討すると、原判決は、一般に密輸入にあっては、外国にいて荷物を送る者と日本にいて荷物を受け取る者との間に、荷物の発送、受取について合意が成立すれば、密輸入の共謀が成立すると判示した上、アリアスギャルは密輸入のあへんを受け取ることを承知したのであるからその密輸入を共謀したものと認めるのが相当であると判示している。なるほど、密輸入する物の発送人と意思を通じ、日本でその物を受け取ることを約束した場合には、密輸入行為を一緒に実行したと評価することができるので、共謀が成立したものということができる。しかし、本件の場合には、ジャファルがフシャングを運搬人としてあへんを日本国内に持ち込むことを前提とし、その全部又は一部を買うようアリアスギャルを誘い、同人も買い受けることにしたにとどまるから、同人は、原判決の判示する意味での受取人の立場に立つものではなく、あへんの密輸入行為をジャファルらと一緒に実行しようとしたものということはできない。他にアリアスギャルがジャファルとの間で本件あへんの密輸入につき、共謀したと認めるに足りる事情は存在しない。

ただ、ジャファルが、アリアスギャルに対し、あへんを買うよう誘ったのは、事前に日本における買受人を確保しておきたかったからであり、アリアスギャルが、これに応じてあへんを日本に持ち込んだ直後キログラム単位で買い受けることを約することは、ジャファルの本件あへんの密輸入の意思を維持、強化させるものというべきであるから、アリアスギャルに本件密輸入行為の幇助犯が成立することは明らかである。

(香城敏麿 中野久利 林正彦)

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