大判例

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東京高等裁判所 平成7年(う)683号 判決

判決理由

第1控訴趣意書中,憲法21条違反の主張について

所論は,要するに,国外で適法に入手し,所持するわいせつ表現物(関税定率法《平成6年法律第118号による改正前のもの。以下同じ。》21条1項3号の「風俗を害すべき書籍,図画,彫刻物その他の物品」を「わいせつ表現物」と略称する。以下同じ。)を本邦に輸入する行為(未遂及び予備を含む。)を処罰する関税法(平成6年法律第118号による改正前のもの。以下同じ。)109条は,(1) 表現の自由に対する重大な侵害であり,憲法21条1項に違反し,(2) 税関検査(外国貨物の輸入手続において税関職員が行う検査を「税関検査」と略称する。以下同じ。)及びこれに引き続く一連の措置と相まって憲法が絶対的に禁止する「検閲」に該当するというのである。

1 しかしながら,関税定率法21条1項3号の規定によるわいせつ表現物の輸入規制が憲法21条1項に違反しないことは,差戻判決の示すところであり,右の輸入規制に必要性と合理性が認められる以上,その実効性を確保するために,右の規制に違反した者に対して一律に刑罰をもって臨んでいる関税法109条の規定が憲法21条1項に違反しないことも,その趣旨とするところである。

2 また,税関検査が憲法21条2項前段にいう「検閲」に該当しないことは,最高裁昭和59年12月12日大法廷判決(民集38巻12号1308頁)が示すとおりである。

第2控訴趣意書中,憲法13条,31条違反の主張について

所論は,要するに,関税法109条は,(1) 個人鑑賞のための単なる所持を目的としてわいせつ表現物を輸入する場合をも一律に処罰するものであるなど,合理的,実体的な処罰根拠を欠き,憲法13条,31条に違反し,(2) 輸入禁制品として掲げる関税定率法21条1項3号の文言が不明確かつ広汎に過ぎ,憲法31条,13条に違反するというのである。

1 しかしながら,関税法109条が,個人鑑賞のための単なる所持を目的とするか否かにかかわりなくわいせつ表現物の輸入を一律に処罰の対象としているものと解しても,憲法13条,31条に違反しないことは,差戻判決の示すところである。

2 また,関税定率法21条1項3号の「風俗を害すべき書籍,図画」等の物品とは,わいせつな書籍その他の物品をいうものと解するのが相当であるから,その文言が不明確かつ広汎に過ぎるということはできない(前記大法廷判決参照)。

第3控訴趣意書中,憲法19条違反の主張について

所論は,要するに,わいせつ表現物の輸入行為を処罰する関税法109条は,性に対する価値観を統制するものであり,憲法19条が保障する思想信条の自由を侵害するというのである。

しかしながら,関税定率法21条1項3号の規定によるわいせつ表現物の輸入規制に必要性と合理性が認められ,その規制の実効性を確保するための関税法109条が憲法21条,13条,31条に違反しないと解される以上,同規制により,わいせつ表現物に対する個人の接触の自由を制約することとなっても,憲法19条に違反するものとはいえない。

第4控訴趣意書中,市民的及び政治的権利に関する国際規約19条2項違反の主張について

所論は,要するに,関税法109条は,「国境とのかかわりなく,あらゆる種類の情報及び考えを求め,受け及び伝える」自由を規定する同国際規約19条2項に違反するというものである。

しかしながら,同国際規約によって保障される権利は,憲法21条が保障する表現の自由を超える内容のものであるとは解せられず,また,同条3項が,「国の安全,公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護」という目的のためには,表現の自由についての権利の行使が法律によって制限され得ることを認めているのであるから,関税法109条が同国際規約に違反するとはいえない。

第5控訴趣意書中,構成要件に該当しないとの主張について

所論は,要するに,個人鑑賞のために本邦に持ち込まれるわいせつ表現物は,関税定率法21条1項3号所定の物品には該当せず,したがって,その目的の下での被告人の原判示各行為は関税法109条の構成要件に該当しないというのである。

しかしながら,本件において,被告人が輸入し,あるいは輸入しようとして未遂に止まったビデオテープ5巻,雑誌7冊,カレンダー1冊,新聞1枚及びビデオカタログ1冊(当庁平成3年押第365号の1ないし15)は,いずれもわいせつ表現物であると認められ,かつ,専ら個人鑑賞のために本邦に持ち込まれたか否かを問わずわいせつ表現物は関税定率法21条1項3号所定の物品にあたると解しても,前示のとおり,憲法の諸規定に違反しないと解せられるのであるから,所論は立論の根拠を欠くというべきである。

第6控訴趣意書中,可罰的違法性を欠くとの主張について

所論は,要するに,個人鑑賞目的によって,少量の,かつ,一部にわいせつ性の希薄なものを含む本件わいせつ表現物を輸入したに過ぎない被告人の原判示各行為は可罰的違法性を欠くというのである。

しかしながら,前示のとおり,個人鑑賞のためのわいせつ表現物の本邦内への持ち込みに対し,一律に刑罰を加えることが不合理とはいえないところ,本件わいせつ表現物の数量,わいせつ性の程度,持ち込みの方法等を総合すると,本件各行為についていずれも可罰的違法性を欠くものではないとした原判決の判断は相当である。

以上の次第で,論旨はすべて理由がない。

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