大判例

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東京高等裁判所 平成7年(う)945号 判決

被告人 甲野乙雄(仮名)

〔抄 録〕

論旨は、要するに、本件各犯行当時被告人は妄想型の精神分裂病の病態を呈しており、心神喪失の状態にあったから、被告人に完全責任能力を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるというのである。

そこで調査するに、当審鑑定人仲村禎夫作成の(精神)鑑定書によれば、所論が指摘するとおり、被告人は、本件各犯行当時、晩発性精神分裂病に基づく幻覚、妄想状態にあったものと認められる。しかしながら、被告人の当時の責任能力については、本件が金銭に窮した末の窃盗及びその手段としての建造物侵入事犯であって、幻覚等の病的体験とは直接の関連がないと考えられるほか、各犯行に至る経緯に不自然な点はなく、具体的な犯行やその後の盗品の処分等に際して十分に合理的な行動が採られており、これらについての被告人自身の記憶もよく保持されていることの諸点に照らすと、事理の是非を弁別し、これにしたがって行動する能力が失われていたとは認められず、これらの能力が著しく減退した状態にあったものと認めるのが相当である。

以上のとおり、被告人は、本件各犯行当時、心神耗弱の状態にあったものであるから、完全責任能力を認めた原判決は事実を誤認したものであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。原判決は破棄を免れない。論旨は、右の限度で理由がある。

(香城敏麿 森眞樹 林正彦)

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