東京高等裁判所 平成7年(行ケ)125号 判決 1998年9月03日
佐賀県鳥栖市田代大官町408番地
原告
久光製薬株式会社
代表者代表取締役
中富博隆
訴訟代理人弁護士
宇井正一
訴訟代理人弁理士
松下操
同
土屋繁
東京都千代田区霞ケ関3丁目4番3号
被告
特許庁長官 伊佐山建志
指定代理人
乾雅浩
同
井上雅夫
同
吉村康男
同
廣田米男
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が平成4年審判第3731号事件について平成7年3月10日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負坦とする。
2 被告
主文と同旨
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
株式会社アドバンスは、昭和62年3月25日、発明の名称を「皮膚貼着型低周波治療器」とする発明(以下「本願発明」という。)について特許出願をしたが(昭和62年特許願第68956号)、平成4年1月7日付で拒絶査定を受けたので、平成4年3月5日、拒絶査定不服の審判を請求し、平成4年審判第3731号として審理され、平成6年1月19日付で出願公告された(平成6年特許出願公告第4096号)。原告は、出願公告決定後、株式会社アドバンスから本願発明について特許を受ける権利の譲渡を受け、平成6年1月21日、特許庁に対して特許出願人名義変更届を提出した。その後、訴外沢江健治等が特許異議申立てをし、特許庁は、平成7年3月10日、訴外沢江健治の特許異議申立てにつき特許異議決定をするとともに、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決をし、同年4月10日にその謄本を原告に送達した。
2 本願発明の特許請求の範囲
本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「所定のプログラムにもとづいて複数のドライブパルスを出力するマイクロコンピュータ、前記マイクロコンピュータの出力するドライブパルスにもとづいて、インダクタへの励磁電流を断続し、断続時に発生する昇圧パルスを出力する昇圧パルス発生手段、前記昇圧パルスを蓄積するための蓄積手段、前記マイクロコンピュータが出力する低周波ドライブパルスにもとづいて前記蓄積手段に蓄積された電気エネルギーを断続し、低周波刺激パルスとして出力するためのスイッチング手段よりなる小型低周波パルス発生装置と、前記低周波パルス発生装置が一体的に又は着脱自在に保持される少なくとも一対の皮膚貼着性導子とを組合わせてなることを特徴とする皮膚貼着型低周波治療器。」
3 審決の理由
審決の理由は、別添審決書の理由の写し記載のとおりであって、本願発明は、実公昭61-22606号公報(以下「引用例1」という。)、米国特許第4、233、965号明細書(以下「引用例2」という。)、実願昭55-94936号(実開昭57-17648号)の明細書及び図面を撮影したマイクロフイルム(以下「引用例3」という。)及び特開昭60-156475号公報(以下「引用例4」という。)に記載された各発明並びに周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、本特許出願人は本願発明について特許を受けることができないとした。
4 審決を取り消すべき事由
審決の理由中、Ⅰ(手続きの経緯・本願発明)、Ⅱ(刊行物記載発明)、Ⅲ(対比)にそれぞれ認定された事実、Ⅵ(容易性の判断)のうち[相違点<1>について]の判断は、いずれも認める。
審決は、次の相違点<2>及び<3>に関する判断を誤った違法があり、取り消されるべきである。
相違点<2>
本願発明では、所定のブログラムに基づいて、マイクロコンピュータが、昇圧パルスを出力するためのドライブパルス及び低周波刺激パルスを出力するための低周波ドライブパルスを出力する構成としたのに対して、引用例1記載の発明では、調整回路により制御された発振回路が上記ドライブパルスを、低周波パルス発生源が上記低周波ドライブパルスを出力する構成とした点。
相違点<3>
本願発明では、低周波パルス発生装置が一体的に又は着脱自在に保持される少なくとも一対の皮膚貼着性導子としたのに対して、引用例1記載の発明では、導子について明らかでない点。
(1) 取消事由1
審決は、相違点<2>について、引用例1の、調整回路により制御された発振回路が昇圧パルスを出力するためのドライブパルス(引用例1の「パルス列Vf」。以下「ドライブパルス」という。)を、低周波パルス発生源が低周波刺激パルスを出力するための低周波ドライブパルス(引用例2の「低周波パルスVin」。以下「低周波ドライブパルス」という。)を出力するという構成に代えて、所定のブログラムに基づいて、マイクロコンピュータが、上記ドライブパルス及び低周波ドライブパルスを出力する構成とすることは、当業者であれば、容易に想到し得るものであるとしているが、これは誤りである。
本願発明と引用例1記載の発明とはマイクロコンピュータの使用、接続形態において顕著な相違があるものであり、さらに、審決において、低周波刺激パルス出力のためのスイッチング用低周波ドライブパルスをマイクロコンピュータにより出力させることが周知事項であることを例示するものとして提出された特開昭58-112553号公報(以下「周知例1」という。)及び特公昭57-53743号公報(以下「周知例2」という。)に記載された低周波治療器は、昇圧パルスの発生部分を具備しないタイプのものであり、本願発明の低周波治療器とは対象を異にしているものであるのに、この程度の引用例1の記載事項と周知技術を根拠に、相違点<2>から本願発明に到達するのが容易であるとか、自明であるとするのは不当である。被告の主張するような、本願発明と引用例1記載の発明との間の相違点を埋める技術が単に周知であったというだけで、本願発明の進歩性を否定するのはいわゆる後知恵に過ぎない。
本願発明は、小型軽量の電池と小型軽量のインダクタとマイクロコンピュータとを組み合せることにより、高密度実装を可能にし、皮膚に貼り付けて衣服を着ても、表面が突出せず、違和感、負担がなく、皮膚から容易に剥がれない程度に皮膚に一体的に貼着できるような小型化をしているものであり、先行技術の奏しない格別の効果を奏するものであるから、進歩性が認められるべきである。
本願発明は、1つのマイクロコンピュータにより複数のドライブパルスを出力させることにより、本願発明の目的である、簡単な操作で変化のある低周波刺激パルスが出力できるという機能を達成し、先行技術にはない顕著な効果を奏するものであるから、進歩性が認められるべきである。
(2) 取消事由2
審決は、相違点<3>について、公知又は周知な事項に基づいて、低周波パルス発生装置と皮膚貼着性導子とを一体的又は着脱自在に保持することは容易であるとしているが、これは誤りである。
引用例3の低周波治療器は、皮膚貼着性導子を使用しておらず、また、その形状が大きいのに対して、本願発明は、低周波パルス発生装置の小型化を実現し、これを導子にて保持し、導子により人体に直接貼着して使用できる低周波治療器を実現しているのであって、引用例3記載の発明とは相違し、かつ、優れているものである。また、被告が周知慣用の事項として提出する周知例(乙第10号証ないし乙第12号証)に記載された導子は、すべて低周波パルス発生装置と別体にされていて、導子のみを人体に貼着するものであり、低周波パルス発生装置を導子が保持する本願発明とは対象を異にしている。さらに、引用例1記載の発明は、皮膚貼着性導子が保持できるような寸法にまで小型化されていないから、これを、引用例4記載のイオントフォレーゼ用デバイスのように一対の皮膚貼着性導子に保持させることなど、当業者が想到し得るものではない。イオントフォレーゼ用デバイスは、生体を電流で刺激するものではなく、薬剤の経皮吸収を促進するものであって、生体を電流で刺激する低周波治療器とは技術の方向性が異なるものである。したがって、公知又は周知な事項に基づいて、本願発明のように、低周波パルス発生装置と皮膚貼着性導子とを一体的又は着脱自在に保持することが容易に想到し得るものではない。
第3 請求の原因に対する認否と被告の反論
1 請求の原因1ないし3の各事実は認める。同4は争う。審決の認定判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。
2 取消事由についての被告の反論
(1) 取消事由1について
引用例1の調整回路17は、図面第4図(d)に示される指令信号Vを発振回路1に与えることにより、インダクタ3の励磁電流断続用パルスVfが同第4図(e)のように発生するように制御するものである。そして、そのようなパルスVfの発生制御機能を実現している調整回路17にマイクロコンピュータを適用する場合、マイクロコンピュータの使用形態としては、マイクロコンピュータから指令信号Vcontパルスを発振回路1に与えるような使用形態(調整回路17のみをマイクロコンピュータで代替する)より、マイクロコンピュータ自身から最終的に必要なパルスを出力させるような使用形態(調整回路17と発振回路1とカウンタ10とをセットでマイクロコンピュータで代替する)とすることの方が当業者にとって遥かに自然であり普通である(別紙図面(1)参照)。
マイクロコンピュータの基本機能、すなわち、各種ハードウェアの機能の集約及び代替機能に基づいて、引用例1の調整回路17にマイクロコンピュータを適用しようとするとき、当業者であれば、制御パルス発生の観点から、調整回路17と発振回路1とカウンタ10とをまとめて、励磁電流断続用ドライブパルスVfを作成出力するマイクロコンピュータで代替することを想定するものであり、このとき、マイクロコンピュータを適用した低周波治療器として、低周波刺激パルス出力のためのスイッチング用低周波ドライブパルスの出力源をマイクロコンピュータとしたものもよく知られているのであり、また、引用例1の励磁電流断続用ドライブパルスVfも低周波ドライブパルスVinも共に充放電制御に関係するトランジスタ断続制御用のパルスであり、その接続、使用形態も同様であるから、当業者であれば、同時に、もう一つのドライブパルスである低周波パルスVinの出力源をマイクロコンピュータに代替することも容易に想到し得るのである(別紙図面(1)参照)。
本願発明は、高密度実装を行えるような素子と機構部品を使用することにより、小型化し得るというのであって、1つのマイクロコンピュータにより複数のドライブパルスを出力させることにより、より小型化すべくそれに必要な高密度実装を行うという機能を達成するものではない。
本願明細書には、高密度実装を行えるような素子と機構部品を使用することにより、小型化し得ると記載されているのであって、1つのマイクロコンピュータにより複数のドライブパルスを出力させることにより、より小型化すべくそれに必要な高密度実装を行うという機能を達成できたのであるなどとは一切記載されておらず、また、本願明細書からみて自明のことでもない。
(2) 取消事由2について
引用例3記載の発明は、低周波治療器において、低周波パルス発生装置と一対の導子とを一体的に保持することをその構成とするものであって、この構成において本願発明と共通しているのであり、また、導子を皮膚貼着性とすることを何ら妨げる事情はない。また、引用例3記載の発明は、一体的に保持する目的が、小型軽量化を指向しているものであり、十分小さいのである。
原告は、引用例1記載の低周波治療器は、皮膚貼着性導子が保持できるような寸法まで小型化されていないと断定しているが、そのような根拠は引用例1のどこにも示唆も記載もされていない。
仮に、引用例1記載の低周波パルス発生装置が皮膚貼着性導子が保持できるような寸法まで小型化されていないとしても、イオントフォレーゼ用デバイスは、低周波治療器とは、薬剤の使用不使用の点に差はあるものの、共に人体に当接する一対の導子を介して生体に電流を流して治療する電気治療という共通の技術分野に属するものであり、両者は、生体への通電使用形態において共通しているのである。そして、両者は、その形状、大きさにおいても非常に良く似ているものであり、低周波パルス発生装置においても、非常に小型化されたものが知られているから、イオントフォレーゼ用デバイスにおいて、引用例4記載の発明を知った当業者は、ごく普通に低周波治療器にもこのような構成の適用を図るものというべきである。
第4 証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
第1 請求の原因1ないし3の各事実(特許庁における手続の経緯、本願発明の特許請求の範囲、審決の理由)は、当事者間に争いがない。
第2 甲第2号証によれば、本願発明の概要は、次のとおりである(別紙図面(2)参照)。
本願発明は、小電源にもかかわらず、所要の生体刺激を提供し得る小型低周波治療器に関し、特に人体に直接貼着使用可能な超小型化し得る小型低周波治療器に関する。
近時、生体が感応できる刺激を一定の周期で印加することが可能でありながら、その大きさがバンデージやパップ剤等と同様に皮膚に貼着使用し得る小型低周波治療器が提案されるに至った。しかしながら、本来低周波治療器の刺激効果は、按摩等の指圧マッサージと近似的効果を与えるために、様々に変化する電気刺激を与えるべく構成されることが好ましいものである。また、一定の刺激は、生体に対し感応度を著しく低下せしめるもので、当然治療効果等も低下することから、バリエーションのある刺激が与えられる小型低周波治療器が希求されるものである。
したがって、本願発明は、簡単な操作で変化のある低周波刺激パルスが出力できるだけでなく、より小型化すべくそれに必要な高密度実装を行えるような素子と機構部品を使用した小型低周波治療器の提供を目的とする。
本願発明は、上記した目的を達成するため、以下に記載されたような技術構成を採用するものである。すなわち、任意に設定される所定のプログラムに基づいて、それぞれ互いに異なるパルス間隔とパルス幅を有する第1のパルスと第2のパルスとを出力するマイクロコンピューター、該マイクロコンピューターの第1のパルスに応答して、断続的に入力される該第1のパルスの電圧に対して、所定の昇圧された電圧をもつ昇圧パルスを断続的に発生させる昇圧パルス発生手段、該昇圧パルス発生手段から出力される昇圧パルスを蓄積する電圧蓄積手段、該電圧蓄積手段に蓄積された電気的エネルギーを低周波刺激パルスとして出力する出力手段、該マイクロコンピューターから出力される第2のパルスに応答して、該電圧蓄積手段に蓄積された電気的エネルギーを該出力手段から出力するためのスイッチング手段から構成されており、かつ、該第2のパルスは、少なくとも該第1のパルスよりそのパルス幅が長くなるように構成された低周波パルス発生装置と皮膚貼着性導子とが組み合わされた構成を有し、かつ、該低周波パルス発生装置の該出力手段が、該皮膚貼着性導子の導子と接続するように皮膚貼着性導子と一体的もしくは着脱自在に結合されている皮膚貼着型低周波治療器である。
第3 審決を取り消すべき事由について判断する。
1 原告主張の取消事由1について
原告は、引用例1の、調整回路により制御された発振回路が昇圧パルスを出力するためのドライブパルスを、低周波パルス発生源が低周波刺激パルスを出力するための低周波ドライブパルスを出力するという構成に代えて、所定のブログラムに基づいて、マイクロコンピュータが、上記ドライブパルス及び低周波ドライブパルスを出力する構成とすることの困難性を主張するので検討する。
(1) ドライブパルスを出力する手段として、引用例1記載の調整回路により制御された発振回路をマイクロコンピュータに代えることについて
(イ) 甲第3号証によれば、引用例1の明細書の実用新案登録請求の範囲には、「低周波パルス発生源から低周波パルスに応じて電気刺激信号を出力する低周波治療器に於いて、発振回路の出力で駆動されるドライバ回路と、該ドライバ回路の駆動により出力する昇圧トランスと、該昇圧トランスの出力が充電されるように接続した出力コンデンサと、該出力コンデンサに前記昇圧トランスの出力が前記低周波パルスのパルス間で充電され且つその充電による電荷が前記低周波パルスの通電時間幅の間に放電されるようにスイッチングするスイッチング回路と、前記ドライバ回路の駆動時間を規制する調整回路とを有することを特徴とする低周波治療器。」という記載があり、同記載によれば、引用例1において、発振回路はドライバ回路を駆動し、同駆動により昇圧トランスが出力するという構成をとっており、調整回路は、上記ドライバ回路の駆動時間を規制するものであることが認められる。
また、審決の理由中、Ⅱ(刊行物記載発明)に摘示された事実は、原告の認めるところであるから、引用例1の調整回路により制御された発振回路の出力はパルス列である。
(ロ) ところで、乙第1号証ないし乙第3号証、乙第18号証によれば、マイクロコンピュータは、エレクトロニクス化が進行する民生機器、家電製品に必須のものとなっており、民生機器、家電製品において、従来、ハードウェア等で実現していた機能を、マイクロコンピュータによるプログラムというソフトウェアで実現し、部品数の減少、費用の低下、信頼性の向上を図ることができるものであること、マイクロコンピュータは、クロックパルス発生回路を内蔵し、タイマ機能、パルス列の発生出力機能、入力パルスの検出・カウント機能等を有しており、発振回路として種々の周波数の連続パルスを発生させたり、任意のパルス幅、任意の停止時間のパルス列を発生出力させたりすることができること、マイクロコンピュータは、その目的に応じて選定されたプログラムにより、複数の制御用パルス信号を出力させることができること、これらのマイクロコンピュータの応用技術は、本願発明の出願時、周知の事実となっていたことが認められる。
更に、乙第5号証の1、乙第6号証によれば、低周波治療器の分野においても、本願発明の出願時、所定のプログラムに基づいてマイクロコンピュータにより制御用のパルスを出力させる技術が公知のものとなっていたことが認められる。
(ハ) 以上によれば、ドライブパルスを出力する手段として、引用例1記載の調整回路により制御された発振回路をマイクロコンピュータに代えることは、当業者が容易に想到することができた事柄であるということができる。
(2) 低周波ドライブパルスを出力する手段として、引用例1記載の低周波パルス発生源をマイクロコンピュータに代えることについて
上記(1)(ロ)認定の事実に照らせば、低周波ドライブパルスを出力する手段として、引用例1記載の低周波パルス発生源をマイクロコンピュータに代えることもまた、当業者が容易に想到することができた事柄であるということができる。
(3) マイクロコンピュータに複数のドライブパルスを出力させることについて
前記(1)(ロ)認定の事実、すなわち、マイクロコンピュータが、その目的に応じて選定されたプログラムにより、複数の制御用パルス信号を出力することは、本願発明の出願時周知の事実であるから、1つのマイクロコンピュータから昇圧パルス発生のためのドライブパルス及び低周波刺激パルス発生のための低周波ドライブパルスを出力するようにすることは、技術的にごく自然なことであって、当業者が容易に想到することができた事柄であるということができる。
(4) 原告は、周知例1、2に記載された低周波治療器は、昇圧パルスの発生部分を具備しないタイプのものであり、本願発明の低周波治療器とは対象を異にしているものであるのに、この程度の引用例1の記載事項と周知技術を根拠に、相違点<2>から本願発明に到達するのが容易であるとか、自明であるとするのは不当である旨主張する。
しかしながら、乙第5号証の1、乙第6号証によれば、周知例1、2は、いずれも、本願発明と同一技術分野に属するものであるから、たとえ、周知例1、2に記載された低周波治療器が昇圧パルスの発生部分を具備しないタイプのものであったとしても、前記容易想到性の認定判断を左右するに足りない。
(5) 原告は、本願発明は、1つのマイクロコンピュータにより複数のドライブパルスを出力させ、これにより、高密度実装を行え、変化のある低周波刺激パルスが出力でき、電池から1回に取り出す電流及びインダクタに蓄積するエネルギー量を正確に制御できるもので、引用例1記載の発明と比較して顕著な効果がある旨主張する。
しかしながら、前記(1)(ロ)認定の事実によれば、高密度実装、変化のあるパルスの発振、電流やエネルギーの正確な制御は、マイクロコンピュータを用いることによる周知の効果であって、1つのマイクロコンピュータにより複数のドライブパルスを出力することによる効果として容易に予測できるものであって、原告の上記主張は、採用の限りでない。
2 取消事由2について
原告は、相違点<3>について、低周波パルス発生装置と皮膚貼着性導子とを一体的又は着脱自在に保持する構成とすることの困難性を主張するので検討する。
(1) 乙第11号証によれば、特開昭56-52072号公報の明細書には、低周波パルスを人体に通電して各種の治療を行う低周波治療器用導子に関する発明が記載され、同発明においては、低周波パルス発生装置と皮膚貼着性導子とが別構成となっていてリード線で結ばれていること、乙第12号証(昭和62年2月に発行された学研ヘルスプロダクト株式会社の低周波治療器の広告)に記載されている低周波治療器も上記と同様の構成であって、低周波パルス発生装置と一体ではない導子を皮膚貼着性とすることは周知であると認められる。
また、審決の理由中、Ⅱ(刊行物記載発明)、Ⅲ(対比)に摘示された事実は、原告の認めるところであるところ、同事実によれば、引用例3記載の発明は、低周波治療器において、治療用電気波形を発生させる電子回路を有するプリント基板3と一対の含水性治療用電極を筐体により一体に保持する発明であり(審決書7頁5ないし9行)、引用例4記載の発明は、パルス発振機構を有するパワーサプライユニットと一対の皮膚貼着型導子とを一体的に又は着脱自在に保持した皮膚一体貼着型のイオントフォレーゼ用デバイスである(審決書7頁11行ないし8頁4行)。
ところで、前記1(1)(ロ)に認定した事実によれば、マイクロコンピュータを採用することにより低周波パルス発生装置の小型化を実現することができることは、当業者において容易に予測できたことであると認められ、周知である低周波パルス発生装置と一体ではない導子を皮膚貼着性にした低周波治療器において、マイクロコンピュータの採用により低周波パルス発生装置が小型化すれば、低周波パルス発生装置と導子とを一体的に保持し、同導子を皮膚貼着性とすることは、当業者が容易に採用しえたものというべきである。
(2) 原告は、イオントフォレーゼ用デバイスは、生体を電流で刺激するものではなく、薬剤の経皮吸収を促進するものであって、生体を電流で刺激する低周波治療器とは技術の方向性が異なるものであるから、本願発明の進歩性の判断に、引用例4を公知又は周知な事項として考慮することはできない旨主張する。
しかしながら、乙第10号証(特開昭60-153839号公報)、乙第22号証(東京文光堂、昭和31年4月30日発行の「電気治療」46頁)によれば、本願発明の特許出願当時、低周波治療器とイオントフォレーゼ装置とは、薬剤の使用不使用の点で相違するが、人体の皮膚に当接する一対の導子を備えた電気治療装置として共通の技術分野に属していたものと認められ、特に、低周波パルス発生装置(パルス発振機構を有するパワーサプライユニット)と導子とを一体として皮膚貼着性にするという点で、両者を区別すべき格別の事情も見当たらない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(3) また、原告は、引用例3の低周波治療器は、皮膚貼着性導子を使用しておらず、また、その形状が大きいのに対して、本願発明は、低周波パルス発生装置の小型化を実現し、これを導子にて保持し、導子により人体に直接貼着して使用できる低周波治療器を実現しているのであって、引用例3記載の発明とは相違し、かつ、優れている、あるいは、被告が周知慣用の事項として提出する周知例(乙第10号証ないし乙第12号証)に記載された導子は、すべて低周波パルス発生装置と別体にされていて、導子のみを人体に貼着するものであり、低周波パルス発生装置を導子が保持する本願発明とは対象を異にしている、引用例1記載の発明は、皮膚貼着性導子が保持できるような寸法にまで小型化されていないから、これを、引用例4記載のイオントフォレーゼ用デバイスのように一対の皮膚貼着性導子に保持させることなど、当業者が想到し得るものではないなどと縷々主張するが、上記(1)の認定判断に照らすと、原告の上記主張はいずれも採用の限りでない。
第4 よって、審決には原告主張の違法はなく、その取消しを求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成10年8月20日)
(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)
理由
Ⅰ. 手続きの経緯・本願発明
本件審判請求に係る出願(以下、本願という)は、昭和62年3月25日の出願であって、平成6年1月19日に出願公告されたものである。そして、その発明(以下、本願発明という)の要旨は、公告された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の欄の第1項に記載されたとおりの
「所定のプログラムにもとづいて複数のドライブパルスを出力するマイクロコンピュータ、前記マイクロコンピュータの出力するドライブパルスにもとづいて、インダクタへの励磁電流を断続し、断続時に発生する昇圧パルスを出力する昇圧パルス発生手段、前記昇圧パルスを蓄積するための蓄積手段、前記マイクロコンピュータが出力する低周波ドライブパルスにもとづいて前記蓄積手段に蓄積された電気エネルギーを断続し、低周波刺激パルスとして出力するためのスイッチング手段よりなる小型低周波パルス発生装置と、前記低周波パルス発生装置が一体的に又は着脱自在に保持される少なくとも一対の皮膚貼着性導子とを組み合わせてなることを特徴とする皮膚貼着型低周波治療器。」
にあるものと認められる。
Ⅱ. 刊行物記載発明
1. これに対して、当審における特許異議申立人沢江健治(以下、異議申立人という)が特許異議申立理由の証拠方法として提出した、本願出願前に頒布された刊行物であることの明らかな実公昭61-22606号公報(以下「引用例1」という)には、
「調整回路7、17、27」により制御された「発振回路1」の出力するパルス列Vfにもとづいて、「ドライバ回路2」が「昇圧トランス3」の1次コイルへの励磁電流を断続し、その2次コイルに昇圧パルスを出力する昇圧手段、前記昇圧パルスを蓄積するための「コンデンサ5」、「低周波パルス発生源」が出力する「低周波パルス」Vinにもとづいて「コンデンサ5」に蓄積された電気エネルギーを断続し、「電気刺激信号」として出力するための「スイッチング回路6」とよりなる回路装置と、一対の皮膚当接導子とを組み合わせてなる「小型」化に適した「低周波治療器」の発明(以下、第1引用発明という)が記載されていると認められる。
なお、引用例1には、「調整回路7、17、27」により制御された「発振回路1」の出力がパルス列であること、及び「昇圧トランス3」の1次コイルへの励磁電流が断続されることについては明記されていないが、これらのことは、第2図(e)、第4図(e)、第7図(e)に示されるの出力波形Vfが断続パルスであり、これにより、ドライバ回路2がON-OFFを繰り返すことが明らかであり、さらに、引用例1には、導子についても明記されていないが、低周波治療器は通常一対の皮膚当接導子を備えているものなので、上記の様に第1引用発明を認定した。
また、同引用例の第2頁左欄第31行~同頁右欄第27行には、第3図と第4図と共に、「発振回路1」を制御する「調整回路17」として、「発振回路1」を「低周波パルス」Vinの「立下り」に基づいて発振させると共に、同「立下り」により「リセット」される「カウンタ10」により「発振回路1」の「発振回数」をカウントし、該「発振回数」が「予め定めた回数」(例えばn回)「になったことを検出する毎に発振回路1の発振を瞬時停止させると共に、この停止時間(以下、「間欠停止時間」という)を調整可能なものを用い」、これを所定回(例えばm回、第4図では3回「間欠駆動」している)繰り返した後「発振回路1」の発振を停止する(その為に、該「調整回路17」は「低周波パルス」Vinの「立下り」に基づいて第4図(d)に示される「指令信号Vcont」を「発振回路1」に与える)ことにより「コンデンサ5の端子電圧」の上昇を「デジタル量」(発振回数n×m)で制御し得、この「デジタル量」の制御に「マイクロコンピュータ」を適用し得る旨のこと、すなわち、「発振回路1」の「間欠停止時間」及び「発振回数」(これにより、1回の刺激におけるパルスVfの個数、すなわち「コンデンサ5の端子電圧」が決まる)を制御する「調整回路17」に「マイクロコンピュータ」を適用し得る旨のことが記載されている。
2. 同じく、異議申立人が提出した、本願出願前に頒布された刊行物であることの明らかな米国特許第4,233,965号明細書(以下「引用例2」という)第4欄~第6欄にはFig3aと共に、低周波(第6欄44行~同欄47行に「5から80Hz」と明記されていて、「低周波」であることは明らかである。)による治療器の「低周波パルス出力回路22」において、「キャパシタC2」に蓄積する昇圧パルスを得る昇圧手段として、「インダクタ11」を用い、該「インダクタ11」への励磁電流を「タイマー/発振器24」の出力する「一連のパルス」にもとづいて断続し、断続時に発生する昇圧パルスを出力する発明(以下、第2引用発明という)が記載されていると認められる。
3. 同じく、異議申立人が提出した、本願出願前に頒布された刊行物であることの明らかな実願昭55-94936号(実開昭57-17648号)の願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下「引用例3」という)には、「低周波治療器」において、「治療用電気波形を発生させる電子回路を有するプリント基板3」と「一対の含水性治療用電極」(14、14’)を「筐体」(1、2)により「一体」に保持する発明(以下、第3引用発明という)が記載されていると認められる。
4. 同じく、異議申立人が提出した、本願出願前に頒布された刊行物であることの明らかな特開昭60-156475号公報(以下「引用例4」という)には、「イオンフォトレーゼ用デバイス」において、「小型軽量化」する為に、「治療パルス」を発生する「パルス発振機構」(3、16)を有する「パワーサプライユニット」(37、49)と一対の「皮膚貼着型」「導子」(31、32、41、42)とを一体的に(第12図、第13図記載の第1の実施例)又は着脱自在に(第14図、第15図記載の第2の実施例)保持し、全体として「皮膚一体貼着型」に構成する発明(以下、第4引用発明という)が記載されていると認められる。
Ⅲ. 対比
本願発明と第1引用発明とを比較すると、
第1引用発明の「調整回路7、17、27により制御された発振回路1の出力するパルス列Vf」、「低周波パルスVin」、「コンデンサ5」、「電気刺激信号」、「スイッチング回路6」は、それぞれ、本願発明の「ドライブパルス」、「低周波ドライブパルス」、「蓄積手段」、「低周波刺激パルス」、「スイッチング手段」に相当し、
第1引用発明の「昇圧手段」は、ドライブパルスにもとづいて昇圧パルスを出力する手段として、本願発明の「昇圧パルス発生手段」と等価であり、
第1引用発明の「回路装置」は、低周波治療器における、導子を除いた回路装置部分であって全体として低周波パルスを発生するものであるから、これを「低周波パルス発生装置」と称してもかまわないことを考慮すると、
本願発明と第1引用発明は、
ドライブパルスにもとづいて昇圧パルスを出力する手段、前記昇圧パルスを蓄積するための蓄積手段、低周波ドライブパルスにもとづいて前記蓄積手段に蓄積された電気エネルギーを断続し、低周波刺激パルスとして出力するためのスイッチング手段とをそなえた小型低周波パルス発生装置と、一対の皮膚当接導子とを組み合わせた低周波治療器である点で一致し、
<1>上記昇圧パルスを出力する手段が、本願発明では、インダクタを用い該インダクタへの励磁電流を断続し、断続時に発生する昇圧パルスを出力する構成とするのに対して、第1引用発明では、昇圧トランスを用い該昇圧トランスの1次コイルへの励磁電流を断続し、その2次コイルに昇圧パルスを出力する構成とする点、
<2>上記2つのドライブパルスを、本願発明では、所定のプログラムにもとづいてマイクロコンピュータが出力する構成としたのに対して、第1引用発明では、それぞれ、調整回路7、17、27により制御された発振回路1の出力するパルス列Vf、及び低周波パルス発生源が出力する構成とした点、
<3>上記皮膚当接導子を、本願発明では、上記低周波パルス発生装置が一体的に又は着脱自在に保持される少なくとも一対の皮膚貼着性導子としたのに対して、第1引用発明では、導子について明らかでない点
で相違するものと認められる。
Ⅳ. 容易性の判断
そこで、上記相違点<1>~<3>について検討する。
[相違点<1>について]
蓄積手段に蓄積する昇圧パルスを得る昇圧手段として、インダクタを用い該インダクタへの励磁電流をドライブパルスにもとづいて断続し、断続時に発生する昇圧パルスを出力する構成は、電池等の直流電圧を昇圧する昇圧チョッパ型スイッチング回路として周知{例えば、「実用電子回路ハンドブック(3)」274頁~277頁、310頁~311頁(CQ出版株式会社、昭和53年8月10日発行)や、「電子技術」第27巻第2号、18頁~21頁、27頁(日刊工業新聞社、昭和60年1月12日発行)}の手段にすぎず、又同構成は、低周波による治療器の低周波パルス出力回路における昇圧手段としても引用例2に記載(第2引用発明の「キャパシタC2」、「一連のパルス」は、それぞれ、本願発明の「蓄積手段」、「ドライブパルス」に相当することは明らかである。)されており、第1引用発明の昇圧手段に代えて、上記構成を採用することに格別の創意工夫を要したとは認められない。
[相違点<2>について]
引用例1には、上述したように、「発振回路1」の「間欠停止時間」及び「発振回数」(これにより、1回の刺激におけるパルスVfの個数、すなわち「コンデンサ5の端子電圧」が決まる)を制御する「調整回路17」に「マイクロコンピュータ」を適用し得る旨のことが記載されているところであるが、そのようにマイクロコンピュータを適用する場合、その制御をプログラムに基づいておこなわせることはきわめて普通のことなので、「パルス列Vf」の「間欠停止時間」や個数を所定のプログラムに基づいてマイクロコンピュータに決定させることは自明の事項にすぎない。そして、マイクロコンピュータは、もともと、種々の周波数の連続パルスを発生する発振回路や分周回路を有しているものであるから、マイクロコンピュータの適用を図る時、わざわざマイクロコンピュータとは別体の発振回路の出力パルスを利用するのではなく、内蔵する発振回路や分周回路の出力する連続パルスを利用し、これに対して間欠停止時間やパルス数を決定するようにすること、すなわち、パルス列Vfを所定のプログラムに基づいてマイクロコンピュータが出力する構成とすることは、当業者にとって格別困難なこととは認められない。
さらに、低周波治療器において、低周波刺激パルス出力の為のスイッチング用低周波ドライブパルスを、所定のプログラムにもとづいてマイクロコンピュータにより出力させることは、周知の事項(例えば、特開昭58-112553号公報、特公昭57-53743号公報等参照のこと)にすぎないことであり、また、「調整回路17」は「低周波パルスVin」に基づいて「発振回路1」を制御する「指令信号Vcont」を「発振回路1」に与える(従って、「パルス列Vf」は「低周波パルスVin」にも制御されている。)ことを考慮すると、第1引用発明にマイクロコンピュータを適用する際、パルス列Vfの出力源としてだけでなく、低周波パルス発生源としてもマイクロコンピュータを用いること、言い換えれば、「パルス列Vf」(本願発明の「ドライブパルス」に相当する)も「低周波パルスVin」(本願発明の「低周波ドライブパルス」に相当する)も共にマイクロコンピュータが出力する構成とすることは、当業者であれば、容易に想到し得るものと認められる。
[相違点<3>について]
「低周波治療器」において、「治療用電気波形を発生させる電子回路を有するプリント基板」と「一対の」「治療用電極」(本願発明における「導子」に相当する)を一体的に保持することは、引用例3に第3引用発明として記載されており、本願発明における「低周波パルス発生装置」は、「治療用電気波形を発生させる電子回路」として機能する部分であることは明らかなので、かかる「低周波パルス発生装置」と一対の導子とを一体的に保持する様に構成することに、格別の創作性は認められない。
また、低周波治療器の導子を皮膚貼着性とすることは、周知慣用の事項{例えば、特開昭60-153839号公報、特開昭56-52072号公報、低周波治療器「プラージュ」のカタログ(学研電子工業(株)製造、学研ヘルスプロダクト(株)販売、1987年2月発行)参照のこと}にすぎない。
さらに、第4引用発明としてあげたイオンフォトレーゼ装置は、低周波治療器とは、薬剤の使用不使用の点に差はあるものの、共に人体に当接する一対の導子を介して生体を電流で刺激するという共通の技術分野に属するものと認められる(例えば、特開昭60-153839号公報、実公昭55-15856号公報、特開昭55-42617号公報、特開昭58-121963号公報参照のこと)ものであり、第4引用発明は、かかる「イオンフォトレーゼ用デバイス」において、「操作簡単」化し「小型軽量」化する為に、「治療パルス」を発生する機能部分として本願発明の「低周波パルス発生装置」と等価である「パワーサプライユニット」と一対の「皮膚貼着型」「導子」とを一体的に又は着脱自在に保持し、全体として「皮膚一体貼着型」としたものである。
これらを総合すると、低周波パルス発生装置と組み合わせる導子を、低周波パルス発生装置と一体的に保持すること、導子を皮膚貼着性とすることがそれぞれ個別の技術として、低周波治療器において公知(第3引用発明)及び周知であり、加えて、低周波パルス発生装置と皮膚貼着性導子とを一体的又は着脱自在に保持することが、人体を電流で刺激するという低周波治療器と共通の技術分野に属するイオンフォトレーゼ用デバイスにおいて公知(第4引用発明)である以上、当業者であれば、第1引用発明の目的である小型化に沿うように、第1引用発明の一対の皮膚当接導子を、皮膚貼着性とすると共に低周波パルス発生装置と一体的又は着脱自在に保持する様に構成することは、容易になし得ることと認められる。
Ⅴ. むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1~引用例4に記載された各発明、並びに、周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、本件審判請求人である本特許出願人は本願発明について特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別紙図面(1)
1は発振回路、2はドライバ回路、3は昇圧トランス、5は出力コンデンサ、6はスイツチング回路、7、17、27は調整回路である.
<省略>
別紙図面(2)
<省略>
1…電源、
2…マイクロコンピューター、
3…コイル、4…ダイオード、
5、7…トランジスタ、6…コンデンサ、
8…脱分極部、9…入力、
10…クロックバルス発生部、
a…関導子、b…不関導子、
c…ドライブパルスcの出力端、
d…ドライブパルスdの出力端、
RZ…人体負荷抵抗、
C-1…ドライブパルスc、
D-1…ドライブパルスd