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東京高等裁判所 平成8年(ネ)3124号 判決 1997年1月23日

控訴人(附帯被控訴人)

梅原正昭

ほか一名

被控訴人(附帯控訴人)(原告)

樋口安寿

ほか一名

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人らは、各自、被控訴人樋口安寿に対し金八五三二万九九二三円及び被控訴人樋口祐子に対し金六六万円並びに右各金員に対する平成五年九月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

二  本件各附帯控訴を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、第二審(附帯控訴を含む。)を通じてこれを二分し、その一を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。

四  この判決は、第一項1に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の申立

一  控訴人(附帯被控訴人)ら

1  原判決中、控訴人らの敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

3  本件各附帯控訴を棄却する。

4  訴訟費用は、第一、第二とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人(附帯控訴人)ら

控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

(附帯控訴)

1 原判決中、附帯控訴人ら敗訴部分を取り消す。

2 附帯被控訴人らは、各自、附帯控訴人樋口安寿に対し金一億九九八八万〇七〇三円、附帯控訴人樋口佑子に対し金四五〇万円及び右各金員に対する平成五年九月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要及び当事者の主張

本件の事案の概要及び当事者双方の主張は、次のとおり訂正するほかは、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

(損害額について)

1  被控訴人(附帯控訴人)らの主張

(1) 原判決五丁裏九行目から六丁表五行目までを次のとおり改める。

「<17> 後遺症逸失利益 一億〇三一三万七一一六円

平成七年度賃金センサス男子産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均年収五五九万九八〇〇円、六七歳までの五二年分、労働能力喪失率一〇〇パーセント。中間利息の控除につき、五二年のライプニツツ係数を用いる。

<18> 損害小計 二億五一五一万四三六七円

以上<1>ないし<17>の損害額の合計は、二億五一五一万四三六七円となる。

<19> 損害相殺(自賠責保険金の支払) 三〇七八万二六〇〇円

<20> 損益相殺後の損害小計 二億二〇七三万一七六七円

<21> 弁護士費用 二二〇七万円

<22> 損害残額合計 二億四二八〇万一七六七円」

(2) 原判決六丁表一〇行目の「二億四二二五万四七〇八」を「二億四二八〇万一七六七」に改める。

2  控訴人(附帯被控訴人)らの主張

原判決七丁裏一一行目から八丁表二行目までを次のとおり改める。

「<17> 損害相殺 三三八五万八七五四円

自賠責保険金三〇七八万二六〇〇円のほか、任意保険の支払額三〇七万六一五四円(うち、国民健康保険への求償金の支払二八〇万八六七七円を含む治療関係費二九二万〇一八四円、入院雑費一三万〇四〇〇円、転医費用一万九五七〇円、文書代六〇〇〇円)の既払金がある。」

第三証拠

原審及び当審記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四当裁判所の判断

一  損害額

次のとおり訂正するほかは、原判決の事実及び理由「第三 争点に対する判断」欄中「一 損害額」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一一丁表九行目の「付添看護費 一一〇万五〇〇〇円」を「付添看護費 一二一万五五〇〇円」に、一一丁裏三行目の「一日五〇〇〇円」を「一日五五〇〇円」にそれぞれ改める。

2  原判決一五丁表三行目の「将来の雑費 六九四万五五一二円」を「将来の雑費 八三三万四六一四円」に、右同六行目の「一日当たり一〇〇〇円」を「一日当たり一二〇〇円」に、右同九行目を「1200円×365日×19・0288=833万4614円」にそれぞれ改める。

3  原判決一七丁表一行目の「傷害慰謝料 二〇〇万円」を「傷害慰謝料 二五〇万円」に、右同三行目の「二〇〇万円」を「二五〇万円」にそれぞれ改める。

4  原判決一七丁表八行目の「損害額の合計は、一億八〇九三万七八八七円となる。」を「損害額の合計は、一億八二九三万七四八九円となる。」に改める。

二  過失割合

次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由「第三 争点に対する判断」欄中「二 過失割合(過失相殺)」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一七丁裏四行目の「一五、」の次に「二四ないし二六、二八、」を加え、右同行目の「原告安寿」の次に「、当審における控訴人梅原正昭本人尋問の結果」を加える。

2  原判決一八丁裏一〇行目の「本件交差点にさしかかつたとき、」を「右の相互通行となつた地点を通過した直後、」に改め、右同一一行目の「本件交差点に」の次に「右側から」を加える。

3  原判決二一丁表五行目から七行目までを、次のとおり改める。

「 そして、乙第一号証(実況見分調書)により認められる本件事故現場に印象された原告車による擦過痕(擦過痕は一五・九メートルに及び、衝突地点までのそれは、本件交差点の北端より三・〇五メートル北側手前の道路中央部から本件交差点の南端道路左側の衝突地点まで約八・三五メートルである。)並びに前記認定の原告車及び被告車の走行速度(原告車は制限速度を超える時速約五〇キロメートルであつたと推認され、被告車は時速約五ないし一〇キロメートルであつたと推認される。)や衝突の状況に照らすと、本件事故については、運転免許を取得しえない一五歳の被控訴人安寿が原告車を運転して一方通行路を逆走し、パトカーに停止を求められたにもかかわらず無免許運転の発覚を恐れて逆行のまま逃走し、制限速度を超えるスピードで本件交差点に接近したことがその一因となつていることは明らかであり、たまたま本件交差点の手前(北側)約三〇メートルから相互通行路となつているにしても、被控訴人安寿の無謀ともいえる無免許運転、一方通行路の逆走、制限速度違反等の行為ないし落ち度が本件事故と無関係であつたとは到底いえないところである。

以上のような、両者の基本的な優先関係に本件事故の状況やそれぞれの事情を総合して考慮すると、両者の過失割合は、控訴人正昭が六割、被控訴人安寿が四割であるとするのが相当である。」

三  過失相殺及び填補

前記認定のとおり、被控訴人安寿の過失割合は四割であるから、それぞれ過失相殺し(なお、被控訴人祐子についても被害者側の過失として斟酌する。)、既払いの自賠責保険金三〇七八万二六〇〇円及び既払いの任意保険金三〇七万六一五四円のうち本件で請求している入院雑費一三万〇四〇〇円と転医費用一万九五七〇円の合計一四万九九七〇円(乙第二七号証の一、二及び弁論の全趣旨による。なお、その余の任意保険金は被控訴人らが本件で請求していないものに充てられており、その主なものは国民健康保険への求償金の支払二八〇万八六七七円であるが、この求償金は被害者側の過失割合も加味して請求されるのが通例であるから、総損害への組入れはしない。)を被控訴人安寿の損害額からそれぞれ控除すると、その損害額は、被控訴人安寿については七八八二万九九二三円、被控訴人祐子については六〇万円となる。

(被控訴人安寿の損害計算)

1億8293万7489円×(1-0・4)=1億0976万2493円。

1億0976万2493円-(3078万2600円+14万9970円)=7882万9923円。

四  弁護士費用

本件の事案の内容、審理経過及び右認容額等の諸事情を考慮すると、被控訴人らの本件訴訟追行に要した弁護士費用は、被控訴人安寿に六五〇万円を、被控訴人祐子に六万円を認めるのが相当である。

五  被控訴人らの請求しうる損害額

以上のとおりであるから、控訴人ら各自に対し、被控訴人安寿は八五三二万九九二三円、被控訴人祐子は六六万円及びこれらに対する本件事故の日である平成五年九月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

第五結論

よつて、被控訴人らの本訴請求は、控訴人ら各自に対し、被控訴人安寿が八五三二万九九二三円、被控訴人祐子が六六万円及びこれらに対する平成五年九月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余の請求は失当として棄却すべきであるから、これと異なる原判決を右のとおり変更することとし、被控訴人らの各附帯控訴はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邊昭 永井紀昭 小野剛)

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