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東京高等裁判所 平成8年(ネ)816号 判決 1996年4月30日

控訴人

浜牧蔵

右訴訟代理人弁護士

五味正明

被控訴人

有限会社夢工房こあ

右代表者代表取締役

林今朝夫

右訴訟代理人弁護士

松村文夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求めた。被控訴人は本件口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものとみなされた答弁書には「本件控訴を棄却する」との判決を求める旨の記載がある。

二  当事者双方の主張は、原判決事実適示のとおりであるから、これを引用する。

三  証拠は、原審の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

四  当裁判所も、控訴人の本件請求は理由がないと判断するが、その理由は、原判決六丁表末行の「原告本人尋問の結果」の後に「、弁論の全趣旨」と加入し、控訴人の法人格否認の主張について次のとおり敷衍する他、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

控訴人は、本件第三者異議の訴においても法人格否認の理論が適用されるから控訴人が訴外会社に対して本件和解調書に基づき本件物件にした本件強制執行は有効なものとして排除されるべきではない旨主張する。しかしながら、そもそも権利関係の公権的な確定及びその迅速確実な実現をはかるために手続きの明確、安定を重んずる執行手続においては、その性格上、その執行力の範囲はあらかじめ債務者との関係で確定されていなければならないものであるから、仮に被控訴人が控訴人主張のように法人格を濫用して設立された会社であるとしても、控訴人と訴外会社間の本件和解調書の執行力は被控訴人に及ばないものというべきであって、被控訴人から控訴人に提起された本件第三者異議の訴において法人格否認の理論を適用して訴外会社に対する債務名義(和解調書)の執行力の範囲を被控訴人にまで拡張することは許されないというべきである。

五  よって、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官伊藤瑩子 裁判官佃浩一 裁判官升田純)

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