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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)104号 判決 1999年2月09日

東京都世田谷区南烏山5丁目2番14-101号

原告

株式会社シー・エス・ケー

代表者代表取締役

戸塚直

東京都新宿区西新宿7丁目4番5号

原告

株式会社エス・ケーテクニカ

代表者代表取締役

佐々木明宏

原告両名訴訟代理人弁理士

役昌明

東京都品川区大崎3-6-26 ニュー大崎マンション503号

被告

長谷川学

訴訟代理人弁理士

伊藤捷雄

主文

特許庁が平成7年審判第40024号事件について平成8年5月8日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  請求の趣旨

主文と同旨

2  請求の趣旨に対する答弁

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

被告は、考案の名称を「パチンコ遊技場における煙草の吸殻等の自動回収装置」とする実用新案登録第3012830号考案(平成5年5月19日出願、平成6年12月21日出願変更(平成5年法律第26号による改正後の実用新案法附則5条1項の規定による実用新案登録出願)、平成7年4月19日設定登録。以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。

原告らは、平成7年11月21日、被告を被請求人として、本件考案の実用新案登録の無効の審判を請求し、平成7年審判第40024号事件として審理された結果、平成8年5月8日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受け、同月15日にその謄本の送達を受けた。

2  本件考案の実用新案登録請求の範囲

本件明細書に記載された本件考案の実用新案登録請求の範囲の請求項4の記載は、次のとおりである。

「複数のパチンコ遊技機を並列載置した台部に沿って樋部を設け、この樋部と前記各パチンコ遊技機に対応して設けた灰皿と連通させ、前記台部の少なくとも一端部に前記樋部と連通する回収容器を設けると共に、前記樋部内に前記灰皿より投入されたタバコの吸殻を前記回収容器へ移送する移送手段を設けたものにおいて、前記樋部に沿って前記灰皿と連通している排煙ダクトを設け、この排煙ダクトに排風機を接続させると共に、前記樋部はその側部或は上部をガード板で覆ったもので構成し、このガード板を開閉或は着脱自在に構成したことを特徴とする、請求項1記載のパチンコ遊技場における煙草の吸い殻等の自動回収装置。」(別紙図面(1)参照)

3  審決の理由の要点

(1)  引用例

特開昭60-45371号公報(本訴の甲第3号証。以下「引用例1」という。)には、パチンコ台の近傍に据え付けられた灰皿と、灰皿の中の吸殻、パチンコ玉等を搬送するための灰皿の底部と連通する管路と、この管路を介して落下する吸殻、パチンコ玉等をベルト及びキャリアよりなるベルトコンベアと、ベルトコンベア上のパチンコ玉を磁気によって分離する手段と、分離された吸殻及びパチンコ玉をそれぞれ収納する収納箱とを備えた吸殻等の収集分別装置が記載されており、2頁左下欄12ないし17行目及び図面第4図には、灰皿と連通したダクトを設け、このダクトを空気吸引手段と接続してダクト内を負圧にする技術手段が開示されている。

特開昭53-46830号公報(本訴の甲第4号証。以下「引用例2」という。)には、台枠内に設けられて走行する無端搬送帯と、この無端搬送帯上に着脱自在に載置されると共にガイド片を設けたバケットと、パチンコ機列に設けられ、かつ、バケットが搬送される間にバケットのガイド片により開閉動作を行う下蓋を取り付けた灰皿とを備えたパチンコ機列における煙草の吸殻等の回収装置が記載されている。

特開昭61-50581号公報(本訴の甲第5号証。以下「引用例3」という。)には、列状に配列した各パチンコ機の前方に突出して設置した灰皿の底面をタバコの吸殻が落下しやすい網目状に形成し、かつ、各パチンコ機の灰皿の下方と連通して底面から落下したタバコの吸殻を載せて列状に配列したパチンコ機列の一方から他方に搬送するためのベルトコンベアを回動可能に設置し、ベルトコンベアで搬送された吸殻を溜めるための吸殻回収ケースをベルトコンベアの他方端位置に設置したパチンコ機用タバコの吸殻処理装置が記載されている。(別紙図面(2)参照)

(2)  対比

本件考案の請求項4と引用例1ないし3記載の技術とを対比すると、本件考案の請求項4の「樋部はその側部或は上部をガード板で覆ったもので構成し、このガード板を開閉或は着脱自在に構成した」点については、引用例1ないし3には何ら記載されておらず、また、その示唆もない。

(3)  当審の判断

本件考案の請求項4は、上記のとおり、引用例1ないし3に記載されておらず、かつ、その示唆もされていない特有の構成を具備することによって、本件明細書に記載された格別な効果を奏するものであり、このような効果は、引用例1ないし3記載の技術には期待することができないものである。

したがって、本件考案の請求項4は、引用例1ないし3記載の技術から当業者が極めて容易に想到し得るものではない。

4  審決を取り消すべき事由

審決の理由中(1)は認め、(2)、(3)は争う。

審決は、次のとおり、本件考案の請求項4と引用例3記載の技術との対比についての認定を誤り、その結果、本件考案の請求項4が引用例1ないし3記載の技術に基づいて極めて容易に考案をすることができたものではないと判断したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)  引用例3における「カバー18」は、機能上、本願考案の請求項4の「樋部」に相当するものである。

すなわち、引用例3には、「ベルトコンベア9にはカバー18がパチンコ機列5の台下板19に蝶番20を介して取付けられ、カバー18を第4図2点鎖線のように開くことによってベルト9の掃除を一層確実に行うことができる。」(2頁左下欄2行ないし6行)という記載があるところ、ここにいう「カバー18」は、いわゆるカバーとして機能するとともに、ベルト9からこぼれ落ちたものを受け止める機能を有しており、本件考案の請求項4の「樋部」と同じ機能を有するものである。

また、本件考案の請求項4における樋部4は、それのみで吸殻回収装置を構成するものではなく、牽引索9、摺動体26、可動板28よりなる移送手段25とともに吸殻回収装置を構成し、その側部をガード板で覆っているものである。一方、引用例3の第1図及び第4図には、開閉自在のカバー18によって、ローラ8、8の間に張り渡されたベルト9で構成されたベルトコンベア7よりなる吸殻回収装置を覆う構成が示されている。したがって、吸殻回収装置の一部である「樋部の側部」のみをガード板で覆うという本願考案の構成は、引用例3に示唆されているということができる。

(2)  被告は、引用例3記載の技術においては、第4図に示された「カバー」と、第5図ないし第7図に示された「吸殻受樋」とで用語を使い分けているから、引用例3の「カバー」と本件考案の請求項4の「樋部」とは異なるものである旨主張するが、この主張は、上記引用例3の2頁左下欄2行ないし6行の記載を看過したものであって、理由がない。

(3)  よって、本件考案の請求項4の「樋部はその側部或は上部をガード板で覆ったもので構成し、このガード板を開閉或は着脱自在に構成した」との点については、引用例1ないし3には何ら記載されておらず、また、その示唆もないとした審決の認定は誤っており、その結果、審決は、本件考案の請求項4は、引用例1ないし3から当業者が極めて容易に想到し得るものではないと判断したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

第3  請求の原因に対する被告の認否及び主張

1  請求の原因1ないし3は認め、同4は争う。審決の認定判断は、正当であって、原告らの主張する審決取消事由は理由がない。

2  被告の主張

引用例3の「カバー」と本件考案の請求項4の「樋部」とは、明らかに異なった技術的意義を有するものである。

すなわち、カバーは、単なる覆いであって、これがなくとも装置は機能するのに対して、樋部は、装置本体を構成するものであって、これがないと装置は機能しないものである。引用例3の「カバー」と本件考案の請求項4の「樋部」とは、その目的、構成及び作用効果が異なる別の部材であって、同視することはできない。このことは、引用例3において、第4図に指示記号18で示したものを「カバー」、第5図ないし第7図に指示記号22で示したものを「吸殻受樋」としてその用語を使い分けていることからも明らかである。要するに、引用例3の第4図に指示記号18で示されたものは、単なる「カバー」であって、これがなくとも装置は機能するのに対して、第5図ないし第7図に指示記号22で示されたものは、「吸殻受樋」であって、本件考案の「樋部」に当たり、これがないと装置は機能しない。

そして、引用例3の第5図ないし第7図に示された「吸殻受樋」には、その一部をガード板で構成し、このガード板を開閉あるいは着脱自在にした構成は、引用例3のどこにも記載されていない。

よって、審決の認定は、正当であって、取り消されるべき理由はない。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本件考案の実用新案登録請求の範囲)、同3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第2  本件考案の概要

甲第2号証(本願明細書)によれば、本件明細書には、次の記載があることが認められる。

1  産業上の利用分野

「この考案は、パチンコ遊技場におけるパチンコ遊技機の灰皿より煙草の灰や吸殻等を自動的に回収する自動回収装置に関する。」(段落番号【0001】。以下同じ)

2  従来の技術

「従来、この種の自動回収装置として、複数のパチンコ遊技機を並置した通称“島”と称せられる台部の一端部或は両端部に回収容器を設け、この各回収容器の間を水平に走る樋部を各灰皿と連通して設け、この樋部上に各灰皿より落下した灰や吸殻等を回収容器へ移送する移送手段を設置すると共に、前記樋部に煙草の煙を排気させる排風機を接続したものが公知である。」(【0002】)

3  考案が解決しようとする課題

「この従来の自動回収装置は、排風機を接続した樋部が同時に排煙ダクトとなるために、暫く使用すると樋部や移送手段に粘着性のあるヤニが灰と共に付着し、移送手段の円滑な移送を阻害することになる上に、このヤニの臭気が遊技場内に充満するようになってしまうという問題が生じた。

また、樋部は複数の灰皿と口径の大きな連通孔を介して連通させられているために、樋部内の煙を排気させるためには強力なファンを必要とし、それがコストアップと騒音の原因となるという問題もあった。

この考案の目的は、樋部や移送手段にヤニや灰が付着するのを可及的に防止することができる共に、内部を容易に掃除することができるように構成したパチンコ遊技場における煙草の吸殻等の自動回収装置を提供せんとするにある。」(【0003】ないし【0005】)

4  構成

上記目的を達成するために、本件考案は、実用新案登録請求の範囲記載の構成を採用し、「複数のパチンコ遊技機を並列載置した台部に沿って各灰皿と連通させた樋部を設け、台部の少なくとも一端部に樋部と連通する回収容器を設けると共に、樋部内に灰皿より投入されたタバコの吸殻を回収容器へ移送する移送手段を設けたものにおいて、樋部に沿って灰皿と連通している排煙ダクトを設け、この排煙ダクトに排風機を接続させたものである。

その際にこの考案は、排煙ダクトや樋部を着脱自在或は交換自在に構成することができる。

さらにこの考案は、樋部はその側部或は上部をガード板で覆い、このガード板を開閉或は着脱自在に構成することができる。

そしてこの考案は、移送手段を樋部に沿って設けた牽引索とこの牽引索に取り付けられた移送体或は樋部に沿って配置されたエンドレスベルトで構成することができる。」(【0006】ないし【0009】)

5  作用効果

「灰皿より樋部に落下したタバコの吸殻や灰は移送手段により回収容器に移送され回収される。その際に、灰皿上に置かれ或は樋部上に落下した火のついた煙草より立ち昇る煙は排風機により灰皿と連通している排煙ダクトを介して外部へ排気される。排煙ダクトや樋部を着脱自在或は交換自在に構成すると、該排煙ダクトがヤニで詰まったり、樋部にヤニが付着する頃を見計らって取り外して掃除したり、或は新品のものや掃除後のものと交換することができるものである。」(【0010】)

「この考案は以上のように構成したので、パチンコホールの従業員の手をわずらわせことなく煙草の灰や吸殻等を回収処理できることから人手を省略できた上で衛生的である上に、灰皿や樋部上にある煙草から立ち昇る煙を専用の排煙ダクトで排気できるので、煙が樋部やホール内に充満するのを防止できるものである。

その際に装置を簡単に分解できるように構成することによって樋部や移送手段を掃除し、連通管や排煙ダクトを容易に交換することができるので、装置のメンテナンスが容易となり、長時間に渡って故障のない円滑な駆動を行わせることができるものである。」(【0021】ないし【0022】)。

第3  審決を取り消すべき事由について判断する。

1  まず、本件考案の請求項4の「樋部」が、引用例3に開示されているか否かについて検討する。

(1)  「樋」とは、通常の用語例に従えば、「屋根を流れる雨水を受けて地上に流す溝状、筒状の装置。金属薄板、竹などを用いる。」(広辞苑第4版)、「屋根に落ちた雨水を集めて地上に流す装置」(大辞林)などといった意味を有するものである。

本件考案の実用新案登録請求の範囲の請求項4には、「複数のパチンコ遊技機を並列載置した台部に沿って樋部を設け、この樋部と前記各パチンコ遊技機に対応して設けた灰皿と連通させ、」、「前記樋部内に前記灰皿より投入されたタバコの吸殻を前記回収容器へ移送する移送手段を設けたもの」、「前記樋部はその側部或は上部をガード板で覆ったもので構成し」という記載があって、同記載によれば、本件考案の請求項4にいう「樋部」とは、<1>パチンコ遊技機を並列載置した台部に沿って設けられている、<2>パチンコ遊技機に対応して設けた灰皿と連通しており、上記灰皿から投入されたタバコの吸殻を受けている、<3>その内側には移送手段が設けられ、同移送手段によって、上記タバコの吸殻を回収容器へ移送する、<4>樋部は、その側部あるいは上部がガード板で覆われている、という構成及び機能を有するものであって、上記「樋」の通常の用語例に照らすと、本件考案の請求項4の「樋部」は、並列載置されたパチンコ遊技機に対応して設けられた灰皿から落下するタバコの吸殻を、内蔵する移送手段で排出する仕組みとなっており、かつ、その側部あるいは上部がガード板で覆われた溝状ないし筒状の形状をした構造を意味するものと認められる。

(2)  次に、引用例3記載の技術について考察するに、引用例3に、列状に配列した各パチンコ機の前方に突出して設置した灰皿の底面をタバコの吸殻が落下しやすい網目状に形成し、かつ、各パチンコ機の灰皿の下方と連通して底面から落下したタバコの吸殻を載せて列状に配列したパチンコ機列の一方から他方に搬送するためのベルトコンベアを回動可能に設置し、ベルトコンベアで搬送された吸殻を溜めるための吸殻回収ケースをベルトコンベアの他方端位置に設置したパチンコ機用タバコの吸殻処理装置が記載されていることは、当事者間に争いがない。

ところで、上記記載から、上記ベルトコンベア及びその周辺の構造がどのようになっているか必ずしも明らかでないところ、甲第5号証によれば、引用例3には、上記ベルトコンベアの周辺構造について、「ベルトコンベア9にはカバー18がパチンコ機列5の台下板19に蝶番20を介して取付けられ、カバー18を第4図2点鎖線のように開くことによってベルト9の掃除を一層確実に行うことができる。」(2頁左下欄2行ないし6行)という記載があり、また、図面の第4図には、ベルトコンベアの側方及び下方を一体的に覆うカバー18が、パチンコ機列5の台下板19の下方位置に設けた蝶番20を支点にして開閉自在に取り付けられることが図示されている。

上記認定の事実によれば、引用例3記載の技術においては、列状に配列された各パチンコ機の灰皿の底面が網目状になっており、その下方には灰皿から落下するタバコの吸殻を受けて吸殻回収ケースに搬送するためのベルトコンベアが設置されており、また、パチンコ機列の台下板の下方位置には、カバーが、蝶番を支点にして開閉自在に取り付けられ、これがベルトコンベアの側方及び下方を一体的に覆っており、カバーを含めた全体として、ほぼ筒状の形状をした構造が開示されていることが認められる。

そうすると、引用例3記載の技術において、パチンコ機列の台下板と、ベルトコンベアの側方及び下方を一体的に覆っているカバーとで形成されている部分は、本件考案の請求項4の「樋部」に相当するものと認められる。

2  そこで、本件考案の請求項4の「樋部はその側部或は上部をガード板で覆ったもので構成し、このガード板を開閉或は着脱自在に構成した」という構成が、引用例1ないし3には何ら記載されておらず、また、その示唆もないとする審決の判断の当否について検討する。

(1)  本件考案の請求項4の「樋部」は、本件考案の実用新案登録請求の範囲の請求項4に記載のとおり、「その側部或は上部をガード板で覆ったもので構成し、このガード板を開閉或は着脱自在に構成した」ことを特徴とするものである。

ところで、上記の「ガード板」について、実用新案登録請求の範囲にはその技術的意義について特段の記載がないが、前記第2の2ないし4に認定したとおり、本件明細書の考案の詳細な説明中には、「この考案は、排煙ダクトや樋部を着脱自在或は交換自在に構成することができる。」、「排煙ダクトや樋部を着脱自在或は交換自在に構成すると、該排煙ダクトがヤニで詰まったり、樋部にヤニが付着する頃を見計らって取り外して掃除したり、或は新品のものや掃除後のものと交換することができる」、「この考案は以上のように構成したので、パチンコホールの従業員の手をわずらわせことなく煙草の灰や吸殻等を回収処理できる」という記載があり、同記載によれば、本件考案の請求項4の「ガード板」は、樋部の側部あるいは上部を覆い、開閉あるいは着脱自在に構成されていることで、樋部や移送手段を掃除することが容易になるという技術的意義を有するものと認めることができる。

(2)  他方、引用例3の「カバー」は、前記1(2)認定のとおり、パチンコ機列の台下板の下方位置に、蝶番を支点にして開閉自在に取り付けられ、これがベルトコンベアの側方及び下方を一体的に覆うという構成となっているものであり、また、引用例3には、前記1(2)認定のとおり「ベルトコンベア9にはカバー18がパチンコ機列5の台下板19に蝶番20を介して取付けられ、カバー18を第4図2点鎖線のように開くことによってベルト9の掃除を一層確実に行うことができる。」という記載があるのであって、引用例3の「カバー」が、カバーそれ自体及びベルトコンベアの掃除を容易にすることは明らかである。

(3)  そうすると、引用例3の「カバー」は、本件考案の請求項4の「ガード板」と対比して、樋部(引用例3では、パチンコ機列の台下板と、ベルトコンベアの側方および下方を一体的に覆っているカバーとで形成されている部分)の側部を覆っているという点で同一であり、かつ、その技術的意義も共通している。なお、引用例3の「カバー」は、樋部の側部のみならず下方をも覆っているので、樋部の底部まで開閉自在となっているという点で、本件考案と相違しているものの、これは当業者にとって単なる設計変更の域を出ないものというべきである。

(4)  被告は、引用例3の「カバー」と本件考案の請求項4の「樋部」とは、明らかに異なった技術的意義を有するものである旨主張する。

しかしながら、先に認定判断した本件考案の請求項4の「樋部」及び引用例3記載の各技術内容に照らすと、上記「樋部」は、引用例3におけるパチンコ機列の台下板と、ベルトコンベアの側方及び下方を一体的に覆っているカバーとで形成されている部分の全体と対比することができるものであって、単なる覆いである「カバー」と対比すべきであるとする根拠はないから、被告の上記主張は失当である。

その他の被告の主張も、前記認定判断に照らして採用することができない。

(5)  以上によれば、本件考案の請求項4の「樋部はその側部或は上部をガード板で覆ったもので構成し、このガード板を開閉或は着脱自在に構成した」点については、引用例3には何ら記載されておらず、また、その示唆もないとした審決の認定は誤っており、この認定に基づいて、本件考案は、引用例1ないし3記載の技術から当業者が極めて容易に想到し得るものではないとした審決の判断は、違法であって、この違法は審決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

3  そうすると、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は、理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成11年1月26日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)

別紙図面(1)

<省略>

別紙図面(2)

<省略>

別紙図面(2)

<省略>

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