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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)301号 判決 1999年2月18日

ドイツ連邦共和国、ディー-7550 ラシュテット、

ケーレルーストラッセ31番、ピー・オー・ボックス 2162

原告

シュティールレンーマッケ・アクチェンゲゼルシャフト

代表者

クリストフ・シュタイメルヘリベルト・バルハウス

訴訟代理人弁護士

吉利靖雄

弁理士 青山葆

河宮治

京都市中京区西ノ京桑原町1番地

被告

株式会社 島津製作所

代表者代表取締役

藤原菊男

訴訟代理人弁理士

西岡義明

喜多俊文

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1  原告の求めた裁判

「特許庁が平成4年審判第10315号事件について平成8年7月4日にした審決を取り消す。」との判決

第2  事案の概要

1  特許庁における手続の経緯

被告は、名称を「手術台用移動台車」とする特許第1449489号発明(本件発明。昭和55年8月30日特許出願(特願昭55-120542号)、昭和62年11月19日出願公告(特公昭62-55422号)、昭和63年7月11日設定登録)の特許権者である。

原告は、平成4年5月28日、本件特許につき無効審判を請求し、平成4年審判第10315号事件として審理されたが、平成8年7月4日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があった。その謄本は同年8月1日原告に送達され、原告のため出訴期間90日が付加された。

2  本件発明の要旨

手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行なうコラム部を上下駆動機構によって上下動させる形式の手術台において、コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠と、この支持枠の下方に取り付けられた手術台移動用車輪とを備え、前記支承部の高さはコラム部または上下可動部が最下降したときこのコラム部または上下可動部の側の支承位置の高さより高く設定され、コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するように構成されていることを特徴とする手術台用移動台車。(実施例につき、別紙図面1参照)

3  審決の理由の要点(本判決で項目番号を付した。審判における甲第1ないし第25号証(甲第7号証を除く。)は、本訴のものと番号を共通にする。)

3-1 本件発明の要旨は前項のとおりと認める。

3-2 審判における原告(請求人)の主張、証拠方法

原告は、本件特許は、特許法123条1項1号の規定により無効とすべきである旨主張し、次の理由を掲げた。

無効理由(1)本件特許請求の範囲に記載された発明(本件発明)は、甲第2ないし第6号証並びに甲第17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものである。

無効理由(2)本件発明は、3名の証人の証言から明らかなように、その出願日前に日本国内において公然と使用されたものであるから、特許法29条1項2号の規定に違反して特許されたものである。

原告が審判で示した証拠方法は以下のとおりである。

(1)  検証物 検甲第1号証及び検証により証明しようとする内容

(2)  書証

甲第1号証;「MEDIZINAL-MARKT ACTA MEDICO TECHNICA」1965年11月527~528頁

甲第2号証;特開昭53-20691号公報

甲第3号証;米国特許第3362704号明細書

甲第4号証;特開昭53-136388号公報

甲第5号証;実開昭54-112270号公報

甲第6号証;特開昭52-149737号公報

甲第8号証;「内視鏡台1531の納入リスト」の一部の写し

甲第9号証;「新マッケ手術台1120の納品リスト」の一部の写し

甲第10号証;「京都市立病院の固定資産台帳」の一部の写し

甲第11号証;「産業医科大学の備品台帳」の一部の写し

甲第12号証;「国立がんセンターの備品台帳」の一部の写し

甲第13号証;「内視鏡台1531の据付指示書」の写し

甲第14号証;「マッケ手術台1120.07の据付指示書」の写し

甲第15号証;「証明書Ⅱ」三村昭夫作成

甲第16号証;「証明書Ⅰ」三村昭夫作成

甲第17号証;米国特許第3188659号明細書

甲第18号証;ラシュタット第一公証役場場長の認証に係る「宣誓に代わるべき証言書」パウル・オズバルト・ペギーニ作成

甲第19号証;ラシュタット第一公証役場場長の証明に係る「DER NEUE MAQUET」と題するパンフレット

甲第20号証;ラシュタット第一公証役場場長の認証に係る「DAS KRANKENHAUS」第57巻、1965、8月号

甲第21号証;ラシュタット第一公証役場場長の認証に係る「宣誓に代わるべき証言書」クラウス・フェッテル作成

甲第22号証;マッケ社製ミクロサージェリー手術台(1120系の一つである1122.00型)を撮影した写真A~M

甲第23号証;「証明書」林文彦作成

甲第24号証;「リース契約書」の一部の写し、及び「御見積書」の一部の写し

甲第25号証;「リース物件受領書」の一部の写し、及び「納品書」の一部の写し

(3)  人証;証人の氏名(三村昭夫、黒岩安彦、阿部郁生)と住所、及び証人により立証しようとする内容とそれぞれの尋問事項

3-3 審決の判断

3-3-1 無効理由(1)についての検討

3-3-1-1 原告が提示した甲第2ないし第6号証及び第17号証には、次の事項がおのおの記載されている、

甲第2号証

手術台柱部に昇降自在に配置した昇降柱の上部に手術台上板受台を設け、この手術台上板受台に分離可能に手術台上板を配置するとともに走行車輪を取り付けた前部が開口したストレッチャーを配備する。昇降柱の昇降作用を利用することにより、手術台上板をストレッチャーに、又はストレッチャーから手術台上板受台に移し替えること。

甲第3号証

昇降自在なコラムの中央部に分離可能に手術台を醇置するとともに手術台を支持する昇降自在な支持手段を設けた搬送キャリッジを配備する。コラム及び支持手段の昇降作用を利用することにより、手術台を搬送キャリッジに、又は搬送キャリッジからコラムの中央部に移し替えること。

甲第4号証

プラットホームと一体になった基台の下面に出没自在な走行輪と脚輪とを設け手術台を移動可能にすること。

甲第5号証

台車の中央に、下端にマンホール蓋等の重量物を保持する保持要素を備えた昇降装置を設けた台車式の昇降移送機。

甲第6号証

昇降自在な荷物載置用フランジを有する手押車。

甲第17号証

固定又は可動自在な脚部を有する昇降自在なコラムの上部にプレートを分離可能に載置するテーブル構造体を設けるとともにこのプレートを搬送する搬送車を配備する。コラムの昇降作用を利用することにより、搬送車に載置したプレートをテーブル構造体に、又はテーブル構造体に載置したプレートを搬送車に移し替えること。

3-3-1-2 そこで、本件発明と甲第2ないし第6号証及び第17号証に記載さ軸たものとを比較する。

(1)  甲第2、第3及び第17号証に記載のものでは、「ストレッチャー」、「搬送キャリッジ」及び「搬送車」に移載するのはコラム部から分離したベッド部である。

これに対し、本件発明では、ベッド部との連結を行うコラム部又は上下可動部を支持枠で支承することにより、手術台用移動台車には、手術台を移載するようにしたのであるから、本件発明と上記各号証に記載のものとは、移載し移動させようとする対象が相違する。

このため、上記各号証には、本件発明の「コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠と、この支持枠の下方に取り付けられた手術台移動用車輪とを備え、前記支承部の高さはコラム部または上下可動部が最下降したときこのコラム部または上下可動部の側の支承位置の高さより高く設定され、コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上する」点の構成は何も記載されていないしこの構成を示唆する記載もない。

(2)  次に、甲第4号証に記載のものと比較すると、同号証に記載のものは、基台の下面に出没自在に設けた走行輪及び脚輪により、手術台自体を移動するものであるから、そもそも、手術台用移動台車を必要としないものである。

これに対し、本件発明は、「コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠と、この支持枠の下方に取り付けられた手術台移動用車輪とを備え、前記支承部の高さはコラム部または上下可動部が最下降したときこのコラム部または上下可動部の側の支承位置の高さより高く設定され、コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上する」の点の構成を具備すう手術台用移動台車に関するものであるから、同号証に記載のものは、本件発明と著しく構成が相違する。

(3)  甲第5、第6号証に記載のものと比較すると、第5号証に記載のものは、マンホール蓋等の重量物を移送する昇降移送機に、また、第6号証に記載のものは、手押車に関するものであり、手術台用移動台車に関する記載がないから、各号証は本件発明とは無関係なものである。

(4)  そして、上記甲第2ないし第6号証並びに甲第17号証に記載のものを考え併せても、本件発明を示唆する記載を見いだすことができないので、本件発明は、甲第2ないし第6号証並びに第17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-3-2 無効理由(2)についての検討

3-3-2-1 原告が本件発明はその出願日前に日本国内において公然と使用されたものであるとして提示した検甲第1号証、甲第1号証及び甲第8ないし第16号証、甲第18ないし第25号証並びに3名の証人により証明しようとする事項には、次のことがおのおの記載されている。

なお、検証の対象物を記載した図面又はひな形として提出した検甲第1号証は、書証として提出した甲第1号証を示すものと認められるので、検証の対象物は、甲第1号証に記載された事物として認定した。

甲第1号証

「新マッケの優秀性は抜きんでたものとなっている。移載室において、患者は、搬送車上に支持された天板上に横たえられ、その後、麻酔室に運ばれそこで麻酔が施される(写真1)。ここで麻酔を施された患者は、その時の手術に必要な姿勢に保持される。続いて、天板上の患者は、軽く動かすことができる搬送車によって手術室に運ばれ(写真2)、そこで固定して据付けられたコラムに移載される(写真3)。搬送車からの天板の切り離しは、自動化された工場において誰もが見聞しているように、昇降の原理によって行われる。」(527頁35~47行)

甲第8号証

Datumの欄に、09.02.1976、~02.02.1979、が、Model-Nrの欄に、1531.90、が記載されている。

甲第9号証

Yearの欄に1968~1980が、Hospitalの欄に各種病院名が、The New Maquet Op-Table欄の1120.00、1120.21、1120.12、がOthers欄に、各種病院名と対応して数字が記載されている。

甲第10号証

品目・形式の欄に、内視鏡用検診台1531-90、1000-47、1120-91、が、取得年月日の欄に、52、3、25が記載されている。

甲第11号証

品名の欄こ、マッケ手術台~眼科テーブルトップが、取得年月日の欄に、S、54、03、31が、規格の欄に、1531、1120.00、1120.21、1120.17、が記載されている。

甲第12号証

分類・庁用品の欄に、54、3、31の、7、マッケ内視鏡用テーブル、53、3、29、譲受供用、ニューマッケ等が記載されている。

甲第13号証

「マッケは据付の補助具として運搬のための据付スタンドを用意している。それは、走行輪を備えた2つの側枠と3つの連結管からなる。」(5頁12~15行)

「据付スタンドに取付けるために、まずパレットの締付シュー1をゆるめる。さらに、手動操作のためのカバースクリュー11、12、13および表側のカバーパネル14を取外す。その後、クランクハンドル15を11にねじ込み、支持面を据付スタンドの一方の側枠のねじ切りパイプ2がコラムのねじ穴12、13にねじ込むことができる高さまで持上げられる。いま-つの据付スタンドの側枠は連結管を備えており、両方の当て金3がコラムヘッド下方のコラムの左右で把持されるようにコラムに組付けられる。

両方の側枠は3つの連結管により相互に結合される。スプリットピンが両側枠の連結を安定化する。

クランクハンドルによってコラム脚部を持上げ、内視鏡用手術台を据付スタンドによって底板上まで移動させる。」(6頁1~23行)

甲第14号証

「手術台を据付用台車(据付スタンド)上に移載するために、パレットのクランプ(2)を緩める。さらに、手動操作のためのカバースクリュー、ケースシート(3)およびロック用レバーを取除く。

クランクハンドル(4)を開口(4a)にねじ込み、コラム頂部を、据付用台車の片側の2つのねじ切り位置決めスピゴット(5)が手動操作のためのカバースクリュー穴内に位置するまで持上げる。」(7頁)

「横わたしの連結管を有する据付用台車のいま一方の半分を、2つの舌部(5)が、コラム頂部の下方でコラムの左右を通るように、位置決めする。据付用台車の両方の分割体は3本の横わたし連結管によって相互に結合されロック用スクリューで固定される。」(8頁)

「クランクによってコラムベースを持上げる。」(9頁)

甲第15号証

1120型、1531型マッケ手術台の据付スタンドは、本件特許の出願がなされる前病院内において公然と使用されたこと。

甲第16号証

1120型マッケ手術台の据付スタンドは、本件特許の出願より12年も早い1968年(昭和43年)に最初に日本に導入されて以来、毎年行われる各種病院展や医療機器展示会における1120型マッケ手術台の据付けに公然と使用きれたこと。

甲第18号証

1120/1531型手術台のためのマッケ据付用台車は、1968年から1980年までの間、日本国内における公開の年次病院展における公開の据え付けにより、よく知られており、それ故に、その病院展への出品者も知ることができたこと。

甲第19号証

各種マッケ手術台の構成、マッケ手術台の使用形態、搬送車を利用した患者の移送・治療形態の概要説明。

甲第20号証

マッケ社は、ドルトムントにおいて、低位置に設置される下部と搬送可能な天板とを備えた手術台“新マッケ”の極めて大規模なプログラムを公表した。医長と手術助手は、この解決手法に大きな感銘を受けた。なぜならば、そのプログラムは手術予備室における患者の移し変えを可能にしたからである。さらに、新式の分離型ベッドは、ベッドの下半分を下降させることによって、ほんのわずかの空間しか必要とせずしかも一人の看護助手によってすべてを操作することができること。

甲第21号証

私は、1962年以来、1120型手術台(新マッケ)の開発に携わってきたこと。1965年5月19目から5月22日まで開催された“病院施設のための専門展示会(FAB)1965”のことを今でも非常によく憶えており、1120型手術台はその際展示されたこと。及び新しく印刷された“新マッゲ”と題するパンフレット(印刷番号V/565)が任意の興味を持った見学者に手渡されたことを確信をもって言明すること。

甲第22号証

写真A~Dには、コラム本体のヘッド部にカバープレートを取り付けた手術台の構成が、また写真E~Fには、コラム本体のヘッド部のカバープレートを取り外した状態で、上下可動部の上面に取り付けられた、テーブルトップを、X、Y2方向にスライドさせるスライド杆と駆動機構を備えた矩形状の台枠を組み込んだ手術台の構成が、更に、写真G~Mには、上記台枠が具備するスライドの一部を走行輪付きのスタンドにより支承させた構成が示されている。

甲第23号証

1122.00ドイツマッケ社製ミクロサージャリーテーブルコラム1台を1978年購入したこと。

甲第24号証

リース契約書(昭和53年12月18日)の品名及び摘要欄に、マッケーミクロサージェリー手術台が、御見積書(昭和53年12月12日)、No.001850の品名及び摘要欄に、“マッケーミクロサージェリー手術台”が記載されている。

甲第25号証

納品書(昭和54年1月10日)の品名の欄に、“マッケーミクロサージェリー手術台”が記載されている。

証人三村昭夫

昭和55年当時マッケ手術台の輸入・販売を担当しており、多数台を日本各地の病院に納入したこと、及びこれらに関する尋問内容

証人黒岩安彦

昭和55年当時、多数の病院にマッケ手術台を納入したこと及びその据付けに際しては、甲第12号証や甲第13号証に指示された方法で走行輪付き据付スタンドを用いたこと、及びこれらに関する尋問内容

証人阿部郁生

昭和54年に、国立がんセンターへの内視鏡用テーブル1531等の設置に立ち会ったこと、及びこれらに関する尋問内容

3-3-2-2 原告が、3名の証人の証言により立証しようとしている事項は、本件発明は、その出願日の前の昭和54、55年に日本国内の多数の病院に納入されたマッケ手術台1531及び1120を搬送するための据付台車の構造及びその操作方法等において公然と使用されたことにあるものと認められる。

(1)  そして、これら手術台を搬送するための据付台車の構造、操作方法、さらに使用状況等の概要を記載したものとして甲第1号証、第13号証、第14号証及び第22号証を提示しているので、これら各号証に記載のものを検討する。

(a) 甲第1号証には、搬送車上に支持された天板上に横たえられた患者が、麻酔室や手術室に移動し、手術室ではコラムに移載されることが、図面とともに記載されているが、同号証に記載のものでは、搬送車には、コラム部から分離したベッド部を移載する構成である。

これに対し、本件発明は、ベッド部との連結を行うコラム部又は上下可動部を支持枠で支承することにより、手術台用移動台車には、手術台を移載するようにしたのであるから、本件発明と上記号証に記載のものとは、移載し移動させようとする対象が相違する。

このため、甲第1号証には、本件発明の「コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠と、この支持枠の下方に取り付けられた手術台移動用車輪とを備え、前記支承部の高さはコラム部または上下可動部が最下降したときこのコラム部または上下可動部の側の支承位置の高さより高く設定され、コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上する」点の構成は何も記載されていない。

なお、原告は、甲第1号証を補強するため、甲第19号証、第20号証を提出しているが、甲第19号証の「DER NEUE MAQUET」と題するパンフレットに記載のものは、各種マッケ手術台の構成、マッケ手術台の使用形態、搬送車を利用した患者の移送・治療形態の概要説明であり、その第5~9頁に図面とともに記載された搬送車を利用した患者の移送・治療形態からは、搬送車上に支持された天板上に横たえられた患者が、麻酔室や手術室に移動し、手術室ではコラムに移載されることをうかがい知るだけにすぎず、また、甲第20号証の「DAS KRANKENHAUS」第57巻、1965年8月号、に記載のものからは、マッケ社が公表した“新マッゲ”は、低位置に設置される下部と搬送可能な天板とを備えた手術台であることをうかがい知るだけにすぎないため、これら各号証からは、本件発明の上記点の構成を見いだすことができない。

(b) 次に、甲第13号証には、「内視鏡テーブル1531」に使用する据付けスタンドの操作方法が記載されている。これによると、据付スタンドに取り付けるために、まずパレットの締付シュー1を緩め、次いで、カバースクリューシュ11、12、13及び表側のカバーパネル14を取り外した後、クランクハンドル15を11にねじ込み、コラムの支持面を据付スタンドの一方の側枠のねじ切りパイプ2が、コラムのねじ穴12、13にねじ込むことができる高さまで持ち上げる。その後、いま一つの据付スタンドの側枠は連結管を備えており、両方の当て金3がコラムヘッド下方のコラムの左右で把持されるようにコラムに組み付けた後、両方の側枠は3つの連結管により相互に結合し、スプリットピンが両側枠の連結を安定化する。そして、クランクハンドルによってコラム脚部を持ち上げる構成であるから、同号証に記載の据付スタンドでは、コラム脚部を持ち上げる前に、既にコラムヘッドは据付スタンドに組み付けられていると解される。

これに対し、本件発明の手術用移動台車は、発明の詳細な説明に記載されているように、可動部の下降によってコラム部の下面が支承部に当接し、さらに下降を続けると支承部は所定の高さを有するので手術台が逆に浮上するものであるから、可動部が下降しコラム部の下面が支承部に当接するまでは、支持枠の支承部とコラム部の下面とは離れていると認められる。

したがって、同号証には、本件発明の「コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠」の点の構成弦記載されていない。

(c) 甲第14号証には、「マッケ手術台1120.07」に使用する据付スタンドの操作方法が記載ざれているが、これによると、手術台を据付用台車(据付スタンド)上に移載するために、パレット上のクランプ(2)を緩めた後、手動操作のためのカバースクリュー、ケースシート(3)及びロック用レバーを取り除く。次いで、クランクハンドル(4)を開口(4a)にねじ込み、コラム頂部を、据付用台車の片側の2つのねじ切り位置決めスピゴット(5)が手動操作のためのカバースクリュー穴内に位置するまで持ち上げる。横わたしの連結管を有する据付用台車のいま一方の半分を、2つの舌部(5)が、コラム頂部の下方でコラムの左右を通るように位置決めする。次いで、据付用台車の両方の分割体は3本の横わたし連結管によって相互に結合されロック用スクリューで固定された後、クランクによってコラムベースを持ち上げる構成であるから、同号証に記載のものは、コラム脚部を持ち上げる前に、既にコラム頂部は据付スタンドに組み付けられていると解される。

これに対し、本件発明の手術用移動台車は、発明の詳細な説明に記載されているように、可動部の下降によってコラム部の下面が支承部に当接し、さらに下降を続けると支承部は所定の高さを有するので手術台が逆に浮上するものであるから、可動部が下降しコラム部の下面が支承部に当接するまでは、支持枠の支承部とコラム部の下面とは離れていると認められる。

したがって、同号証には、本件発明の「コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠」の点の構成は記載されていない。

(d) 甲第22号証に示された手術台は、コラム本体のヘッド部には、上下可動部の上面に取り付けられた、テーブルトップを、X、Y2方向にスライドさせるスライド杆と駆動機構を具備した矩形状の台枠が組み込まれている。しかし、この台枠は、カバープレートにより覆われるものであり、覆われた状態のヘッド部に、ベッド部が取り付けられるものと認められる。そして、ヘッド部は上下可動するのであるから、結局、上記号証に示されたものは、ベッド部を上下可動するコラム本体のヘッド部に連結するようにした形式の手術台と認められる。

これに対し、本件発明の手術台は、「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行なうコラム部」と記載されているように、支柱本体部とコラム部とは、別の構成部材であり、また、コラム部とは、通常、圧縮荷重を支持する垂直柱等の支柱と解されることから、本件発明では、ベッド部は、支柱本体部とは別構成の支柱部に連結されるものであるから、上記号証には、本件発明の「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行なうコラム部を上下駆動機構によって上下動させる形式の手術台」の点の構成は記載されていない。

(2)  次に、甲第8ないし第12号証、第15、第16、第18、第21号証、及び第23ないし第25号証を検討するに、上記各号証には、マッケ手術台1531及び1120が、本件発明の出願日前に公然と使用された事実に関連する記載はあるが、いずれの号証にもマッケ手術台の具体的な構成は何も記載されていないので、結局、上記各号証は本件発明とは無関係なものと認められる。

(3)  このように、上記各号証には、上記した各点で本件発明の構成が記載されていないので、上記各号証に基づき各証人により立証しようとする事実は、本件発明の無効の理由に関係がないと認められる。

したがって、証人尋問を行う必要は認められないので、証人尋問は行わない。

また、甲第1号証には、本件発明の上記した点の構成が記載されていないので、検証により立証しようとする事実は、本件発明の無効の理由に関係がなく、検証を行う必要は認められないので、これは行わない。

(4)  してみれば、甲第1号証、第8ないし第16号証、第18ないし第25号証及び3名の証人により立証しようとする事実並びに検証により立証しようとする事実では、本件発明は、その出願前に日本国内において公然と使用されたものであるとすることはできない。

3-4 審決の結論

以上のとおりであり、原告が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。

第3  当事者の主張

1  原告主張の審決取消事由

審決は、甲第22号証に開示された技術内容を誤認しまた本件発明の構成を誤認した結果、本件発明の新規性の判断を誤り(取消事由1)、また、甲第2、第3及び第17号証に記載の技術内容を誤認して本件発明の進歩性の判断を誤った(取消事由2)ので、違法である。

1-1 取消事由1(新規性について)

(1)  本件発明の構成の誤認

審決は、「支柱本体部とコラム部とは、別の構成部材であり、また、コラム部とは、通常、圧縮荷重を支持する垂直柱等の支柱と解されることから、本件発明では、ベッド部は、支柱本体部とは別構成の支柱部に連結されるものである」と認定する(審決の理由の要点3-3-2-2の(1)(d))。しかし、本件発明のコラム部に関しては、特許請求の範囲に「(手術台の支柱本体部に対して)ベッド部との連結を行なう」という作用が記載されているのみであり、発明の詳細な説明あるいは図面を参酌しても、本件発明のコラム部を「圧縮荷重を支持する垂直柱等の支柱」と解釈しなければならない必然性はない。

審決は、甲第第13号証及び甲第14号証と本件発明の同一性の判断において、本件発明は「可動部が下降しコラム部の下面が支承部に当接するまでは、支持枠の支承部とコラム部の下面とは離れていると認められる」とするが(審決の理由の要点3-3-2-2の(1)(b)、(c))、本件公報の特許請求の範囲には「コラム部または上下可動部が支承されたとき、手術台が浮上する」という作用が記載されているにすぎず、具体的な構成において両者が最初は離れていると解釈しなければならない必然性は全くない。上記の審決の認定は誤りである。

(2)  甲第22号証に記載の技術内容の誤認

(2)-1 甲第22号証には、審決の理由の要点3-3-2-1で示された構成が開示されているのはもちろん、そのほか、本件発明についての構成要件が次のとおりすべて示されている。

a) 甲第22号証の写真E~Kには支持枠が示され、この支持枠の上方部位に計4個の半円形の支承部が設けられていることが示されている。これらの支承部は、コラム部の一部を構成する2本の棒材を下方より支承しており、本件発明の構成要件である「(支持枠がその上方部位に有する、)コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部」を備えている。

b) 甲第22号証の写真G~I及び写真Kに示されている「支持枠の下方に取り付けられた」各車輪は、本件発明にいう「手術台移動用車輪」そのものである。

c) 甲第22号証の写真G~I及び写真Kには、コラム部が支承部で支承された状態で支柱本体部の底面が床面から浮上していることが写されており、本件発明の「支承部の高さはコラム部または上下可動部が最下降したときのコラム部または上下可動部の側の支承位置の高さより高く設定され」ているとの構成が明瞭に示されている。

d) 甲第22号証の写真G~I及び写真Kには、コラム部が支承部で支承された状態で支柱本体部の底面が床面から浮上していることが写されており、本件発明の「コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するように構成されている」ことが明瞭に示されている。

(2)-2 甲第22号証は、甲第23、第24、第25号証及び第28号証により、本件特許出願前に据え付けられたものであることが明らかなマッケ社製手術台(1122型)について、移動台車を使用する際の使用態様を具体的にするために証拠として提出したものである。マッケ社製手術台用移動台車の本件特許出願前における公然使用の事実は、前記甲第23ないし第25及び第28号証、並びに甲第15、第16号証及び甲第18号証によって明らかであり、また、その据付け及び保守管理に上記手術台用移動台車が使用される手術台の本件特許出願前における日本国内への導入の事実は、甲第8ないし第12号証によって明らかである。

(2)-3 甲第27号証は、マッケ社製手術台1122.00型の据付や修理のために手術台本体を移動させる際に用いられていた据付スタンド(手術台用移動台車)がどのようなものであるかを示すもので、甲第22号証の説明資料として、本件特許出願前の公然実施の事実を明らかにするものである。甲第27号証に示されている手術台用移動台車は甲第22号証の手術台用移動台車とは具体的構造の細部において相違するが、甲第22号証の手術台用移動台車と基本的に同一仕様のものであり、いずれの手術台用移動台車も、型式1120と型式1122の2種類の手術台に対して共用し得るように設計されているものである。

甲第27号証の手術台用移動台車には、本件発明の手術台用移動台車についての構成要件が次のとおりすべて示されている。

a) 甲第27号証の3頁の図には「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行なう」連結部が、手術台の支柱本体部の上部に設けられていることが明示されている。甲第27号証の6頁、7頁、8頁にも、ベッド部自体は示されていないが手術台の支柱本体部の上部にベッド部との連結部を行う連結が設けられており、この連結部は本件発明にいう「ベッド部との連結を行なうコラム部」そのものである。甲第27号証の8頁中上図には連結部(コラム部)のカバープレートの上板(蓋13)を取り外した状態が示され、X、Y2方向への駆動機構の各ネジ部材及びその支持部材、並びに断面円形状の棒材及びその支持部材や連結部材等で構成された台枠がコラム部を示し、また、その下方に位置する矩形柱状の筒材が支柱本体部を示している。

さらに、このコラム部が「上下駆動機構によって上下動させられる」ことは、前記各図について支柱本体部の長さを比較することにより明瞭に理解することができる。

このように、甲第27号証の手術台用移動台車は、本件発明と同様、「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行うコラム部を上下駆動機構によって上下動させる形式の手術台」を対象にするものである。

本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、「9は可動部8とベッド部10とを着脱可能に連結保持するコラム部で可動部と一体的である。」と記載されていて(甲第7号証3欄39、40行)、本件発明のコラム部については、この記載と、特許請求の範囲の「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行なうコラム部」との記載によって定義づけられるべきである。この記載からすると、本件発明の「コラム部」は可動部と一体的に構成されるものであり、支柱本体部の上部に位置する上下可動部(つまり、支柱本体部)とコラム部とは「別の構成部材である」と限定解釈することはできない。

そして、甲第35号証(平成10年5月25日に撮影された1122.00型の手術台の写真)によれば、「ベッド部との連結を行なう」連結部が本件発明のコラム部として、支柱本体部の上部と、それとは別の構成部材で一体的である構成が明らかであり、1122.00型の手術台においても、本件発明のコラム部と同様の構成が示されている。

b) 甲第27号証の手術台用移動台車が「支持枠を備えている」ことは、5頁中上図に示され、また、同図中に示されている半曲面板3は、本件発明にいう「(支持枠がその上方部位に有する、)コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部」そのものであるから、甲第27号証の手術台用移動台車は本件発明の「コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠」を備えている。

c) 甲第27号証の5頁、6頁及び7頁において示されていう「支持枠の下方に取り付けられた」各車輪は、本件発明にいう「手術台移動用車輪」そのものである。

d) 甲第27号証の6頁下図及び7頁中下図には、手術台用移動台車をコラム部に連係させた状態、つまり、コラム部が上記移動台車の支承部で支承された状態で、支柱本体部の底面が床面から浮上していることが示されており、本件発明の「支承部の高さはコラム部または上下可動部が最降下したときこのコラム部または上下可動部の側の支承位置の高さより高く設定され」ている構成が明瞭に現れている。

e) 甲第27号証の6頁下図及び7頁中下図には、手術台用移動台車をコラム部に連係させた状態、つまり、コラム部が上記移動台車の支承部で支承された状態で、支柱本体部の底面が床面から浮上していることが示されており、本件発明の「コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するように構成されている」ことが明瞭に現れている。

(2)-4 甲第27号証の手術台は埋込形ではあるが、このタイプのものにおいても、手術室の改装や手術台の点検・修理等のために、手術台自体を移動させる必要が生じるのは極めて一般的なことで、このような場合に手術台用移動台車が使用されるのは当旨然で、その際、支柱本体部の基部の設置面に対する固定が解除された状態では、手術台を移動させる上での取扱条件は床面載置形のものと基本的に同一であり、コラム部又は上下可動部が支承されたとき、手術台は接地面より浮上する。

被告は、甲第27号証の手術台用移動台車は組立式のものであり、本件発明のものとは異なると主張するが、本件発明が組立式ではなく一体型のものであるとは特許請求の範囲から特定することはできず、この点で異なるものではない。

1-2 取消事由2(進歩性について)

(1)  本件発明と甲第2号証、甲第3号証に記載のものを対比すると、両者は、「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行うコラム部を上下駆動機構によって上下動させる形式の手術台において」という点、「下降動作時下方より支承する支承部を上方部位に有する支持枠」を備えている点、「この支持枠の下方に取り付けられた手術台移動用車輪」を備えている点、及び「前記支承部の高さはコラム部又は上下可動部が最下降したときのコラム部又は上下可動部の側の支承位置の高さより高く設定され」ている点で一致し、両者は、(イ)支承部はコラム部又は上下可動部を支承するか否かの点、(ロ)コラム部又は上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するようになっているか否かの点、(ハ)したがって、手術台全体が移動可能となるか否かの点で相違する。

相違点(ハ)についてみると、手術台全体を移動させる技術的課題は本件特許出願公告公報の第3図や第4図や甲第4号証に示されているように公知の課題であり、また、甲第5号証に示されているように一般に重量物を持ち上げて搬送する手押式の台車により重量物をある位置から持ち上げて所定の目的位置まで移動させた後、その目的位置に重量物を設置することは、従来より汎用されている技術である。相違点(ロ)については、甲第2号証や甲第3号証はコラム部又は上下可動部を最下降させたときに、それ自体が持ち上げられるものではないが、天板との分離は下降力を利用して行われるものであり、コラム部又は上下可動部の下降力を利用する点で、本件発明と共通する。相違点(イ)については、甲第2号証、甲第3号証のストレッチャーを天板とコラム部を分離できない一体型の手術台に適用した場合を考えれば手術台全体を設置面より浮き上がらせることができ、また、支承部を天板部に対して設けるか、コラム部又は上下可動部に対して設けるかは、当業者にとって単なる設計的事項にすぎない。

(2)  第6号証には、手術台ではないが、下降力を利用して逆に重量物を床面より浮き上がらせて移動可能にするという技術思想が開示されており、このような技術思想が公知である以上、本件発明の特徴とする技術思想、つまり、コラム部又は上下可動部を最下降位置まで下降させる際に、その下降力を利用してコラム部又は上下可動部を設置面から浮き上がらせる点には特許性は認められない。

(3)  甲第17号証には、昇降可能なコラム部4を支持する脚部2は、固定若しくは可動であること、ベッドプレート20は、コラム4に分離可能に結合され、通常は、コラム4を上昇させることによって、キャリッジ上のベッドプレート20をコラム4に受け取り、逆に、コラム4を下降させることにより、ベッドプレート20をキャリッジ上に移すこと、ベッドプレート20のコラム4からの不意の離脱を防止するため、安全性の見地から自動又は手動の係止装置を設けること、が記載されている(別紙図面2参照)。この記載に従って、脚部2を可動とし、手動の係止装置を採用した場合、ベッドプレートとコラムとの係止を解除しないまま、コラムを下降させると、ベッドプレートがキャリッジに当接して支承される高さから更にコラムを下降させることにより、脚部2は、コラムの下降力によって逆に浮き上がることになる。

(4)  したがって、甲第2号証、甲第3号証及び甲第17号証に基づいて、特別な駆動手段を用いることなしに、コラムの下降力を利用して、手術台全体をキャリッジに吊持ちして移動させるという本件発明の技術思想に想到するのに困難性はない。

2  取消事由に対する被告の反論

審決の認定判断は正当であり、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がない。

2-1 取消事由1について

(1)  甲第22号証は、原告の日本での輸入販売元の一私人が撮影したものにすぎず、信憑力がない。これが真正なものとしても、これをもって甲第14号証に記載された据付スタンドが、本件発明の出願前に日本国内において使用され、公知であったことが証明されるものではない。

したがって、甲第22号証の写真に示された据付スタンドが本件特許出願前に日本国内において輸入販売されたことを立証する証拠はなく、原告の主張は不当である。

仮に、甲第22号証の写真に示された据付スタンドが本件特許出願前に使用されたとしても、手術台が設置された手術室はだれもが自由に入室できる環境にないことから、甲第22号証をもって公然実施とはいえない。

本件発明のコラム部は、手術台の上下可動部に対して縦転運動と横転運動が可能なように上下可動部に保持されるものである。これに対し、甲第22号証に示された手術台は、X、Y2方向にスライドさせるスライド杆と駆動機構を具備した矩形状の台枠がカバープレートにより覆われ、この覆われた状態のヘッド部にベッド部が取り付けられるものである。したがって、本件発明のコラム部と甲第22号証に示された手術台のヘッド部とは明ちかに異なり、「(甲第22号証には)本件発明の『手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行なうコラム部を上下駆動機構によって上下動させる形式の手術台』の点の構成は記載されていない。」とする審決の認定に誤りはない。

(2)  甲第27号証に記載された据付スタンドがマッケ手術台1122の運搬に使用されたとしても、本件発明の手術台用移動台車とは相違する。

すなわち、上記据付スタンドは、車輪を備えた2個の側枠と3本の連結管とから成り、据付スタンドの使用時にコラム(本件発明でいうコラムではない。)のカバーを取り外して据付スタンドの側枠をコラム頭部に差し込み、2個の側枠を3本の連結管で連結し、ピンで固定することで現地で組み立て、木材板(パレット)上の手術台を床に埋め込まれている底板(Bodeneinbauplatte=ベースプレート)の上方向に搬送することのみに用いられ、据付作業後は、解体、撤去回収されるもので、いったん設置された手術台の移動に使用するものではなく、その構成も手術台の据付時に車輪付きコラムとするにほかならない。このように、甲第27号証の据付スタンドはパレットより手術台を持ち上げるものである点、埋設形のマッケ社手術台の設置後の移動に使用することないしその可能性について何ら記載されていない点、組み立てない限りコラムを支承する機能を有しない点において、本件発明と異なる。

(3)  本件発明の特許請求の範囲には、「コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する支承部を上方に有する支持枠」と記載され、支承部がコラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承するものであることが明記されており、また、発明の詳細な説明に「手術台Sを移動させる場合には……移動台車Dはそのく字形のフレーム16が手術台Sの支柱本体部7を両側から挟む状態で第1図の位置まで侵入する。可動部8の下降によってコラム部9の下面が支承部13に当接し、さらに下降を続けると支承部13は所定の高さを有するので手術台Sが逆に浮上されることになる。」(4欄13行ないし21行)と記載されている。

これらの記載からすると、「上下可動部が降下し、コラム部の下面が支承部に当接するまでは、支持枠の支承部とコラム部の下面とは離れている」ことは明白である。審決は、甲第13号証、甲第14号証と本件発明との同一性の判断において、本件発明について「可動部が下降しコラム部の下面が支承部に当接するまでは、支持枠の支承部とコラム部の下面とは離れていると認められる」としたが(審決の理由の要点3-3-2-2の(1)(b)、(c))、正当である。

2-2 取消事由2について

(1)  甲第2号証、甲第3号証は、ベッドのみをストレッチャーで搬送するもので、ベッドとコラム部の分離にコラム部の下降力を利用しているものの、これはコラム部に支持されたベッドをストレッチャーに移し換えること、換言すれば、ベッドのコラム部からストレッチャーへの単なる載換えにすぎない。したがって、ストレッチャーの支承部はベッド(天板)を下方から支承するものである。

(2)  甲第17号証は、甲第2号証、甲第3号証と同様のベッドのみをコラムと切り離してキャリッジで搬送するようにした分離型手術台で、ベッドとコラムの分離にコラム本体の下降力を利用しているものの、ベッドのコラムからキャリッジへの単なる載換えにすぎない。したがって、キャリッジの支承部はベッド(天板)を下方より支承するもので、手術台のベッド部を上下させる上下駆動力そのものを利用し他に駆動機構を付加することなく手術台全体を浮上又は降下させるとの技術的課題の達成の意図の下に、コラム部又は上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するようにした本件発明の構成とは異なる。

甲第17号証に記載のものでは、アングル部材48がコラム4の上下動によりプレート(ベッド)20のロッド32で与えられる垂直方向の力で回動し、ロッド32がUビームとアングル部材でコラム4上のプレート18に係止していう状態よりコラム4を下降させると係止が解除される(別紙図面2参照)。したがって、当業者といえども、甲第17号証に記載のものから、手術台全体を設置面(床面)より浮上させることを予想できるものではない。

第4  当裁判所の判断

1  取消事由1について

原告は、甲第22号証に記載のものと本件発明の手術台用移動台車とが同一の構成を採用していると主張するので、これにつき検討する。

(1)  ベッド部との連結を行う部材について、本件発明のベッド部との連結を行うコラム部が手術台の支柱本体部と別に構成され、また、上下可動部が手術台の支柱本体部の一部分として構成されるものであることは特許請求の範囲の「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行うコラム部を上下駆動機構によって上下動させる形式の手術台において、コラム部または上下可動部をその下降動作時下方より支承する」の記載に照らして明らかである。これによれば、本件発明は支柱本体部の上下可動部とコラム部が別の部材として構成されていることを前提にし、支持枠の支承部の支持個所としてコラム部又は上下可動部のいずれか一方を選択して支承することができるものということができる。

一方、甲第22号証によれば、同号証に示される手術台は、コラム本体(支柱本体)の上下可動するヘッド部にベッド部が取り付られるものであることが認められ、また、審決が認定したように(審決の理由の要点3-3-2-1の甲第22号証に関する認定部分)、走行輪付きスタンドの支承する個所がヘッド部のスライドに限定されているから(この点は、原告も争っていない。)、ベッド部はコラム本体(支柱本体部)を構成する上下可動のヘッド部に設けられるものであって、コラム本体(支柱本体部)とは別に構成されている部材に設けるものとは認めることができない。原告は、甲第35号証によれば、マッケ社製1122.00型の手術台についても、「ベッド部との連結を行なう」連結部が本件発明のコラム部として、支柱本体部の上部と、それとは別の構成部材で一体的である構成が示されていると主張する。同号証によれば、そこに示される手術台の支柱本体部の上部と連結部が別の部材で組み立てられるものであることは認められるが、台車の据付け、移動の構成として、両者が別の部材のものとされていることは、同号証によっても認めることはできない。

したがって、審決が、甲第22号証には、本件発明の「手術台の支柱本体部に対して、ベッド部との連結を行なうコラム部を上下駆動機構によって上下動させる形式の手術台」の点の構成は記載されていないとした認定(審決の理由の要点3-3-2-2の(1)(d))に誤りはないというべきである。

本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、「9は可動部8とベッド部10とを着脱可能に連結保持するコラム部で可動部と一体的である。」と記載されていて(甲第7号証3欄39、40行)、原告は、この記載を根拠に、本件発明の「コラム部」は可動部と一体的に構成されるものであり、支柱本体部の上部に位置する上下可動部(つまり、支柱本体部)とコラム部とが「別の構成部材である」と限定解釈することはできないと主張する。しかしながら、上記記載は本件発明の一実施例についての記載であり、本件発明のベッド部との連結を行うコラム部が手術台の支柱本体部と「一体的である」という表現は、むしろ、両者が別の構成部材であることを前提にしているとも解されるのであって、上記記載は、両者が別の構成部材であることと両立し得ないものではなく、この点については、特許請求の範囲の記載から前記認定のとおり理解することができるから、原告の上記主張は理由がない。

(2)  本件発明は、「支承部の高さはコラム部または上下可動部が最下降したときこのコラム部または上下可動部の側の支承部の高さより高く設定され、コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するように構成」されている。その実施例の記載、すなわち、「可動部8の下降によってコラム部9の下面が支承部13に当接し、さらに下降を続けると支承部13は所定の高さを有するので手術台Sが逆に浮上されることになる。すなわちラム11を下降させると、その駆動力は支持柱14、フレーム16を介して車輪5を床面Fに押圧することになるが、その反力が作用して手術台全体が床面Fから浮上し第1図の状態となる。」(本件明細書(甲第7号証)4欄17行ないし25行。別紙図面1参照)との記載からも明らかなように、上記構成は、コラム部又は上下可動部の下降動作を利用して手術台を設置面より浮上させるためのコラム部又は上下可動部の側の支承位置と、支持枠の支承部との相対的位置関係を限定する構成であるということができる。この構成によれば、コラム部又は上下可動部が下降し、コラム部又は上下可動部の下面が支持枠の支承部に当接するまでは、支持枠の支承部とコラム部又は上下可動部の下面とは離れていることが明らかである。

原告は、審決が、甲第13号証及び甲第14号証と本件発明の同一性の判断において、本件発明について「上下可動部が下降し、コラム部の下面が支承部に当接するまでは、支持部の支承部とコラム部の下面とは離れている」と認定した(審決の理由の要点3-3-2-2の(1)(b)、(c))のは誤りであると主張するが、以上に示したところにより、原告の上記主張は理由がない。

(3)  一方、甲第22号証によっても、そこに示されている台車をどのように据え付け、移動するのかは、必ずしも明らかではない。

原告は、甲第27号証をもって、甲第22号証に記載の台車と基本的に同一仕様のものであると主張するが、原告も自認するように、甲第27号証に記載のものは、甲第22号証に記載のものと具体的構造の細部において相違するところがあり、甲第27号証をもってしても、甲第22号証に記載の台車の据付け、移動に関する具体的な構成態様を正確に認定することはできない(原告は、審判及び本訴において、甲第22号証をもって1120.00型の写真であると主張するが、そのように認めるべき的確な証拠もない。)。

(4)  しかしながら、原告が主張するように、甲第22号証に示されている台車と甲第27号証に記載の台車とは基本的に同一の仕様のものである可能性もうかがわれるので、仮に両者が同一の構成であるとした場合、それが本件発明の構成と同一といえるか否かにつき、以下検討する。

(a) 甲第27号証に記載の1122.00型の手術台の据付指示書における据付け、移動操作についてみると、甲第27号証には以下の記載があることが認められる。

「マッケは、コラム1120.00と1122.00の据付けのために据付けスタンドを無料で提供する。それは、車輪を備えた2個の側枠と3本の連結管とから成る。」(5頁11行ないし14行)

「顕微外科用コラム1122.00が発送のために木材板1に取り付けられる。据付けスタンドに取り付けるために、締付けシュー2を緩める。手動操作のためにカバー11を取り外す。クランクハンドル12を装着する。コラム頭部をクランクハンドルで最高位置まで移動する。蓋13をコラム頭部から取り外す。」(6頁1行ないし9行)

「据付けスタンドの側枠を下方からコラム頭部に差し込む。半曲面板3がコラム頭部内の2本の下方横断軸を受承しなければならない。手動操作部に対向する側で側枠を横断管で連結し、ピン4で固定する。」(6頁10行ないし16行)

「コラム底部をクランクハンドルで上昇させる。コラムを吊り下げた据付けスタンドを底板の上方に移動させる。ケーブル端を対応する垂れ下がるワイヤに接続する。ケーブル管に通してモータ制御部に向けて引っ張る。」(6頁17行ないし22行)

「底板内側とコラム底部板の間の距離が110mmに到達するまで、コラム底部板をクランクハンドルで移動させる。ケーブルを引っ張ってケーブルクランプで固定する。」(6頁25行ないし29行)

「コラム底部板の2個のOリングの座部を点検する。次に、偏心レバー14を取り外して、外側のつば付きリング15を持ち上げる。点検は絶対に必要である。コラムを据付けスタンドによって底板上で心出しする。コラム底部をクランクハンドルによって底板内に降下させる。次に、ロックピンをコラム底部板内方に圧入することに注意する。」(7頁19行ないし27行)

「固定穴が一致するまで、つば付きリング15を底板内で回転する。つば付きリングを6本の六角穴付きねじで固定する。つば付きリング15の穴をねじとOリングで閉鎖する。偏心レバー14を取り付ける。コラム頭部をクランクハンドルで上昇させて、据付けスタンドを取り外す。」(7頁28行ないし36行)

(b) 仮に甲第22号証に示される台車も上記記載と同様の態様のものであるとすると、上記記載の据付け、移動は、コラム本体(支柱本体)のヘッド部をクランクハンドルで最高位置まで移動し、走行輪付きのスタンドの側枠の下方からヘッド部に差込み半曲面板でスライドを受承し、側枠を横断管で連結してピンで固定し、その後コラム本体(支柱本体)の底部をクランクハンドルで上昇させるものということができ、本件発明におけるように、コラム部又は上下可動部の下降動作時にその下面が支承部に当接するまで離れている構成のものとは認められない。したがって、仮に甲第22号証に記載の台車が甲第27号証の記載のものと同様の態様であるとしても、それは、本件発明の「支承部の高さはコラム部または上下可動部が最下降したときこのコラム部または上下可動部の側の支承部の高さより高く設定され、コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上する」との構成を備えているものと認めることはできない。

(c) 原告は、甲第27号証の6頁下図及び7頁中下図には、台車をコラム部(支柱本体部の上部)に連係させた状態、つまり、コラム部が移動台車の支承部で支承された状態で、支柱本体部の底面が床面から浮上していることが示されており、「コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するように構成されている」ことが明瞭に現れていると主張する。

なるほど、甲第27号証も、コラム部が移動台車の支承部で支承された状態で支柱本体部の底部を上昇させるものであるから、「コラム部または上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するように構成されている」ものといえる。

しかしながら、前示のとおり、本件発明は、コラム部又は上下可動部が下降し、コラム部又は上下可動部の下面が支持枠の支承部に当接するまでは、支持枠の支承部とコラム部又は上下可動部の下面とは離れている構成を採用している。これに対し、甲第27号証に記載の台車は、コラム本体(支柱本体部)の底部を上昇させる前に、既にヘッド部は支承部に組み付けられていることは前示のとおりであり、コラム本体(支柱本体)の底部の上昇動作後の態様が一致することをもって、本件発明の前記構成が甲第27号証に示されていると認めることはできない。

(d) 以上のとおり、仮に甲第27号証に示される据付け、移動が甲第22号証に示されたものに当てはまるとしても、その据付け、移動は本件発明の構成と同一のものと認めることはできない。

(5)  したがって、甲第22号証に示されたものが公然使用されたか否かについて判断するまでもなく、取消事由1は理由がない。

2  取消事由2について

(1)  原告は、本件発明は、甲第2、第3号証及び第17号証に記載のものから容易に想到できたものにすぎないと主張する。

(2)  甲第2号証に、審決が認定したとおり「手術台柱部に昇降自在に配置した昇降柱の上部に手術台上板受台を設け、この手術台上板受台に分離可能に手術台上板を配置するとともに走行車輪を取り付けた前部が開口したストレッチャーを配備する。昇降柱の昇降作用を利用することにより、手術台上板をストレッチャーに、又はストレッチャーから手術台上板受台に移し替えること。」が記載されていることは、原告も争わず、甲第3号証に、審決が認定したとおり「昇降自在なコラムの中央部に分離可能に手術台を配置するとともに手術台を支持する昇降自在な支持手段を設けた搬送キャリッジを配備する。コラム及び支持手段の昇降作用を利用することにより、手術台を搬送キャリッジに、又は搬送キャリッジからコラムの中央部に移し替えること。」が記載されていることも、原告の争わないところである。

また、甲第2、第3号証に記載のものには、(イ)支承部はコラム部又は上下可動部を支承する、(ロ)コラム部又は上下可動部が支承されたとき手術台が設置面より浮上するようになっている、(ハ)したがって、手術台全体が移動可能となる、との本件発明の構成が示されていないことも原告の自認するところである。

なるほど、手術台全体を移動させる技術的課題は、本件特許出願公告公報の第3図や第4図(従来の移動式手術台として示されている。)に示されているように公知の課題であるということはいえるが、原告が自認する相違点(ハ)に示されるように、手術台全体を移動させるために、上下駆動機構を備えた支柱本体部の上下可動部の下降動作を利用するとの本件発明の構成が、甲第2、第3号証に開示されているものとは認められない(原告は、甲第5号証を汎用技術が記載されたものとして援用するが、そこには、台車に搭載した昇降装置でマンホール蓋などの重量物を吊り上げて移送するという、重量物移送のための一般的技術手段が開示きれているにすぎないものと認められ、本件発明の技術的課題、構成及び作用効果を示唆するものということはできない。)。

(3)  原告は、甲第6号証に示されるように、下降力を利用して重量物体を床面より浮き上がらせて移動可能にするという技術思想が公知である以上、本件発明のコラム部又は上下可動部を最下降位置まで下降させる際に、その下降力を利用してコラム部又は上下可動部を設置面から浮上させることに特許性はないと主張する。

甲第6号証に、審決認定のとおり「昇降自在な荷物載置用フランジを有する手押車」が記載されていることは原告も争わないところであるが、これを超えて、甲第6号証に、原告主張の上記技術的事項に関する記載のあることは認めることができないから、原告の上記主張は理由がない。

(4)  原告は、甲第17号証に従って、脚部2(本件発明の支柱本体部)を可動とし、手動の係止装置を採用した場合、ベッドプレートとコラムの係止を解除しないまま、コラムを下降させると、ベッドプレートがキャリッジに当接して支承される高さから更にコラムを下降させることにより、脚部2は、コラムの下降力によって逆に浮き上がることになり、特別な駆動手段を用いることなく手術台全体をキャリッジによって吊持ちし移動させることができるものであると主張する。

甲第17号証に、審決認定のとおり「固定又は可動自在な脚部を有する昇降自在なコラムの上部にプレートを分離可能に載置するテーブル構造体を設けるとともにこのプレートを搬送する搬送車を配備する。コラムの昇降作用を利用することにより、搬送車に載置したプレートをテーブル構造体に、又はテーブル構造体に載置したプレートを搬送車に移し替えること。」の技術的事項が記載されていることは、原告も争わないところである。

そして、甲第17号証には次の記載があることが認められる。

「Uビーム44に挿入されたロッド32について垂直方向の分離以外のいかなる動きをも阻止する安全装置が図2および図3に示されている。……さらに、安全上の理由から、自動又は手動の係止装置を設けることができる。

プレート20の搬送車26からテーブル構造体への移変えは、搬送車をその開かれた側でテーブル構造体の上方において所定の移変え位置に移動させることによって可能となり、その移変え位置は好ましくは搬送車の上部横支柱38が隣り合うUビーム44の外面、あるいは、テーブル構造体のフレーム18の上昇位置に依存して、フレームの隣り合う側部支持プレート16に当接することによって決定される。図3に示す第1のプレート移変え位置においては、ロッド32はUビーム44の上方において変位される。長手方向の調整位置は、ロッド32とフレーム18の間の長さの差によって決まる制限範囲内において任意に選択することができる。コラム4上のフレームを上昇させることによって、プレート20は搬送車から上昇されテーブル構造体と係合する。搬送車はその後、除去される。プレート20のテーブル構造体から搬送車への移変えは、搬送車をテーブル構造体越しに所定の受取位置に位置させた後、コラム4上のフレーム18を下降させることにより、上記と逆順に行われる。」(3欄23行ないし75行。別紙図面2参照)

この記載によれば、甲第17号証においては、ベッドプレートのみをキャリッジによって搬送するものが示されているのであって、コラムも含めて手術台全体を搬送することを予定して構成するものが示されているとは認められない。原告が主張するように、手動の係止装置を設けた場合にベッドプレートとコラムとの係止を解除しないことについて、甲第17号証が示しているものと認めることもできない。

(5)  以上のとおりであり、本件発明が甲第2、第3号証及び第17号証に記載のものなどから容易に想到できたものとは認められないとした審決の判断に誤りはなく、取消事由(2)も理由がない。

第5  結論

以上のとおりであり、原告の本訴請求は理由がなく棄却すべきである。

(平成11年2月4日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

別紙図面1

<省略>

別紙図面2

<省略>

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