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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)52号 判決 1996年10月08日

アメリカ合衆国オハイオ州44145 ウエストレイク クレメンス ロード 28601

原告

ノードソン コーポレーション

同代表者

トーマス・エル・ムーアヘッド

同訴訟代理人弁理士

明石昌毅

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 荒井寿光

同指定代理人

川崎義晴

吉野日出夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための附加期間を90日と定める。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

(1)  特許庁が平成5年審判第4785号事件について平成7年10月23日にした審決を取り消す。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文第1、2項と同旨

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、「NORDSON」の欧文字を横書きしてなり、指定商品を平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令1条別表第11類「電気機械器具、その他本類に属する商品」とする登録第1487378号商標(昭和53年7月19日に登録出願され、昭和56年11月27日に設定登録されたもの。以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、平成3年7月30日、商標権存続期間更新登録出願(平成3年商標登録願第218456号)をしたところ、平成4年11月12日、拒絶査定を受けたため、平成5年3月10日、これに対する審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成5年審判第4785号として審理したが、平成7年10月23日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年12月4日、原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  本件商標の構成及び指定商品は、前記記載のとおりである。

(2)  そこで、判断するに、請求人(原告)が、本願と同時に提出した本件商標の使用を示す書類(商品カタログ)によると、そこに掲載されている商品は、各種電子基板等への防湿絶縁剤塗布、保護膜形成、接着剤薄膜塗布等を目的とする塗料吹付け装置であると認められる。

(3)  しかして、商品区分(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令1条別表による区分。以下における「商標法施行令1条別表」「商品区分」とも、すべて上記改正前のものをいう。)第11類に属する「電子応用機械器具」とは、「電気機械器具が電気の作用をその機械器具の機能の本質的な要素になっているものだけを含むのに対して、この概念には、電子の作用を応用したもので、その機械器具の機能の本質的な要素になっているものだけが含まれる。ただし、通信機械器具は、何らかの形(例えば真空管)で電子の作用を応用しているものも多いが、電気通信機械器具という概念がある以上、電子応用機械器具には含まれない。」と説明されている(特許庁商標課編「商品区分解説」(改訂版第2刷)社団法人発明協会平成2年4月25日発行、49頁)。

(4)  しかるところ、請求人(原告)が、本件商標を使用していると主張する商品の本質的機能は、前記のとおり、各種電子基板等への塗料吹付けの部分であり、電子頭脳によりプログラム制御されている部分は、商品の補助的な機能とみるのが相当である。

(5)  してみれば、本件商標の使用の事実を示す書類(商品カタログ)に掲載された商品は、商品区分第11類の「電子応用機械器具」に属する商品とはいえないものであり、該商品は、商品区分第9類に所属する商品というべきである。

(6)  したがって、本願と同時に提出された使用の事実を示す書類(商品カタログ)によっては、本件商標をその指定商品中の電子応用機械器具に使用しているものとは認められないから、本願は、商標法19条2項但書2号に該当するものとして、拒絶されるべきである。

3  審決を取り消すべき事由

審決の認定判断のうち、審決の理由の要点(2)は認めるが、(4)ないし(6)は争う。

審決は、本件商標の使用された商品が、本件商標の指定商品である商品区分第11類に属するものであるにもかかわらず、同類に属さないものと誤って認定した結果、本件商標が、更新登録の出願前3年以内に、指定商品について使用されたものとすることができないと誤って判断したものであるから、違法であり、取り消されるべきである。

(1)  本件商標は、本件更新登録の出願前3年以内に、原告の商品カタログに記載の、商品名を「ノードソンセレクトコートシステム」とするコーティング装置(以下「本件使用商品」という。)に使用されていたものであるが、本件商標の指定商品である商品区分第11類の商品は、「電気機械器具 電気通信機械器具 電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)電気材料」と定められており、一方、審決において、本件使用商品が属すべきものとされた同第9類の商品は、「産業機械器具 動力機械器具(電動機を除く。) 風水力機械器具 事務用機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く。) その他の機械器具で他の類に属しないもの これらの部品および付属品(他の類に属するものを除く。) 機械要素」と定められていたものである。

(2)  商品区分第9類は、商品を用途又は機能の観点から認識、識別したものであり、他方、第11類は、商品を、専らその使用に際して電気が流れるものとの観点から認識、識別したものであって、両者の間には相互に背反性はない。したがって、審決のように、商品が、第9類に属するときには第11類に属せず、第11類に属するときには第9類に属さないとする論理判断には意味がない。

確かに、審決記載のように、本件使用商品を第9類の「塗装機械器具」に属すると認識することが不適当であるとはいえない。しかしながら、本件使用商品は、そもそも商品区分に属する商品として例示されていないものであるから、このような商品については、登録商標の使用の有無を判断するにあたって、商品の所属すべき商品区分の類を唯一つとしなければならないとする法規定はない。

(3)  原告の商品カタログに示す本件使用商品の構成は、次のとおりである。

ア 本件使用商品は、「Nordson」の表示のある本体のユニット(以下「本体ユニット」という。)と、別置きされるユニット(以下「別置きユニット」という。)の二つのユニットからなる集積回路(IC)用塗装装置である。

イ 別置きユニットは、塗料を蓄容するタンク、タンクから塗料を吸上げて圧送するポンプ、ポンプを駆動するモータを含んでいる。

本体ユニットは、塗料を噴射するノズル、ノズルへの塗料の供給を制御する弁、ノズルを三次元的に移動させるノズル移動機構、ノズル偏向機構の動きをプログラム制御する電子頭脳装置を含んでいる。

両ユニットの間は、塗料を送るホースと制御信号を送る電線で連結されている。

ウ 別置きユニットは、そのポンプの吐出部にホースを接続し、ホースの先に適当なノズルを取り付ければ、壁や床等の塗装に使用できる塗装装置として、単独にても商取引の対象になる。

エ 本体ユニットは、本質的にノズルに限らず、任意の加工ヘッドを三次元的に位置決めし、かっ、その方向を偏向する作動を電子頭脳によるプログラム制御によって行う、いわゆる多次元作動ロボットであり、単独でも商取引の対象になる。このユニットは、単独では塗装機能を有しないため、第9類の「塗装機械器具」の範疇には入らず、それを、いずれかの類に入れるとすると、第11類以外にはない。

オ なお、本件商標登録は、第11類に属するすべての商品を指定商品としている。

カ また、本体ユニットには、単独で、前記アのとおり、「Nordson」の商標が付されている。

(4)  審決が引用する、社団法人発明協会発行の「商品区分解説」における記載は、電気機械器具に対比して、電子応用機械器具を解説したものであり、電気機械器具あるいは電子応用機械器具に属すべき商品と属すべからざる商品との差異を解説したものとは思われない。

(5)  以上によれば、本件商標が使用されている本件使用商品、又はそれを構成する各ユニットは、商品区分第11類に属する商品のいずれかに該当するものであるから、本件商標は、本件更新登録の出願前3年以内に、その指定商品について使用されていたものというべきである。

第3  請求の原因に対する認否及び被告の主張

請求の原因1及び2の事実は認める、同3(1)のうち、本件使用商品が「コーティング装置」であることは認める、同(3)アないしウ、カは争わない、同3のその余は争う。

審決の認定判断は正当である。

1(1)  商品区分第9類に属する商品の性格については、「大体において事業場で生産加工及びその管理に使用される機械器具を、用途別にまとめたものであり、この意味で用途主義に基づく類といえる。だだし、この類は他のどの類にも属し得ない機械器具及び汎用の部品を含んでいる点で、機械器具関係の類の総括的性格をも有する。」と解説されている(特許庁商標課編「商品区分解説」(改訂版)社団法人発明協会昭和55年3月31日発行、31頁)。

(2)  また、第9類に属する産業機械器具については、商標法施行令1条で定める別表の備考欄二において、次のとおり定義されている。

「この表において産業機械器具とは、金属加工機械器具、鉱山機械器具、土木機械器具、荷役機械器具(エスカレーター及び乗用のエレベーターを含む。)、農業用機械器具、漁業用機械器具(漁網、綱漁具及び釣具を除く。)、化学機械器具、繊維機械器具、食料又は飲料加工機械器具、製材、木工又は合板機械器具、パルプ、製紙又は紙工機械器具、印刷又は製本機械器具、工業用炉その他の産業用機械器具(電気機械器具、電子応用機械器具、輸送機械器具、手動利器及び手動工具に属するものを除く。)をいう。」

上記によれば、第9類における、本件使用商品の該当性が問題となるべき「その他の産業用機械器具」については、「電気機械器具、電子応用機械器具」を、括弧書きをもって除外することにより、同類の「産業用機械器具」と第11類の「電気機械器具、電子応用機械器具」とを区別し、商品区分の所属関係を明らかにしている。

(3)  更に、第9類の産業機械器具と電気機械器具との関係については、「電気の作用がその機械器具の機能にとって、単に補助的な役割をなすもの、例えば、動力源として電動機を使用しているにすぎない機械器具であれば、第11類電気機械器具には含まれず、この概念(注・第9類)に属する。このような考え方は、この類における他の大概念も同様である。」と解説されている(前記「商品区分解説」32頁)。

加えて、第11類の「電子応用機械器具」についても、「電子の作用を応用したもので、その機械器具の機能の本質的な要素になっているものだけが含まれる。」と解説されている(前記「商品区分解説」49頁)。

(4)  そうとすれば、第9類に属する「産業用機械器具」と第11類に属する「電気機械器具、電子応用機械器具」とは、商品区分上、重複しないものとして取り扱われていることが明らかである。

なお、第11類に属する商品の性格については、「電気に関係のある機械器具は、すべて-企業で製造される場合が多いので、これらをまとめたのが、この類である。この意味で生産者主義による類ということができる。」と解説されているものである(前記「商品区分解説」47頁)。

2  ところで、商標法において「商品の区分」が設けられている趣旨は、単一の商品毎に商標権を設定することができるとすると、無数の商標権が生じ、繁雑になる一方、一つの商標権によりすべての商品に渡っての権利設定が可能とすると、自己に関係のない商品についてまで権利を取得することになり、商標権が一定の商品について商標を使用することのできる権利であることの意味がなくなってしまうことから、同種企業が取り扱う可能性のある商品をまとめて、一つの商品区分を設定し、その区分内の商品については、一つの商標権で権利設定をすることができるようにしたということにある。

そして、この趣旨を生かすため、政令(商標法施行令1条別表)をもって、「商品の区分」を定めたものであるが、存在するすべての商品を網羅することは困難であることから、包括的な表示を用いて、1ないし34の区分(前記改正前のもの)に分類し、更に、個別の商品については、通商産業省令(商標法施行規則3条別表、平成3年通商産業省令第70号による改正前のもの。以下における「商標法施行規則3条別表」についても、すべて上記改正前のものをいう。)をもって、上記「商品の区分に属すべき商品」を具体的に例示しているものである。

したがって、商標法上、すべての商品は、上記34分類のいずれかに属するものとされているのであり、たとえ、通商産業省令又は類似商品審査基準に該商品が例示されていないとしても、該商品の所属が決められないものではなく、商品の本質的な役割、用途、機能、原材料、その他の特徴により、単一商品としての所属を決定し得るものである。ただし、例外的に、同一名称の商品であっても、その用途の相違により別の類に分類される商品が幾つかある(例えば、「硝酸ソーダ」(第1類・化学品と第2類・肥料)、「ダイヤモンド」(第6類・鉱石と第21類・宝玉)、「水あめ」「氷砂糖」(第30類・菓子と第31類・調味料))が、これらは、原材料を共通にするとしても、その用途、需要者及び取引者等の取引形態を異にすることから、商標法上同一商品とすることができないことによるものである。

3  本件使用商品である「コーティング装置」は、後記のとおり、その装置全体を一体の商品とみるべきものであり、その中の個々の構成要素別に、その所属を判断すべきではないから、同一の名称をもって二つの類に属するという性格を有するものではないとみるのが相当である。

そして、本件使用商品の名称は前記のとおり「コーティング装置」であるが、その「コーティング」は、英語の「coating」に由来する外来語であることから、本件商標の指定商品との関係では、「塗装装置」なる意味を容易に理解させるものである。

また、本件使用商品をそのカタログの記載に徴してみると、それが、「主として各種電子基板等への防湿絶縁剤塗布、保護膜形成、接着剤薄膜塗布等を目的とする塗料吹付け装置」とされていることからみて、その本質的機能及び特徴は「塗料吹付け」にあるものと認定される。

4  したがって、本件使用商品は、第11類に属するものではなく、第9類15「その他の産業用機械器具」の一つに含まれる「塗装機械器具」に属するものというべきである。

5  なお、本件使用商品について、上記3のとおりのカタログの説明中の「各種電子基板」が「半導体素子」又は「集積回路」の一種として認識される場合には、該商品は、「半導体素子(集積回路)製造装置」の一種として把握し得るところである。しかして、該商品は、商標法施行規則3条別表に例示されている商品ではないが、その場合にも、前記「塗装機械器具」と同様の観点から、該商品において、電気又は電子の作用が本質的な機能を果たしているものとはいえないから、該商品は、商品区分第11類に属するものではなく、第9類の「その他の産業用機械器具」の範疇に属するものと認められる。

6  ところで、原告は、本件使用商品は二つのユニットからなり、それぞれが単独で取引の対象になり得るところ、そのうちの本体ユニットは、電子頭脳によるプログラム制御された多次元作動ロボットとして、第11類に属するものであるとも主張する。

しかしながら、商標法上の商品は商品取引上の概念であって、その取引にあたり単一の物品として把握されるものは、これを個々の構成部品ごとに分解して論ずべきではない。

本件使用商品が二つのユニットからなるものであるとしても、本体ユニットは、別置きユニット(塗装装置)以外の機械器具に接続されるということを認め得ないものであり、また、提出されたカタログによっても、二つのユニットが単独で商取引の対象とされている事実は見出だせないし、この二つのユニットを個々別々に購入したとしても、「コーティング装置」としての使用の役に立っものか否かは不明である。

結局、本件使用商品の二つのユニットは、「コーティング装置」という一体の商品として取引されているものとみるのが相当であり、また、本件使用商品は、その全体として、電子基板等への「コーティング(塗装)」を目的とする装置とみるべきであるから、たとえ、本体ユニットの一部を構成する多次元作動ロボット部分が、電子頭脳によってプログラム制御されているものであるとしても、該部分は、「コーティング(塗装)」の目的を達成するための補助的な役割、機能を果たす部分であるといわざるをえない。

したがって、原告の上記主張も失当である。

7  更に、原告が主張する、社団法人発明協会発行の「商品区分解説」における記載も、電気機械器具に対比して電子応用機械器具を解説したものと限定して解すべき理由はなく、他の一般産業機械との識別においても意義を有するものである。

8  以上のとおりであるから、原告の主張はいずれも妥当ではなく、審決の認定、判断に誤りはない。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第1  請求の原因1及び2の各事実(特許庁における手続の経緯、審決の理由の要点)については当事者間に争いがない。

また、審決の認定判断のうち、本件商標の構成とその指定商品については、原告が明らかに争わないから、自白したものとみなす。更に、審決の認定判断のうち、原告が、本願と同時に、特許庁に対し本件商標の使用を証明するため提出した書類(商品カタログ)に掲載された商品が、各種電子基板等への防湿絶縁剤塗布、保護膜形成、接着剤薄膜塗布等を目的とする塗料吹付け装置であることについても、当事者間に争いがない。

第2  そこで、原告主張の審決取消事由について検討する。

1  本件使用商品が、二つのユニット(「Nordson」の表示のある本体ユニットと別置きユニット)からなる集積回路(IC)用塗装装置(コーティング装置)であること、そのうち、別置きユニットが、原告主張のタンク、ポンプ、モータを含み、本体ユニットが、原告主張のノズル、制御弁、ノズル移動機構及びノズル偏向機構の動きをプログラム制御する電子頭脳装置を含んでいること、両ユニット間が、塗料を送るホースと制御信号を送る電線で連結されていること、別置きユニットが、ポンプの吐出部にホースを接続し、ホースの先に適当なノズルを取り付けることによって、壁や床等の塗装に使用できる塗装装置として単独でも商取引の対象になることについては、いずれも当事者間に争いがない。

2  原告は、本出願と同時に提出された商品カタログに掲載の、二つのユニットからなる本件使用商品について、それを、審決の判断のように商品区分第9類に属するとすることが不適当ではないにしても、同時に第11類にも属する商品であると認めるべきである旨を主張する。

そこで検討するに、

(1)  商品区分第11類の商品については、「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)、電気材料」と定められており(商標法施行令1条別表第11類)、また、上記商品は、同一生産者により生産されることが多いものとして、いわゆる生産者主義の立場から分類されたものと解されるが、本件使用商品が、上記のうち、「電気通信機械器具」及び「電気材料」に属するものでないことは明らかである(商標法施行規則3条別表第11類参照)。

また、上記第11類の商品のうち、「電気機械器具」及び「電子応用機械器具」についても、商標法施行令1条別表における他の類に区分された商品との対比及び同法施行規則3条別表により第11類に属するものとして列挙された具体的な商品の例示を考慮するならば、上記各機械器具は、ともに、電気もしくは電子の作用をその中心的、本質的な機能として用いたものを指し、機械器具の上記機能の発揮のため、電気もしくは電子の作用を補助的に用いたものについては除外されるものと解するのが相当である。

(2)  そして、前記第1及び第2、1における争いのない事実に、成立に争いのない甲第2号証の4(本出願と同時に提出された本件使用商品についてのカタログ)によると、本件使用商品の本質的機能は、各種電子基板等に対する防湿絶縁剤塗布、保護膜形成、接着剤薄膜塗布等の塗料吹付け作用にあるものというべきであるところ、上記の塗料吹付け作用自体は、電気もしくは電子の作用そのものを中心的、本質的な機能とするものでないことは明らかであり、また、本体ユニットにおいて、ノズルの移動機構及び偏向機構の作動等に対し電子頭脳によるプログラム制御がなされているとしても、それは、上記塗料吹付け作用を補助する機能にすぎないものと考えられ、その他、本件使用商品において、電気もしくは電子の作用を、その本質的な機能として用いていることを認めるべき事由は見当たらない。

したがって、本件使用商品は、第11類における「電気機械器具」又は「電子応用機械器具」にも該当しないものというべきである。

(3)  そうであれば、結局、本件使用商品については、商品区分第9類に属する(商標法施行規則3条別表第9類「産業機械器具」15「その他の産業用機械器具」中の「塗装機械器具」に属するものと解される。)ほか、第11類にも属すると認めることはできないものといわざるをえない。

3  また、原告は、本件使用商品のうち、本体ユニットについては、単独でも、電子頭脳によりプログラム制御された多次元作動ロボットとして取引されるものであるから、第9類の商品とはいえず、第11類に属するものであるとも主張する。

しかしながら、前出甲第2号証の4(本件使用商品についてのカタログ)の記載に鑑みても、本体ユニットが、別置きユニットとは別個、独立に商取引の対象とされているものとも認め難く、また、本件において、他にこのことを格別に裏付ける証拠も存在しないことからみるならば、仮に、本体のユニットについて、原告主張のような利用方法がありえるとしても、それは、あくまでも例外的な使用によるものであり、本体ユニットの商品としての本来的な機能は、別置きユニットとの組合わせによる塗装装置としての使用にあるというべきであるから、本体ユニットは、あくまでも本件使用商品の一部をなすものと認めるのが相当である。

そうであれば、本件使用商品中の本体ユニットについて、本件使用商品とは別に、その商品区分を検討する余地はないものというべきである。

4  以上によれば、本件商標が使用されたものとされている本件使用商品、又はそれを構成する本体ユニットは、商品区分第11類に属する商品とはいえないことが明らかであるから、本件商標は、本件更新登録の出願前3年以内に、その指定商品について使用されていたものとすることはできず、審決の認定、判断には原告主張の誤りはないものというべきである。

第3  よって、審決の取消しを求ある原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担及び附加期間の定めについて行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、158条2項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 持本健司)

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