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東京高等裁判所 平成8年(行コ)13号 判決 2000年1月20日

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人鎌倉市建築主事が、Aに対し、昭和六一年七月一五日付けでした建築確認(第一―一三一六号)は、無効であることを確認する。

3  被控訴人鎌倉市長が、Aに対し、昭和六三年六月一日付けでした施工停止命令(鎌倉市指令建指第三号)は、無効であることを確認する。

4  被控訴人鎌倉市長が、控訴人に対し、平成二年六月一三日付けでした、原判決別紙物件目録一記載の建物の使用を禁じた行政行為(鎌建指第四四号)は、違法であることを確認する。

5  被控訴人鎌倉市建築主事が、控訴人に対し、控訴人の平成三年六月一一日付け建築確認申請について、処分をしないのは違法であることを確認する。

6  訴訟費用は、第一、第二審とも、被控訴人らの負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり訂正し、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決三枚目裏七行目の末尾に、「また、基礎コンクリート柱の長さ、基礎梁の断面寸法等の問題は、掘削した軟弱地盤を埋め戻すことにより解決できる。」を加える。

二  同四枚目表六行目の「被告市長は」から七行目末尾までを次のとおり改める。

「被控訴人市長は、昭和六三年六月一日、Aに対して、建築基準法九条一〇項に基いて、本件建物につき建築工事の施工の停止を命じた(鎌倉市指令建指第三号。  以下「本件停止命令」という。)。」

三  同五枚目裏六行目冒頭から一一行目末尾までを、次のとおり改める。

「(二) 控訴人は、被控訴人主事の期限内に確認できない旨の通知を受けた後、控訴人は疑義の全てに対応したにもかかわらず、同被控訴人は後日新たな疑義を出してきたものであり、その疑義の内容の大部分は、法の根拠が明らかでないものである。したがって、控訴人の申請が適合通知の要件を充足していないのであれば、同被控訴人は理由を示して控訴人の申請を拒否すべきであるところ、申請から八年以上を経過した現在においても、控訴人の申請に対し処分を行わない。

(三) 行政手続法は、同法施行前に申請された未処分の案件に対して適用しない旨の明文の規定はないから、本件のように施行前に処分がされず、施行時において不作為が続いているとすれば、継続中の不作為に同法七条が適用される。したがって、控訴人の申請に対する被控訴人主事の長年にわたる不作為は行政手続法七条に反し違法であるし、そうでないとしても同条の規定の趣旨に反するものである。

5 本件停止命令は、憲法二九条一項、一三条、建築基準法一条に違反する。

6 よって、請求の趣旨記載の判決を求める。」

四  同九枚目表五行目の「工事停止命令」を「本件停止命令」に改める。

五  同一四枚目表九行目ないし一一行目の「被告市長」を「被控訴人主事」とそれぞれ改める。

第三当裁判所の判断

当裁判所も、被控訴人主事がAに対して昭和六一年七月一五日付けでした建築確認の無効確認を求める訴え及び被控訴人鎌倉市長(以下「被控訴人市長」という。)が控訴人に対して平成二年六月一三日付けでした本件建物の使用を禁じた行為の違法確認を求める訴えはいずれも不適法であり、また被控訴人市長のした本件停止命令の無効確認を求める訴え及び被控訴人主事が控訴人の建築確認申請について処分しないことの違法確認を求める訴えはいずれも理由がないと判断するものであるが、その理由は、次のとおり訂正し、付加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一六枚目表九行目の末尾に、「(基礎コンクリート柱の長さ、基礎梁の断面寸法等の問題は、掘削した軟弱地盤を埋め戻すことにより解決できる旨の控訴人の主張は採用できない。)」を加える。

2  同二二枚目表一行目の後に改行して、次のとおり加える。

「一三控訴審における和解手続において、控訴人は、本件建物について是正を要する箇所の存することを認め、被控訴人らと、その箇所及びその是正方法等を約三年間にわたり話し合い、右のような要是正箇所及びその方法等の具体的な是正内容を実質的に合意した。ところが、控訴人は、最終的には、本件建物の敷地に当たる土地の権利問題を理由に合意された是正工事の早期着工を拒否したことから和解打切りとなった。」

3  同二八枚目裏末行末尾の後に、次のとおり加える。

「そして、被控訴人主事としては、控訴人が本訴の控訴審の和解手続において、本件建物につき是正を要することを認め、被控訴人らの代理人らとその要是正箇所及び是正方法等を約三年間にわたり検討していたのであるから、本件建物の違反箇所については話し合いによって違反是正がなされ、その結果本件申請も右和解手続により実質的に解決されると考えることも当然のことであって、和解打切後当分の間、本件申請について判断を留保することも許されるというべきである。」

4  同二九枚目表四行目の「なお」から八行目末尾までを、次のとおり改める。

「控訴人は、行政手続法は、その施行前に申請されたもののこれに対する処分がされず同法施行後に不作為が続く場合にも適用されるから、控訴人の本件申請に対する被控訴人主事の不作為は行政手続法七条の規定又はその趣旨に反するものである旨主張するが、本件申請は平成三年六月一一日になされ、右の行政手続法は平成六年一〇月一日から施行されたものであるから、本件申請の審査及び応答について同法が適用されることはないというべきであるし、また本件の事実の経緯からも被控訴人主事の不作為が同法の趣旨に反するものであるということもできない。

また、控訴人の本件停止命令が違憲である旨の主張及びその他の主張はいずれも採用できない。」

二 右のとおりであり、控訴人の本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条、六一条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷澤忠弘 裁判官 一宮和夫 裁判官 大竹たかし)

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