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東京高等裁判所 平成8年(行コ)157号 判決 1997年7月09日

神奈川県川崎市宮前区土橋六丁目二番地三

控訴人

柴原健三

右訴訟代理人弁護士

辰口公治

小川征也

神奈川県川崎市高津区久本二丁目四番三号

被控訴人

川崎北税務署長 佐藤順一

右訴訟代理人弁護士

池田直樹

右指定代理人

加藤裕

内田健文

栗原勇

海谷仁孝

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が平成四年二月二一日付けでした控訴人の昭和六三年分所得税についての更正処分(ただし、平成六年九月二六日付けでされた減額更正処分後のもの。)のうち納付すべき税額一一〇五万七九〇〇円を越える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし、平成六年九月二六日付けでされた過少申告加算税の変更決定処分後のもの。)を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二事案の概要

事案の概要は、原判決事実及び理由欄「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

第三証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第一  当裁判所も、控訴人の請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は、控訴理由に鑑み、次のとおり付加するほかは、原判決理由欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人は、右引用に係る原判決の事実認定を論難するが、原判決挙示の各証拠によれば、原判決理由欄記載の事実を容易に認定することができる。

控訴人は、絹子は財産分与の意味を知らなかったから、本件土地等を財産分与として取得したとの認識がなかった旨主張するところ、確かに甲第一号証の一によれば、調停離婚当時絹子は財産分与という言葉の意味を正確に理解していなかったことは認められるが、原判決挙示の証拠によれば、控訴人からの財産の譲渡が離婚に伴う財産の給付であり、不本意な離婚の代償であると認識していたことは明らかであり、その実質は財産分与にほかならず、しかも絹子と控訴人及び双方代理人が出席した家事調停において成立した調停調書には、これら財産の譲渡が「離婚に伴う慰謝料、扶養費を含む財産分与として」行うことが明記されているのであるから、これら財産の譲渡が財産分与に当たることは明らかである。

二  控訴人は、本件財産分与額は極めて高額であり、分与財産の大部分は控訴人が父から承継したものであるから、本件財産分与は、財産分与としては明らかに過当なものであり、過当部分は贈与に当たるものであるから、右部分について譲渡所得税の対象とすることは許されないと主張する。

確かに、本件財産分与の総額は、前認定のとおり時価にして一八億円を超えるものであって、極めて高額であることは事実であるが、控訴人の総資産からすれば、半分以下にとどまるものであり(配偶者の相続分が二分の一以上であることを想起すべきである。)、このことに控訴人と絹子との婚姻期間、婚姻中の生活状況、離婚に至る経緯及び離婚後の子供の養育関係等(この点の原判決の認定は、挙示の証拠によって十分認められ、控訴人の論難は採用できない。)を総合勘案すれば、本件財産分与に係る財産の譲渡が財産分与として過当なものとはいえないこと、引用に係る原判決の理由欄記載のとおりであり、本件財産分与が財産分与に仮託した財産処分(贈与)と認めることはできない。

第二  以上のとおりであって、控訴人の請求を棄却した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから棄却し、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 町田顯 裁判官 末永進 裁判官 藤山雅行)

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