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東京高等裁判所 平成8年(行コ)169号 判決 1998年3月30日

兵庫県西宮市桜町三番四号

控訴人

上山英志

右訴訟代理人弁護士

太田耕治

金子武嗣

東京都大田区雪谷大塚町四番一二号

被控訴人

雪谷税務署長 佐野兼光

右指定代理人

仁田良行

堀久司

上出宣雄

櫻井和彦

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、控訴人の平成二年一二月四日相続開始に係る相続税について、平成四年七月三一日付けでした控訴人に対する更正のうち、課税価格一億九一三九万四〇〇〇円、納付すべき税額七三七六万六七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、いずれも異議決定により一部取消され、かつ平成九年三月二一日付け更正処分により一部減額された後のもの)を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二事案の概要及び証拠関係

一  本件事案の概要は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中「第二 事案の概要等」記載のとおりであるから、これをここに引用する。ただし、原判決別紙中左側部分を本判決別紙のとおりそれぞれ改める。

1  原判決書三頁末行の「被告が」から同四頁二行目末尾までを次のとおり改める。

「被控訴人が、右方式による評価を否認して平成四年七月三一日付けで課税価格、納付すべき税額につき更正をし過少申告加算税賦課決定をしたことから(なお右更正及び賦課決定については、控訴人の申立てに基づく異議決定による一部取消し及び未分割であった相続財産の遺産分割の伴う更正処分による一部減額がされた。以下、右一部取消し、一部減額後の更正を「本件更正」と、賦課決定を「本件賦課決定」とそれぞれいい、両者を併せて「本件処分」という。)控訴人が本件処分の取消しを求めている事案である。被控訴人は、一株当たりの価額は一万六七四三円になると主張している。なお右減額更正処分に伴い控訴人の請求の減縮があった。」

2  同四頁七行目、同五頁二行目の各「法定相続分」を「遺産分割」にそれぞれ改める。

3  同一三頁五行目の「算定するが」から九行目末尾までを「算定する。」に改める。

4  同一五頁五行目の「本件相場により」から八行目の「場合には」までを「本件相続により、本件株式四万六五〇〇株の五分の一である九三〇〇株を相続したことから」に改める。

5  同二〇頁八行目の「七・四〇」を「五・四七」に改める。

6  同二四頁二行目の「合理的根拠はない。」を「合理的根拠はなく、二〇パーセント程度を基準とすべきである。」に改める。

7  同二七頁六行目の末尾の次に行を改めて次のとおり加える。

「(控訴人の当審における主張)

本件にあたって控訴人につき前記の五パーセント規制等を理由に配当還元方式を採らないで課税することは以下の理由で合理性を欠き、日本国憲法一四条に違反する。

(1) 評価通達が昭和三九年に定められた際に取引相場のない株式の評価につき配当還元方式が採りえることとされ、また昭和五三年改正により、中心的な同族株主のいる同族会社についての配当還元方式を採る場合が拡大されるようになったが、これら評価通達の制定、改正の趣旨は、取引相場のない株式を発行する会社の株主中同会社に対し支配力を有しない株主の有する株式の相続につき右方法を採らない不公平がしょうずることからこれを回避することにあった。したがって、右趣旨に照らすと、まさしく控訴人のように本件相続の結果発行済み株式の五パーセントをわずかに超える株式を取得するに至ったにすぎず会社の経営につき何ら支配力を有しない株主については、当然に配当還元方式が採られるべきである。

(2) 控訴人は、その叔母である他の相続人と共に亡き栄子の有していた株式を均分に相続したものであるが、他の相続人は、配当還元方式が適用されたことから一株当たり五〇〇円と評価されて相続税を課せられたのに対し、控訴人は、発行済み株式の五パーセントをわずかに超える株式を取得するに至ったことを理由に配当還元方式の適用がなく、このため一株当たり一万六七四三円と評価され、三三・四八倍もの差異を生ずるに至った。しかも、右遺産分割は家庭裁判所(及びこれに対する抗告審としての高等裁判所)の審判により当事者間の公平を考慮してされたものであって、しかるにその結果相続税の負担につき右のような多大な差異が生ずるに至ったのは著しく公平を欠くものである。

(右に対する被控訴人の認否及び主張)

控訴人の主張は争う。」

二  証拠関係は、本件記録中の証書目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

第三当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付け加えるほか、原判決書三〇頁二行目の「少なくても」を「少なくとも」に、九行目から十行目にかけての「個人企業者との」を「個人企業者の」にそれぞれ改め、三二頁一〇行目から末行にかけてのかっこ書を次のとおり改める。

「(控訴人も、株式評価上株主を支配株主と非支配株主に二分し、前者に純資産価額方式を、後者に配当還元方式を適用する考え方には賛意を示している。)」

二 同三七頁二行目の「五号証」の次に「及び弁論の全趣旨」を、五行目の「認められ」の次に「(実態調査の原資料が提出されていないからといって右根拠が失われるものではない。)」をそれぞれ加え、一〇行目から末行にかけての「二〇パーセント」を「二〇パーセント程度等」に改める。

三 同四〇頁三行目の「本件では、」の次に「控訴人が右合理性を覆す特段の事情を立証するため」を加える。

四 同四一頁八行目の末尾の次に行を改めて次のとおり加え、九行目の「5」を「6」に改める。

「5 控訴人は、評価通達が昭和三九年に定められた際の趣旨及び昭和五三年に改正された趣旨がその主張のようなものであることを前提に、本件相続の結果発行済み株式の五パーセントをわずかに超える株式を取得するに至ったにすぎず会社の経営につき何ら支配力を有しない株式である控訴人につき配当還元方式を適用しないことは公平を失し日本国憲法一四条に違反する旨を主張するが、甲一二ないし一七号証によっても、評価通達の右制定、改正の趣旨が控訴人主張のような点に限定されていたとは認めることができず、したがってその主張は前提を欠き採用することができない。

次に控訴人は、裁判所の関与した遺産分割の結果に基づく他の相続人との不均衡を問題にし、これに基づく日本国憲法第一四条違反を主張する。しかし、その主張によれば遺産分割は家庭裁判所、高等裁判所の審判、決定の手続を経たというのであるから、それ自体公平にされたことは制度上明らかというべきである(甲二〇号証の一、二、甲二一、号証によってもこれに反する事実は認められない。)。そして控訴人については、たまたま既に同一会社の株式を有していたことから、右のような遺産分割の結果、取得した株式とあわせると、課税の前提としての資産評価上、S1+S2方式によることが合理性を有するとされたものであって、他の相続人との間にその主張のような不均衡があるからといって、課税上著しく公平を欠くということはできない。」

よって原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して主文のとおり判決する。

(平成九年一二月三日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 新村正人 裁判官 岡久幸治 裁判官 北澤章功)

別表1

課税価格等の計算明細

<省略>

別表2

税額算出表

<省略>

別表3

課税処分の経緯

<省略>

別紙

訴外会社の株主の状況

<省略>

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