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東京高等裁判所 平成8年(行コ)22号 判決 1996年4月23日

控訴人

茨城県稲敷郡江戸崎町、桜川村、新利根村 稲波、引船・羽賀、

稲波及び引船・羽賀に隣接する 小野川、旧小野川、霞ケ浦湖心水域(西浦)

オオヒシクイ(住所地に越冬する地域個体群)

右訴訟代理人弁護士

坂元雅行

朝倉淳也

神田安積

海野浩之

小倉京子

工藤一彦

佃克彦

辻希

則武透

被控訴人

橋本昌

主文

一  本件控訴を却下する。

二  原審及び当審における訴訟費用は、控訴代理人らの負担とする。

事実及び理由

一  本件は、オオヒシクイ個体群を茨城県の住民であるとして、その名において、地方自治法二四二条の二第一項四号後段に基づき、同県に代位し、知事である被控訴人に対し、被控訴人はオオヒシクイ個体群の越冬地全域を鳥獣保護区に指定しなかったことにより同県の威信を著しく損なわせ、重要な自然環境の要素にして重要な文化的財産を損傷させたとして、不法行為による損害の一部二二五七万二〇〇〇円を同県に賠償するよう求めた事案の控訴審である。

二 およそ訴訟の当事者となり得る者は、法律上、権利義務の主体となり得る者でなければならず、このことは民法、民事訴訟法等の規定に照らして明らかなところというべきであり、したがって人に非らざる自然物を当事者能力を有する者と解することは到底できない。住民訴訟の当事者となり得る者についてもこれと異なる解釈をする余地は全くない。当事者能力の概念は、時代や国により相違があるのは当然であるが、わが国の現行法のもとにおいては、右のように解せざるを得ない。

そうすると、本件控訴も、当事者能力を有しない自然物であるオオヒシクイの名において控訴代理人らが提起した不適法なものであり、これを補正することができないことは明らかであるから、却下を免れない。

三  なお、原判決は訴訟費用に関する裁判をしていないので、民訴法一九五条三項後段、九九条をいずれも準用ないし適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野田宏 裁判官 田中康久 裁判官 太田幸夫)

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